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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第15 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

市場価格を考慮してクレーン作業料金の単価を決定することなどにより、年間輸送役務契約に基づく料金の節減を図るよう改善させたもの


(2) 市場価格を考慮してクレーン作業料金の単価を決定することなどにより、年間輸送役務契約に基づく料金の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)防衛本庁
(項)防衛本庁
部局等
海上自衛隊補給本部
契約名
輸送役務契約
契約の概要
部隊等への弾薬、部品等の輸送及びそれに伴うクレーン作業等を行わせるもの
契約の相手方
日本通運株式会社
契約
平成16年4月、17年4月 随意契約
料金の支払額
14億2166万余円
(平成16、17両年度)
上記のうちクレーン作業料金等に係る支払額
2億3292万余円
 
節減できた支払額
8070万円
(平成16、17両年度)

1 年間輸送役務契約等の概要

(1) 輸送の概要

 海上自衛隊では、弾薬、部品等を部隊等に補給するなどのため、自らが保有する車両等により輸送するほか、運送事業者が行うトラック等による貸切輸送(以下「貸切トラック輸送」という。)、鉄道コンテナによる輸送(以下「鉄道コンテナ輸送」という。)、他の荷主の貨物と混載するトラック輸送(以下「特別積合せ輸送」という。)等を利用して輸送している。

(2) 契約の概要

 海上自衛隊補給本部では、平成16、17両年度に、運送事業者による輸送及びその輸送に伴い必要となるクレーン作業等を日本通運株式会社(以下「会社」という。)に年間を通じて行わせている(以下、この契約を「年間輸送役務契約」という。)。
 そして、補給本部及び33部隊等(注) は、必要の都度輸送方法を選定するなどし、年間輸送役務契約において定めた輸送方法ごとの単価及びクレーン作業料金等の単価に基づき計算した料金を記載した輸送役務発注書(以下「発注書」という。)を作成の上、会社に輸送を依頼し、補給本部は、会社からの請求書、部隊等から送付された発注書に基づいて、16、17両年度計14億2166万余円(依頼件数計16,996件)を会社に支払っている。

(3) 輸送方法の選定及びクレーン作業料金の計算方法

 海上自衛隊では、輸送方法については、輸送を依頼する各部隊等が貨物の到着期限までの日数、料金等を考慮して適切に選定することとしている。
 また、クレーン作業料金は、クレーンの種類、規格別に定めた1日当たり単価32,800円から168,800円と使用時間(作業時間と回送時間を合計した時間)などを基に計算し、危険品を取り扱う場合などには、危険品割増料金等を加算することとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 年間輸送役務契約は毎年度締結されており、貸切トラック輸送の料金、クレーン作業料金等の支払額は多額に上っている。
 そこで、経済性等の観点から、輸送方法は適切に選定されているか、クレーン作業料金の単価が市場の実勢を反映したものとなっているかなどに着眼して検査した。
 本院は、補給本部及び前記33部隊等のうち函館基地隊を除く32部隊等において会計実地検査を行い、前記の支払額計14億2166万余円(依頼件数計16,996件)について発注書等の書類により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、クレーン作業料金の単価の決定、危険品割増料金等の計算及び貨物の輸送方法の選定について、次のような事態が見受けられた。

(1) クレーン作業料金の単価の決定等

 補給本部では、16、17両年度に、クレーン作業料金を計2億0171万余円(依頼台数計1,607台)支払っており、この料金は会社から徴した見積資料に基づいて決定した単価により計算したものとなっていた。
 しかし、刊行物である積算参考資料にはクレーン作業料金の市場価格が掲載されており、本院が調査したところ、その価格は補給本部が会社から徴した見積資料により決定した単価と同様の条件により設定されていた。したがって、積算参考資料に掲載されている市場価格は、年間輸送役務契約におけるクレーン作業料金の単価の決定に当たり参考にすることができると認められた。これによればクレーン作業料金は、規格別に1日当たり単価31,900円から100,100円などとなり、年間輸送役務契約における単価に比べてごく一部を除き安価となっていた。
 また、危険品割増の対象時間外とされている回送時間を対象時間に含めるなどしていたため、危険品割増料金等が過大に計算されている事態も見受けられた。

