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  • 平成18年度|
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小規模企業者等設備導入資金の貸付けが不当と認められるもの


(253)−(255) 小規模企業者等設備導入資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)中小企業庁
(項)中小企業対策費
部局等
3経済産業局
国の貸付金
小規模企業者等設備導入資金貸付金
貸付けの根拠
小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和31年法律第115号)
貸付けの内容
設備資金貸付事業を行う貸与機関に対して小規模企業者等設備導入資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
貸付先
3県
県の貸付先
(貸与機関)
3財団法人
貸与機関の貸付件数
3件(3小規模企業者等)
貸与機関の貸付金額の合計
63,800,000円(国の貸付金相当額31,900,000円)
貸与機関の不当貸付金額
27,002,834円
貸付けの目的に沿わない国の貸付金相当額
13,501,417円

1 貸付金の概要

 中小企業庁では、小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和31年法律第115号)に基づき、小規模企業者(注1) 等の創業及び経営基盤の強化に必要な設備の導入の促進に資するための資金の貸付けを行う都道府県に対して、当該貸付けに必要な資金の2分の1以内の額を小規模企業者等設備導入資金貸付金として無利子、無期限で貸し付けている(注2)
 都道府県は、国の貸付金に自己資金等を合わせて資金を造成し、当該資金を、小規模企業者等設備導入資金として、各都道府県に設置されている貸与機関(注3) に貸し付けている。そして、貸与機関は、信用力や資金調達力がぜい弱である小規模企業者等に対して設備の設置に必要な資金を無利子で貸し付ける事業(以下「設備資金貸付事業」という。)を行っている。設備資金貸付事業による貸付金額は、設備の設置に必要と認めた資金の額の2分の1以内の額で50万円以上4000万円以下(中小企業経営革新支援法(注4) (平成11年法律第18号)に基づき都道府県知事等の承認を受けた経営革新に関する計画に従って設置される設備については3分の2以内の額で66万円以上6000万円以下)となっており、その償還期間は原則として7年となっている。また、貸付けの対象設備は、当該設備を導入することにより付加価値額(注5) 等が向上すると見込まれるものであることなどとされている。
 そして、借主は事業完了後に完了報告書を提出し、貸与機関はこれに基づいて事業の実施状況を確認することとなっている。

(注1)
 小規模企業者  常時使用する従業員の数が20人(商業・サービス業の場合は5人)以下の事業者
(注2)  「中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律」(平成11年法律第222号。以下「改正法」という。)により中小企業近代化資金等助成法(以下「旧法」という。)が小規模企業者等設備導入資金助成法に改正される平成11年度以前において、中小企業庁は、旧法に基づき、都道府県に対して中小企業設備近代化補助金を交付していた。そして、改正法附則第5条の規定により、旧法により交付された補助金等で都道府県が保有している資金は小規模企業者等設備導入資金助成法に基づき国が都道府県に対して貸し付けた資金とみなすこととされており(以下、この資金を「みなし貸付金」という。)、18年度末において国が都道府県に貸し付けている資金はすべてみなし貸付金である。
(注3)
 貸与機関  民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人であって、設備資金貸付事業等を行うものをいう。
(注4)
 中小企業経営革新支援法  中小企業経営革新支援法は「中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律」(平成17年法律第30号)により「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に改正された。
(注5)
 付加価値額  営業利益、人件費及び減価償却費の合計額をいう。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、事業が関係法令等に基づき適切に実施され、その経理は適正かに着眼して、25都道府県の25貸与機関が設備資金貸付事業として実施した貸付け2,609件のうち188件の貸付けについて、都道府県及び借主において、完了報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、3県において、3貸与機関が実施した3小規模企業者等に対する3件計63,800,000円の貸付けについて、借主が、設備を生産活動に使用することなく、研究開発のみに使用していて、当初から付加価値額等の向上が見込めないものとなっていたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりなどしていた。このため、27,002,834円の貸付けが貸付けの目的に沿わない結果となっており、国の貸付金相当額13,501,417円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、借主の本貸付制度に対する認識が十分でなかったこと、貸与機関の審査・確認及び県の貸与機関に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを県別・貸与機関別・貸付先別に示すと次のとおりである。

