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  • 平成18年度|
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大学発事業創出実用化研究開発事業費助成金の経理が不当と認められるものの


(346) 大学発事業創出実用化研究開発事業費助成金の経理が不当と認められるもの

科目
(一般勘定)国庫補助金事業費
部局等
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構本部
助成の根拠
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号)
助成事業者(事業主体)
学校法人日本大学
助成事業
大学発事業創出実用化研究開発
助成事業の概要
大学等の研究成果を技術移転し、民間等による事業化を促進するため、民間事業者と連携して研究開発を行うもの
上記に対する助成金交付額
65,689,506円
(平成15年度〜17年度)
不当と認める助成金交付額
3,790,219円
(平成15年度〜17年度)

1 助成金の概要

(1) 大学発事業創出実用化研究開発事業費助成金の概要

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成14年法律第145号)等に基づき、民間事業者による大学等の研究成果の技術移転による事業化を促進することなどを目的として、大学発事業創出実用化研究開発事業費助成金(以下「助成金」という。)を交付している。
 この助成金は、大学等における研究成果を利用して、民間事業者と大学等が連携して行う事業化可能性探索のための実用化研究開発事業に要する経費の一部を助成するものである。
 助成金の交付を受けて本件助成事業を実施する者(以下「助成事業者」という。)は、大学発事業創出実用化研究開発事業費助成金交付規程(平成15年度規程第35号。以下「交付規程」という。)により、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号。以下「TLO法」という。)に定める特定大学技術移転事業の実施に関する計画について文部科学大臣及び経済産業大臣の承認を受けた者等とされている。そして、学校法人等がTLO法に基づく承認を受けたなどの場合には、当該学校法人等が助成事業者となり、その設置する大学等が研究開発を実施する大学等(以下「研究実施大学」という。)となる。
 また、助成事業者は、助成事業を遂行するため、助成金と民間事業者が提供する資金の総額の中から研究実施大学に研究開発に要する資金を提供することとなっている。そして、機構が交付する助成金の額は助成対象費用の3分の2以内とされている。

(2) 助成金の管理等

 機構は、助成金の交付を決定する場合、交付規程等に基づき、助成事業者に対し、次の条件を付している。
ア 助成事業者は、助成金の交付の決定の内容及びこれに付した条件に従い、善良な管理者の注意をもって助成事業を行うこと
イ 助成事業者は、助成事業の経理について助成事業以外の経理と明確に区分し、その収支の状況を会計帳簿によって明らかにしておくとともに、その会計帳簿及び収支に関する証拠書類を助成事業の完了した日の属する会計年度の終了後5年間保存しておくこと
 そして、助成事業者は、研究用消耗品等を購入する場合、業者から納品書、請求書等の証拠書類を徴し、これらの証拠書類を確認し、研究用消耗品等の納品検査を適切に行うことになっている。


2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構及び13助成事業者において、合規性等の観点から、交付された助成金は助成事業者において交付規程等に従って適正に管理されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、これらの助成事業者が行っている71助成事業について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、助成金の管理が適切でないと思われる事態があった場合には助成事業者に報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 機構は、助成事業者である学校法人日本大学に対し、同学校法人が設置する日本大学の医学部に所属する教授等の研究開発者によって実施された助成事業について、平成15年度から17年度までの間に助成金計65,689,506円を交付している。
 そして、同学校法人は、研究開発者から、15年度から17年度までの間に実験用動物を計10,079,936円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際に上記の実験用動物を購入した額は計3,791,436円にすぎず、差額の計6,288,500円については、研究開発者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書及び請求書を作成させ、これにより同学校法人に架空の取引に係る購入代金を支払わせた上で、その全額を業者に管理させ、その一部1,293,180円を納品書及び請求書に記載された内容とは異なる実験用動物の購入代金に充てていた。そして、助成期間終了時点において、残りの4,995,320円をなお業者に管理させていた。
 したがって、上記の事態は適切とは認められず、助成金が過大に交付されていて、これに係る助成金計3,790,219円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同学校法人において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、研究開発者において、助成金の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、機構において、助成事業者及び研究開発者に対して助成金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。