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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(161)−(174) 国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)国民健康保険助成費
部局等
厚生労働本省(交付決定庁)
10都県(支出庁)
交付の根拠
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先(保険者)
市10、町3、村1、計14市町村
療養給付費負担金の概要
市町村の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計
14,940,054,363円
(平成16、17両年度)
不当と認める国庫負担金交付額
176,203,229円
(平成16、17両年度)

1 負担金の概要

(1) 国民健康保険の療養給付費負担金

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(2) 国庫負担金の交付対象

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1) 及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。そして、国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。
 そして、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除き、国庫負担金の交付の対象とされている。
 一方、退職被保険者等に係る医療費については、国庫負担金の交付の対象とはせずに、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担されている。

 退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に老人保健法による医療を受けるまでの間において適用される資格を有する者である。


(3) 国庫負担金の算定方法

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。


 保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
 国の負担割合  平成16年度までは40/100、17年度は36/100、18年度以降は34/100

 このうち一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額とされている。
 ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

(4) 交付手続

 国庫負担金の交付手続については、〔1〕交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、厚生労働省に提出し、〔3〕厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。
 そして、〔4〕当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出し、〔5〕これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出し、〔6〕厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、28都道府県の371市区町村において、平成16、17両年度に交付された国庫負担金について、合規性等の観点から、交付額が法令等に基づき適切に算定されているかに着眼して、実績報告書及びその基礎資料等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に都道府県を通じ市町村に事態の詳細について報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、10都県の14市町村では、国庫負担金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費の全部又は一部を控除しておらず、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されるなどしていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると計14,763,851,134円となり、国庫負担金交付額計14,940,054,363円のうち計176,203,229円が過大に交付されていて不当と認められる。
 上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 青梅市では、平成17年度の国庫負担金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った16年度以前分の医療給付費の一部274,150,895円を控除していなかったため、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると1,527,300,913円となり、109,209,855円が過大に交付されていた。
 このような事態が生じていたのは、前記の14市町村において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため、適正な実績報告等を行っていなかったこと、また、これに対する前記10都県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 これを都県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

 
都県名
交付先
(保険者)
年度
国庫負担対象費用額
左に対する国庫負担金
不当と認める国庫負担対象費用額
不当と認める国庫負担金
       
千円
千円
千円
千円
(161)
宮城県
大崎市
17
336,579
121,177
14,718
5,950
(162)
 同
遠田郡美里町
17
883,139
318,661
12,467
4,987
(163)
栃木県
日光市
17
669,225
240,927
9,224
3,622
(164)
 同
下都賀郡壬生町
17
1,597,089
574,349
4,369
1,747
(165)
埼玉県
和光市
16
2,005,578
802,231
30,172
12,069
(166)
 同
三郷市
16
5,088,231
2,035,292
7,095
2,838
(167)
東京都
青梅市
17
4,549,182
1,636,510
274,150
109,209
(168)
岐阜県
美濃加茂市
17
1,567,890
584,810
△16,219(注4)
16,281
(169)
広島県
三次市
17
2,171,205
782,009
10,555
4,064
(170)
 同
江田島市
17
1,364,933
490,474
9,427
3,734
(171)
愛媛県
松山市
17
17,060,378
6,138,660
9,717
3,693
(172)
福岡県
朝倉市
17
1,837,869
661,117
9,418
3,712
(173)
熊本県
玉名郡長洲町
17
657,155
236,830
2,697
1,078
(174)
沖縄県
中頭郡中城村
17
881,475
317,000
8,609
3,212
(161)−(174)の計
40,669,934
14,940,054
402,625
176,203
 美濃加茂市は、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者に係る医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過小に算定していた。一方、その後の国庫負担金の算定に当たり集計を誤っていた。したがって、上表の「国庫負担対象費用額」は過小に算定した額であり、「不当と認める国庫負担対象費用額」はマイナス表示の額となることから当該金額については集計を行っていない。