(2) 輸送方法の選定

 鉄道コンテナ輸送は、貸切トラック輸送に比べて一般に中長距離輸送の場合に安価になるとされている。また、特別積合せ輸送は、貨物の寸法、重量等が条件に適合すれば利用でき、貸切トラック輸送に比べて安価となる。
 そこで、16、17両年度に貸切トラック輸送を利用した輸送(支払額計6億4597万余円、依頼件数計2,797件)について、経済的な輸送方法が選定されているか検査したところ、依頼件数140件、支払額3120万余円において、次のような事態が見受けられた。

ア 鉄道コンテナ内の余裕幅を適切に見込むなどして鉄道コンテナ輸送を選定すべきであったもの

(16、17両年度:依頼件数計94件、支払額計2436万余円)


<事例1>

 A部隊において、弾薬を収納した容器5個等(重量計4.9t)をB部隊に輸送(輸送距離1,258km)するに当たり、貸切トラック輸送を選定し、485,000円の料金を支払っていた。貸切トラック輸送を選定したのは、鉄道コンテナ輸送の場合には、上記貨物をコンテナに固定する際に前後左右にそれぞれ30cm程度の余裕を見込む必要があると想定し、これによれば10tコンテナが2個必要になるとして料金を比較したことによるものであった。
 しかし、本院が調査したところ、上記の貨物は10cm程度の余裕があればコンテナに固定することが可能であった。したがって、鉄道コンテナ輸送は5tコンテナ2個で料金382,410円となり、貸切トラック輸送に比べて102,590円安価となることから、鉄道コンテナ輸送を選定すべきであった。

イ 特別積合せ輸送を選定すべきであったもの

(16、17両年度:依頼件数計46件、支払額計683万余円)


<事例2>

 C部隊において、航空機用エンジン(重量0.3t、容積1.8m3 )をD部隊に輸送するに当たり、貸切トラック輸送を選定し、262,175円の料金を支払っていた。
 しかし、このエンジンは特別積合せ輸送の取扱条件(1個の重量が1t、容積が4.6m3 以内など)に適合するもので、特別積合せ輸送の料金を計算すると47,250円となり、貸切トラック輸送に比べて214,925円安価となることから、特別積合せ輸送を選定すべきであった。

 以上のように、クレーン作業料金の単価の決定に当たり市場価格が考慮されていなかったり、対象外の時間を含めて危険品割増料金等を計算していたり、経済的な輸送方法が選定されていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(節減できた支払額)

 上記のことから、積算参考資料を参考にクレーン作業料金の単価を決定するなどして修正計算すると、16、17両年度計1億3322万余円となり、前記の支払額2億0171万余円を6849万余円節減できたと認められた。
 また、貸切トラック輸送を利用した140件について、鉄道コンテナ輸送又は特別積合せ輸送を利用することとして料金を修正計算すると、16、17両年度計1898万余円となり、前記の支払額3120万余円を1221万余円節減できたと認められた。
 以上のことから、年間輸送役務契約について、16、17両年度計8070万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
ア 補給本部において、クレーン作業料金の単価の決定に当たり、市場価格についての把握、検討が十分でなかったこと
イ 補給本部において、発注書に作業時間等を記載することになっていなかったため、クレーン作業の危険品割増等の対象時間の確認が十分できなかったこと
ウ 輸送を依頼する各部隊等において、経済的な輸送方法についての検討が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、補給本部では、次のような処置を講じた。
ア クレーン作業料金の単価について、積算参考資料を参考にするなど市場価格を十分考慮した上で決定することとし、19年度契約から実施した。
イ 輸送を依頼する各部隊等に対し、18年9月及び11月に業務連絡を発し、発注書に作業時間、回送時間等を記載させ、補給本部において危険品割増等の対象時間を確認できるようにするなどした。
ウ 輸送を依頼する各部隊等に対し、18年7月及び10月に業務連絡を発し、輸送方法の選定について十分検討を行わせるため、その根拠資料を補給本部に提出させることとした。

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