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中型回転翼航空機の調達に当たり、監督及び検査が適正でなかったため、仕様書で要求する機能の一部を有していないなどしているのに契約金額の全額を支払っているもの


(781) 中型回転翼航空機の調達に当たり、監督及び検査が適正でなかったため、仕様書で要求する機能の一部を有していないなどしているのに契約金額の全額を支払っているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)海上保安庁 (項)海上保安官署
部局等 海上保安庁本庁
契約名 航空機売買
契約の概要 中型回転翼航空機3機を調達するもの
契約の相手方 2会社
契約 平成18年10月
受領検査 平成20年3月
支払 平成18年10月〜20年3月(前金払4回)、20年4月(精算払)
支払額 4,829,944,286円    
過大になっている支払額 155,745,105円    

1 中型回転翼航空機の調達の概要

(1) 航空機売買契約の概要

 海上保安庁は、平成18年度に2か年度の国庫債務負担行為により、中型回転翼航空機(以下「中型ヘリ」という。)で老朽化が進んだものを代替して、併せて捜索監視能力等の高性能化を図るために、18年10月5日に、三井物産エアロスペース株式会社(以下「MBA」という。)及びMitsui Bussan Aerospace Corporation(以下「MBAC」という。)と中型ヘリ3機を調達する航空機売買契約を、随意契約により締結している。同庁は、この契約金額を4,774,140,000円としており、MBAに対しては、中型ヘリの調達に関する国内関連経費分(組立調整費、航空保険料、銀行諸掛等)として408,634,193円を、MBACに対しては、中型ヘリの調達に関する外貨支払分として39,328,881.15米ドル(18年度の支出官レート111円による邦貨換算額は、4,365,505,807円)をそれぞれ支払うこととしている。そして、同庁は、納入期限の20年3月31日に給付の完了の確認のために必要な検査を終了して、第十管区海上保安本部鹿児島航空基地に1機を、第十一管区海上保安本部那覇航空基地に2機を、それぞれ配備している。

(2) 仕様書において要求する機能等

 同庁は、この調達に関する仕様書において、夜間飛行等を行うために必要な装備を有するなどの標準機体仕様に加えて、中型ヘリ3機が海上保安業務を安全かつ有効に実施できるように、海上保安庁機仕様として、次のような各種の機能等を要求している。
〔1〕  自動操縦装置は、遭難者等を捜索(Search)して発見した後、操作ボタンを押すだけで自動的に遭難者等に向かって高度と速度を落としながら近づいて救助(Rescue)する機能等(以下「SARモード」という。)を有すること
〔2〕  回転翼折畳装置は、回転翼の容易な折畳み、展張等を可能とする構造として、回転翼架台を併せて作製すること
〔3〕  赤外線捜索監視装置は、自機の位置等をディスプレイ装置上に表示する機能(以下「位置表示機能」という。)を有すること
 そして、同庁は、上記の機能等を有する中型ヘリの調達契約の適正な履行を確保するために、会計法(昭和22年法律第35号)等の規定に基づき、監督職員及び検査職員を任命している。これらのうち、監督職員は、工事、製造等が履行期限までに完成する見込みがないと認めるときなどは、意見を付して契約担当官等に報告することとされており、また、検査職員は、契約書、仕様書その他の関係書類に基づき給付の内容等について検査を行い、その結果、給付が契約の内容に適合しないものであるときは、その旨及びその措置についての意見を検査調書に記載して契約担当官等に提出することとされている。

2 検査の結果

 本院は、本庁及び鹿児島、那覇両航空基地において、合規性等の観点から、支出等の会計処理が会計法等に基づき適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件調達について、契約書、仕様書等の書類及び配備先での現物を確認するなどの方法により検査したところ、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。
 海上保安庁は、この調達契約に関する監督及び検査に当たり、納入された中型ヘリ3機が、海上保安業務を安全かつ有効に実施するために仕様書で要求している各種の機能をすべて有するなどとして、20年4月28日に、既に18年10月から20年3月までの間にMBACに対して支払を完了していた前払金額計4,453,270,387円を除いた契約金額の残額376,673,899円をMBAに対して支払っており、支払総額は、4,829,944,286円となっていた。
 しかし、中型ヘリ3機に要求されている機能等は、20年7月の会計実地検査時において次のような状況となっていた。
〔1〕  自動操縦装置については、SARモードプログラムの製造会社でのプログラム開発の遅れから、3機すべてがSARモードを有していなかった。
〔2〕  回転翼架台については、19年11月に試作品が完成したものの、容易な操作が可能であるという仕様書の要件を充足していなかったことから、監督職員の指示により設計をやり直した結果、3機すべてが、納入期限に間に合わず、20年5月13日、6月13日及び25日にそれぞれ納入されていた。
〔3〕  赤外線捜索監視装置については、3機のうち1機分は位置表示機能を有していたが、3機のうち2機分は、この装置に組み込むべき部品を当該部品の製造会社から取得することができなかったことから、当該部品が取り付けられていなかったため、位置表示機能を有していなかった。
 本件中型ヘリ3機を担当する監督職員及び検査職員は、上記の事態をMBAからの報告等により把握していたが、監督職員は、支出負担行為担当官に必要な報告を行っていなかった。また、検査職員は、20年3月31日に、契約の内容に適合する給付があった旨の検査調書を作成して、支出負担行為担当官に提出していた。
 このような事態が生じていたのは、海上保安庁において、監督及び検査を適正に行っていなかったこと、会計法等を遵守することの認識が欠如していたことなどによると認められる。
 したがって、本件調達においては、納入された中型ヘリが仕様書で要求する機能の一部を有していないなどしているにもかかわらず、契約金額の全額が支払われており、これらの機能等に係る支払相当額155,745,105円が不当と認められる。