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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行に関する会計検査の結果について


2 契約方法、契約手続などの状況

(1) 契約を取り巻く状況

ア 国の契約方式の状況

 会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)、その他の会計法令等によると、国の契約方式としては、巻末別表2 のとおり、一般競争契約及び指名競争契約(以下、両者を合わせて「競争契約」という。)並びに随意契約の三方式がある。契約方式については、機会の均等、公正性の保持、予算の効率的使用の面から一般競争契約が原則とされており、指名競争契約及び随意契約については、会計法及び予決令にそれぞれの契約によることができる場合の要件が定められている。
 また、上記法令上の契約方式とは別に、従来随意契約によっていた業務について、近年、業者選定の公平性及び透明性を向上させるための取組として、契約手続の前段階において企画競争を行う方式が導入されている。
 企画競争は、例えば、調査、研究、広報等の業務で価格のみの競争により難い場合に、複数の業者から企画書等を提出させるなどして、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続であり、その者を契約相手方として随意契約(以下、このような随意契約を「企画随契」という。)が行われることになる。

イ 政府及び国土交通省の契約方式等に対する取組

 近年、国会等において、国が締結している随意契約に関して、各省各庁の所管公益法人等と広範囲にわたり安易に随意契約を行うなど、必ずしも適切とはいえない事例があるのではないかとの議論がなされた。このような状況を踏まえて、政府は、18年2月「公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議」において「公共調達の適正化に向けた取り組みについて」を取りまとめるなど、随意契約の適正化についての取組を進めている。「公共調達の適正化に向けた取り組みについて」においては、公共工事等の入札契約の改善及び随意契約の適正化を図ることとされ、公共工事以外の入札契約の改善においても、一般競争入札の適切な実施、予定価格の適正な設定等を図るものとされている。
 これを受けて、各省庁において、同年3月までに緊急点検が実施され、同年6月にその結果及び「随意契約見直し計画」が取りまとめられ、公表された。さらに、所管公益法人等以外が契約相手方となっている随意契約についても同様の点検が行われ、19年1月にその結果及び「随意契約見直し計画」(改訂)が公表されている。
 国土交通省においてもこれらの「随意契約見直し計画」に基づき、一般競争契約、企画随契等への移行を進めてきている。

(2) 国土交通省における庁費等の契約実績

 検査対象の組織において18年度から20年度(12月まで)(注1) に締結された庁費等に係る支出原因契約(予定価格が少額である場合に認められる随意契約(以下「少額随契」という。なお、要件については巻末別表2 参照)等を除く。以下「対象契約」という。)について、提出された調書により、件数と支払金額をみると、図表2-1 のとおりとなっている。

 20年度(12月まで)  20年度については、本報告を取りまとめるに当たっての時間的制約により20年4月から12月までに締結された契約を対象とし、支払金額は20年12月までに支払われた金額である。


図表2-1  庁費等の対象契約に係る検査対象の組織別件数及び支払金額(平成18年度〜20年度(12月まで))
上段:件数、支払金額(単位:件、千円)
下段:割合(単位:%)
年度
検査対象の組織
平成18年度 19年度 20年度(12月まで)
件数 支払金額 件数 支払金額 件数 支払金額 件数 支払金額
本省 1,808
(25.5)
38,926,473
(35.0)
1,771
(26.3)
38,805,591
(33.6)
1,396
(25.6)
22,660,406
(37.8)
4,975
(25.8)
100,392,471
(35.0)
地方整備局 本局 1,494
(21.1)
20,535,498
(18.5)
1,328
(19.7)
25,215,592
(21.8)
1,069
(19.6)
6,179,232
(10.3)
3,891
(20.2)
51,930,323
(18.1)
事務所等 1,790
(25.3)
13,977,625
(12.6)
1,745
(25.9)
15,943,340
(13.8)
1,307
(24.0)
6,960,552
(11.6)
4,842
(25.1)
36,881,518
(12.9)
3,284
(46.4)
34,513,124
(31.1)
3,073
(45.6)
41,158,932
(35.6)
2,376
(43.6)
13,139,784
(21.9)
8,733
(45.3)
88,811,841
(31.0)
北海道開発局 本局 162
(2.3)
1,564,669
(1.4)
169
(2.5)
1,685,126
(1.5)
136
(2.5)
959,608
(1.6)
467
(2.4)
4,209,404
(1.5)
事務所等 345
(4.9)
2,203,843
(2.0)
279
(4.1)
2,129,894
(1.8)
241
(4.4)
1,886,847
(3.1)
865
(4.5)
6,220,584
(2.2)
507
(7.2)
3,768,512
(3.4)
448
(6.6)
3,815,020
(3.3)
377
(6.9)
2,846,456
(4.7)
1,332
(6.9)
10,429,988
(3.6)
地方運輸局等 577
(8.2)
2,359,394
(2.1)
635
(9.4)
2,386,749
(2.1)
571
(10.5)
885,487
(1.5)
1,783
(9.3)
5,631,631
(2.0)
地方航空局 732
(10.3)
30,094,617
(27.1)
653
(9.7)
28,043,930
(24.3)
600
(11.0)
19,404,260
(32.4)
1,985
(10.3)
77,542,809
(27.0)
航空交通管制部 171
(2.4)
1,412,937
(1.3)
164
(2.4)
1,418,941
(1.2)
132
(2.4)
1,029,901
(1.7)
467
(2.4)
3,861,780
(1.3)
合計 7,079
(100)
111,075,059
(100)
6,744
(100)
115,629,165
(100)
5,452
(100)
59,966,298
(100)
19,275
(100)
286,670,523
(100)
(注)
 北海道開発局の事務所等には開発建設部を含む。

