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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 工事

国営総合農地防災事業における排水路工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの[北海道開発局留萌開発建設部]


(714) 国営総合農地防災事業における排水路工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 国営土地改良事業特別会計(平成20年度以降は一般会計)
    (項)北海道土地改良事業費
部局等 北海道開発局留萌開発建設部
工事名 富士見地区第1号排水路工事
工事の概要 排水路整備と併せて橋りょうを架け替えるために、平成19年度に橋台の築造、橋りょう上部工の製作、架設等を行うもの
工事費 225,750,000円(当初契約額228,900,000円)
請負人 株式会社石山組
契約 平成19年9月 一般競争契約
支払 平成19年10月、20年4月 2回
不適切な設計となっている工事費 17,052,014円

1 工事の概要

 この工事は、北海道開発局留萌開発建設部(以下「留萌建設部」という。)が、国営総合農地防災事業の一環として、北海道天塩郡天塩町富士見地区において、排水路整備と併せて排水路に架かる農道の橋りょうを新橋(橋長17.6m、幅員6.2m)に架け替えるために、平成19年度に、下部工として橋台2基の築造、上部工としてプレストレストコンクリート桁(けた)(以下「PC桁」という。)の製作、架設等を工事費225,750,000円で実施したものである。そして、この橋りょうは、橋軸と支承の中心線とのなす角が60度の斜橋となっている(参考図参照)。
 この橋りょうの設計は、重量の大きな車両が通行することから、一般道路と同様に「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行われている。そして、示方書によると、設計で想定されない地震動が作用するなどした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設けることとされている。この落橋防止システムの構成は、落橋防止構造、桁かかり長等(注)の中から、橋りょうの形式、地盤条件等に応じて適切に選定することとされている。
 このうち落橋防止構造は、上部構造の両端が剛性の高い橋台に支持されていて、上部構造の長さが25m以下の橋りょうについては、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当して、その設置を省略することができることとされている。
 留萌建設部は、本件橋りょうがPC桁の両端が剛性の高い橋台に支持されていること、PC桁の長さが17.6mであることから、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当するので、落橋防止構造の設置を省略しても耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 本院は、留萌建設部において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、落橋防止システムの設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、示方書によると、落橋防止構造を省略することができるとされている橋りょうであっても、斜橋の場合には、予期しない大きな変位が生ずることがあるためその必要性を所定の判定式により判定しなければならないとされている。しかし、本件橋りょうの設計に当たっては、この判定を行っていなかった。
 そこで、この判定式に本件橋りょうのPC桁の長さや幅員の条件を当てはめて計算すると落橋防止構造を設置する必要があると認められた。
 このような事態が生じていたのは、留萌建設部において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件橋りょうの上部工等は、設計が適切でなかったため落橋防止構造が設置されておらず、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る工事費相当額17,052,014円が不当と認められる。

 落橋防止構造、桁かかり長  桁と橋台の胸壁をPC鋼材で連結するなどして、上下部構造間に予期しない大きな相対変位が生じた場合に、これが桁かかり長(桁端部から下部構造頂部縁端までの長さ)を超えないようにする構造

(参考例)

落橋防止構造、桁かかり長概念図

(参考図)

橋りょう概念図

橋りょう概念図