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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの[日本私立学校振興・共済事業団](567)—(571)


(567)—(571) 私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等 日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 5学校法人
補助の対象 私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額の合計 20,815,416,000円 (平成17年度〜19年度)
不当と認める事業団の補助金交付額 42,239,000円 (平成17年度〜19年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

 日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注1) を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金を交付している。この補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(2) 補助金の額の算定資料

 事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料を提出させている。
ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等(注2) の数、専任職員数及び学生数に関する資料
イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料

(3) 補助金の額の算定方法

 事業団は、算定資料に基づき、補助金の額を次のとおり算定することとなっている。
〔1〕  経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、それぞれの経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数等に所定の補助単価を乗ずるなどして補助金の基準額を算定する。
〔2〕  各私立大学等の教育研究条件の整備状況等によって補助金の額に差異を設けるため、次の割合等に基づいて増減率を決定して、当該増減率を合計して調整係数を算定する。
a 収容定員に対する在籍学生数の割合
b 専任教員等の数に対する在籍学生数の割合
c 学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合
 そして、上記aの割合の算定に当たっては、在籍学生数が学部等ごとの収容定員を超える場合などには、留年者のうち修業年限を超えて在籍している者で、修業年限を超える在籍期間が1年以内の者(以下「1年留年者」という。)の数を在籍学生数から控除することとなっている。
 また、上記cの割合に基づいて算定された増減率については、当該私立大学等を設置する学校法人の前年度の財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書及び監事の監査報告書(以下「財産目録等」という。)のすべてについてインターネット又はだれでも入手可能な印刷物による公開(以下「財務情報の積極的な提供」という。)を行っている場合、所定の率を加算する。ただし、貸借対照表、収支計算書等については、事業団が示した情報提供すべき最小限の範囲・内容以上の科目等を公開していないと加算の対象とはならない。そして、この最小限の範囲・内容には、貸借対照表における基本金の部の科目ごとの内訳や収支計算書における補助金収入等に係る国庫補助金収入、地方公共団体補助金収入等の小科目ごとの内訳等がある。
〔3〕  〔1〕 で算定した経費区分ごとの基準額に〔2〕 で算定した調整係数を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して補助金の額とする。
 ただし、私立大学等の学部又は学科で、学生募集が停止されているものについては、原則として当該学部又は学科に係る補助金を交付しないこととなっている。

(4) 特別補助

 上記のほか、教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のため、補助金を増額して交付することができることとなっている。
 この補助金の増額(以下「特別補助」という。)の対象となる項目には「外国人留学生の受入れ」、「夜間大学院等」、「社会人の入学の推進」、「教育研究拠点大学院重点経費」などがあり、これらについては、算定資料を各学校法人から提出させて次のように特別補助の額を算定している。
ア 「外国人留学生の受入れ」については、外国人留学生を受け入れている私立大学等に対して、その受入学生数に応じて段階的に所定の額を増額する。ただし、この受入学生数には、研究生、科目等履修生、聴講生等の人数を含めないこととなっている。
イ 「夜間大学院等」については、専ら夜間において教育を行う研究科若しくは通信教育を行う大学院を設置している私立大学又は大学院において昼夜開講制を実施している私立大学に対して、当該研究科ごとの収容定員(夜間又は通信教育の授業を受講している在籍学生数が収容定員に満たない場合は在籍学生数とする。)に所定の単価を乗じた額を増額する。そして、昼夜開講制を実施している場合の在籍学生数は、夜間に行われる履修科目の履修登録者の実人数とする。
ウ 「社会人の入学の推進」については、社会人に係る特別の入学者選抜制度により学生を受け入れている私立大学等に対して、その受入学生数に応じて増額する。この増額の算定は、同項目のほか、「編入学の推進」等就学機会の多様化の推進に係る他の特別補助の項目(以下、これらを合わせて「社会人の入学の推進等」という。)を合わせて行うこととし、各項目の対象となった受入学生数を合計して、その合計人数に応じて段階的に所定の額を増額する。
エ 「教育研究拠点大学院重点経費」のうち大学院基盤分については、大学院を設置している私立大学に対して、研究科ごとの専任教員等の数に所定の単価を乗ずるなどして得られた研究科算定補助基準額に、当該研究科における過去3年間の学位授与数に基づく学位授与率等の教育研究活動状況による調整率(以下「調整率」という。)を乗じた額を増額する。

 私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校
 専任教員等  専任の学長、校長、副学長、学部長、教授、准教授、講師、助教及び助手

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、財務情報の積極的な提供や学生数の算定が適切に行われているかなどに着眼して、事業団が平成18、19両年度に補助金を交付している623学校法人のうち56学校法人において、補助金の申請の算定資料等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、事業団に事態の詳細について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
 なお、学校法人早稲田大学については、「外国人留学生の受入れ」に係る特別補助に関して、15年度及び16年度の補助金が過大に交付されていた事態を平成19年度決算検査報告に掲記したことから、17年度に交付された同特別補助も対象にして検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、5学校法人において、補助金の交付申請に当たり、財務情報の積極的な提供の内容が補助金の増減率の加算の要件を満たしていないのにこれを満たしている旨を記入したり、補助金の額の算定対象とならない学生数を記入したりなどした算定資料を提出していたのに、事業団は、この誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金42,239,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、5学校法人が、制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその内容の確認を十分に行っていなかったりなどしているのに、事業団において、これらの学校法人に対する指導及び調査が十分でなかったことによると認められる。
 これを学校法人別に示すと、次のとおりである。

  事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額
      千円 千円
(567) 学校法人 立教学院
(東京都豊島区)
19 1,929,391 18,386

