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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第39 国立大学法人東京医科歯科大学|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

業務の請負、物品の賃貸借等の契約の締結に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、契約方式を一般競争契約に改めて契約事務を適切に実施するよう改善させたもの


業務の請負、物品の賃貸借等の契約の締結に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、契約方式を一般競争契約に改めて契約事務を適切に実施するよう改善させたもの

科目
経常費用
部局等
国立大学法人東京医科歯科大学
契約名
洗濯業務一式請負契約等4件
契約の概要
附属病院の運営等に当たり、職員が着用する白衣等の洗濯業務請負、入院患者寝具の賃貸借、ベッドメーキング業務の請負及び郵便物運搬等の業務委託を行うもの
適切な契約事務を実施する必要があると認められた支払額
1億8046万円(平成18年度)

1 契約等の概要

 国立大学法人東京医科歯科大学(以下「東京医科歯科大学」という。)では、その設置する医学部附属病院及び歯学部附属病院(以下、これらを合わせて「附属病院」という。)において、臨床医学の教育及び研究を行うほか、保険医療機関として患者の診療を行っている。そして、附属病院の運営等に必要な院内の環境整備、受付・案内などの患者へのサービス等の業務の一部については、毎年、随意契約によりこれを業者に請け負わせるなどして実施している。
 東京医科歯科大学の契約事務は、国立大学法人東京医科歯科大学会計規程(平成16年規程第3号。以下「会計規程」という。)等に基づき行うこととされている。この会計規程等によると、業務の請負契約等を締結する場合には、原則として一般競争に付することとされているが、契約の性質又は目的が競争を許さないときなどの場合には、指名競争又は随意契約によることができることとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法) 

 本院は、東京医科歯科大学において、合規性、経済性等の観点から、契約方式の決定等の契約事務が会計規程等に基づき適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかに着眼し、東京医科歯科大学が平成18年度に随意契約により締結している契約のうち、1件の予定価格が100万円以上の役務契約等186件(支払額23億8366万余円)を対象として、契約書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に東京医科歯科大学に事態の詳細について報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、上記186件の契約のうち、〔1〕洗濯業務一式請負契約(18年度支払額1億1381万余円)、〔2〕入院患者寝具賃貸借契約(同3945万余円)、〔3〕ベッドメーキング業務請負契約(同1246万余円)及び〔4〕 作業員業務委託契約(同1472万余円)の4件(支払額計1億8046万余円)において、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、東京医科歯科大学では、上記〔1〕、〔2〕、〔3〕及び〔4〕の各契約については、次の理由により、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、財団法人和同会(以下「和同会」という。)との随意契約によっていた。
ア 上記〔1〕、〔3〕及び〔4〕の業務の遂行に当たっては、病院業務の特殊性を熟知し、附属病院の事情に精通していることが要件となるが、この要件を満たしているのは、病院業務に豊富な経験と実績のある要員を数多く擁するなどしている和同会しかない。
イ 上記〔2〕の業務の遂行に当たっては、附属病院で使用する寝具を供給でき、かつ緊急を要する事態にも対応できるとともに、寝具の管理に信頼がおけることが要件となるが、この要件を満たしているのは、従来から契約実績がある和同会しかない。
 しかし、これらの業務の実施状況をみると、和同会は、業務の実施に必要な設備、物品等を一部を除いて保有しておらず、〔4〕を除く〔1〕、〔2〕及び〔3〕の大半の業務を下請先等に実施させて、自らは下請先との連絡調整、経理等の業務を行っている程度であった。
 また、〔4〕については、その業務内容は、附属病院内での郵便物や消耗品の運搬、蛍光管や電球の取替え等の簡単な作業であり、殊更に特殊な技術等を必要とするとは認められなかった。

<事例>

 和同会では、上記の〔1〕洗濯業務一式請負契約について、同会の業務部寝具係の11名で当該業務を実施しているとしていたが、実際には、当該業務を下請先であるA社及びB社に実施させており、同会では職員2名が、下請先との連絡調整、請求書の発行事務などの経理事務等に従事しているにすぎなかった。
 そして、同会では、東京医科歯科大学から支払われた1億1381万余円のうち、1億0295万余円をA社に、588万余円をB社に、それぞれ支払っていた。
 このように、和同会において請負等業務の大半を下請先等に実施させていて当該業務の履行能力が十分でなく、また、業務内容からみて他の業者でも実施できる業務であると認められるにもかかわらず、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、和同会と随意契約を締結している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、東京医科歯科大学において、契約事務の執行に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、東京医科歯科大学では、前記4件の契約については、今後締結する契約から一般競争契約によることとし、19年9月から仕様書の策定等の一般競争契約に移行するために必要な作業を開始し、同年12月から順次一般競争入札を実施することとする処置を講じた。