 庁費等の対象契約の18年度から20年度(12月まで)の件数及び支払金額をみると、19,275件、2866億円となっていて、19年度は18年度より件数は減少しているが、支払金額はほぼ同様の額となっている。
 検査対象の組織別にみると、地方整備局は、本局と事務所等を合わせて18年度で件数割合46.4%、支払金額割合31.1%となっていて、件数割合は最も高く、支払金額割合は最も高い本省の35.0%とほぼ同程度となっている。
 19年度及び20年度(12月まで)においても、地方整備局の件数割合は、それぞれ45.6%、43.6%と18年度と同様に最も高くなっている。

(3) 契約方法の状況

ア 契約方式別の状況

 前記のとおり、国土交通省は、随意契約の見直しを実施してきており、競争契約や企画随契への移行に努めてきているとしている。そこで、庁費等の対象契約について、契約方式の変化等について分析した。
  なお、以下の分析においては、「企画随契等」は、随意契約の中から、〔1〕 企画随契、〔2〕 不落・不調随契(予決令第99条の2又は第99条の3の規定に基づき、競争に付したが入札者がいないなどのため随意契約によったものをいう。以下同じ。)の二つを合わせた、一定の競争性を経て随意契約とした契約をいい、「企画競争等を経ない随意契約」は、それ以外の随意契約をいう。ただし、応募者数の分析においては、企画随契等とせず、不落・不調随契は除外して企画随契のみの分析としている。

(ア) 検査対象の組織別の契約の状況

 検査対象の組織別に契約方式別の件数及び件数割合をみると、図表2-2 のとおりとなっている。

図表2-2  庁費等の対象契約に係る検査対象の組織別件数及び支払金額(平成18年度〜20年度(12月まで))
(単位:件、%)
契約方式
検査対象の組織
競争契約 随意契約 件数計
一般競争契約 指名競争契約 企画随契等 企画競争等を経ない随意契約
件数 件数割合 件数 件数割合 件数 件数割合 件数 件数割合
本省 平成18年度 491 27.2 3 0.2 622 34.4 692 38.3 1,808
19年度 575 32.5 3 0.2 771 43.5 422 23.8 1,771
20年度(12月まで) 571 40.9 2 0.1 607 43.5 216 15.5 1,396
地方整備局 本局 18年度 508 34.0 123 8.2 36 2.4 827 55.4 1,494
19年度 526 39.6 77 5.8 52 3.9 673 50.7 1,328
20年度(12月まで) 443 41.4 63 5.9 56 5.2 507 47.4 1,069
事務所等 18年度 595 33.2 316 17.7 31 1.7 848 47.4 1,790
19年度 818 46.9 174 10.0 77 4.4 676 38.7 1,745
20年度(12月まで) 716 54.8 92 7.0 31 2.4 468 35.8 1,307
18年度 1,103 33.6 439 13.4 67 2.0 1,675 51.0 3,284
19年度 1,344 43.7 251 8.2 129 4.2 1,349 43.9 3,073
20年度(12月まで) 1,159 48.8 155 6.5 87 3.7 975 41.0 2,376
北海道開発局 本局 18年度 85 52.5 1 0.6 - - 76 46.9 162
19年度 107 63.3 - - 5 3.0 57 33.7 169
20年度(12月まで) 77 56.6 - - 3 2.2 56 41.2 136
事務所等 18年度 173 50.1 27 7.8 2 0.6 143 41.4 345
19年度 179 64.2 22 7.9 6 2.2 72 25.8 279
20年度(12月まで) 165 68.5 21 8.7 4 1.7 51 21.2 241
18年度 258 50.9 28 5.5 2 0.4 219 43.2 507
19年度 286 63.8 22 4.9 11 2.5 129 28.8 448
20年度(12月まで) 242 64.2 21 5.6 7 1.9 107 28.4 377
地方運輸局等 18年度 158 27.4 - - 203 35.2 216 37.4 577
19年度 219 34.5 - - 322 50.7 94 14.8 635
20年度(12月まで) 296 51.8 - - 232 40.6 43 7.5 571
地方航空局 18年度 209 28.6 85 11.6 14 1.9 424 57.9 732
19年度 237 36.3 37 5.7 27 4.1 352 53.9 653
20年度(12月まで) 216 36.0 29 4.8 20 3.3 335 55.8 600
航空交通管制部 18年度 86 50.3 14 8.2 3 1.8 68 39.8 171
19年度 107 65.2 4 2.4 8 4.9 45 27.4 164
20年度(12月まで) 101 76.5 1 0.8 7 5.3 23 17.4 132
合計 18年度 2,305 32.6 569 8.0 911 12.9 3,294 46.5 7,079
19年度 2,768 41.0 317 4.7 1,268 18.8 2,391 35.5 6,744
20年度(12月まで) 2,585 47.4 208 3.8 960 17.6 1,699 31.2 5,452

