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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第15 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

海上自衛隊で調達しているソノブイについて、品質保証期間を考慮して管理換の指示を行うなど適切な管理が行われるよう改善させたもの


(3) 海上自衛隊で調達しているソノブイについて、品質保証期間を考慮して管理換の指示を行うなど適切な管理が行われるよう改善させたもの

会計名及び科目
防衛省所管
一般会計
(組織)防衛本省
(項)防衛本庁
(項)装備品等整備諸費
平成17年度以前は、
内閣府所管
 
一般会計
 
(組織)防衛本庁
 
(項)防衛本庁
(項)装備品等整備諸費
部局等
海上幕僚監部(物品管理の総括部局)
海上自衛隊補給本部(物品管理の事務の総括部局)
5地方総監部(補給部隊の指揮監督部局)
ソノブイの概要
潜水艦を捜索するために航空機から海面に投下されるもので、投下後、海中に吊り下げられる受波器等により潜水艦の発する音の聴取等を行う器材
使用したソノブイの本数及び価格
(1)
6,387本
8億4274万余円
(平成14年度〜18年度)
保管していたソノブイの本数及び価格
(2)
433本
4454万余円
(平成18年度末)
上記のうち品質保証期間を超えていたソノブイの本数及び価格
(1)
(2)
2,929本
279本
4億1210万円
3106万円
 

1 ソノブイの概要

(1) ソノブイの用途等

 海上自衛隊では、国土を防衛するとともに、周辺海域における海上交通の安全を確保するため、領海内等を潜没航行する潜水艦を捜索する任務を有しており、これに必要な各種ソノブイを毎年度調達し、管理している。
 ソノブイは、潜水艦を捜索するために航空機から海面に投下される器材であり、投下後、海中に吊り下げられる受波器等により潜水艦の発する音の聴取等を行った後、一定時間経過後に自沈機構が作動して海中に沈下するものである(参考図参照)
 ソノブイを用いた潜水艦の捜索方法には、〔1〕固定翼しょう戒機(以下「しょう戒機」という。)から投下して、しょう戒機の機中で潜水艦の発する音を受信解析して捜索する方法と、〔2〕護衛艦搭載の回転翼しょう戒機(以下「しょう戒ヘリ」という。)から投下して、しょう戒ヘリと護衛艦が連携して捜索する方法とがある。

(2) ソノブイの調達及び管理

 海上自衛隊は、海上自衛隊物品管理補給規則(昭和56年海上自衛隊達第42号。以下「規則」という。)に基づきソノブイの必要な調達を行い、需給の均衡を図るなどしており、海上幕僚監部(海上幕僚長が物品管理官)が必要な数量を定め装備本部(平成19年9月1日以降は装備施設本部)に調達要求し、装備本部が製造会社と契約して、製造会社から各地の補給を担当する部隊(以下「補給部隊」という。)に納入させている。
 そして、補給部隊はソノブイを保管したり、これを使用する部隊(以下「使用部隊」という。)からの請求に基づき供用したりしている。すなわち、〔1〕しょう戒機を利用してソノブイを使用する場合は、しょう戒機が所在する航空基地の補給隊(航空群司令が分任物品管理官)が補給部隊、しょう戒機を運用する各航空隊が使用部隊となり、〔2〕しょう戒ヘリを利用してソノブイを使用する場合は、地方総監部の造修補給所(造修補給所長が分任物品管理官)が補給部隊、しょう戒ヘリを搭載する護衛艦が使用部隊となる。
 また、補給本部は、規則に基づき、ソノブイの良好な管理を図るとともに、納入後の補給部隊及び使用部隊(以下「各部隊」という。)の需給の均衡を図るため、補給部隊におけるソノブイの在庫量、供用数、異動の状況等を的確に把握し、補給部隊間の管理換等の指示を行うこととしている。そして、補給部隊では、納入、供用、管理換等のあった都度、物品管理簿に数量の増減等を記録している。

