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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成20年6月9日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月10日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、 会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 国土交通省等

(二) 検査の内容

 国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行についての次の各事項

〔1〕  契約方法、契約手続などの状況
〔2〕  契約内容、契約金額などの状況
〔3〕  契約相手方の状況
〔4〕  一般会計と特別会計における計上区分及び執行の状況

2 道路関係業務等の国会の議論等

 第169回国会(20年1月から6月)において、国土交通省の道路整備特別会計における支出の状況や一般乗用旅客自動車(以下「タクシー」という。)の使用状況について、様々な議論がなされた。また、厚生労働省の一般会計と労働保険特別会計(以下「労働特会」という。)のタクシー使用金額の支出の状況についても議論がなされた。国土交通省は、20年2月に道路関係業務の執行のあり方改革本部を設置し、支出の総点検等を行うとともに、改革の方針の検討を行った。そして、同年4月に公表された同本部の最終報告書においては、地方整備局等における支出の改革として、庁費に関連する事項についても改革の方針が示された。その主なものは、広報広聴経費の適正化、職員の福利厚生等のための経費の適正化、車両・車両管理委託の見直し、タクシー使用の適正化等である。

3 20年次の会計検査の実施状況

 会計検査院は、上記のような状況を踏まえ、20年次(検査実施期間19年10月から20年9月まで)に本件検査要請に関連した会計検査を実施しており、その結果については、「道路整備特別会計における支出の状況について」及び「国土交通省における一般乗用旅客自動車の使用状況について」として、いずれも20年10月31日に会計検査院法第36条の規定により国土交通大臣に対して意見を表示(以下、これらの意見表示を「20年次意見表示」という。)し、併せて19年度決算検査報告に掲記して、20年11月7日にこれを内閣に送付した。
 20年次意見表示のうち、今回の検査の要請に関連した部分を示すと次のとおりである。

道路整備特別会計における支出の状況について

 貴省においては、道路整備特別会計の予算執行状況について様々な議論がなされ、道路整備行政に対する信頼を損ねたことについて、早急に国民の信頼を回復するために、最終報告書に沿った改革を確実に実施するとともに、道路整備事業の実施に当たっては、より一層の適正かつ効率的な予算の執行を行うことが重要である。
 ついては、前記のような検査結果を踏まえて、道路関係業務の適正かつ効率的な予算の執行が図られるよう、次のとおり意見を表示する。
 連絡用車両の車両管理業務については、20年7月に通知を発して、年度後半から原則として一般競争契約としているが、真に競争性のある契約とするため、同通知の趣旨を徹底すること

国土交通省における一般乗用旅客自動車の使用状況について

 貴省において、タクシー乗車券の管理及び使用の確認を十分に行うためには、通知等の遵守に引き続き努めて、使用状況が明確となるよう検討して、適切な管理等を行うよう次のとおり意見を表示する。
ア タクシー会社から前もって提供されるタクシー乗車券の記入欄が、貴省が例示している記入事項に対応していないものも見受けられることから、その場合の記入方法等を協議の上明記すること
イ タクシー会社が使用済みタクシー乗車券を返却しない場合、使用年月日、使用金額、使用経路等の確認が確実にできる方策を検討すること

4 車両管理業務に関する21年次の状況

 21年6月に、公正取引委員会は、国土交通省の北海道開発局及び各地方整備局において発注された車両管理業務の入札参加業者等に対し、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)第3条の規定に違反する行為(以下「談合」という。)を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。さらに、上記の北海道開発局における談合に関して、同局の職員が未公表情報を業者に教示していた事実が認められ、この行為が「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」(平成14年法律第101号)第2条第5項第3号の規定に該当する入札談合等関与行為と認められたことから、公正取引委員会は、当該関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずることなどを国土交通大臣に求めた。

5 庁費等の概要

 国の会計は、一般会計及び特別会計に区分することとされており、特別会計については、国が特定の事業を行う場合等に限り設置するものとされている。歳入歳出予算は、その収入又は支出に関係のある部局等の組織別に区分し、その部局等内においては、歳出にあっては更にその目的に従ってこれを項に区分しなければならないこととされている。
 国土交通省所管の一般会計歳出予算は、部局等の組織として国土交通本省、地方整備局、北海道開発局、地方運輸局、地方航空局等に区分され、その組織別に項及び目が設定されている。また、特別会計においては、特別会計ごと、更に勘定がある場合は勘定ごとに項及び目が設定されているが、部局等の組織による区分はなされていない。
 予算科目としての庁費は、目の一区分の名称であり、狭義には、事務遂行上必要な物の取得、維持又は役務の調達等の目的に充てる経費として区分された目の名称であるとされているが、明確な定義はなされていない。

