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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

国土交通省において、地方公共団体における国土交通省所管の国庫補助事業について、談合等があった場合の違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還に係る取扱いを定め、周知徹底を図るよう改善させたもの


 国土交通省において、地方公共団体における国土交通省所管の国庫補助事業について、談合等があった場合の違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還に係る取扱いを定め、周知徹底を図るよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)国土交通本省
(項)急傾斜地崩壊対策等事業費
(項)海岸事業費
(項)住宅建設等事業費
(項)都市計画事業費
(項)河川等災害復旧事業費
(項)河川等災害関連事業費
平成13年1月5日以前は、
 
(組織)国土庁
(組織)運輸本省
(組織)建設本省
 
(項)離島振興事業費
(項)海岸事業費
(項)急傾斜地崩壊対策等事業費
(項)海岸事業費
(項)住宅建設等事業費
(項)市街地整備事業費
(項)都市計画事業費
(項)河川等災害復旧事業費
道路整備特別会計
(項)道路事業費
(項)離島道路事業費
(項)道路環境整備事業費
(項)地方道路整備臨時交付金
(項)街路事業費(平成15年度まで)
治水特別会計(治水勘定)
(項)河川事業費
(項)河川総合開発事業費
(項)砂防事業費
港湾整備特別会計(港湾整備勘定)
(項)港湾事業費
(項)離島港湾事業費
部局等
国土交通本省(平成13年1月5日以前は国土庁、運輸本省及び建設本省) 16府県
事業主体
県10、市13、計23事業主体
違約金等の概要
談合等があった場合に、事業主体が、これによる損害の回復を図るため契約額の一定割合などを受注者に請求し、その返還を受けるもの
指摘の対象となった違約金等収納済額
18億7847万余円
(平成15年度〜18年度)
未返還となっている上記に係る国庫補助金相当額
8億3156万円
違約金等の請求を行っていない契約額
171億6082万余円
(平成9年度〜15年度)
上記に係る国庫補助金相当額
81億3838万円

1 談合等に係る違約金等の概要

(1) 公共工事等における談合等の発生

 国土交通省では、国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備等を図るため、多数の事業を実施してきており、その一環として、道路、河川、下水道等の建設に係る公共工事等を行う地方公共団体に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。
 これら地方公共団体を事業主体として発注される公共工事等において、工事等の受注者及び受注者以外の入札参加業者等(以下、「受注者等」という。)が、入札に当たり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し、談合を行ったとして公正取引委員会から排除措置命令等を受けたり、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3に規定する競売入札妨害罪、談合罪などの容疑で逮捕等されたりする事態(以下、法律の規定に違反するこれらの行為を「談合等」という。)が数多く発生している。

(2) 談合等の損害の回復

 事業主体では、上記のように、公共工事等の入札において談合等があった場合には、談合等によって形成された落札価格と純然たる競争状態で形成されたであろう価格との間に生じる差額を、受注者等の不法行為によって生じた損害あるいは受注者の不当利得であるとして、損害賠償又は不当利得返還請求の訴訟を提起してきたところであり、これにより裁判所が損害を認定した判例の蓄積も進んでおり、認定された損害額は契約額の5%、7%、10%などとなっている。
 そして、近年では、すべての都道府県や政令指定都市で、談合等があった場合に生じた損害の回復を容易にするとともに、談合等に対する抑止効果を期待して、契約書等に、独占禁止法第3条の規定に違反するとして公正取引委員会から排除措置命令又は課徴金納付命令を受け、これらが確定したときなどには、受注者は契約額の一定割合を違約金として支払わなければならないとする条項(以下「違約金条項」という。)をあらかじめ設定しており、その他の事業主体でも違約金条項を導入するものが増えてきている。これにより、実際に、談合等の事実が確定するなどした場合には、上記のような訴訟を提起することなく、契約額の一定割合を受注者に違約金として請求し、その返還を受けている状況である。この違約金の額は契約額の10分の1から10分の2の額となっているものが一般的であるが、事業主体によってはこれ以上に引き上げている事例も見受けられる。
 また、契約書等に違約金条項がない場合でも、受注者等の談合等を理由として、損害額の調査を行い、談合等が行われていた期間と談合等が行われなくなった後の期間の平均落札率の差を損害率と考えることなどによって算定された額(以下、違約金条項によらず請求する損害額を「損害金」という。)を請求している事業主体も見受けられる(以下、違約金と損害金を合わせて「違約金等」という。)。
 この違約金等については、談合等の事実が確定することを条件に請求しているものが一般的である。
 これらの請求によって事業主体に収納される違約金等は、談合等があったと認定される期間が数年間に及び、請求の対象とされる公共工事等が百件以上に上る場合も見受けられ、この場合、対象となる受注者数が数十社以上となることなどから、その金額は多額なものとなっている。

(3) 違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還状況

 国土交通省では、所管する国庫補助事業において、違約金等が事業主体に収納された場合、これに係る国庫補助金相当額は過大な交付であるとして、当該事業主体から自主的な返還の申出を受けた場合に、国庫補助金相当額の国への返還を受けているところである。
 この返還について、同省が把握している平成13年度から18年度までの実績をみると、毎年度、公共下水道、都市公園、港湾整備等の事業について返還の実績があり、その合計は8事業主体による14件(国へ返還された国庫補助金相当額1億9382万余円)となっている。