(3) 品質保証期間

 海上幕僚監部では、ソノブイの調達に関して作成した仕様書及び取扱いに関して定めた取扱説明書において、保管期間を3年と定めている。ソノブイは、上記の仕様書に基づき製造されていることから、3年を超えた場合、直ちに使用不能となるわけではないが、正常に作動する保証がなくなる(以下、この保管期間をソノブイの品質が保証されている期間という意味で品質保証期間という。)。
 また、取扱説明書においては、古い製造年月のソノブイから使用することについても定めている。
 そして、各部隊では、ソノブイに表示されている製造年月によって、品質保証期間を超えているかどうか把握し、管理できるようになっている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 海上自衛隊では、ソノブイを毎年度多数調達し、任務の遂行に支障がないように相当数を管理している。そこで、本院は、合規性、効率性等の観点から、調達したソノブイが3年の品質保証期間を超えないよう適切に管理されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、5地方総監部(注1) 及び4航空基地(注2) において会計実地検査を行い、しょう戒ヘリ及びしょう戒機の両方で使用することのできるソノブイのうち、既に製造が終了していて12年3月又は15年3月が最終納期であったソノブイを中心として、現在も製造されているソノブイについても対象として、現物の確認を行うとともに、納入、供用、管理換、使用等の状況を記録した物品管理簿等の書類により検査を実施した。

(検査の結果)

 検査の結果、5地方総監部の造修補給所からの供用を受け、14年度から18年度までの間にしょう戒ヘリで使用されたソノブイ6,387本(価格(物品管理簿上の価格をいう。以下同じ。)8億4274万余円)のうち、3年の品質保証期間を超えていたものが少なくとも2,929本(価格4億1210万余円)あると認められた。
 また、5地方総監部において18年度末時点で保管されていたソノブイ433本(価格4454万余円)のうち、3年の品質保証期間を超えていたものが279本(価格3106万余円)見受けられた。
 そして、これらの品質保証期間を超えていたソノブイ計3,208本の中には、製造後10年を経過していたものが66本含まれていた。
 上記の事態について、その内訳を判明した状況の別に示すと次のとおりである。

ア 既に使用されるなどしていたソノブイについて物品管理簿を確認したところ、最終納期の12年3月又は15年3月から3年を経過して使用されるなどしていたことから、品質保証期間を超えていたと認められたもの

2,084本(価格3億3400万余円)

イ 既に使用されていたソノブイについて物品管理簿を確認したところ、3年以上の間、納入等の実績がなく、その後使用されていたことから、品質保証期間を超えていたと認められたもの

415本(価格3777万余円)

ウ 各部隊において、保管していたソノブイについて、把握していなかった製造年月を確認し物品管理簿に記録したことから、その物品管理簿によって品質保証期間を超えていたことが確認できたもの

392本(価格4094万余円)

エ 舞鶴地方総監部では物品管理簿に製造年月を記録していたことから、その物品管理簿によって品質保証期間を超えていたことが確認できたもの

317本(価格3043万余円)


 一方、しょう戒機を運用し、調達したソノブイの大多数を使用している4航空基地においては、ソノブイの現物及び物品管理簿を確認したところ、品質保証期間を超えていたものは見受けられなかった。
 このように、5地方総監部における各部隊では、ソノブイの管理に当たり、3年の品質保証期間や古い製造年月のソノブイから使用することについて十分に考慮されていなかった。そして、補給本部において、需給の均衡を図るための管理換等の指示については行っていたが、ソノブイの品質保証期間を考慮した良好な管理を図るための管理換等の指示が十分でない状況となっていた。
 したがって、ソノブイについては、製造年月ごとに適切に管理し、品質保証期間内に使用する予定のないものは使用数の多い航空基地等の補給部隊へ管理換等を行うなどして、古い製造年月のソノブイから使用することとしていれば、品質保証期間を超えるような事態は生じなかったと認められた。
 なお、しょう戒ヘリ及びしょう戒機の両方で使用されるソノブイのうち、現在製造されているソノブイについても、品質保証期間を超えていたものが見受けられた。
 このように、海上自衛隊で調達したソノブイについて、品質保証期間を超えているものを把握することなく管理している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
ア 各部隊において、製造年月を把握した上で3年の品質保証期間を超えないよう管理することにしていなかったり、古い製造年月のソノブイから使用することについての認識が十分でなかったりしていたこと
イ 補給本部において、補給部隊にソノブイの製造年月による管理を行わせておらず、品質保証期間を考慮した良好な管理を図るための補給部隊間の管理換等の指示が十分行われなかったこと
ウ 海上幕僚監部において、品質保証期間を考慮した管理に対する認識、指導などが十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、補給本部では、品質保証期間を考慮して管理を適切に行うため、19年1月に補給部隊に対して通知を発し、同年3月から製造年月による管理を開始して管理換等の指示を適切に行えるようにする処置を講じた。また、海上幕僚監部では、同年9月に補給部隊に対して文書を発し、適切な物品管理についての指導を徹底する処置を講じた。

 5地方総監部  横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部
 4航空基地  鹿屋、八戸、厚木、那覇各航空基地

(参考図)

(参考図)