 庁費等の対象契約の件数及び件数割合を契約方式別にみると、一般競争契約は、18年度2,305件(32.6%)、19年度2,768件(41.0%)、企画随契等は、18年度911件(12.9%)、19年度1,268件(18.8%)となっていて、件数は増加し件数割合は上昇している。また、指名競争契約は、18年度569件(8.0%)、19年度317件(4.7%)、企画競争等を経ない随意契約は、18年度3,294件(46.5%)、19年度2,391件(35.5%)となっていて、両契約方式とも件数は減少し件数割合は低下している。その結果、件数割合でみると18年度では企画競争等を経ない随意契約が最も高かったが、19年度では一般競争契約が最も高くなり、20年度(12月まで)は更にその差が大きくなっている。
 契約方式別に件数割合の高い検査対象の組織をみると、一般競争契約は北海道開発局及び航空交通管制部がいずれの年度も50%を超えており、指名競争契約は地方整備局及び地方航空局がいずれも18年度の10%程度から年々低下する傾向にある。企画随契等は本省及び地方運輸局等が30%程度から50%程度で推移していて、企画競争等を経ない随意契約は地方整備局、地方航空局が50%前後となっている。
 また、検査対象の組織別に契約方式別の支払金額及び支払金額割合をみると、図表2-3 のとおりとなっている。

図表2-3  検査対象の組織別、契約方式別の支払金額及び支払金額割合(平成18年度〜20年度(12月まで))
(単位:千円、%)
契約方式
検査対象の組織
競争契約 随意契約 支払金額計
一般競争契約 指名競争契約 企画随契等 企画競争等を経ない随意契約
支払金額 支払金額割合 支払金額 支払金額割合 支払金額 支払金額割合 支払金額 支払金額割合
本省 平成18年度 5,867,675 15.1 7,035 0.0 7,466,518 19.2 25,585,244 65.7 38,926,473
19年度 7,292,471 18.8 16,167 0.0 11,732,254 30.2 19,764,698 50.9 38,805,591
20年度(12月まで) 4,847,252 21.4 2,184 0.0 10,930,599 48.2 6,880,371 30.4 22,660,406
地方整備局 本局 18年度 8,758,443 42.7 905,674 4.4 461,368 2.2 10,410,012 50.7 20,535,498
19年度 8,735,764 34.6 657,836 2.6 999,251 4.0 14,822,739 58.8 25,215,592
20年度(12月まで) 2,803,183 45.4 110,286 1.8 252,901 4.1 3,012,861 48.8 6,179,232
事務所等 18年度 4,949,015 35.4 4,664,264 33.4 525,361 3.8 3,838,983 27.5 13,977,625
19年度 7,618,789 47.8 4,138,190 26.0 802,030 5.0 3,384,329 21.2 15,943,340
20年度(12月まで) 3,376,276 48.5 1,822,657 26.2 195,865 2.8 1,565,751 22.5 6,960,552
18年度 13,707,459 39.7 5,569,939 16.1 986,729 2.9 14,248,996 41.3 34,513,124
19年度 16,354,553 39.7 4,796,026 11.7 1,801,282 4.4 18,207,068 44.2 41,158,932
20年度(12月まで) 6,179,459 47.0 1,932,944 14.7 448,767 3.4 4,578,613 34.8 13,139,784
北海道開発局 本局 18年度 919,729 58.8 11,602 0.7 - - 633,337 40.5 1,564,669
19年度 1,238,001 73.5 - - 43,784 2.6 403,340 23.9 1,685,126
20年度(12月まで) 602,222 62.8 - - 27,879 2.9 329,507 34.3 959,608
事務所等 18年度 859,286 39.0 703,736 31.9 8,295 0.4 632,524 28.7 2,203,843
19年度 992,606 46.6 668,373 31.4 47,703 2.2 421,211 19.8 2,129,894
20年度(12月まで) 1,085,928 57.6 462,949 24.5 110,715 5.9 227,254 12.0 1,886,847
18年度 1,779,015 47.2 715,338 19.0 8,295 0.2 1,265,861 33.6 3,768,512
19年度 2,230,608 58.5 668,373 17.5 91,487 2.4 824,551 21.6 3,815,020
20年度(12月まで) 1,688,150 59.3 462,949 16.3 138,594 4.9 556,761 19.6 2,846,456
地方運輸局等 18年度 674,259 28.6 - - 881,662 37.4 803,473 34.1 2,359,394
19年度 806,735 33.8 - - 1,277,341 53.5 302,671 12.7 2,386,749
20年度(12月まで) 577,854 65.3 - - 263,471 29.8 44,161 5.0 885,487
航空交通管制部 18年度 4,893,590 16.3 739,391 2.5 205,459 0.7 24,256,175 80.6 30,094,617
19年度 9,662,849 34.5 279,389 1.0 376,810 1.3 17,724,881 63.2 28,043,930
20年度(12月まで) 3,652,716 18.8 45,608 0.2 21,204 0.1 15,684,731 80.8 19,404,260
航空交通管制部 18年度 968,912 68.6 33,822 2.4 9,854 0.7 400,347 28.3 1,412,937
19年度 1,114,733 78.6 19,005 1.3 22,289 1.6 262,913 18.5 1,418,941
20年度(12月まで) 876,712 85.1 11,466 1.1 33,423 3.2 108,300 10.5 1,029,901
合計 18年度 27,890,912 25.1 7,065,527 6.4 9,558,520 8.6 66,560,099 59.9 111,075,059
19年度 37,461,951 32.4 5,778,962 5.0 15,301,466 13.2 57,086,784 49.4 115,629,165
20年度(12月まで) 17,822,146 29.7 2,455,151 4.1 11,836,059 19.7 27,852,940 46.4 59,966,298

