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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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職業転換対策事業の実施に当たり、職場適応訓練の要件を満たしていない事業主を選定していたなどのため、職業転換訓練費負担金が過大に交付されているもの


(117) 職業転換対策事業の実施に当たり、職場適応訓練の要件を満たしていない事業主を選定していたなどのため、職業転換訓練費負担金が過大に交付されているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)職業転換対策事業費
部局等 厚生労働本省
国庫負担の根拠 雇用対策法(昭和41年法律第132号)
補助事業者
(事業主体)
香川県
国庫負担対象事業 職業転換対策事業
国庫負担対象事業の概要 就職が困難な求職者の雇用を促進するために、事業所において訓練を行うもの
事業費 103,046,940円 (平成13年度〜19年度)
上記に対する国庫負担金交付額 51,523,470円
不当と認める事業費 8,373,030円 (平成14年度、16年度〜19年度)
不当と認める国庫負担金交付額 4,186,515円 (平成14年度、16年度〜19年度)

1 職業転換訓練費負担金の概要

(1) 職業転換訓練費負担金の概要

 職業転換訓練費負担金は、都道府県が、雇用対策法(昭和41年法律第132号)、厚生労働省が定めた職場適応訓練実施要領(昭和56年職発第320号・訓発第124号。以下「実施要領」という。)等に基づき、障害者、高年齢者等就職が困難な求職者の職場適応訓練(以下「職適」という。)を事業主に委託して実施する場合に、国がその訓練費(以下、職適の訓練費を「職適訓練費」という。)の2分の1を負担するものである。

(2) 職適の実施

 職適は、職適を受ける者(以下「訓練生」という。)に対して、事業所において、当該事業所の業務に係る作業についての訓練を行い、もって作業の環境に適応することを容易にさせることを目的として実施されるものである。
 香川県は、職適訓練費の支給要件、実施手続等を定めた実施要領に基づき職適を実施しており、その実施手続はおおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  香川県は、障害者、高年齢者等就職が困難な求職者のうち、香川労働局(以下「香川局」という。)管内の高松公共職業安定所(以下「高松安定所」という。)等が職業相談等を行った上で職適を受けさせることが適職に就かせるために必要と認めて受講指示を行った求職者について、高松安定所等から職場適応訓練受講指示通知書(以下「受講指示書」という。)により氏名、訓練期間等の連絡を受ける。また、高松安定所等は、職適を実施する事業主を選定して、事業主から提出された職場適応訓練受託申込書に、職適を実施する事業主として適当である旨の意見を付して香川県に提出する。
〔2〕  香川県は、事業主と委託契約を締結する。そして、事業主は、香川県が定める訓練項目、訓練時間配分等の基準に基づき、訓練生の知識、技能等の状況及び当該事業所の業務に係る作業内容に応じた訓練計画を定めて、事業所の従業員が指導員として計画的に指導、助言を行うことにより職適を実施する。
〔3〕  香川県は、職適が修了した事業主に対して、職場適応訓練実績報告書(以下「実績報告書」という。)を高松安定所等の意見を付した上で提出させる。
 また、職適訓練費は、事業主に支給する事業所謝金(訓練生1人1月当たり24,000円。平成15年3月以前は24,100円)と、訓練生に支給する訓練手当(注) 等から成っており、香川県は、実施手続に基づいて職適が実施された場合に、事業主及び訓練生の請求に基づき支給することとしている。

 訓練手当  基本手当、技能習得手当(受講手当、通所手当)及び寄宿手当の3種類がある。このうち、基本手当は、職適を受けた期間の日数に応じて支給され、訓練生の居住地により日額が異なり、高松市の場合は日額3,930円(平成15年3月以前は3,940円)となっている。受講手当は、受講日数に応じて支給され、日額500円(15年4月以前は600円)となっている。通所手当は、訓練生の居住地から職適を行う施設までの通所に要する運賃等である。

2 検査の結果

 本院は、香川県及び香川局において会計実地検査を行い、13年度から19年度までの間に実施した高松安定所管内に所在する2事業主に係る職適(訓練生計71人)を対象として、合規性等の観点から、職適が適正に行われているかなどに着眼して、受講指示書、実績報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合は、更に同県及び同局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
 検査の結果、事業主が訓練計画を定めておらず、このため指導員が計画的に指導、助言を行っていないことから、事業主が職適の要件を満たしていなかったり、訓練生が職適実施前から当該事業主の業務に従事していることから、職適の必要性が認められなかったりなどしていて、上記の2事業主に係る職適訓練費計103,046,940円(事業所謝金計15,655,200円、訓練手当計87,391,740円)のうち、14年度及び16年度から19年度までの間に支給された計8,373,030円(事業所謝金計5,137,200円、訓練手当計3,235,830円)が適正に支給されておらず、これに係る国庫負担金相当額計4,186,515円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、高松安定所において、上記の2事業主が職適を実施する要件を満たしているかなどについての調査、確認を怠っていたこと、同県において、高松安定所による調査、確認が適正に行われたものと判断して、自ら実態把握をしないまま事務手続等を行っていたことなどによると認められる。