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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(213)−(243) 国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等 厚生労働本省(交付決定庁)
16都道府県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先
(保険者)
市24、特別区3、町4、計31市区町
療養給付費負担金の概要 市町村の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 104,891,312,269円 (平成16年度〜18年度)
不当と認める国庫負担金交付額 1,926,931,278円 (平成16年度〜18年度)

1 負担金の概要

(1) 国民健康保険の療養給付費負担金

 国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(2) 国庫負担金の交付対象

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1) 及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。そして、国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。
 そして、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法(昭和57年法律第80号。平成20年4月以降は「高齢者の医療の確保に関する法律」。以下同じ。)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除き、国庫負担金の交付の対象となっている。
 一方、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていて、国庫負担金の交付の対象とはなっていない。

 退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に老人保健法による医療を受けるまでの間において適用される資格を有する者である。

(3) 国庫負担金の算定方法

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号。平成20年4月以降は「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」)等により、次により算定することとなっている。

一般被保険者に係る医療給付費-保険基盤安定繰入金の1/2=国庫負担対象費用額、国庫負担対象費用額×国の負担割合=交付額

(注2)
 保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注3)
 国の負担割合  平成16年度までは40/100、17年度は36/100、18年度以降は34/100

 このうち一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額とされている。
 ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格がさかのぼって確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

(4) 交付手続

 国庫負担金の交付手続については、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出して、〔2〕 これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、厚生労働省に提出して、〔3〕 厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。
 そして、〔4〕 当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出して、〔5〕 これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出して、〔6〕 厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、36都道府県の275市区町村において、16年度から18年度までに交付された国庫負担金について、合規性等の観点から、交付額が法令等に基づき適切に算定されているかに着眼して、実績報告書及びその基礎資料等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に都道府県を通じて市町村に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査の結果、16都道府県の31市区町において、国庫負担金交付額計104,891,312,269円のうち計1,926,931,278円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。
ア そ及して退職被保険者等となった者に係るそ及期間の医療給付費を控除していないなどしているもの

27市区町 1,238,211,396円

イ 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料からの転記を誤り過大に算定しているもの

4市区 688,719,882円

 このような事態が生じていたのは、上記の31市区町において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため、適正な実績報告等を行っていなかったこと、また、これに対する前記の16都道府県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 前記ア及びイの態様を都道府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

都道府県名 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金
千円 千円 千円 千円

ア そ及して退職被保険者等となった者に係るそ及期間の医療給付費を控除していないなどしているもの

(213) 北海道 旭川市 17 13,872,084 4,995,868 271,438 107,626
(214) 青森県 東津軽郡外ヶ浜町 17 573,864 206,564 11,258 4,440
(215) 栃木県 宇都宮市 17 14,808,976 5,309,771 28,142 11,070
(216) 那須塩原市 17 4,700,818 1,693,152 43,762 17,166
(217) さくら市 17 1,611,042 580,412 20,254 8,101
(218) 埼玉県 所沢市 17 10,179,907 3,662,847 5,263 2,105
(219) 千葉県 市川市 17 14,001,699 5,016,794 48,490 8,932
(220) 船橋市 17 16,622,175 5,962,112 26,000 10,058
(221) 松戸市 17 15,391,628 5,539,018 62,938 24,548
(222) 東京都 江戸川区 16 26,474,810 10,591,823 23,818 9,225
(223) 神奈川県 横須賀市 17 12,729,253 4,561,356 337,338 130,524
(224) 秦野市 17 4,850,521 1,746,105 30,783 12,003
(225) 海老名市 17 3,435,693 1,235,027 10,918 4,367
(226) 座間市 17 3,678,027 1,316,540 6,473 2,589
(227) 中郡大磯町 17 1,066,761 384,218 15,408 5,763
(228) 岐阜県 岐阜市 17 17,365,995 6,244,371 43,981 16,971
(229) 愛知県 豊橋市 17 11,550,966 4,156,713 8,392 3,309
(230) 東海市 17 2,935,882 1,056,850 4,517 1,587
(231) 愛知郡東郷町 17 949,004 341,697 (注4) 1,798
(232) 大阪府 貝塚市 17 3,290,796 1,184,264 6,339 3,627
(233) 茨木市 17 8,345,063 2,989,447 71,666 19,640
(234) 兵庫県 養父市 17 949,884 341,769 14,214 4,516
(235) 和歌山県 有田郡有田川町(注5) 17 547,215 197,281 4,889 1,953
(236) 広島県 広島市 17 37,141,230 13,347,062 1,998,546 799,418
(237) 佐賀県 鹿島市 17 1,597,199 574,088 14,069 5,468
(238) 熊本県 人吉市 17 1,683,727 603,965 40,371 15,727
(239) 大分県 日田市 17 3,588,419 1,291,752 14,161 5,668
アの計 233,942,649 85,130,877 3,163,440 1,238,211

(注4) 東郷町は、国の負担割合の適用を誤ったため、国庫負担金を過大に算定していたが、国庫負担対象費用額には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。
(注5) 平成17年12月31日以前は有田郡金屋町

 上記の27市区町では、国庫負担金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、そ及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費の一部又は全部を控除していなかったなどのため、国庫負担対象費用額が過大に算定されるなどしていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額等に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると計83,892,666,487円となり、計1,238,211,396円が過大に交付されていた。上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 広島市は、平成17年度の国庫負担金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、電算システムの出力帳票の表示に漏れがあったことなどにより、そ及して退職被保険者等の資格を取得した者について退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った16年度以前分の医療給付費の一部1,998,546,947円を控除していなかったため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると12,547,643,843円となり、799,418,777円が過大に交付されていた。

イ 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料からの転記を誤り過大に算定しているもの

(240) 東京都 品川区 18 16,647,150 5,656,578 1,928,420 655,663
(241) 世田谷区 18 29,040,143 9,863,830 53,327 18,131
(242) 調布市 17 7,168,217 2,576,426 28,048 10,097
(243) 大阪府 大東市 17 4,618,579 1,663,599 13,410 4,827
イの計 57,474,091 19,760,434 2,023,207 688,719

 上記の4市区では、国庫負担金の実績報告等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料から誤った額を転記したため、医療給付費の額を過大に計算しており、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると計19,071,714,504円となり、計688,719,882円が過大に交付されていた。

ア、イの合計 291,416,740 104,891,312 5,186,648 1,926,931

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、同省において、通知等により市町村の事務処理の適正化に努めるとともに都道府県の実績報告等に係る審査等の強化を図る必要があると認められる。