 庁費等の対象契約の支払金額及び支払金額割合を契約方式別にみると、全体では、件数及び件数割合と同様に、一般競争契約及び企画随契等については、支払金額は増加し支払金額割合は上昇していて、指名競争契約及び企画競争等を経ない随意契約については、支払金額は減少し支払金額割合は低下している。ただし、件数割合でみた場合と異なり、支払金額割合においてはいずれの年度においても企画競争等を経ない随意契約が最も高く、19年度、20年度(12月まで)ともに次に高い一般競争契約よりも約17ポイント高くなっている。
 契約方式別に支払金額割合の高い検査対象の組織をみると、一般競争契約は北海道開発局及び航空交通管制部がいずれの年度もおおむね50%を超えており、指名競争契約は地方整備局及び北海道開発局が10%から20%程度で推移している。企画随契等は本省及び地方運輸局等が20%から50%程度で推移しており、企画競争等を経ない随意契約は本省及び地方航空局が18、19両年度とも50%を超えている。

(イ) 契約種類別の契約方式の状況

 庁費等の対象契約を「役務」、「物品等の購入」、「物品等の製造」、「物品等の賃借」、「工事(設計、調査等を含む。)」に分類して、それぞれについて契約方式別に件数割合の変化をみると、図表2-4 のとおりとなっている。

図表2-4 契約種類別の契約方式の変化(件数割合)(平成18年度〜20年度(12月まで))

〔1〕 役務(18年度4,356件、19年度4,173件、20年度(12月まで)3,443件)

〔1〕役務(18年度4,356件、19年度4,173件、20年度(12月まで)3,443件)

〔2〕 物品等の購入(18年度1,040件、19年度913件、20年度(12月まで)573件)

〔2〕物品等の購入(18年度1,040件、19年度913件、20年度(12月まで)573件)

〔3〕 物品等の製造(18年度104件、19年度92件、20年度(12月まで)67件)

〔3〕物品等の製造(18年度104件、19年度92件、20年度(12月まで)67件)

〔4〕 物品等の賃借(18年度1,328件、19年度1,301件、20年度(12月まで)1,156件)

〔4〕物品等の賃借(18年度1,328件、19年度1,301件、20年度(12月まで)1,156件)

〔5〕 工事(設計、調査等を含む。)(18年度251件、19年度265件、20年度(12月まで)213件)

〔5〕工事(設計、調査等を含む。)(18年度251件、19年度265件、20年度(12月まで)213件)

 契約種類別に件数をみると、各年度とも「役務」が最も多く、その次に多いのは「物品等の賃借」となっている。「物品等の製造」、「工事(設計、調査等を含む。)」は、上記2つの契約種類と比較して件数が少ない。
 「役務」については、企画競争等を経ない随意契約は、18年度41.8%と最も高くなっているが、19年度24.9%、20年度(12月まで)16.9%と低下している。指名競争契約も、18年度8.7%、19年度4.6%、20年度(12月まで)3.3%と低下し、一般競争契約は、18年度30.0%、19年度41.7%、20年度(12月まで)53.3%と上昇している。
 「物品等の購入」については、一般競争契約は、18年度68.6%、19年度79.0%、20年度(12月まで)81.0%と上昇していて、契約種類の中では最も割合が高くなっている。
 「物品等の賃借」については、企画競争等を経ない随意契約は、18年度88.0%、19年度87.4%、20年度(12月まで)85.6%と低下しているが、なお最も割合が高くなっている。
 上記契約種類別に契約方式別の支払金額割合の変化をみると、図表2-5 のとおりとなっている。