(1) 庁費の取扱い

 庁費については、財務省が毎年度公表している「一般会計、特別会計歳出予算目の区分表」(以下「予算目の区分表」という。)において、巻末別表1 のとおり、16項目の経費区分(以下「費途」という。)が示されている。
 庁費には、項が組織の名称となっていて、予算書上「一般行政に必要な経費」として事項整理されている庁費(以下「行政庁費」という。)のほか、項が組織の名称となっていない庁費や、情報処理業務庁費のように「情報処理業務」といった特定の名称を冠した予算科目も多くあるが、いずれも予算書で目番号として下2けたに09番の予算コードが付されている。
 また、船舶(航空機)借料、土地(建物)借料等も、予算書で目番号として下2けたに09番の予算コードが付されているが、このような名称の予算科目は、「予算目の区分表」において、船舶(航空機)の借上料というような具体的な説明がされており、当初から特定の経費のために予算措置されていて、事実上、費途が限定されている。
 そして、「予算目の区分表」においては、このように予算書で目番号として下2けたに09番の予算コードが付されている予算科目を総称して「庁費の類」と説明している。

(2) 公共事業関係費における庁費の取扱い

 公共事業関係費は予算書の主要経費別区分であり、一般会計のほか、国土交通省所管(他省との共管を含む。)の特別会計においては、社会資本整備事業特別会計(19年度までは、都市開発資金融通、治水、道路整備、港湾整備、空港整備各特別会計)のうち、治水、道路整備、港湾、空港整備、業務各勘定(19年度までは、治水、道路整備、港湾整備、空港整備各特別会計)に公共事業関係費とされている予算科目がある。一方、自動車安全特別会計(19年度までは、自動車損害賠償保障事業、自動車検査登録両特別会計)及び特定国有財産整備特別会計(財務省と共管)には公共事業関係費とされている予算科目はない。
 公共事業関係費の予算科目は、財務省が毎年度公表している「公共事業関係費予算の目及び目の細分表」に示されている。
 同表においては、公共事業関係費の予算科目は大きく工事費関係と事務費関係に二分されており、事業に必要な事務的な経費は事務費関係に区分されている。
 事務費関係の予算科目には、庁費、工事雑費等があり、予算書において目番号として下2けたに09番の予算コードが付されていて、前記16費途の一部の11又は15費途等の説明がなされている。(以下、「庁費の類」と事務費関係の庁費、工事雑費等を合わせて「09庁費」という。)
 一方、工事費関係の予算科目は、必ずしも工事請負費だけに充てられるのではなく、工事に係る光熱水料や物品等の購入等の工事に関連した経費にも適用できるとされている。このため、工事費関係のうちには、工事等に直接必要とするなどの限定はあるものの、09庁費と同様の費途に適用されるものもある(以下、工事費関係の予算科目から庁費と同様な費途に支出される経費を「庁費的経費」、09庁費に庁費的経費を合わせたものを「庁費等」という。)が、これらは予算書の下2けたに09番の予算コードは付されておらず、その予算額等を把握することはできない。
 09庁費、庁費的経費及び庁費等についての概念図は、図表0-1 のとおりとなっている。

図表0-1 09庁費、庁費的経費及び庁費等についての概念図

(一般会計、特別会計歳出予算目の区分表)   (公共事業関係費予算の目及び目の細分表)

(一般会計、特別会計歳出予算目の区分表)(公共事業関係費予算の目及び目の細分表)

(3) 歳出予算額における09庁費の割合

 18、19両年度における国土交通省所管の一般会計及び特別会計歳出予算額をみると、図表0-2のとおりとなっている。

図表0-2 国土交通省所管の一般会計及び特別会計歳出予算額(平成18、19両年度)

(単位:百万円、%)

会計名 平成18年度 19年度
歳出予算額 09庁費 割合 歳出予算額 09庁費 割合
一般会計 6,748,113 154,552 2.3 6,492,316 149,824 2.3
特別会計  特定国有財産整備特別会計 74,445 1,538 2.1 32,627 1,870 5.7
 都市開発資金融通特別会計 51,083 5 0.0 43,008 5 0.0
○治水特別会計 1,243,067 5,519 0.4 1,230,693 5,286 0.4
○道路整備特別会計 3,915,785 7,780 0.2 3,779,864 6,238 0.2
○港湾整備特別会計 335,601 1,025 0.3 333,979 969 0.3
○空港整備特別会計 572,561 73,426 12.8 567,258 70,379 12.4
 自動車損害賠償保障事業特別会計 115,463 514 0.4 81,875 471 0.6
 自動車検査登録特別会計 47,369 12,812 27.0 45,222 12,776 28.3
6,355,378 102,622 1.6 6,114,529 97,997 1.6
注(1)
 ○印は、特別会計のうち、公共事業関係費を含んだ会計である。

