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労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(54) 労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(徴収勘定) (款)保険収入
(項)保険料収入
部局等 12労働局
保険料納付義務者 徴収不足があった事業主数333事業主
徴収過大があった事業主数130事業主
徴収過不足額 徴収不足額 320,681,376円 (平成17年度〜20年度)
徴収過大額 83,332,874円 (平成17年度〜20年度)

1 保険料の概要

(1) 労働保険

 労働保険は、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険を総称するものである。このうち、〔1〕 労災保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対する療養補償給付等を行う保険であり、原則として、事業所に使用されるすべての労働者が対象となる。また、〔2〕 雇用保険は、労働者の失業等に対する失業等給付、雇用安定事業等を行う保険であり、常時雇用される一般労働者のほか、事業所で雇用されるいわゆるパートタイム労働者等のうち1週間の所定労働時間が20時間以上で引き続き1年以上雇用されることが見込まれるなどの要件を満たす労働者などが被保険者となる。

(2) 保険料の徴収

 保険料は、〔1〕 労災保険分については事業主が負担して、〔2〕 雇用保険分については、失業等給付に充てる部分を労働者と事業主とが折半して負担し、雇用安定事業等に充てる部分を事業主が負担して、〔1〕 と〔2〕 のいずれも事業主が納付することとなっている。
 保険料の納付は、原則として次のとおり行われることとなっている。
ア 毎年度の初めに、事業主は、都道府県労働局(以下「労働局」という。)に対して、その年度の労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率(注) を乗じて算定した概算保険料を申告して、納付する。
イ 次の年度の初めに、事業主は、労働局に対して、前年度に実際に支払った賃金総額に基づいて算定した確定保険料申告書を提出する。
ウ 労働局は、この申告書の記載内容を審査して、その結果に基づき保険料の過不足分が精算される。
 この労働保険の保険料の平成19年度の収納済額は3兆4908億余円に上っている。

 保険料率  労災保険率と雇用保険率に分かれており、それぞれ次のとおりである。
〔1〕  労災保険率は、労災保険の適用を受けるすべての事業の過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率等を考慮して定められており、事業の種類ごとに平成17年度の場合は最低1000分の5から最高1000分の129、18年度以降の場合は最低1000分の4.5から最高1000分の118となっている。
〔2〕  雇用保険率は、失業等給付、雇用安定事業等に要する費用を考慮して定められており、17、18両年度の場合は1000分の19.5(ただし、農林、水産等の事業は1000分の21.5、建設の事業は1000分の22.5)、19年度以降の場合は1000分の15(ただし、農林、水産等の事業は1000分の17、建設の事業は1000分の18)となっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 近年、事業所で雇用されるいわゆるパートタイム労働者等が増加していることから、本院は、全国47労働局のうち、12労働局において会計実地検査を行い、管内の事業主のうち、これらの労働者を雇用している割合が高いと思われる事業主等594事業主を選定して、合規性等の観点から、当該事業主の雇用する労働者の保険加入が適正になされているかなどに着眼して、17年度から20年度までの間における各労働局の保険料の徴収の適否について、事業主から提出された確定保険料申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 徴収過不足の事態

 検査の結果、上記594事業主のうち、333事業主について徴収額が320,681,376円不足しており、130事業主について徴収額が83,332,874円過大となっていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主が確定保険料申告書を提出するに当たり、制度を十分理解していなかったり、計算誤りをしたりなどしていて、賃金総額の記載が次のように事実と相違するなどしていたのに、前記の12労働局において、これに対する調査確認が十分でなかったことによると認められる。
ア 雇用保険分の保険料の算定において、同保険の加入要件を満たすパートタイム労働者等を保険加入させていなかったため、その賃金が算入漏れとなっていた。
イ 労災保険分の保険料の算定において、出向労働者に支払われた賃金は出向先の賃金総額に含めて保険料を算定すべきところ、出向先においてその賃金が算入漏れとなっていた。
 上記アの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A労働局は、貨物取扱業を営む事業主Bから、平成19年度の労働保険の保険料について、雇用保険の被保険者80人に対して支払った賃金総額は340,675千円、その雇用保険料は5,110,125円であるとした確定保険料申告書の提出を受けて、これに基づき、当該雇用保険料額を徴収していた。
 しかし、事業主Bは、雇用保険加入要件を満たすパートタイム労働者等117人を雇用保険に加入させておらず、確定保険料申告書において、これらの者に対して支払った賃金362,212千円を賃金総額に算入していなかった。このため、雇用保険料5,433,180円が徴収不足となっていた。
 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は還付決定の処置が執られた。
 これらの徴収不足額及び徴収過大額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名   本院の調査に係る事業主数   徴収不足があった事業主数
徴収過大があった事業主数
  徴収不足額
徴収過大額(△)
千円
北海道   74   40
18
  29,663
△3,922
福島   34   17
8
  13,623
△17,583
埼玉   58   32
8
  16,822
△14,108
東京   98   54
26
  70,394
△22,900
神奈川   74   41
8
  40,666
△1,878
愛知   64   41
16
  53,418
△3,221
大阪   63   36
12
  48,524
△6,595
和歌山   32   22
9
  18,187
△2,515
鳥取   22   10
6
  4,313
△2,430
福岡   31   7
7
  3,664
△3,534
佐賀   23   17
7
  4,330
△774
鹿児島   21   16
5
  17,073
△3,866
  594   333
130
  320,681
△83,332

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、事業主に対する関係法令等の周知徹底等を図って適正な申告・納付を励行させるとともに、確定保険料申告書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。