図表2-5 契約種類別の契約方式の変化(支払金額割合)(平成18年度〜20年度(12月まで))

〔1〕 役務(18年度68,728,070千円、19年度74,130,735千円、20年度(12月まで)32,733,351千円)

〔1〕役務(18年度68,728,070千円、19年度74,130,735千円、20年度(12月まで)32,733,351千円)

〔2〕 物品等の購入(18年度8,894,910千円、19年度7,337,802千円、20年度(12月まで)3,249,810千円)

〔2〕物品等の購入(18年度8,894,910千円、19年度7,337,802千円、20年度(12月まで)3,249,810千円)

〔3〕 物品等の製造(18年度3,811,164千円、19年度2,981,315千円、20年度(12月まで)508,753千円)

〔3〕物品等の製造(18年度3,811,164千円、19年度2,981,315千円、20年度(12月まで)508,753千円)

〔4〕 物品等の賃借(18年度25,018,059千円、19年度25,258,022千円、20年度(12月まで)22,179,159千円)

〔4〕物品等の賃借(18年度25,018,059千円、19年度25,258,022千円、20年度(12月まで)22,179,159千円)

〔5〕 工事(設計、調査等を含む。)(18年度4,622,853千円、19年度5,921,289千円、20年度(12月まで)1,295,223千円)

〔5〕工事(設計、調査等を含む。)(18年度4,622,853千円、19年度5,921,289千円、20年度(12月まで)1,295,223千円)

 契約種類別に支払金額をみると、件数と同様に「役務」と「物品等の賃借」が多く、「物品等の製造」、「工事(設計、調査等を含む。)」は少ない。
 「役務」の契約方式別の支払金額割合をみると、企画競争等を経ない随意契約は、18年度56.2%、19年度41.0%、20年度(12月まで)16.0%と低下していて、一般競争契約は、18年度22.5%、19年度33.4%、20年度(12月まで)41.1%と上昇している。
 「物品等の賃借」の支払金額割合をみると、企画競争等を経ない随意契約が各年度とも90%台後半と極めて高くなっているが、この中には土地建物の賃貸借契約や、物品等の複数年度にわたるリース契約等が含まれている。

(ウ) 契約方式別の応札(応募)者数の状況

 契約の競争性が発揮されるためには、なるべく多数の者が応札(応募)する状況の下で適切な競争が行われることが重要である。
 競争契約及び企画随契の契約方式別の応札(応募)者数をみると、図表2-6 のとおりとなっている。

図表2-6  契約方式別の応札(応募)者数の状況(件数割合)(平成18年度〜20年度(12月まで))
(単位:%)
契約方式
応札(応募)者数
年度
1者 2者 3者 4者 5者以上
競争契約 一般競争契約 平成18年度 41.0 20.0 13.3 7.2 18.5 100
19年度 48.7 20.2 11.4 7.1 12.5 100
20年度(12月まで) 50.9 19.7 11.1 6.5 11.7 100
指名競争契約 18年度 - 19.7 17.4 12.8 50.1 100
19年度 - 25.6 12.3 12.6 49.5 100
20年度(12月まで) 1.0 16.3 14.9 15.4 52.4 100
随意契約 企画随契 18年度 45.9 22.0 12.3 10.4 9.5 100
19年度 50.3 19.4 14.4 7.1 8.8 100
20年度(12月まで) 44.3 20.7 13.5 6.9 14.7 100

 応札(応募)者数別にみると、一般競争契約と企画随契は、いずれの年度とも1者応札(応募)の割合が40%以上と最も高くなっており、さらに、一般競争契約においては、1者応札の件数割合は18年度41.0%、19年度48.7%、20年度(12月まで)50.9%と上昇する一方、5者以上応札の件数割合は18年度18.5%から19年度12.5%、20年度(12月まで)11.7%と低下している。
 また、指名競争契約は、いずれの年度とも5者以上応札の割合が約50%と最も高くなっており、応札(応募)者数は、一般競争契約及び企画随契と大きく異なっ ている。
 指名競争契約が他の契約方式と比較して応札者数が多い傾向にあるのは、指名競争契約の入札は、発注者が指名した者のみにより行われること、指名に当たっては、予決令によりなるべく10人以上指名しなければならないとされていること によるものと推定される。
 契約種類の中から、件数、支払金額の多い「役務」、「物品等の購入」、「物品等の賃借」について、契約方式別の応札(応募)者数をみると、図表2-7 のとおりとなっている。