注(2)
 特定国有財産整備特別会計については、財務省との共管である。

 歳出予算額に占める09庁費は、18、19両年度ともに一般会計2.3%、特別会計1.6%と低い割合となっている。しかし、20年次意見表示を行った道路整備特別会計の車両管理業務やタクシー乗車券に対しては、09庁費だけではなく庁費的経費からの支払も行われていたが、前記のとおり、工事費関係の予算科目においては庁費的経費を区分していないため、庁費的経費に係る支出額等は把握されていない。

6 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 会計検査院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、20年次意見表示を踏まえつつ、国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算の執行について契約全般の状況を把握するとともに、個々の契約事務が適正に行われ、公正性、競争性、透明性が確保されているか、支出している経費区分は適切かなどの点から検査を実施した。
 検査に当たっては、国会等の議論や20年次意見表示を踏まえて、特に車両管理業務の契約の状況に留意して検査するとともに、一般会計と特別会計の計上区分及び執行の状況については、一般会計から人件費を支出している厚生労働本省職員に対して労働特会からタクシー使用金額が支出されていたことなどが国会で議論され今回の要請となった経緯を踏まえて、厚生労働省についても併せて検査することとした。
 検査においては、要請の事項別に、以下の点等に着眼して検査を実施した。

〔1〕  契約方法、契約手続などの状況

 契約方式別の組織・契約種類ごとの実績やその変化、また、平均落札率や落札率の分布はどのようになっているか、また、入札参加資格要件の設定、契約内容等の明示及び単価契約における契約単価の設定は妥当なものとなっているか

〔2〕  契約内容、契約金額などの状況

 契約の一括化、発注単位の設定及び業務の実施方法や実施範囲は妥当なものとなっているか、また、経済的な仕様の設定や料金プランの利用、又は予定価格の算定方法は妥当なものとなっているか

〔3〕  契約相手方の状況

 契約種類や契約方式別の実績やその変化、平均落札率や落札率の分布はどのようになっているか、指名競争契約や随意契約とした理由は妥当なものとなっているか、また、車両管理業務については、契約方式別の実績等に加えて、入札参加資格要件の設定や談合を行っていたとされる者との契約における平均応札者数や平均落札率はどのようになっているか

〔4〕  一般会計と特別会計における計上区分及び執行の状況

 庁費等について組織ごとの計上区分や庁費的経費からの支払、また、文書事務に共通的に使用される経費やタクシー使用金額の計上区分はどのようになっているか、前渡資金の交付や金券類の管理は妥当なものとなっているか、また、厚生労働省については、一般会計と労働特会の計上区分及び執行の状況に関して、タクシー使用金額、超過勤務手当及び両会計の業務に係る共通の経費の計上区分はどのようになっているか

(2) 検査の対象及び方法

 会計検査院は、国土交通省の外局や機関等を除いた国土交通本省(以下「本省」という。)及び地方支分部局を検査の対象とし、本省の内部部局のほか、すべての地方支分部局の本局に相当する8地方整備局、北海道開発局、9地方運輸局及び神戸運輸監理部(以下、地方運輸局と神戸運輸監理部を合わせて「地方運輸局等」という。)、2地方航空局、4航空交通管制部、さらに地方整備局及び北海道開発局管内の108事務所等を対象として検査した。また、本件事案の検査においては、在庁して関係書類の分析等を行ったほか、上記の検査対象の組織から調書を徴するとともに、391人日を要して本省及びすべての地方支分部局の本局のほか、55事務所等に対する会計実地検査を実施した。
 会計実地検査は、検査対象の組織において18年度から20年度(12月まで)に支出された庁費等に係る支出原因契約等について、国土交通省から調書を徴するなどの方法により検査するとともに、検査対象の組織別の契約状況や年間を通じての各会計間の計上区分等について関係書類の分析等を行った。
 厚生労働省についての検査は、厚生労働本省及び都道府県労働局(以下「労働局」という。)において16年度から20年度に支出された09庁費(以下「厚労省庁費」という。)並びに職員基本給、職員諸手当及び超過勤務手当(以下「人件費」という。)を対象として実施した。そして、検査の実施に当たっては、在庁して関係書類の分析を行ったほか、19年度の支出を対象として、厚生労働本省及び47労働局から調書を徴して、一般会計と労働特会における厚労省庁費及び人件費の計上区分について分析を行うとともに、26人日を要して厚生労働本省及び15労働局に対する会計実地検査を実施した。