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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年10月

我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果について


別表2 現地調達を実施する際の課題における参考事例

ア 治安が悪いために応札者がいないこと

<参考事例1>

 D事務所は、平成18年度に、兼轄するE国において農業プロジェクトの一環として、そのプロジェクトで使用する自動二輪車を調達するために、D国内及びE国内の複数の業者に指名見積競争を実施する目的で見積書の提出を依頼した。
 しかし、当時E国は治安が悪化しており、E国の納品場所までの輸送途中で盗難等に遭う可能性が高く、また、通関の際に、手続促進料と称してE国通関当局から規定外の支払を要求されるなど通関手続が煩雑かつ不透明であることなどから、D事務所の依頼に応じて見積書を提出した業者はなかった。

イ 信頼できる業者が少ないこと

<参考事例2>

 F事務所は、平成19年度に、農業プロジェクトで使用する田植機の調達を行い、プロジェクト実施場所に納品させた。しかし、技術協力を行うためにJICAから派遣されていた専門家から金具のさびやプラスティック部分の劣化を指摘されたことから、納入業者にこれに代わる新たな機材の納品を求めたところ、同一の機材がさび部分の再塗装を施されるなどして再納入された。そのため、同事務所は、業者に文書を送付して善処を求めたが、解決しなかったため、その契約を解除した。

<参考事例3>

 G事務所は、都市環境プロジェクトのために使用するダンプトラック1台を調達することにしたが、G国内で調達が困難なために、H地域支援事務所に対して、その調達を要請した。
 そして、H地域支援事務所は、平成18年度にダンプトラック1台を指名見積競争によりI国内の日系商社から調達することにした。しかし、ダンプトラックがG国のプロジェクトサイトに納車された際にG事務所の検査職員による検収や専門家による動作確認等を行ったところ、ダンプトラックのバンパーやボディーに損傷が発見された上、バッテリーが中古品とすり替えられるなどしていたことが判明した。そのため、納入業者に対して改善を要求したところ、納入業者は、車体を修理しバッテリーを新品に交換した上でダンプトラックを引き渡した。

ウ 業者に在庫がないこと

<参考事例4>

 J事務所は、平成18年度に、ガバナンスプロジェクト等の一環として、車両の調達を行うことにした。当初、指名見積競争で決定した業者と契約すべく準備していたところ、業者から型式変更により納入すべき車両の在庫がなくなったこと及びこれに伴い新しい年式の車両への仕様変更と値上げが必要になったことが知らされた。そこで、同事務所は、指名見積競争に参加した他の2社に確認したところ、同様に仕様変更及び値上げは不可避との回答があったため、仕様を変更し新たな予定価格を設定の上、指名見積競争をやり直し、18年度中に納入できる業者と契約を締結した。

エ JICAの調達が業者にとって魅力に欠けていること

<参考事例5>

 K事務所は、平成19年度に、地域開発プロジェクトの一環として、自動二輪車1台を供与するために、登録業者による見積合わせによる随意契約で調達しようとしたところ、調達数量が少ないとして見積書の提出を辞退する業者が続出し、見積書の提出に応じた業者であっても納品先はJICAが希望した地方都市のプロジェクト実施場所ではなく、最寄りの港とすることを条件にされた。同事務所は、地方都市の業者との交渉も試みたが、JICAとの取引実績がないため、契約額全額の前払いを求められるなどしたため、契約を締結することができず、20年5月現在、自動二輪車の調達には至っていない。

オ 遅延損害金を契約どおり徴収できないこと

<参考事例6>

 L事務所が平成19年度に締結した111件の資機材の調達等の契約のうち、20件の契約において契約で定められた納期が守られていなかった。同事務所は、これら納期が守られなかった契約について、契約書の遅延条項に従って厳正に遅延損害金を徴収することとした。実際の徴収に当たっては、業者への支払いの際に遅延損害金相当額を支払額から減額する方式を執っている。
 一方、M事務所は、業者が免税手続などに時間を要し、納品が1か月以上遅延したのに、現地には信頼できる業者が少なく、遅延損害金を徴収すれば益々調達先が少なくなり、競争が行えなくなるおそれがあるとして、遅延損害金を徴収していなかった。