図表2-7 契約種類別の応札(応募)者数の状況(平成18年度〜20年度(12月まで))
(単位:%)
契約方式 契約種類
応札(応募)者数
年度
件数
(件)
1者 2者 3者 4者 5者
以上
競争契約 一般競争契 役務 平成18年度 1,306 49.4 19.5 12.5 5.8 12.8 100
19年度 1,739 57.2 18.7 10.1 6.1 7.9 100
20年度(12月まで 1,836 55.8 19.2 10.4 6.2 8.4 100
物品等の購入 18年度 713 30.2 19.5 11.6 8.1 30.6 100
19年度 721 29.5 23.2 13.3 9.4 24.5 100
20年度(12月まで) 464 34.7 18.5 12.7 8.0 26.1 100
物品等の賃借 18年度 147 24.5 26.5 23.1 14.3 11.6 100
19年度 160 50.6 21.3 15.0 7.5 5.6 100
20年度(12月まで) 164 52.4 20.7 13.4 6.1 7.3 100
指名競争契約 役務 18年度 379 - 26.4 22.7 16.1 34.8 100
19年度 193 - 35.8 17.1 16.1 31.1 100
20年度(12月まで) 114 0.9 24.6 20.2 25.4 28.9 100
物品等の購入 18年度 64 - 9.4 10.9 4.7 75.0 100
19年度 28 - 17.9 7.1 17.9 57.1 100
20年度(12月まで) 15 - 20.0 53.3 6.7 20.0 100
物品等の賃借 18年度 12 - 33.3 - 16.7 50.0 100
19年度 2 - 50.0 50.0 - - 100
20年度(12月まで) - - - - - - -
随意契約 企画随契 役務 18年度 826 47.5 22.6 11.4 9.8 8.7 100
19年度 1,173 51.7 19.6 14.1 6.6 8.0 100
20年度(12月まで) 876 45.0 20.8 13.0 7.0 14.3 100
物品等の購入 18年度 - - - - - - -
19年度 1 - 100.0 - - - 100
20年度(12月まで 1 - - 100.0 - - 100
物品等の賃借 18年度 - - - - - - -
19年度 1 100.0 - - - - 100
20年度(12月まで) - - - - - - -

 一般競争契約について契約種類別にみると、「役務」が1者応札の件数割合が50%前後となっており、「物品等の賃借」は、1者応札の件数割合が18年度24.5%から上昇して19年度、20年度(12月まで)とも50%以上となっている。
 指名競争契約について契約種類別にみると、いずれも18年度から19年度に件数がおおむね半分以下となり、指名競争契約の適用は少なくなっている。また、「役務」以外は件数が100件未満と少なく、「物品等の賃借」については、19年度以降ほとんど実績はない。指名競争契約は、前記のとおり、5者以上の応札者数の件数割合が比較的高くなっているが、19年度、20年度(12月まで)においてはいずれも前年度より低下していて、比較的応札者数の多い契約が一般競争契約等他の方式に移行していることが推定される。
 企画随契について契約種類別にみると、「役務」以外の件数はほとんどない。
 「役務」については、1者応募の件数割合が50%前後と最も高く、応募者数が少なくなるほど件数割合が上昇する傾向となっている。

イ 落札率の状況

(ア) 契約方式別の落札率の状況

 契約金額の予定価格に対する比率である落札率は、予定価格の妥当性や契約方式の特性などから、その高低だけをもって一律に評価することはできない面はあるものの、契約の競争性や予算執行の経済性及び効率性を評価する際の指標の一つと考えられる。
 庁費等に係る対象契約について、契約方式別の平均落札率、落札率の分布をみると、図表2-8 のとおりとなっている。

図表2-8 
契約方式別の落札率の分布状況 (件数割合) (平成18年度〜20年度(12月まで))

