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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されているもの


(16) 厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されているもの

7件 不当と認める国庫補助金 37,209,000円

 厚生労働科学研究費補助金は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保するため、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業を行う研究者等に対して、厚生労働大臣が認めた額と補助対象経費に係る実支出額とを比較して少ない方の額を国が補助するものである。
 この補助金は、厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号)等によると、研究計画に基づき遂行される研究事業に関してすべての責任を負う研究者(以下「主任研究者」という。)等に交付されることとなっている。そして、主任研究者が当該研究を他の研究者と共同で実施する場合は、〔1〕 主任研究者、〔2〕 主任研究者と研究項目を分担して研究を実施する分担研究者、〔3〕 主任研究者の研究計画の遂行に協力する研究協力者により研究組織を構成するものとされている。そして、補助金の交付を受けた主任研究者は、交付された補助金の一部を分担研究者に配分することができることとなっている。
 研究事業に係る補助対象経費は、〔1〕 研究で使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の直接研究に必要な経費、〔2〕 研究事業の一部を他の機関に委託して行うための経費(以下、〔1〕 、〔2〕 を合わせて「直接研究費等」という。)及び〔3〕 研究に必要な間接経費となっている。このうち間接経費は、直接研究費等の額の30%を限度に、研究費の補助を受ける主任研究者の研究環境の改善や研究機関全体の機能の向上に資することを目的として交付されることとなっている。そして、主任研究者は間接経費の交付を受けた後、所属機関の長へ納付し、所属機関の長は、これを研究の実施に伴い研究機関において必要となる管理等に係る経費として使用することとなっている。
 また、直接研究費等に係る事務は、主任研究者及び分担研究者の事務に係る負担を軽減するなどのため、原則として、主任研究者及び分担研究者の所属機関の長に委任されることとなっている。そして、委任を受けた所属機関の長は、直接研究費等に係る事務を適正に執行することとなっている。
 本院が、28研究機関に所属する研究者196名が実施している495研究事業について会計実地検査を行ったところ、6研究機関に所属する7研究者が実施している18研究事業において、研究者が不適正な経理処理を行って架空の取引に係る購入代金を業者に預けて別途に経理していたり、補助対象経費に補助対象とは認められない経費を含めていたりなどしていたため、補助金37,209,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、〔1〕 研究者において、補助金の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、〔2〕 研究者の所属機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、〔3〕 研究者及び所属機関において、補助対象経費として認められる経費の範囲についての理解が十分でなかったことや間接経費の交付の目的等についての理解が十分でなかったこと、〔4〕 厚生労働省において、研究者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを所属機関別・研究者別に示すと次のとおりである。

所属機関名 国庫補助金の交付先
(研究者)
年度 事業数 国庫補助金交付額 不当と認める国庫補助金額 摘要
  千円 千円
(318) 聖マリアンナ医科大学 A 15〜17 3 239,428 13,625 不適正な経理処理及び補助の対象外

 上記の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ自らが管理する本件補助金から架空の取引に係る購入代金を支払って、その全額を業者に預けて別途に経理したり、補助対象とは認められない研究期間終了後に納品された研究用物品の購入代金を補助対象経費に含めたりしていた。

(319) 聖マリアンナ医科大学 B 15、17、18 9 168,930 10,735 不適正な経理処理

 上記の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ自らが管理する本件補助金から架空の取引に係る購入代金を支払って、その全額に相当する商品券を業者から納入させていた。
 なお、上記の商品券のうち5,210,000円分については使途が不明となっている。

(320) 岡山大学 C 14、15 2 62,430 2,013 不適正な経理処理

 上記の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ研究者の所属機関に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、その全額を業者に預けて別途に経理していた。

(321) 産業医科大学 D 19 1 11,059 1,837 補助の対象外
(322) 福島県立医科大学 E 18 1 63,700 1,653
(323) 東海大学 F 18 1 32,150 1,451

 上記3名の研究者は、各年度の補助対象経費に、補助対象とは認められない研究期間終了後に係る備品費(研究者D)、リース料(研究者E)、レンタル料(研究者F)を含めていた。

(324) 日本医科大学 G 18 1 52,000 5,895 補助の対象外

 上記の研究者は、間接経費として交付され所属機関の長に納付した12,000,000円のうち、5,895,218円を所属機関との協議により間接経費の使途としては認められない自らの研究事業に係る直接研究費等として使用していた。

(318)—(324)の計   18 629,697 37,209  

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、通知等により研究者等に対する指導を徹底して、補助事業の適正な執行に万全を期する必要があると認められる。