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補助金の概要


(279) 道路改築事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、軽量盛土の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目
道路整備特別会計
(項)離島道路事業費
部局等
長崎県
補助の根拠
道路法(昭和27年法律第180号)
離島振興法(昭和28年法律第72号)
補助事業者
(事業主体)
長崎県
補助事業
主要地方道有川新魚目線道路改築
補助事業の概要
道路を拡幅するため、平成17年度に、軽量盛土工、路盤工等を施工するもの
事業費
123,102,000円
上記に対する国庫補助金交付額
67,706,100円
不当と認める事業費
19,028,000円
不当と認める国庫補助金交付額
10,465,400円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、長崎県が、主要地方道有川新魚目線の道路改築事業の一環として、南松浦郡新上五島町曽根郷地内において、上記県道の一部(延長300m)を拡幅するため、平成17年度に、軽量盛土工、路盤工等を工事費123,102,000円(国庫補助金67,706,100円)で実施したものである。
 このうち、軽量盛土工(延長133.8m、高さ1.9mから6.0m)は、支柱(H形鋼)及び壁面材(コンクリートパネル)により構成される保護壁と整形した地山(傾斜角度45度、延長115.8m)又は既設のブロック積擁壁(傾斜角度63.4度、延長18.0m)(以下、これらを「背面地盤」という。)との間の盛土材として、軽量盛土用大型発泡スチロールブロック(厚さ0.25m又は0.5m。Expanded Poly−Styrol Block。以下「EPSブロック」という。)を所定の高さまで層状に積み重ねるなどして築造するものである(参考図参照)
 この軽量盛土の設計は、14年6月に建設コンサルタント会社に設計業務を委託し、15年7月に成果品を検査の上、受領しているもので、「発泡スチロール土木工法技術資料設計マニュアル」(発泡スチロール土木工法開発機構5年編)等(以下「マニュアル」という。)に基づき行っている。そして、マニュアルによると、使用するEPSブロックについては、路盤等の荷重により、各層のEPSブロックに生ずる圧縮応力度(注) を所定の算定式により計算した後、許容圧縮応力度(注) がこの圧縮応力度を上回るEPSブロックを選定することとされている。
 本件工事で使用するEPSブロックについては、1層目(最上層)及び2層目には許容圧縮応力度70kN/m2 のEPSブロックを、また、3層目から10層目までには許容圧縮応力度50kN/m2 のEPSブロックをそれぞれ選定すれば、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 本院は、長崎県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、軽量盛土の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、14年5月に、軽量盛土の設計の基礎としたマニュアルが廃止され、新たに「EPS工法設計・施工基準書(案)」(同機構編。以下「基準」という。)が制定されていた。基準によると、EPSブロックの設計については、前記の所定の算定式による設計に加え、背面地盤の傾斜角度が45度より急な場合、荷重が下層のEPSブロックに集中して作用することから、この点についても照査して設計することと追加されていた。
 そして、本件工事についてみると、背面地盤の傾斜角度が45度より急な箇所(傾斜角度63.4度、延長18.0mの区間)があり、この箇所については、上記の照査をすべきであったのに、これを行っていなかった。
 そこで、上記の箇所に施工したEPSブロックについて、基準に基づく再計算等の詳細な報告を求め、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、7層目及び8層目の一部、並びに、9層目及び10層目の全部のEPSブロックに生ずる圧縮応力度は50.1kN/m2  から87.7kN/m2 となり、許容圧縮応力度50kN/m2 を上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件軽量盛土延長18.0m区間(工事費相当額19,028,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額10,465,400円が不当と認められる。

 圧縮応力度・許容圧縮応力度  「圧縮応力度」とは、材に外から圧縮力がかかったとき、材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容圧縮応力度」という。


(参考図)

(参考図)

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