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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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児童扶養手当給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(189)−(192) 児童扶養手当給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省
(項)母子家庭等対策費
平成19年度以前は、
(項)児童扶養手当給付諸費
部局等 3県
国庫負担の根拠 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)
補助事業者
(事業主体)
4市
国庫負担対象事業 児童扶養手当給付事業
国庫負担対象事業の概要 父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するために、その児童を監護する母等に児童扶養手当を支給するもの
支給すべきでなかった児童扶養手当の額 31,049,550円 (平成15年度〜20年度)
不当と認める国庫負担金交付額 13,963,008円 (平成15年度〜20年度)

1 事業の概要

(1) 制度の概要

 児童扶養手当(以下「手当」という。)は、都道府県、市(特別区を含む。)及び福祉事務所を管理する町村が、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)に基づき、児童(注1) の父母が婚姻を解消したり、父が死亡したりなどしている場合に、これらの児童を監護する母又は養育する者(以下「受給資格者」という。)に対して支給するもので、国は、手当の支給に要する費用の3分の1(平成17年度以前は4分の3)の児童扶養手当給付費負担金を交付している。
 手当は、毎年4月、8月及び12月の3回、所定の額(児童1人の場合は月額で15年度は9月まで42,370円、10月から42,000円、16、17両年度41,880円、18年度から41,720円)を支給することとなっているが、受給資格者の前年の所得(注2) が、次表(a)欄の「全部支給」の所得制限限度額(所得税法(昭和40年法律第33号)に規定する扶養親族等の数に応じて定められている額)以上で「一部支給」の所得制限限度額未満の場合は、その所得に応じて手当を減額して支給して、「一部支給」の所得制限限度額以上の場合は、手当の全部を支給しないこととなっている。
 また、受給資格者と生計を同じくする扶養義務者(注3) 等の前年の所得が、次表(b)欄の所得制限限度額以上の場合は、受給資格者の前年の所得が所得制限限度額未満であっても、手当の全部を支給しないこととなっている。
 なお、同一の住居に居住している者は、原則として生計を同じくする者とすることになっている。

扶養親族等の数 受給資格者の所得制限限度額(a) 生計を同じくする扶養義務者等の所得制限限度額(b)
全部支給 一部支給
0人 190,000円 1,920,000円 2,360,000円
1人 570,000円 2,300,000円 2,740,000円
2人 950,000円 2,680,000円 3,120,000円

(注)
 扶養親族等が3人以上の場合、1人増えるごとに380,000円を加算する。


(注1)
 児童  18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者又は20歳未満で所定の障害の状態にある者
(注2)
 前年の所得  地方税法(昭和25年法律第226号)に規定する総所得金額等の合計額から8万円を控除した額。なお、地方税法で規定する医療費控除等を受けている場合は、それらに相当する額を更に控除した額。また、申請が6月以前の場合は、前々年の所得とする。
(注3)
 扶養義務者  民法(明治29年法律第89号)第877条第1項に規定する直系血族及び兄弟姉妹

(2) 手当の支給手続等

 事業主体は、受給資格者から児童扶養手当認定請求書(以下「認定請求書」という。)が提出された場合、受給資格者の婚姻関係や受給資格者と生計を同じくする扶養義務者等の有無、これらの者の所得等を調査確認して、支給要件を満たすと認定したときは、手当を支給することとなっている。
 また、事業主体は、毎年8月に、手当の受給者から児童扶養手当現況届(以下「現況届」という。)を提出させて、受給資格や受給者等の前年の所得等について調査確認して、受給者等の前年の所得が所得制限限度額以上である場合には、支給制限等の手続を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、事業主体が扶養義務者の把握等を適切に行い手当の支給が適正なものとなっているかに着眼して、13県の39市において、事業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に事業主体に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査したところ、3県の4事業主体では、受給者である母が、所得制限限度額以上の所得がある扶養義務者と同一の住居に居住して生計を同じくするなどしていて、手当を支給すべきでないのに、両者は生計を同じくしていないなどとして手当を支給していた事態が見受けられた。
 したがって、支給すべきではなかった手当の額15年度1,076,290円、16年度2,809,680円、17年度4,785,620円、18年度9,171,280円、19年度10,681,240円、20年度2,525,440円、計31,049,550円に対する国庫負担金15年度807,217円、16年度2,107,260円、17年度3,589,215円、18年度3,057,092円、19年度3,560,412円、20年度841,812円、計13,963,008円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A事業主体は、婚姻を解消して児童Bを監護する母Cについて、平成16年7月に提出された認定請求書により手当の受給資格があると認定していた。そして、母Cから提出された16年から19年までの現況届等により、母Cの15年から18年までの各年の所得がいずれも所得制限限度額未満であり、生計を同じくする扶養義務者はいないとしていたことから、16年度167,520円、17年度502,560円、18年度501,280円、19年度500,640円、20年度166,880円、計1,838,880円の手当を支給していた。
 しかし、実際には、母Cは、祖父Dと同一住居に居住して生計を同じくしていることから、祖父Dを母Cと生計を同じくする扶養義務者として認定すべきであった。そして祖父Dの各年の所得は、いずれも所得制限限度額以上となっていることから、上記の手当の額計1,838,880円は全額支給の必要がなかった。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、受給資格者と生計を同じくする扶養義務者の調査確認が十分でなかったこと、制度について理解が十分でなかったこと、県において適正な事務処理の執行についての指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

県名 事業主体 年度 児童扶養手当支給額 左に対する国庫負担金 支給すべきでなかった児童扶養手当の額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円
(189) 青森県 青森市 15〜20 26,173 11,152 23,881 10,232
(190) 五所川原市 15〜20 2,639 1,492 2,639 1,492
(191) 和歌山県 橋本市 15〜19 2,124 1,232 2,124 1,232
(192) 香川県 坂出市 16〜19 3,276 1,398 2,404 1,005
(189)−(192)の計 34,214 15,276 31,049 13,963