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  • 平成19年度|
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報償費の執行について、領収証書等の証拠書類が保存されていないなどのため、その使途等を確認できない状況となっていて、会計経理が著しく適正を欠いているもの


(60) 報償費の執行について、領収証書等の証拠書類が保存されていないなどのため、その使途等を確認できない状況となっていて、会計経理が著しく適正を欠いているもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)厚生労働本省  (項)厚生労働本省
部局等 厚生労働本省
報償費の概要 労使紛争の動向等に関する情報を収集するための経費
報償費の執行額 5,100,000円 (平成13年度〜17年度)
不当と認める報償費の執行額 5,100,000円 (平成13年度〜17年度)

1 報償費の概要

(1) 報償費の概要

 厚生労働本省(以下「本省」という。)は、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)等の規定に基づき、労働組合その他労働に関する団体に係る連絡調整及び労働関係の調整等に関する事務(以下「労政事務」という。)を所掌しており、その事務を政策統括官に分掌させている(以下、労政事務を分掌している政策統括官を「政策統括官(労働担当)」という。)。
 そして、本省は、労政事務の一環として、労使紛争の動向等に関する情報を機動的・効果的に収集するために必要な報奨金、報償物品購入費及び会合費に充てるための経費として報償費を執行している。

(2) 報償費の予算額及び決算額

 平成13年度から19年度までの間における報償費の予算額及び決算額は、次表のとおりとなっている。

 報償費の予算額及び決算額 (単位:円)
年度 予算額 決算額
平成13 388,000 300,000
14 1,264,000 1,200,000
15 1,264,000 1,200,000
16 1,264,000 1,200,000
17 1,224,000 1,200,000
18 1,296,000 0
19 1,440,000 0
8,140,000 5,100,000

(3) 報償費の会計手続等

 本省は、報償費の支払、管理等に関する事務処理要領等を定めておらず、毎年度、報償費の執行等について、政策統括官(労働担当)付労政担当参事官等を経て、政策統括官(労働担当)が決裁を行い、これに基づいて事務処理等を行っている。同決裁によると、政策統括官(労働担当)が取扱責任者として、また、政策統括官(労働担当)付政策統括官書記が取扱者として、それぞれ報償費の支払、管理等に関する事務処理等を行うこととなっている。
 報償費の会計手続及び上記の決裁に基づく支払の流れは、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  取扱責任者は、報償費の支出に係る請求書を支出負担行為担当官の代行機関に提出する。
〔2〕  支出負担行為担当官の代行機関は、支出負担行為を行い、これに基づき官署支出官の代行機関が支出決定を行う。
〔3〕  当該支出決定に基づき、センター支出官から日本銀行を経て、取扱責任者名義の銀行口座に資金が振り込まれる。
〔4〕  取扱責任者は、取扱者に資金を管理させるとともに、取扱者を経由して報償費の支払を行い、役務提供者等の支払先から領収証書を徴する。

(4) 報償費に係る計算証明

 国の報償費は、支出官から取扱責任者への資金交付をもって会計法令上の支出事務は終了したこととなるが、取扱責任者が交付を受けた報償費は依然として公金であり、取扱責任者及び取扱者は報償費をその支出目的に従って適正に使用しなければならない。
 したがって、取扱責任者から取扱者を経由しての役務提供者等への報償費の支払は、会計検査院法第22条第1号の規定による本院の検査対象となり、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)等により、役務提供者等の領収証書等を、証拠書類として本院に提出することとなっている。しかし、報償費に係る領収証書等のうち、情報収集、犯罪の捜査活動等に使用される経費で、その経費の性質上、使途の詳細を明示して計算証明することが国の機密保持上適当でないと認められるものについては、同規則の規定に基づき、府省等からの申請を受けて、当該領収証書等を本院から要求があったときに提出することとする証明方法が特に認められている。
 そして、本院は、本省からの申請を受けて、報償費に係る計算証明のうち「労働行政の協力者への謝金に係るもの」については、使途等を確認することができるように役務提供者等の領収証書その他の証拠書類をすべて整備するなどして、本院の検査に支障がないようにする旨の条件を付した上で、計算証明規則の規定に基づく証拠書類の手元保管の特例を承認してきたところである。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、報償費の会計経理が適正に行われているかに着眼して、本省において、13年度から17年度までの間に執行された報償費を対象として、現金出納簿等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 報償費の使途等に関する証拠書類等について

