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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第29 独立行政法人国際交流基金|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事

文化交流を促進することなどを目的として購入した映画フィルムについて、作品の選定手続を見直し具体的な活用のための企画を提案することなどにより、効率的・効果的に利用されるよう改善させたもの


文化交流を促進することなどを目的として購入した映画フィルムについて、作品の選定手続を見直し具体的な活用のための企画を提案することなどにより、効率的・効果的に利用されるよう改善させたもの

科目 (項)運営費交付金事業費
部局等 独立行政法人国際交流基金(平成15年9月30日以前は国際交流基金)本部
事業名 フィルムライブラリー充実(本部)事業
事業の概要 外国人を対象とした非営利の映画祭等において上映するための日本映画作品を基金本部のフィルムライブラリーで収集するもの
条件付きフィルムの購入本数及び前払上映権料の額 265本 1億8575万余円 (平成7年度〜20年度)
条件が満了した本数及び前払上映権料の額 173本 1億2759万余円 (平成7年度〜17年度)
上記のうち前払上映権料の全部又は一部が失効していた本数及び額 155本 8232万円 (平成7年度〜12年度)

1 事業の概要

(1) フィルムライブラリー充実(本部)事業の概要

 独立行政法人国際交流基金(平成15年9月30日以前は国際交流基金。以下「基金」という。)は、独立行政法人国際交流基金法(平成14年法律第137号)に基づき、日本文化を海外に紹介し、映画を通じた文化交流を促進することなどを目的として、フィルムライブラリー充実(本部)事業(以下「事業」という。)を実施している。事業は、外務省の在外公館又は基金の海外事務所(以下、これらを合わせて「在外公館等」という。)が主催し又は共催する外国人を対象とした非営利の映画祭等で上映するために優れた日本映画作品を購入して、基金本部のフィルムライブラリーで収集するもので、昭和48年から実施している。事業で収集する作品は、毎年度1回、外部の6人の日本人映画評論家等による映画選定委員会が、前年に公開された作品やいわゆるクラシック作品の中から推薦作品を選定して、基金が推薦作品について映画配給会社と交渉して購入している。このようにして基金が平成20年度までに購入した16mmや35mmの映画フィルム等の数は、1,229本となっている。そして、基金本部のフィルムライブラリーが所蔵するこれらの映画フィルムは、在外公館等からの貸出しの申請に基づいて海外の上映先に送付されている。

(2) 条件付きフィルムの購入

 基金は、事業開始当初、映画配給会社から提供が受けられるフィルムの規格が限られていたことなどから、主に16mm映画フィルムを購入していたが、画質の高い作品の上映要望が高まったことなどから、7年度に劇場公開用と同じ35mm映画フィルムを購入することとして映画配給会社と交渉を行った。しかし、映画配給会社は35mm映画フィルムを非営利文化事業のために販売することに強い難色を示したため、契約においては、上映を許諾する期間(以下「上映許諾期間」という。)を最長7年間とすること、35mm映画フィルムの購入代金の他に上映1回当たり25,000円の上映権料を30回分前払することなどの条件(以下、前払する上映権料を「前払上映権料」、条件が付された35mm映画フィルムを「条件付きフィルム」という。)を付すことで合意した。
 基金は、条件付きフィルムの上映回数を、前払上映権料差引簿(以下「差引簿」という。)に記録して管理している。そして、上映許諾期間が満了した作品については、基金が更新の必要性を検討して、映画配給会社と交渉して更新を行っており、新たな上映許諾期間等の条件に基づいて前払上映権料を支払うなどしている。
 基金が7年度から20年度までに購入した条件付きフィルムの本数は265本、その購入総額は、35mm映画フィルムの購入代金等3億1512万余円、前払上映権料1億8575万余円、計5億0088万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、基金本部において、効率性、有効性等の観点から、基金が購入した条件付きフィルムについて、上映許諾期間中に上映回数を適切に管理して事業の目的に沿って有効に利用しているか、利用実績を十分に考慮して契約の更新を行っているかなどに着眼して会計実地検査を行った。
 検査に当たっては、基金が7年度から20年度までに購入した条件付きフィルム265本のうち、21年3月末までに上映許諾期間が満了したもの173本に係る契約(35mm映画フィルムの購入代金等1億6445万余円、前払上映権料1億2759万余円、計2億9204万余円)を検査の対象とした。そして、基金本部において、契約書、差引簿、上映許諾願書、事業報告書等により、事業の実施状況等を把握するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 購入した条件付きフィルムの上映回数

