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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

在宅福祉事業費補助金が過大に交付されているもの


(119)−(130) 在宅福祉事業費補助金が過大に交付されているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)社会福祉諸費
部局等 12府県
補助の根拠 予算補助
補助事業者 5府県
7市(事業主体)
間接補助事業者
(事業主体)
5市
補助事業 在宅福祉事業(介護予防・地域支え合い事業)
補助事業の概要 在宅の老人等の福祉の向上を図るために、要介護状態にならないための介護予防や生活支援等のサービスを提供するもの
上記に対する国庫補助金交付額 853,575,000円 (平成15年度〜17年度)
不当と認める国庫補助金交付額 47,152,000円 (平成15年度〜17年度)

1 補助金の概要

 在宅福祉事業費補助金(以下「補助金」という。)は、在宅の老人等の福祉の向上を図ることを目的として、市町村(政令指定都市及び中核市を除き、特別区を含む。以下同じ。)が行う介護予防・地域支え合い事業に対して都道府県が補助する場合に要する費用、政令指定都市又は中核市が行う介護予防・地域支え合い事業に要する費用等について、その一部を国が補助するものである。

(1) 介護予防・地域支え合い事業の概要

 介護予防・地域支え合い事業は、要援護高齢者等に対して、要介護状態にならないための介護予防や生活支援等のサービスを提供するもので、このうち、政令指定都市、中核市又は市町村が実施する事業には、次のようなものがある。

ア 食の自立支援事業

 食の自立支援事業は、調理が困難な高齢者等に対して、定期的に居宅を訪問して栄養のバランスのとれた食事を提供するとともに、当該高齢者等の安否確認を行う事業である。そして、この事業においては、従来、食材料費の実費相当分については利用者負担とされていたが、平成17年6月の介護保険法(平成9年法律第123号)の改正に伴い、同年10月からは、食材料費だけでなく調理費の実費相当分についても利用者負担とされており、これらの経費については補助の対象経費(以下「対象経費」という。)から除くこととされている。

イ 高齢者の生きがいと健康づくり推進事業

 高齢者の生きがいと健康づくり推進事業(以下「生きがい事業」という。)は、家に閉じこもりがちなひとり暮らし高齢者に対して、生きがい講座等を開催するなどの各種サービスを提供する事業である。そして、この事業の対象経費は、事業の運営に必要な報酬、給料、職員手当、共済費、報償費等とされている。

ウ 生活管理指導員派遣事業

 生活管理指導員派遣事業は、基本的生活習慣が欠如していたり、対人関係が成立しなかったりなど、いわゆる社会適応が困難な高齢者に対して、訪問により日常生活、家事等に関する支援・指導等を行い、要介護状態への進行を予防する事業である。

(2) 補助金の交付額の算定方法

ア 政令指定都市又は中核市が行う事業について補助する場合

 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と総事業費から寄付金その他の収入額を控除した額(以下「差引額」という。)とを比較して、少ない方の額を補助対象事業費として、この額に2分の1を乗じて得た額を補助金の交付額とする。

イ 市町村が行う事業について補助する場合

 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と差引額とを比較して少ない方の額を選定する。そして、選定した額に4分の3を乗じて得た額と都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を補助対象事業費として、この額に3分の2を乗じて得た額を補助金の交付額とする。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、補助金の交付額の算定が適切に行われているかに着眼して、25都府県の190市区町において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、交付額の算定が適切でないと思われる事態があった場合には、更に事業主体に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査の結果、12事業主体において、補助金の交付額の算定を誤ったため、補助金交付額計853,575,000円のうち計47,152,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、交付要綱等の理解が十分でなかったこと、府県において、事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを事業別・事業主体別に示すと次のとおりである。

府県名 事業主体 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金
千円 千円 千円 千円

ア 食の自立支援事業

(119) 秋田県 横手市 17 35,020 23,346 3,544 2,362
(120) 福島県 いわき市 17 172,700 86,350 11,310 5,656
(121) 千葉県 千葉市 17 137,562 68,781 2,967 1,484
(122) 神奈川県 相模原市 17 257,045 128,522 32,961 16,480
(123) 富山県 射水市 15〜17 110,655 73,766 7,347 4,899
(124) 静岡県 浜松市 17 148,620 74,310 4,074 2,038
(125) 岡山県 岡山市 17 85,627 42,813 2,428 1,214
(126) 福岡県 北九州市 17 371,214 185,607 14,869 7,435
(127) 大分県 臼杵市 17 25,309 16,873 1,570 1,048
(128) 熊本県 天草市 17 81,450 54,300 1,558 1,039
アの計 1,425,205 754,668 82,632 43,655

 上記の10市は、補助金の交付額の算定に当たり、食材料費又は調理費の実費相当分を対象経費の実支出額に含めていたため、補助対象事業費を計82,632,601円過大に算出していた。
 したがって、適正な補助対象事業費に基づいて補助金の交付額を算定すると、計711,013,000円となり、計43,655,000円が過大に交付されていた。

イ 生きがい事業

(129) 京都府 亀岡市 16、17 70,824 47,215 3,603 2,402

 亀岡市は、補助金の交付額の算定に当たり、事業の委託先が生きがい事業を実施するため専従で配置したとする職員が、実際には、本件事業以外の業務を兼務していたのに、当該職員の給料、手当及び共済費を全額対象経費に計上するなどしていたため、補助対象事業費を3,603,729円過大に算出していた。
 したがって、適正な補助対象事業費に基づいて補助金の交付額を算定すると、44,813,000円となり、2,402,000円が過大に交付されていた。

ウ 生活管理指導員派遣事業

(130) 愛媛県 松山市 17 103,384 51,692 2,189 1,095

 松山市は、補助金の交付額の算定に当たり、閉じこもりの傾向もないことなどから、社会適応が困難な高齢者とは認められない者を本件事業の対象に含めていたため、補助対象事業費を2,189,340円過大に算出していた。
 したがって、適正な補助対象事業費に基づいて補助金の交付額を算定すると、50,597,000円となり、1,095,000円が過大に交付されていた。

ア、イ、ウの合計 1,599,414 853,575 88,425 47,152