(単位:%)
落札率\契約方式 競争契約 随意契約
一般競争契約 指名競争契約 企画随契等 企画競争等を経ない随意契約
平成18年度

19年度

20年度(12月まで) 18年度

19年度

20年度(12月まで) 18年度

19年度

20年度(12月まで) 18年度

19年度

20年度(12月まで)
90%以上 54.5 57.7 56.4 60.5 64.1 61.2 90.5 90.1 92.8 91.4 91.4 97.3
  100% 6.7 7.9 6.3 3.5 3.5 2.5 9.8 7.4 6.8 61.5 70.4 83.0
95%以上100%未満 33.0 36.4 35.4 38.8 42.6 46.8 70.2 70.8 75.8 25.0 17.9 12.9
90%以上95%未満 14.9 13.5 14.7 18.3 17.9 11.9 10.5 11.9 10.2 4.8 3.1 1.4
85%以上90%未満 9.1 8.8 9.2 8.6 8.7 6.5 4.0 4.8 3.3 2.0 1.0 0.7
80%以上85%未満 7.1 6.6 7.2 5.7 4.5 8.0 2.3 2.2 1.5 0.7 0.4 0.1
75%以上80%未満 5.1 5.1 5.6 2.9 2.2 2.0 1.5 0.6 1.0 0.4 0.0 0.1
70%以上75%未満 4.2 4.2 3.6 4.2 3.5 5.0 0.5 1.1 0.5 0.1 0.2 0.5
65%以上70%未満 3.8 3.5 4.0 3.1 3.5 5.0 0.5 0.5 0.3 0.3 0.2 0.2
60%以上65%未満 3.2 3.3 3.0 3.3 4.8 2.5 0.2 0.4 0.1 2.8 4.0 0.3
55%以上60%未満 2.4 2.3 1.9 2.9 1.6 2.5 - 0.2 0.1 0.2 0.2 0.2
50%以上55%未満 2.1 1.9 1.7 1.8 3.2 3.0 - - - 1.6 2.4 0.2
50%未満 8.4 6.6 7.4 6.9 3.8 4.5 0.3 0.2 0.3 0.5 0.2 0.5
100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100
平均落札率 83.7 85.3 84.8 85.6 87.0 86.4 96.4 96.3 96.8 96.4 96.3 98.8

 18年度の平均落札率をみると、競争契約は一般競争契約が83.7%、指名競争契約が85.6%とほぼ同様の値となっているのに対し、随意契約は企画随契等及び企画競争等を経ない随意契約ともに96.4%となっていて、競争契約と比較して随意契約は10ポイント以上高くなっている。この状況は、19年度、20年度(12月まで)もほぼ同様であり、そのうち19年度の契約方式別の落札率の分布状況は図表2-9 のとおりとなっている。

図表2-9 契約方式別の落札率の分布状況(件数割合)(平成19年度)

図表2-9契約方式別の落札率の分布状況(件数割合)(平成19年度)

 契約方式別に落札率の分布をみると、落札率が90%以上となっている契約の件数割合は、一般競争契約及び指名競争契約は、それぞれ57.7%、64.1%となっているが、企画随契等及び企画競争等を経ない随意契約は、それぞれ90.1%、91.4%となっている。
 このように競争契約と比較すると随意契約の落札率は90%以上に集中していて平均落札率も高いものとなっている。

(イ) 応札者数による落札率の状況

 19年度の一般競争契約について、応札者数別に、平均落札率と落札率の件数割合の分布をみると、図表2-10 のとおりとなっている。

図表2-10
 一般競争契約における応札者数と落札率の状況(件数割合)(平成19年度)

(単位:%)
応札者数
落札率
1者 2者 3者 4者 5者以上
90%以上 76.9 49.9 34.2 27.1 35.0 57.7
  100% 13.0 4.6 1.6 1.1 3.2 7.9
95%以上100%未満 49.3 28.5 20.5 17.0 24.1 36.4
90%以上95%未満 14.5 16.8 12.1 9.0 7.6 13.5
85%以上90%未満 7.8 8.5 9.1 10.6 12.1 8.8
80%以上85%未満 5.6 7.4 8.8 9.0 5.9 6.6
75%以上80%未満 2.9 6.8 8.5 8.5 6.2 5.1
70%以上75%未満 1.8 6.1 5.9 7.4 6.8 4.2
65%以上70%未満 0.9 5.2 7.5 7.4 5.0 3.5
60%以上65%未満 1.1 4.2 3.9 9.0 6.5 3.3
55%以上60%未満 1.1 2.6 2.9 4.8 4.1 2.3
50%以上55%未満 0.4 2.4 4.6 4.3 2.9 1.9
50%未満 1.5 7.0 14.7 11.7 15.6 6.6
100 100 100 100 100 100
平均落札率 92.6 82.5 75.8 74.8 75.7 85.3

 一般競争契約における応札者数別の平均落札率は、1者応札が92.6%と最も高く、5者以上応札が75.7%となっていて、応札者数が増加するにしたがって低下する傾向となっている。
 落札率の分布についてみても、落札率が90%以上となっている契約の件数割合は、1者応札が76.9%と最も高く、5者以上応札が35.0%となっていて、平均落札率と同様に応札者数が増加するにしたがって低下する傾向となっている。
 また、19年度の指名競争契約について、応札者数別に平均落札率及び落札率の件数割合の分布をみると、図表2-11 のとおりとなっている。

図表2-11
 一般競争契約における応札者数と落札率の状況(件数割合)(平成19年度)