 上記の条件付きフィルム173本の当初契約で合意された上映許諾期間満了までの利用状況をみると、前払上映権料1億2759万余円で確保した上映可能数4,974回のうち実際に上映されたのは1,731回であり、利用率(上映された数/前払上映権料で確保した上映可能数)は34.8%に過ぎなかった。そして、前払上映権料の全部又は一部が失効した条件付きフィルムは155本であり、これに係る失効した3,243回分の前払上映権料の額は8232万余円に上っていた。このうち、一回も上映されずに前払上映権料の全部が失効していたものは19本であり、これに係る前払上映権料の額は1429万余円であった。
 基金は、前記のとおり、映画選定委員会が選定した推薦作品を購入しているが、その選定過程に在外公館等の要望などを反映させておらず、在外公館等が主催し又は共催する映画祭等において上映することを十分考慮に入れて購入作品を選定していなかった。
 また、基金本部は、前記のとおり、作品の上映回数を差引簿により把握しているが、未使用の上映可能数が多い作品について在外公館等から照会があったときなどに単に作品名等を列挙して上映するよう提案していただけで、条件付きフィルムの上映状況を適切に管理して、在外公館等がこのような作品を上映しやすくするような上映会を企画するなど具体的な提案を行っていなかった。

(2) 契約更新の決定

 基金は、前記の173本のうちの136本について、映画配給会社と交渉して契約更新を行い上映可能数を追加しており、これに係る前払上映権料として14年度から20年度までに6611万余円を支払っている。
 基金は、これらの作品を契約更新した理由について、いずれの作品も著名な監督の重要な作品であって一般的な日本映画作品の紹介又は監督特集等で上映される可能性が高いためとしていたが、契約更新時に具体的な上映の予定があったわけではなかった。このため、基金は、当初契約の上映可能数を一回も使用しないまま上映許諾期間が満了していた作品19本のうち17本について、契約更新して上映可能数を追加しており、これに係る前払上映権料774万余円を支払っていた。
 上記(1)及び(2)のように、事業用に購入した条件付きフィルムについて、利用が低調で前払上映権料を多数失効させていたり、一回も上映されずに前払上映権料の全部を失効させていたのに契約更新して新たに前払上映権料を支払っていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、基金において、次のことなどによると認められた。
ア 収集する条件付きフィルムの選定に当たり、映画祭等を主催し又は共催する在外公館等の要望や事情を反映させていなかったこと及び条件付きフィルムの上映状況を適切に管理して、未使用の上映可能数が多い作品を上映する具体的な企画を在外公館等に対して積極的に提案していなかったこと
イ 利用実績を十分に考慮することなく、一回も上映されなかった作品の多くをそのまま契約更新していたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、基金は、次のような処置を講じた。
ア 21年8月に、収集する条件付きフィルムの選定方法を改め、在外公館等に対する要望調査の結果等を作品の選定に反映させることとするとともに、同年9月に、前払上映権料の管理に関するマニュアルを制定して、作品ごとの上映状況を適切に管理し、上映回数が少ない作品を含めた上映会を組むなどの企画を提案するなど利用促進活動を積極的に行うこととした。
イ 上記のマニュアルに、利用実績がないものについては原則として更新しないこととする規定を設けた。