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  • 平成19年度|
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研究拠点形成費等補助金(研究拠点形成費)の経理が不当と認められるもの


(53) 研究拠点形成費等補助金(研究拠点形成費)の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)文部科学本省  (項)科学技術振興費
部局等 文部科学本省
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
大学長及び研究グループ(事業推進担当者 11)
補助事業 研究拠点形成費等補助
補助事業の概要 大学院研究科等の専攻等が世界的な研究教育拠点を形成するために必要な事業を実施するもの
上記に対する国庫補助金交付額 195,800,000円 (平成17年度)
不当と認める国庫補助金交付額 7,413,000円 (平成17年度)

1 補助金の概要

(1) 研究拠点形成費等補助金(研究拠点形成費)の概要

 文部科学省は、平成14年度から、世界最高水準の大学づくりを推進して、我が国の科学技術の水準の向上及び高度な人材育成に資することを目的として、研究拠点形成費等補助金(16年度以前は研究拠点形成費補助金。以下「補助金」という。)を交付している。
 この補助金は、大学院研究科等の専攻等が世界的な研究教育拠点を形成するために必要な事業(以下「拠点プログラム」という。)を実施するための経費について、代表者としての大学長及び補助事業の実施に中心的な役割を果たす研究者である事業推進担当者に対して補助するものである。
 また、この補助金の補助対象経費は設備備品費、旅費、人件費、事業推進費その他文部科学省が認めた経費等とされていて、このうち事業推進費は消耗品費や雑役務費等とされている。

(2) 補助金の管理方法

 交付された補助金の管理方法については、「研究拠点形成費等補助金交付要綱」(平成14年4月文部科学大臣決定。以下「交付要綱」という。)等により、事業推進担当者が、その所属する大学の事務局に委任して行うこととされている。そして、委任を受けた事務局は補助金及び納品書、請求書等の関係書類の管理を適切に行うこととされている。

(3) 補助事業の期間等

 交付要綱等により、補助金による研究の実施期間は、原則として5年とされている。しかし、補助金の交付は年度ごとに行われるため、補助の対象となるものは、支払の対象となる行為が交付決定のなされた国の会計年度中(当該年の4月1日から翌年の3月31日まで)に発生かつ終了するものに限られることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、交付された補助金が大学において交付要綱等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、補助金が交付されている91大学のうち、36大学において会計実地検査を行った。そして、これらの36大学が行っている171の拠点プログラムについて納品書、請求書等の書類により検査するとともに、補助金の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、大学に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 文部科学省は、15年度から19年度までの5年間を研究期間として、国立大学法人東京大学(16年3月31日以前は東京大学。以下「東京大学」という。)大学院医学系研究科内科学専攻における拠点プログラムを採択している。そして、同省は、東京大学の学長及び11名の事業推進担当者に対して17年度に、補助金195,800,000円を交付しており、東京大学の事務局が補助金の管理を行っている。
 そして、東京大学の事務局は、本件補助事業の事業推進担当者である教授の1人から17年4月から11月までの間に納入されたとする実験用動物のマウスに係る納品書、請求書等の提出を受けて、消耗品費として業者に7,413,000円を17年12月及び18年1月に支払っていた。
 しかし、実際に上記の実験用動物のマウスが納品されたのは15年5月から16年1月までの間であり、15年度に納品されたものであることから、マウスの購入経費7,413,000円は本件17年度補助事業の補助対象経費とは認められない。
 したがって、適正な補助対象経費に基づいて補助金の額を算定すると17年度の補助対象事業費は188,387,000円となり、補助金7,413,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業推進担当者において、補助金の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、補助金を管理する東京大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、文部科学省において、事業推進担当者及び大学に対して補助金の適正な執行について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。