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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第53 北海道旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

複線区間での踏切除雪作業における安全を確保するための保安要員である列車見張員の配置を適切なものとするよう改善させたもの


複線区間での踏切除雪作業における安全を確保するための保安要員である列車見張員の配置を適切なものとするよう改善させたもの

科目
(款)鉄道事業営業費
部局等
北海道旅客鉄道株式会社本社及び1支社
契約名
小樽保線管理室管内踏切除雪作業2等30契約
契約の概要
踏切及び踏切に近接した軌道周辺について除雪作業を行うもの
支払額
2億8066万余円
(平成18、19両年度)
契約
平成18年11月〜19年3月 随意契約(単価契約)
 
平成19年11月〜20年3月 随意契約(単価契約)
保安要員を適切に配置していなかった複線区間の踏切に係る支払額
1億8160万円
(平成18、19両年度)

1 踏切除雪作業の概要

(1) 踏切除雪作業の概要

 北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)は、毎年冬期に多くの降雪があることから、踏切を利用する自動車及び歩行者等の安全を確保するために、ショベル等を使用する人力等による踏切除雪作業を多数施行していて、平成18年11月から20年3月までの間においては、12保線所等で、踏切1,297か所の踏切除雪作業等について小樽保線管理室管内踏切除雪作業2等144契約(18年度70契約、19年度74契約)を41業者(以下「除雪業者」という。)と単価契約で締結している。

(2) 踏切除雪作業の保安要員の配置

 JR北海道工務部(以下「工務部」という。)は、軌道、土木、建築等各工事の保安対策について、「営業線工事保安関係標準示方書(在来線)」(平成10年4月制定。以下「工事示方書」という。)及び「除雪作業標準示方書(在来線)」(昭和62年4月制定。以下「除雪示方書」という。)を定めている。
 また、工務部は、線路内又は線路に近接する工務関係の作業等における触車事故を防止することを目的として、安全上必要となる具体的な措置について、「工務関係触車事故防止マニュアル」(平成8年2月制定。以下「マニュアル」という。)を定めている。
 踏切除雪作業の契約においては、工事示方書、除雪示方書及びマニュアル(以下、これらを「示方書等」という。)により施行することとしており、示方書等に基づく保安要員の配置が必要となっている。
 保線所等の監督員等は、踏切除雪作業前に、除雪業者から、除雪示方書に定められた書式に従って、作業場所、列車見張体制の確立方法等を記入した作業打合せ票等の書類の提出を受けて、示方書等に定められた保安要員の配置等の確認、列車ダイヤ等の打合せなどを行うこととしている。

(3) 列車見張員の配置及び任務

 示方書等は、線路内又は線路に近接して作業を行う場合には、見張業務に専念する保安要員として列車見張員を配置することとしている。列車見張員は、列車等の接近通過の監視、作業指揮者等への列車接近合図を行い、作業従事員等の待避完了後は、列車乗務員への待避完了の合図を行い、事故発生のおそれのある場合には、直ちに列車を停止させるための措置等を執り、事故を未然に防止することとされている。
 そして、マニュアルは、線路状況に見合った列車見張員の配置を定めており、複線区間においては、上下線の間又は上下線に作業現場がまたがる場合には、上下線に同時に列車が接近通過することがあるため、上下線それぞれに列車見張員1名、計2名を配置することとしている。
 なお、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第554条は、鉄道事業者及び請負業者に、列車との触車事故防止のため、軌道内等の作業における監視人(列車見張員を指す。)の配置の措置を義務付けている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、JR北海道等が発注等した軌道工事等における相次ぐ列車との触車事故が及ぼす社会的、経済的影響にかんがみて、本社(釧路支社を含む。)、旭川支社及び函館支社において、踏切及び踏切に近接した軌道周辺で行う踏切除雪作業の契約が、合規性等の観点から示方書等に定められた保安要員が適切に配置されたものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、JR北海道が18、19両年度に締結した前記の踏切除雪作業144契約(18年度70契約、19年度74契約)を対象として、契約書、作業打合せ票等の書類及び現地における踏切除雪作業の状況を確認するなどして検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、本社及び函館支社が締結した30契約(18年度14契約、支払額1億0735万余円、19年度16契約、支払額1億7331万余円、支払額計2億8066万余円)の複線区間の踏切除雪作業において、示方書等に定められた列車見張員の配置が適切になされていなかった事態(18年度踏切138か所、支払額7077万余円、19年度踏切161か所、支払額1億1082万余円、支払額計1億8160万余円)が見受けられた。
 すなわち、踏切除雪作業ごとに提出される作業打合せ票において、複線区間の上下線に作業現場がまたがる場合に2名の配置が必要な列車見張員が1名の配置となっているのに、監督員等はこれを基に打合せを行った際に、不足している列車見張員についての増員の指示をすることなく、示方書等に定められた列車見張員を配置せずに踏切除雪作業を施行させていた。
 上記のように、複線区間の踏切除雪作業に当たって、示方書等に定められた列車見張員を適切に配置しておらず、契約が示方書等に基づき十分に履行されていない事態は、触車事故防止による作業従事員等の安全確保等の点から適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、JR北海道において、踏切除雪作業は、使用する除雪道具が軽量で簡易な作業であることから、一般の軌道工事と同様に線路内又は線路に近接して行う作業であるにもかかわらず、示方書等の遵守を保線所等及び除雪業者に対して十分に周知徹底していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR北海道は、各保線所等に対して20年9月に通知を発するなどして、同年10月以降契約する踏切除雪作業に当たっては、複線区間の上下線それぞれに列車見張員を配置することなど、安全を確保するための保安要員の配置について、保線所等及び除雪業者に対して示方書等を遵守させることを周知徹底し、保安要員の適切な配置を図る処置を講じた。