ページトップ
  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 日本銀行|
  • 不当事項|
  • 工事

(828) 消火設備の設置工事の実施に当たり、消火補給水槽の据付けの施工が適切でなかったため、地震時等における消火設備に必要な機能の維持が確保されていないもの


(828) 消火設備の設置工事の実施に当たり、消火補給水槽の据付けの施工が適切でなかったため、地震時等における消火設備に必要な機能の維持が確保されていないもの

科目
固定資産取得費
部局等
日本銀行本店
工事名
日本銀行大分支店営業所空調設備等改修給排水衛生ガス設備工事
工事の概要
日本銀行大分支店の給排水衛生設備を改修するために、平成17、18両年度に給水設備、排水設備、消火設備等の更新等を行うもの
工事費
52,500,000円
 
請負人
三建設備工業株式会社
契約
平成17年9月 指名競争入札契約
支払
平成19年2月
不適切な施工となっている工事費
3,243,013円
 

1 工事の概要

 日本銀行は、平成17、18両年度に日本銀行大分支店(以下「大分支店」という。)の給排水衛生設備を改修するなどの工事を工事費52,500,000円で実施している。この工事は、大分支店における給水設備、排水設備、消火設備等について、耐用年数の到来に伴い老朽化した設備を撤去して、新規に設備の設置等を行うものである。
 この工事で設置する消火設備は、消火補給水槽、屋内消火栓ポンプ、屋内消火栓、配管等により構成されている。そして、屋上に設置された消火補給水槽から建物内の配管を通じて屋内消火栓まで消火用水が常に行き渡ることにより火災発生時に瞬時の放水が可能となるなど、各機器が的確に作動することにより、消火設備全体として初期消火活動を行うための機能が発揮されることになっている。
 消火設備を設置する際の施工方法等については、本件工事の設計図書において、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修の「公共建築改修工事標準仕様書(機械設備工事編)平成16年版」等によることとされている。同標準仕様書等によると、消火補給水槽の据付けに当たっては、地震等による転倒、横滑りなどに耐えられるように、床スラブと一体に配筋されたコンクリート造の基礎上に、地震力によって損傷を起こさない強度を有するアンカーボルトを使用して固定することとされている。また、設計図書によると、機器の固定に使用するアンカーボルトについては、「建築設備耐震設計・施工指針1997年版」(建設省住宅局監修。以下「耐震指針」という。)により耐震設計上の検討を行い選定することとされている。
 そして、日本銀行各支店は、災害時等においても地域の信用秩序の維持等の点から業務を継続することが求められており、初期消火活動に必要となる本件消火設備は、地震時等にあっても的確に作動する必要がある。

2 検査の結果

 本院は、日本銀行本店及び大分支店において、合規性等の観点から、施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書等の書類及び現地の状況を検査したところ、消火補給水槽の据付けに係る施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、消火補給水槽は、他の用途に用いられた後屋上に残置されていた基礎の周囲に打設されていた既設のコンクリート(厚さ160mm〜200mm程度)上にアンカーボルトで固定して、据え付けられていた(参考図 参照)。しかし、この既設のコンクリートは、強度及び配筋の内容が確認できないものであった。そして、請負人はアンカーボルトの選定に当たって耐震設計上の検討を行っていなかったため、本院において、耐震指針に基づきアンカーボルトに係る耐震設計上の検討を行ったところ、地震時にアンカーボルトに作用する引抜力(注1) は19.2kN/本となっており、使用したアンカーボルトの最大引抜荷重(注2) は12.8kN/本であることから、耐震設計上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 この結果、本件消火設備は、地震時等には消火補給水槽が転倒、横滑りなどするおそれがあり、これに伴う消火補給水槽周辺の配管の破損等により、火災に対して消火栓からの瞬時の放水ができなくなるなど、所要の機能を発揮できないおそれがあると認められる。
 このような事態が生じていたのは、請負人が設計図書の内容を十分理解しておらず、強度及び配筋の内容が確認できない既設のコンクリート上に消火補給水槽を据え付けて、これを固定するために使用するアンカーボルトを耐震設計上の検討を行わないまま選定して施工していたのに、これに対する日本銀行の完成検査が適切に実施されていなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件消火設備は、消火補給水槽の据付けの施工が適切でなかったため、地震時等における必要な機能の維持が確保されておらず、消火設備の設置に係る工事費相当額3,243,013円が不当と認められる。

 引抜力  機器に地震力が作用する場合に、ボルトを引き抜こうとする力が作用するが、このときのボルト1本当たりに作用する力をいう。
 最大引抜荷重  製造したメーカーが行った当該アンカーボルトの最大引抜力に係る試験により得られた値の平均値

(参考図)

施工状況