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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第24 独立行政法人国立病院機構|
  • 不当事項|
  • 予算経理

国又は独立行政法人国立病院機構の会計とは別途に経理していた資金から職員等に旅費を支給したり、正規の旅費を同資金に繰り入れたりするなどの不適正な会計経理を行っていたもの


(355) 国又は独立行政法人国立病院機構の会計とは別途に経理していた資金から職員等に旅費を支給したり、正規の旅費を同資金に繰り入れたりするなどの不適正な会計経理を行っていたもの

科目
経常費用
平成15年度以前は、
国立病院特別会計(療養所勘定)
 
(項)療養所経営費
(項)看護師等養成費
(項)施設整備費
部局等
独立行政法人国立病院機構帯広病院(平成16年3月31日以前は国立療養所帯広病院)
会計経理の内容
他機関との事務打合せ、各種学会への出席等のため出張する職員や他の医療機関から招へいする医師等に対して支給する旅費
不適正な会計経理の額
23,165,230円(平成13年度〜16年度)

1 旅費支給の概要

(1) 帯広病院の概要

 独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)は、平成16年4月1日、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)の規定により、国が国立病院及び国立療養所の所掌事務に関して有する権利及び義務のうち、国立ハンセン病療養所等に係るものを除き、一切を承継して設立された。
 機構の病院のうち帯広病院(16年3月31日以前は国立療養所帯広病院。以下「帯広病院」という。)は、循環器病、精神疾患、呼吸器疾患(結核)及び重症心身障害に関する専門医療を中心とした診療機能を備え、地域の基幹的役割を担っている。

(2) 旅費支給の概要

 帯広病院では、他機関との事務打合せ、各種学会への出席、研修への派遣等のため出張する職員や他の医療機関から招へいする医師等に対して、15年度以前は国立病院特別会計(療養所勘定)の(項)療養所経営費、(項)看護師等養成費等、16年度以降は機構の経常費用から、各種の旅費を支出している。
 そして、旅費を職員等に支給する手続については、15年度までは、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号)等、16年度以降は、独立行政法人国立病院機構旅費規程(平成16年規程第18号)等に基づき、次のように行うこととされている。
〔1〕 旅費の支給を受けようとする職員等は、所定の請求書に必要な書類を添えて、これを支出官等に提出する。
〔2〕 支出官等は、支出負担行為の確認や予算執行の管理を行うとともに、提出された請求書の内容を審査確認の上、職員等に旅費を支払う。
 また、国の会計において、債権者からの請求に基づき過年度に属する経費の支出(以下「過年度支出」という。)を行う場合は、会計法(昭和22年法律第35号)等の規定により、当該経費は現年度の歳出からこれを支出しなければならないなどとされている。
 なお、本院は、帯広病院の会計経理について平成14年度決算検査報告に不当事項として掲記している。すなわち、同病院は、常勤の医師1名について、勤務実績がないのに給与等6,488,981円を支出し、これを当該医師に支払わずに別途に経理し旅費等に充てていたとしていた(以下、このように別途に経理していた資金を「名義借り資金」という。)。そして、本院が不当と認めた額については、16年3月16日までに同病院関係者から国に弁済を受けるなどしている。


2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、帯広病院が13年度以降に支出した旅費を対象として、合規性等の観点から、支出等の会計経理が会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、在庁時に旅費請求書等の証拠書類により検査した後、帯広病院において旅行命令簿等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、帯広病院では、国又は機構の会計とは別途に経理していた資金から職員等に旅費を支給したり、正規の旅費を同資金に繰り入れたりするなどの不適正な会計経理を行っていた。これを態様別に示すと、次のとおりである。

ア 別途経理資金について

 帯広病院では、13年4月から機構設立後の16年6月までの間において、赴任旅費を除くすべての旅費について、国又は機構の会計とは別途に経理していた資金(以下「別途経理資金」という。)から職員等に支給していた。また、正規の旅費が支出されても、職員等に当該旅費を支給することなく直接別途経理資金へ繰り入れていた。
 すなわち、帯広病院では、13年4月から16年6月までの間に支出した正規の旅費877件、計21,937,850円を、すべて別途経理資金を介して経理しており、19年6月の会計実地検査時点においても、計2,911,337円の別途経理資金を保有していた。

イ 旅費の過年度支出について

 帯広病院では、複数の医師に係る11年1月から10月までの間の出張について、当時それらの旅費相当額を名義借り資金から支給していたが、正規の旅費は支出していなかった。そして、15年度に至り、上記の出張の用務内容からみて正規の旅費を支出することが可能であるとして、一括して旅費の過年度支出の手続を執り、16年3月16日に計1,227,380円の旅費を支出していた。
 しかし、この過年度支出を行った旅費は、上記の医師に支給されることなく、前記の平成14年度決算検査報告で本院が不当と認めた額の弁済金に充当されるなどしていた。

 上記のア及びイの事態は、会計法令等からみて適正を欠くものであり、13年4月から16年6月までの間に不適正に経理された旅費の額計23,165,230円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、帯広病院において、旅費の予算執行等に当たり会計法令等に基づき適正な会計経理を行う認識が欠けていたことなどによると認められる。