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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第58 日本下水道事業団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

下水道終末処理場等の再構築に係る基本設計業務の契約に当たり、透明性、競争性等の確保を図るため、随意契約を見直して競争性のある契約方式に移行するよう改善させたもの


下水道終末処理場等の再構築に係る基本設計業務の契約に当たり、透明性、競争性等の確保を図るため、随意契約を見直して競争性のある契約方式に移行するよう改善させたもの

科目
(受託業務勘定) (項)技術援助業務費
部局等
日本下水道事業団東日本、西日本両設計センター
契約の概要
下水道終末処理場等に設置されている施設の老朽化等に伴い、当該施設の再構築に係る調査及び計画を行うもの
契約件数及び契約金額
112件
8億7809万余円
(平成19、20両年度)
競争性のある契約が可能であった契約件数及び契約金額
40件
1億8233万円
(平成19、20両年度)

1 業務の概要

(1) 再構築に係る基本設計業務の概要

 日本下水道事業団(以下「事業団」という。)は、下水道の整備を促進し、もって生活環境の改善と公共用水域の水質の保全に寄与することを目的として、地方公共団体等の委託を受けて、終末処理場等の根幹的施設の建設及び維持管理、下水道に関する技術的援助等の業務を実施している。
 上記のうち、技術的援助に関する業務には、地方公共団体等の終末処理場等に設置されている土木・建築構造物や電気・機械設備の既存の施設の老朽化等に伴うこれらの施設の統廃合、機能拡充、改築等の再構築に係る設計等を行う業務(以下「再構築業務」という。)がある。
 再構築業務は、主に基本設計業務と詳細設計業務に分類され、このうち、基本設計業務は、対象施設の諸元等基本条件の確認・整理、劣化状況の診断等を行う再構築調査と、その調査結果に基づき再構築の基本方針の決定や年度別事業実施計画の策定等を行う再構築計画とから成っている。
 そして、基本設計業務の実施に当たっては、設計コンサルタントに委託して実施する場合と、技術的ノウハウの蓄積等を図るために事業団が自ら実施する場合がある。このうち、事業団が自ら実施する場合は、上記の再構築調査及び再構築計画のうち、劣化判定、基本方針の決定等の主要な業務については事業団が行っているが、対象施設の諸元等基本条件の確認・整理、劣化状況等の現地調査や、決定した基本方針に応じた施設・設備の仕様の検討、概算事業費の算出等の補助的な業務(以下「補助業務」という。)については、財団法人下水道業務管理センター(以下「財団」という。)に委託している。
 財団は、下水道の建設及び管理の計画、手法等に関する調査研究を行うとともに、事業団の業務の支援、広報等を行う公益法人として、平成3年8月に設立された法人(20年12月1日以降は特例民法法人)である。

(2) 事業団における契約方式

 事業団においては、日本下水道事業団会計規程(昭和48年規程第8号)等により、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合には、競争に付さなければならないこととされている。ただし、予定価格が少額の場合、その他事業団の事業運営上特に必要がある場合には、随意契約によることができるとされている。そして、事業団策定の「役務提供等の契約における随意契約のガイドライン」(平成11年総会発第14号)において、事業団の事業運営上特に必要がある場合の一つとして、「事業団の業務内容について、独自のノウハウ等、特に秘密の保持を必要とするために公法人と契約するとき」と規定されている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 近年、事業団の受託業務件数については、終末処理場等の建設工事はほぼ横ばいとなっているものの、技術的援助としての再構築業務は年々増加してきている。そして、基本設計業務については、前記のとおり、設計コンサルタントに全部を委託して実施する場合と、事業団が補助業務を財団に委託して実施する場合がある。また、国土交通省は、19年3月に、それまでの国や独立行政法人における随意契約の見直しの取組を踏まえ、事業団を含む所管の発注機関に対して、「平成19年度国土交通省所管事業の執行について」(国土交通事務次官通達)を発し、随意契約については、関係法令等を厳に遵守し、入札・契約に係る手続のより一層厳正な実施に努めさせることとしており、以降も同様の通達を発するなどしている。
 そこで、本院は、基本設計業務について、合規性、経済性等の観点から、前記の2通りの委託の実施に当たって、契約方式は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 事業団の東日本、西日本両設計センターにおいて、19、20両年度に契約を締結した基本設計業務112件、契約額計8億7809万余円を対象として、契約方式の理由書、仕様書等の書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 検査の対象とした112件のうち、設計コンサルタントに委託している72件については、委託元である地方公共団体の予算の都合により分割発注して、前業務に引き続き実施する後業務のため随意契約によっているものが9件、それ以外の63件は公募型競争入札方式又は公募型プロポーザル方式(注) 等の競争性のある契約となっていた。
 これに対して、財団に補助業務を委託している40件(契約額計1億8233万余円)については、すべて随意契約となっていた。
 事業団は、本件補助業務の委託に当たり、随意契約とした理由について、事業団におけるノウハウ等について秘密を保持する必要があること、基本設計業務の標準歩掛を制定するために業務の実態を継続的に把握する必要があることなどから、これらの条件に適合して、当該補助業務を機動的に行うことができるのは財団のみであるとしていた。そして、これは、前記の随意契約のガイドラインの規定に該当するとして、財団と随意契約を行っていた。
 そして、本件補助業務における財団との随意契約については、事業団が基本設計業務を自ら実施するようになった13年度から引き続き行われていた。これは、13年度当時、将来的に増加することが見込まれた再構築業務に関して、事業団の技術的ノウハウ等の不足を補うことなどから、下水道業務に関する知識・技能を有する経験者が在籍する財団と一体で業務を実施することが有効であると事業団が考えたことなどによるものであった。
 しかし、本件補助業務の随意契約の理由の一つである秘密の保持については、契約の相手方に対して、契約条項にその旨を規定することにより十分担保できるものであった。また、もう一つの理由である基本設計業務の標準歩掛の制定については、そのために必要な業務の実態調査、分析等を行っていない状況であった。さらに、基本設計業務については、13年度以前から設計コンサルタントに委託して実施しており、その場合の業務内容についてみると、財団に委託している補助業務と同じ内容の業務を含むものとなっていた。
 したがって、本件補助業務については、財団以外の設計コンサルタントも実施できるものであり、かつ、財団に行わせなければならない理由は見受けられないことから、競争に付することができたものと認められた。
 このように、事業団において、本件補助業務を委託するに当たって、複数の者が業務を実施できたのに、財団との間で随意契約を締結していて、契約の透明性、競争性等が確保されていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 公募型プロポーザル方式  プロポーザル方式とは、当該業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求されるものについて、技術提案書(プロポーザル)の提出を求め、技術的に最適な者を特定する手続をいい、これを公募により行うものを公募型プロポーザル方式という。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、事業団において、本件補助業務は財団以外の者でも実施できることについての認識が十分でなかったこと、前記の国土交通省の通達による随意契約の見直しが十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、事業団は、21年9月に、東日本、西日本両設計センターに対して、事務連絡を発し、契約の透明性、競争性等を確保するため、随意契約によっていた本件補助業務の契約について、21年度以降、公募型競争入札方式を基本とし、必要に応じて公募型プロポーザル方式によることとして、競争性のある契約方式に移行する処置を講じた。