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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金

住宅宅地基盤特定治水施設等整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、設置したコンクリートブロック等が工事の目的を達していないもの


(797) 住宅宅地基盤特定治水施設等整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、設置したコンクリートブロック等が工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)住宅建設等事業費
部局等 滋賀県
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
滋賀県
補助事業 住宅宅地基盤特定治水施設等整備
補助事業の概要 洪水対策等のために、平成18年度に法覆(のりふく)護岸工、根固め工等を施工するもの
事業費 60,388,650円  
上記に対する国庫補助金交付額 30,194,325円  
不当と認める事業費 15,629,000円  
不当と認める国庫補助金相当額 7,814,500円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、滋賀県が、住宅宅地基盤特定治水施設等整備事業の一環として、甲賀市甲南町の一級河川杣(そま)川において、洪水対策等のために、平成18年度に、法覆(のりふく)護岸工、根固め工等を工事費60,388,650円(国庫補助金30,194,325円)で実施したものである。
 このうち、法覆護岸工及び根固め工の一部として施工したコンクリートブロックについては、当初設計においては、計画河床である下流側と現況河床である上流側とのすりつけ部の護岸等を保護する目的で左右両岸に合わせて37個のコンクリートブロック(以下「護岸側ブロック」という。)を設置することとしていた。そして、翌年度も継続して上流部の改修工事を進めていく予定であったが、事情によりこれを中断することとした。このため、下流側と上流側とのすりつけ部の河床が計画河床より急な勾(こう)配のままとなることから、流水により河床が洗掘されて護岸や下流側の河床等にも影響を及ぼすことがないように、設計変更を行って、河川の中央部に128個のコンクリートブロック(以下「中央部ブロック」という。)を追加して設置することとした。
 そして、同県は次のように護岸側ブロック及び中央部ブロックを設置していた。
 護岸側ブロックは、施工箇所の左右両岸の護岸に沿って1列に鉄筋等で連結せずに設置した。また、中央部ブロックは、この箇所は下流側と上流側の川幅が異なるため、狭あいな下流側の川幅に合わせて、河川を横断する方向に1列当たり16個のコンクリートブロックを流水の方向に8列とした長方形状に設置して鉄筋で連結して全体をたわむ構造としていた(参考図参照)

2 検査の結果

 本院は、滋賀県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類及び現地の状況を検査したところ、護岸側ブロック及び中央部ブロックの設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、河床の洗掘を防止するために河川を横断して設置する構造物については、「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編)等によると、本件のようにコンクリートブロックを用いてたわむ構造とする場合には流水の作用に対して安全であることが必要であるとされている。このため、構造物を構成するコンクリートブロックや鉄線等が流水により移動や過大な変形を生じない形状等とする必要があるとされている。また、特に高流速となり流れが乱れる区間では、鉄筋によるコンクリートブロック間の連結等によって全体が一体となって流水に抵抗できるようにすべきであるとされている。
 しかし、同県は、中央部ブロックを狭あいな下流側の川幅に合わせて設置したため、中央部ブロックと護岸側ブロックとの間にすき間が空いているのに袋詰め玉石等で間詰めしていなかったり、護岸側ブロックと中央部ブロックとを鉄筋等で連結していなかったりして、護岸側ブロック及び中央部ブロックが一体となっていないことなどから、護岸側ブロック及び中央部ブロック全体が流水の作用に対して安全な構造となっていなかった。
 このため、会計実地検査時(20年4月)において、護岸側ブロックと中央部ブロックのすき間が空いている箇所に流水による水みちができ、これにより中央部ブロックの最上流端部から下流側にわたって河床が洗掘されていて、中央部ブロックの最上流端部においては、河川横断面の中央付近と護岸側の河床高に最大で約1mの高低差が生じていた。また、下流側においては、計画河床高で施工した河床が左右両岸の護岸に接している部分で最大約1m洗掘されていた。
 このような事態が生じていたのは、同県において、護岸側ブロック及び中央部ブロックの設計に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件護岸側ブロック及び中央部ブロック等(工事費相当額15,629,000円)は、設計が適切でなかったため、流水による河床の洗掘に対応できない構造となっていて、今後、河床の洗掘が進行して護岸等に損傷が生ずるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額7,814,500円が不当と認められる。

(参考図)

コンクリートブロック設置状況概念図