ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第23 独立行政法人雇用・能力開発機構|
  • 不当事項|
  • その他

中小企業基盤人材確保助成金の支給が適正でなかったもの


(354) 中小企業基盤人材確保助成金の支給が適正でなかったもの

科目
一般勘定
部局等
9都道府県センター
支給の相手方
24事業主
中小企業基盤人材確保助成金の支給額の合計
99,791,113円(平成16年度〜19年度)
不適正支給額
44,085,380円(平成16年度〜19年度)

1 助成金の概要

(1) 中小企業基盤人材確保助成金

 独立行政法人雇用・能力開発機構(以下「機構」という。)では、雇用保険(前掲「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」 参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、中小企業における良好な雇用の機会の創出の促進を図るため、中小企業基盤人材確保助成金(以下「助成金」という。)の支給に係る業務を行っている。この助成金は、新たな事業の分野への進出又は事業の開始(以下「新分野進出等」という。)に係る改善計画を都道府県知事に提出し、その認定を受け、新分野進出等に必要な労働者として、中小企業者の経営基盤の強化に資する労働者(以下「基盤人材」という。)を雇用保険の一般被保険者として新たに雇い入れ、又は当該基盤人材の雇入れに伴い当該基盤人材以外の労働者(以下「一般労働者」という。また、以下、「基盤人材」及び「一般労働者」を合わせて「対象労働者」という。)を雇用保険の一般被保険者として新たに雇い入れた中小企業者(以下「事業主」という。)に対し、雇い入れた対象労働者の人数に応じて所定の額を助成するものである。

(2) 助成金の支給

 助成金は、実施計画期間内に対象労働者を雇い入れた雇用保険の適用事業主が、所定の支給要件を満たす場合に、当該事業主に対し支給されることとなっており、その主な支給要件は次のとおりとなっている。
ア 対象労働者が、その雇入れ日の前日から起算して過去3年間に事業主の企業に勤務したことがない者であること
イ 事業主が、新分野進出等に伴う事業を開始した日から最初の中小企業基盤人材確保助成金支給申請書(以下「支給申請書」という。)の提出日までの間に施設等の費用として300万円以上を負担すること
ウ 対象労働者が、事業主の新分野進出等に係る部署において、助成金の支給終了後も引き続き継続して雇用することが見込まれる者であること
 そして、支給額は、対象労働者の雇入れの日(注1) から最初の6箇月を第1期、次の6箇月を第2期とする各期(以下「支給対象期」という。)について、対象労働者1人につき、原則として、基盤人材は70万円、一般労働者は15万円となっている。
 助成金の支給を受けようとする事業主は、改善計画の認定を受けた後に、機構の各都道府県センター(以下「都道府県センター」という。)に対し、新分野進出等に伴う事業の用に供するための施設等の計画、対象労働者の雇入れ見込み数等を記載した実施計画を提出し、その認定を受けることとなっている。また、支給対象期の末日の翌日から起算して1箇月以内に、都道府県センターに対し、施設等の内容及び費用の額、対象労働者の氏名等を記載した支給申請書及び所要の添付書類を提出することとなっている。そして、都道府県センターでは、支給申請書等の内容を審査した上、支給決定を行い、これに基づいて助成金の支給を行うこととなっている。

 対象労働者の雇入れの日  賃金締切日が定められている場合は、雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日


2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県センターのうち、12都道府県センターにおいて会計実地検査を行い、平成16年度から19年度までの間に助成金の支給を受けた事業主のうち155事業主を選定し、合規性等の観点から、これらの事業主に対する助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、事業主から提出された支給申請書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該都道府県センターに調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査したところ、9都道府県センター管内における24事業主に対する助成金の支給(支給額99,791,113円)のうち、44,085,380円が適正に支給されておらず、不当と認められる。
 上記の不適正支給の主な態様は、次のとおりである。
ア 過去3年間に事業主の企業に勤務したことがある者を対象労働者として申請した事業主に対して支給していたもの
イ 施設等の費用について、実際には300万円以上の支払をしていないのにこれを支払ったこととするなどして申請した事業主に対して支給していたもの
ウ 試行雇用奨励金(注2) の対象となっていて、助成金の支給終了後も引き続き継続して雇用することが必ずしも見込まれない者を対象労働者として申請した事業主に対して支給していたもの

 試行雇用奨励金  職業経験、技能、知識等から、公共職業安定所長が安定した職業に就くことが著しく困難であると認める者について、原則3箇月の試行雇用を実施した事業主に対して、厚生労働省が対象者1人当たり月額5万円(平成19年度は4万円)を支給するもの


 上記アの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A都道府県センターでは、事業主Bから、基盤人材1名及び一般労働者1名を平成16年7月に新たに雇い入れたこととした支給申請書等の提出を受け、これに基づき、助成金1,700,000円を支給していた。
 しかし、実際には、基盤人材は15年4月には事業主Bの企業に勤務していたことから助成金の対象とならず、これにより、基盤人材の雇入れに伴い雇い入れられた一般労働者も助成金の対象とならないことから、助成金1,700,000円が適正に支給されていなかった。

 このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったり、制度を十分に理解していなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、前記の9都道府県センターにおいて、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県センターごとに示すと次のとおりである。

都道府県センター名
本院の調査に係る事業主数
不適正受給事業主数
左の事業主に支給した中小企業基盤人材確保助成金
左のうち不適正中小企業基盤人材確保助成金
 
 
 
千円
千円
東京
20
2
13,742
8,421
岐阜
14
2
5,500
2,000
愛知
12
2
8,200
2,300
大阪
20
3
12,171
7,800
兵庫
20
8
32,127
13,364
岡山
12
3
7,750
3,550
福岡
8
1
5,100
900
長崎
6
2
13,500
4,050
宮崎
7
1
1,700
1,700
119
24
99,791
44,085