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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第33 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 橋りょう上部工工事における橋面防水工費の積算を市場価格調査を行うなどして適切なものとするよう改善させたもの


(2) 橋りょう上部工工事における橋面防水工費の積算を市場価格調査を行うなどして適切なものとするよう改善させたもの

科目
(建設勘定) (項)業務経費
部局等
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部北陸新幹線建設局
工事名
「北幹、夜間瀬川B他」等11工事
工事の概要
消雪のために散水した水がプレストレストコンクリート桁(けた)の内部に浸透しないように橋面防水工を施工するなどの工事
工事費
180億7552万余円
 
請負人
4会社、7共同企業体
契約
平成18年3月〜21年3月 一般競争契約
橋面防水工費の積算額
2億0412万余円
(平成17年度〜20年度)
低減できた橋面防水工費の積算額
3690万円
(平成17年度〜20年度)

1 工事の概要

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)は、新幹線鉄道の建設工事の一環として、橋りょう工事を多数実施しており、特に積雪量の多い地域では、橋りょう上部工工事において、軌道等にスプリンクラーで散水して消雪するなどの雪害対策を実施することとしている。
 そして、散水に当たっては、橋りょうのプレストレストコンクリート桁(けた)の上面等(以下「橋面」という。)に水が流下することになることから、機構は、橋面を流下する水がコンクリートに浸透することによって桁内部に挿入されている鋼材が腐食しないように、橋面に防水材を塗布する橋面防水工を施工することとしている。
 北陸新幹線建設局(以下「北陸局」という。)は、平成17年度から20年度までの間に、11橋りょう工事(工事費総額180億7552万余円)において、上記の橋面防水工を施工している。これらの11工事に係る予定価格の積算について、北陸局は、機構本社制定の「土木関係積算標準・積算要領」(以下「要領」という。)に基づいて行っており、要領によれば、材料費等については、機構の支社等が制定している材料単価表に記載されている単価を使用して積算することなどとなっている。そして、北陸局は、橋面防水工に使用する防水材について、材料単価表にその単価が記載されていないことから、物価資料(刊行物である積算参考資料をいう。以下同じ。)に掲載されている公表価格1m 当たり3,800円(労務費等を含む。)を採用するなどして、上記の11工事における橋面防水工費を2億0412万余円(施工面積計53,896m )と積算していた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 橋面防水工は、上記のとおり、北陸局において多数施工されていて、その施工費も多額に上っている。
 そこで、本院は、北陸局において、経済性等の観点から、橋面防水工費の積算が適切なものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。検査は、前記の11工事における橋面防水工費計2億0412万余円を対象として、設計図書、物価資料等の書類を確認するなどの方法により行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。
 すなわち、要領には公表価格の取扱いに関する規定がなく、北陸局は、橋面防水工費の積算に当たり、前記のとおり、物価資料に掲載されている公表価格をそのまま採用するなどしていた。
 しかし、物価資料によれば、公表価格は、メーカー等が発表している価格をそのまま掲載したもので、実際の取引では値引きされることがあるとして、利用する際には注意が必要である旨が明記されており、市場における実際の取引価格(以下「市場価格」という。)は公表価格からは相当額の値引きがあり得るものと想定された。
 現に、国土交通省制定の「土木工事標準積算基準書」においては、公表価格はメーカー等の販売希望価格であり、市場価格と異なるため、積算に用いる単価としないとしている。
 そして、本院の検査を踏まえて、機構が21年8月に橋面防水工費の市場価格について特別調査(注) を実施した結果を見ても、その価格は、同時期での物価資料に掲載された公表価格(1m 当たり3,800円)を20%程度下回るものとなっていた。
 したがって、北陸局において、橋面防水工費の積算に当たり、物価資料に掲載されている公表価格をそのまま採用するなどしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた橋面防水工費の積算額)

 上記により、本件各工事における橋面防水工費について、機構が実施した前記の特別調査の結果に基づく市場価格により修正計算すると、1億6717万余円となり、前記の積算額2億0412万余円を約3690万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構本社において、要領に公表価格の取扱いに関する規定を整備していなかったこと、また、北陸局において、公表価格は市場価格と異なることについて十分に理解していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、21年9月に要領を改正して、物価資料に掲載されている公表価格は市場価格と異なるため積算に用いる単価としないものとして、特別調査を行うなどして単価を決定することを明示するとともに、支社等に対して通知を発して、同月以降積算する工事から適用する処置を講じた。

 特別調査  材料単価の決定に当たり、物価調査機関に特定の品目を指定して市場価格を調査させるものをいう。