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、立教大学における平成19年度の財務情報の積極的な提供に係る財産目録等の公開方法について、インターネットにより情報提供し、また、同学校法人の総務課でだれでも入手可能な印刷物を配布していると記入しており、事業団は、この記載等に基づき、学校法人に対する補助金を19年度1,929,391,000円と算定していた。
 しかし、同大学のホームページで公開していた収支計算書には補助金収入等に係る小科目ごとの内訳が記載されておらず、また、同学校法人は、だれでも入手可能な印刷物を配布していなかったため、財務情報の積極的な提供による増減率の加算の対象とはならない。
 したがって、この加算を除外して算定すると、適正な補助金の額は1,911,005,000円となり、18,386,000円が過大に交付されていた。

(568) 学校法人 早稲田大学
(東京都新宿区)
17
19
小計
7,126,085
9,311,856
16,437,941
2,539
1,188
3,727

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、早稲田大学における平成17年度の外国人留学生の受入れに係る特別補助の算定対象となる受入学生数を1,784人と記入していた。また、19年度の夜間大学院等に係る特別補助の算定対象となる教育学研究科において夜間に行われる履修科目の履修登録者数を168人と記入していた。そして、事業団は、これらの数値等に基づき、同大学の17年度の外国人留学生の受入れに係る特別補助の額を208,222,000円、19年度の夜間大学院等に係る特別補助の額を38,647,000円とするなどして、学校法人に対する補助金を17年度7,126,085,000円、19年度9,311,856,000円と算定していた。
 しかし、上記の受入学生数のうち248人は、科目等履修生等であるため、外国人留学生の受入れに係る特別補助の算定対象とはならない。
 したがって、これらを除外して算定すると、17年度の同特別補助の額は205,683,000円に減少することになる。
 また、前記の履修登録者数の168人は延べ人数であり、実人数は145人であった。
 したがって、実人数に基づき算定すると、19年度の夜間大学院等に係る特別補助の額は37,459,000円に減少することになる。
 これらの結果、適正な補助金の額は17年度7,123,546,000円、19年度9,310,668,000円となり、それぞれ2,539,000円、1,188,000円、計3,727,000円が過大に交付されていた。

(569) 学校法人 梅村学園
(名古屋市)
19 771,678 7,261

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、中京大学における平成19年度の社会人の入学の推進に係る特別補助の算定対象となる受入学生数を49人(学部8人、大学院41人)と記入していた。また、同大学における教育研究拠点大学院重点経費のうち大学院基盤分に係る特別補助の調整率の算出の基礎となる研究科ごとの過去3年間(16年度から18年度まで)の学位授与数を、経済学研究科については1人、経営学研究科については5人と記入していた。そして、事業団は、これらの数値等に基づき、同大学の社会人の入学の推進等に係る特別補助の額を25,834,000円、教育研究拠点大学院重点経費のうち大学院基盤分の特別補助の額を50,727,000円とするなどして、学校法人に対する補助金を19年度771,678,000円と算定していた。
 しかし、上記の受入学生数のうち学部の1人は学生募集を停止していて補助の対象とならない学科に在籍しており、また、大学院の19人は一般選抜により入学した学生であって、社会人に係る特別の入学者選抜制度により受け入れた学生ではないため、いずれも社会人の入学の推進に係る特別補助の算定対象とはならない。
 したがって、これらを除外して算定すると、社会人の入学の推進等に係る特別補助の額は22,853,000円に減少することになる。
 また、前記の経済学研究科の学位授与数(1人)は、19年度に学位を授与された学生が計上されており、経営学研究科の学位授与数(5人)は、17年度及び18年度においてそれぞれ1人ずつ過大に計上されていた。
 したがって、これらを除外して算定すると、教育研究拠点大学院重点経費のうち大学院基盤分の特別補助の額は46,447,000円に減少することになる。
 これらの結果、適正な補助金の額は764,417,000円となり、7,261,000円が過大に交付されていた。

(570) 学校法人 西日本工業学園
(北九州市)
19 304,892 2,432

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、西日本工業大学における平成19年度の財務情報の積極的な提供に係る財産目録等の公開方法について、インターネット及び広報誌により情報提供していると記入しており、事業団は、この記載等に基づき、学校法人に対する補助金を19年度304,892,000円と算定していた。
 しかし、学校法人が公開していた貸借対照表には基本金の部の科目ごとの内訳が記載されていなかったため、財務情報の積極的な提供による増減率の加算の対象とはならない。
 したがって、この加算を除外して算定すると、適正な補助金の額は302,460,000円となり、2,432,000円が過大に交付されていた。

(571) 学校法人 福岡工業大学
(福岡市)
18
19
小計
635,988
735,526
1,371,514
7,975
2,458
10,433

 上記の学校法人は、事業団に提出した算定資料に、福岡工業大学工学部に在籍する平成18年5月1日現在の学生数を1,738人(収容定員1,370人)、そのうち1年留年者の数を91人、同大学社会環境学部に在籍する19年5月1日現在の学生数を750人(収容定員660人)、そのうち1年留年者の数を29人と記入しており、事業団は、両学部の在籍学生数からそれぞれの1年留年者の数を控除するなどして、学校法人に対する補助金を18年度635,988,000円、19年度735,526,000円と算定していた。
 しかし、上記の1年留年者の数には、修業年限を超える在籍期間が1年を超えているため、1年留年者には該当しない学生がそれぞれ33人、11人含まれていた。
 したがって、これらを1年留年者から除外して算定すると、適正な補助金の額は18年度628,013,000円、19年度733,068,000円となり、それぞれ7,975,000円、2,458,000円、計10,433,000円が過大に交付されていた。

(567)—(571)の計 20,815,416 42,239