 
県名
貸与機関
貸付先
貸付年月
貸付対象事業費
(同上に対する貸付金額)
貸付対象として適切でない事業費
(同上に対する貸付金相当額)
貸付けの目的に沿わない国の貸付金相当額
摘要
         
千円
千円
千円
 
(253)
福島県
財団法人福島県産業振興センター
あん類製造業者
16.11
22,575
(10,000)
21,000
(9,212)
4,606
貸付対象外

 この貸付けは、充てん包装機(注6) 、コンベア・プッシャー及び金属検出機の設置に必要な資金22,575,000円(貸付対象事業費同額)の一部として10,000,000円を貸し付けたものである。借主は、これらの3設備をあんの包装時に起こる形状変化の抑制等の研究開発と併せて生産活動に使用することにより、品質の向上、原価の低減を図り、付加価値額等の向上が見込まれるとしていた。しかし、借主は、平成16年度に上記の研究開発に対して、中小企業経営資源強化対策費補助金の交付を福島県を通じて受けており、金属検出機を除く補助の対象となった上記の2設備は、原則として、当該補助金の目的である研究開発以外には使用できないことになっていた。このようなことから、借主は、当該設備を生産活動に使用することなく研究開発のみに使用しており、当該設備については、当初から付加価値額等の向上が見込めないものとなっていて、貸付対象にならないものであった。
 したがって、適切な貸付金額を計算すると787,500円となるので、本件貸付金額との差額9,212,500円が過大な貸付けとなっている。

 充てん包装機  多様な形状、固さのあんを袋詰めし密封するもの


(254) 神奈川県 財団法人神奈川中小企業センター 造園工事業者
16.6
57,750
(28,800)
7,350
(3,675)
1,837
無断処分

 この貸付けは、木材等を効率的にチップ化するための大型木質系粉砕処理機一式の設置に必要な資金57,750,000円(貸付対象事業費同額)の一部として、28,800,000円を貸し付けたものである。借主は、この設備のうちブラシュチッパー(注7) 1台7,350,000円を平成16年5月に設置したが、同年9月、同設備により木材等からチップ化した製品の品質が十分確保できなかったことから貸与機関に無断で納入業者に返品し、同年10月、返金を受けていた。
 したがって、同設備に係る貸付金3,675,000円は、貸付けの目的を達成していない。

 ブラシュチッパー  木材等をチップ化するための小型の機械


(255) 愛知県 財団法人愛知県中小企業振興公社 (注8) 金型製造業者
15.10
40,267
(25,000)
23,940
(14,115)
7,057
低額設置及び貸付対象外

 この貸付けは、金型を製造加工するためのマシニングセンタ(注9) 、放電加工機(注10) 各1台の設置に必要な資金40,267,500円(うち貸付対象事業費40,267,000円)の一部として、25,000,000円を貸し付けたものである。借主は、マシニングセンタを26,827,500円(同26,827,000円)で設置したとしているが、実際は、値引きを受けてこれより低額な16,327,500円(同16,327,000円)で設置していた。また、借主は、放電加工機を13,440,000円(貸付対象事業費同額)で設置しているが、実際は、当該設備は、製造メーカーにおいて、平成11年9月から15年5月までの間展示品として使用されていたものであり、このような中古品は貸付対象にならないものであった。
 したがって、適切な貸付金額を計算すると10,884,666円となるので、本件貸付金額との差額14,115,334円が過大な貸付けとなっている。

(注8)  平成18年4月1日以降は、財団法人あいち産業振興機構
(注9)
 マシニングセンタ  工作機械の一種で、切削工具を自動的に交換しながら金属を加工するもの
(注10)
 放電加工機  工作機械の一種で、金属と電極との間の放電現象を利用して金属を加工するもの

(253)−(255) の計
 
     
120,592
(63,800)
52,290
(27,002)
13,501