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(847) 戦略的創造研究推進事業(発展研究)における研究費及び委託研究費の経理が不当と認められるもの


(847) 戦略的創造研究推進事業(発展研究)における研究費及び委託研究費の経理が不当と認められるもの

科目
一般勘定(項)新技術創出研究関係経費(平成15年9月30日以前は基礎的研究推進費)
部局等
独立行政法人科学技術振興機構(平成15年9月30日以前は科学技術振興事業団)
事業名
戦略的創造研究推進事業(発展研究)
事業の概要
優れた研究成果が期待されて、かつ発展の見込まれる研究を継続するもの
〈予算経理(研究費の経理)〉
 
研究費の額
19,012,546円
(平成14年度〜17年度)
不当と認める研究費
4,420,614円
(平成14年度〜17年度)
〈役務(委託研究費の経理)〉
 
委託先
獨協医科大学
委託研究費の額
847,000円
(平成15、17両年度)
不当と認める委託研究費
239,707円
(平成15、17両年度)
不当と認める研究費及び委託研究費の合計額
4,660,321円
 

1 事業の概要

(1) 戦略的創造研究推進事業(発展研究)の概要

 独立行政法人科学技術振興機構(平成15年9月30日以前は科学技術振興事業団。以下「機構」という。)は、国から交付された運営費交付金等を原資として、戦略的重点化した分野における基礎研究を推進して、今後の科学技術の発展や新産業の創出につながる革新的な新技術を創出することを目的として、チーム型研究、個人型研究等多様な研究形式により、戦略的創造研究推進事業を実施している。そして、戦略的創造研究推進事業(発展研究)(以下「発展研究事業」という。)は、戦略的創造研究推進事業等の研究課題のうち、優れた研究成果が期待されて、かつ発展の見込まれる研究について、当初の研究期間を越えて継続する事業である。

(2) 研究実施体制及び研究費の執行体制

 発展研究事業の研究実施体制及び研究費の執行体制は、当初の研究期間における研究形式による事業(以下「出身事業」という。)を踏まえたものとなっており、出身事業がチーム型研究の場合には、通常、次のようなものとなっている。
 すなわち、研究の推進全般について責任を持つ研究者(以下「研究代表者」という。)は研究チームを編成することとなっており、研究チームは当該研究代表者の所属する研究機関の研究者から構成される研究グループのみならず、他の研究機関に所属する共同研究者から構成される研究グループも参加することができることとなっている。
 そして、機構は、原則として、各研究グループに配分する研究費のうち9割程度を機構が執行することとしており、残りの1割程度を各研究グループが所属する研究機関とそれぞれ委託研究契約を締結して、委託研究費として支出することとしている。なお、19年度以降の研究費の執行方式について、機構は、可能な限り研究機関への委託化を図ることとしている。

(3) 機構による研究費の経理

 「研究推進・支援事務処理マニュアル」(以下「事務処理マニュアル」という。)等により、機構は、研究代表者又は共同研究者(以下「研究代表者等」という。)からの要求に基づく研究用消耗品等の購入業務を次のとおり行うこととしている。
 すなわち、〔1〕 研究代表者等は、研究用消耗品等を調達するための要求書を作成して、仕様書、参考見積書等の必要書類を添えて機構に提出する。〔2〕 機構は、提出書類の要求内容、仕様等の確認を行い、業者に発注する。〔3〕 研究実施場所に研究用消耗品等が納品された場合、研究代表者等が納品確認を行い、納品書に押印する。業者は当該納品書及び請求書を機構に提出する。〔4〕 機構は、納品書に研究代表者等の納品確認の押印があることをもって検収して、支払処理を行う。

(4) 委託研究費の経理

 「戦略的創造研究推進事業(公募型)に係る委託研究契約事務処理説明書」(以下「事務処理説明書」という。)等により、委託研究費は、直接経費と間接経費とから構成されている。そして、直接経費は、物品費、旅費、謝金その他の経費で、当該委託研究の実施のために直接的に必要な経費とされており、間接経費は、当該委託研究に関して研究機関において必要となる事務管理費等の経費で、直接経費に一定比率を乗ずるなどして得た額が支払われることとされている。
 そして、委託研究費の経理処理については、事務処理説明書、研究機関の経理処理の規程等に従い適正に執行することとされており、研究機関は、研究実施期間終了後、委託研究費に係る実績報告書を機構に提出することとなっていて、機構は、この実績報告書の内容を調査して、委託研究に要すると合理的に判断された金額を確定することとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、発展研究事業に係る研究費の経理が事務処理マニュアル等に従って適正に行われているかなどに着眼して、機構及び委託先の10研究機関において会計実地検査を行った。そして、機構及び委託先の10研究機関が行っている12研究課題について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、研究費の経理が適切でないと思われる事態があった場合には、機構及び研究機関に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
 なお、本院は、19年次の獨協医科大学における文部科学省所管の科学研究費補助金等の会計実地検査の結果、同大学に所属する複数の研究者が、同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたため、同補助金等が過大に交付されていた事態について平成18年度決算検査報告に掲記した。その際、同大学に対して、同大学の他の研究者及び他の研究資金についても調査を求めていたところ、19年11月に同大学から本件発展研究事業に関する調査結果の報告を受けたので、その報告内容の確認も行った。

(2) 検査の結果

 機構は、13年度に、東京大学(16年4月1日以降は国立大学法人東京大学)に所属する教授を研究代表者とする研究課題(出身事業はチーム型研究、研究期間は8年12月から13年11月まで)を採択して、継続する研究期間を14年3月から19年3月までとする発展研究事業を実施している。
 本件発展研究事業の研究チームは、14年度以降、研究代表者が所属する東京大学グループのほか、獨協医科大学医学部に所属するA教授が共同研究者として参加する獨協医科大学グループなどの3研究グループから構成されている。
 検査したところ、獨協医科大学グループの研究用消耗品の購入に係る研究費及び委託研究費の経理について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

ア 機構による研究費の経理について

 機構は、A教授からの要求書等に基づく研究費として、14年度から17年度までの間に計19,012,546円を支出しており、このうち、研究用消耗品については、業者から同教授による納品確認の押印がある納品書及び請求書の提出を受けて、その購入代金として計11,072,208円を業者に支払っていた。
 しかし、実際に上記の研究用消耗品を購入した額は計6,651,594円にすぎず、差額の計4,420,614円については、A教授が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより機構に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、同教授は4,420,614円全額を業者に預けて別途に経理するなどしていた。このため、研究費4,420,614円が過大に支払われていた。

イ 委託研究費の経理について

 機構は、本件発展研究事業の実施に当たり、15年度及び17年度における委託研究費として計847,000円(直接経費計630,000円、間接経費計217,000円)を獨協医科大学に支払っている。
 そして、同大学は、A教授から15年度及び17年度に研究用消耗品を計630,000円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際に上記の研究用消耗品を購入した額は計456,459円にすぎず、差額の計173,541円については、A教授が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、同教授は173,541円全額を業者に預けて別途に経理していた。このため、上記の差額計173,541円は委託研究に要した経費とは認められず、間接経費相当額計66,166円も含めた委託研究費計239,707円が過大に支払われていた。
 上記ア及びイのとおり、本件発展研究事業の経理において、研究費4,420,614円及び委託研究費239,707円、計4,660,321円が過大に支払われていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、共同研究者において、研究費の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、機構及び獨協医科大学において、研究用消耗品の納品検査等が十分でなかったこと、機構において、研究者及び研究機関に対して研究費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。