 報償費の使途について、本省は厚生労働行政の協力者に対する謝金として支払っているとしていた。そこで、本院が謝金支払に係る領収証書等の提示等を求めたところ、本省は、13年度から16年度までの分については謝金の支払相手先の氏名は不詳であるとして、領収証書を提示しなかった。また、17年度分については複数の支払相手先の氏名を示して当該謝金を受領した旨の受領書を提出した。
 そこで、本省を通じて、これら17年度分の支払相手先に対して、報償費を受領した事実の有無等に関する調査を実施したところ、いずれも、本省から報償費を受領していない旨の回答であった。ただし、これらの者によると、本省と意見交換等の会合を持ったことはあるとしていた。

イ 報償費の使途等に関する取扱責任者等からの聴取内容について

 上記の検査結果を踏まえて、本院は、13年度から17年度までの報償費の取扱責任者等に対して、報償費の使途等について聴取する方法等により検査を行った。その結果は、おおむね次のとおりである。

(ア) 取扱責任者からの聴取内容

 取扱責任者は、労使紛争の動向等についての情報収集は政策立案のために重要であり、そのための経費として報償費の存在は認識していたが、経理処理は取扱者等が行っており、自らが取扱責任者であるという認識はなく、経理処理等に関する決裁や書類の作成のうち政策的な判断を必要としないものは、政策統括官(労働担当)付政策統括官書記が適正にこれを行うことを前提にして、慣習により同者に押印を任せていたとしている。

(イ) 取扱者からの聴取内容

 取扱者は、厚生労働行政の協力者に謝金を支払ったとする関係書類に自らの印及び取扱責任者の印を押していたが、実際には謝金を支払っておらず、また、報償費の使途として情報収集のための会合に係る費用として支払った認識はあるが、裏付けとなる領収証書等の証拠書類は一切残っていないので証明できないとしている。そして、17年度においては、本省の内部監査で報償費の使途に関する証拠書類を整備するよう指導されたために、協力者から謝金支払の受領書を徴したこととして、事実と異なる内容の受領書を作成したとしている。
 以上のとおり、報償費の取扱責任者は自らが取扱責任者であることを認識せずに、経理処理を取扱者等に任せていた。また、取扱者は事実と異なる内容の関係書類に自らの印及び取扱責任者の印を押すなどして、謝金を支払っていないにもかかわらず支払ったこととしていた。そして、報償費の使途については、取扱者からの聴取によれば、情報収集のための会合に係る費用に充てたとしているが、裏付けとなる領収証書等の証拠書類が一切保存されていないことから、本院はこれを確認することができなかった。
 このように、報償費の執行について、領収証書等の証拠書類が保存されていないなどのために、その使途等を確認できない状況となっており、13年度から17年度までの間に執行された報償費計5,100,000円に係る会計経理が著しく適正を欠いていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、取扱責任者等において、報償費の会計経理を適正に行うことに対する認識が著しく乏しかったこと、また、本省において、前記のとおり、報償費について通常の計算証明の例外として特例の承認を受けて、その条件として領収証書等の証拠書類を整備することなどが求められているにもかかわらず、報償費の支払、管理等に関する事務処理要領等を定めていないなど、取扱責任者等の関係者に対する報償費の適正な執行についての周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
 なお、本省は、本院の検査状況を踏まえた当面の措置として、18、19両年度における報償費の予算執行を見合わせて、当該予算額の全額を不用とした。そして、本院の上記の検査結果並びに近年における社会情勢及び労働情勢の変化を踏まえて、19年度限りで当該報償費の制度を廃止した。
 また、本件に関しては、会計経理が著しく適正を欠いていたことを踏まえて、関係者が13年度から17年度までの執行額に相当する額を国庫に納入している。