(単位:%)
応札者数
落札率
1者 2者 3者 4者 5者以上
90%以上 - 90.1 66.7 71.8 47.7 64.1
  100% - 4.9 7.7 - 2.6 3.5
95%以上100%未満 - 71.6 46.2 53.8 23.5 42.6
90%以上95%未満 - 13.6 12.8 17.9 21.6 17.9
85%以上90%未満 - 1.2 7.7 12.8 11.8 8.7
80%以上85%未満 - 1.2 5.1 5.1 5.9 4.5
75%以上80%未満 - 1.2 - - 3.9 2.2
70%以上75%未満 - 1.2 2.6 5.1 4.6 3.5
65%以上70%未満 - 1.2 2.6 - 5.9 3.5
60%以上65%未満 - 1.2 - 2.6 8.5 4.8
55%以上60%未満 - 1.2 2.6 - 2.0 1.6
50%以上55%未満 - 1.2 7.7 - 3.9 3.2
50%未満 - - 5.1 2.6 5.9 3.8
- 100 100 100 100 100
平均落札率 - 94.6 86.9 90.3 82.1 87.0

 指名競争契約における応札者数別の平均落札率は、該当のない1者応札を除き、2者応札が94.6%と最も高く、5者以上応札が82.1%と応札者数が増加するにしたがって低下する傾向となっている。
 落札率の分布についてみても、落札率が90%以上となっている契約の件数割合は、2者応札が90.1%と最も高く、5者以上応札が47.7%と最も低くなっていて、平均落札率と同様に応札者数が増加するにしたがって低下する傾向となっている。

(4)  契約手続の状況

ア 一般競争契約の入札参加資格要件の設定

 一般競争契約は、競争参加者を広く一般に求める方式であるが、全く無制限に参加を認めたのでは不信用、不誠実な者の参加により契約の履行が確保できなくなるおそれがあるため、競争に参加するための一定の資格要件(以下「入札参加資格要件」という。)が定められている。
 この入札参加資格要件には、国との契約において不正の事実があった者は競争に参加させないことができるなどとする欠格要件(予決令第70条及び第71条)のほか、一般競争契約の入札に参加する者が具備する必要があると認められる資格を定めた積極要件(予決令第72条及び第73条)もあり、契約種類別に、その金額等に応じ、 工事、製造又は販売等の実績、従業員数、資本の額その他の経営の規模及び経営の状況に関する事項について必要な資格を定めることができる(予決令第72条)とされている。
 庁費等の対象契約については、前記のように企画競争等を経ない随意契約の見直しにより一般競争契約の実績が増加しているが、一般競争契約の競争性を確保するためには、入札参加資格要件が適切に設定され、受注希望者を必要以上に排除することのないようにしなければならない。
 契約種類別に入札参加資格要件の19年度及び20年度(12月まで)の設定状況をみると、図表2-12 のとおりとなっている。

図表2-12
 契約種類別の入札参加資格要件の設定状況(件数割合)(平成19年度及び20年 度(12月まで))

(単位:%)
契約種類
入札参加資格要件の内容
年度
契約実績の有無 技術者等の資格を求めている契約
契約実績を求めている契約 契約実績を求めていない契約 合計
公的機関との契約実績 左記以外の契約実績
国土交通省の機関に限定 国の機関に限定 公的機関に限定
役務 平成19年度 5.0 3.9 11.8 20.8 24.5 54.7 100 23.0
20年度(12月まで) 4.1 5.1 11.3 20.4 25.6 54.0 100 25.1
物品等の購入 19年度 6.4 1.1 3.1 10.5 15.7 73.8 100 1.2
20年度(12月まで) 5.0 - 3.2 8.2 13.6 78.2 100 2.6
物品等の製造 19年度 - - 8.6 8.6 14.3 77.1 100 -
20年度(12月まで) - 7.0 5.3 12.3 31.6 56.1 100 1.8
物品等の賃借 19年度 1.9 1.9 1.9 5.6 29.4 65.0 100 5.6
20年度(12月まで) - 0.6 1.8 2.4 25.6 72.0 100 3.7
工事(設計、調査等を含む。) 19年度 - - 7.7 7.7 59.0 33.3 100 84.6
20年度(12月まで) - - 4.7 4.7 62.5 32.8 100 81.3
19年度 4.9 2.9 8.8 16.5 23.2 60.3 100 17.5
20年度(12月まで) 3.8 3.8 8.9 16.5 24.5 59.0 100 20.5
(注)
 契約実績の有無の合計と技術者等の資格を求めている契約は重複する。

 契約実績を求めている契約のうち、国土交通省の機関に限定した契約実績を求めているものは、19年度及び20年度(12月まで)ともに5%を下回っているが、公的機関との契約実績を求めている件数割合は、両年度ともに16.5%となっている。
 また、公的機関との契約実績を求めている契約は、「役務」において、件数割合で19年度20.8%、20年度(12月まで)20.4%となっていて、契約種類のうちでは最も割合が高くなっている。
 技術者等の資格を求めている契約は、19年度及び20年度(12月まで)の件数割合で「工事(設計、調査等を含む。)」は、84.6%、81.3%、「役務」は、23.0%、25.1%となっているが、「物品等の購入」、「物品等の製造」及び「物品等の賃借」は、5.6%以下と低くなっている。
 入札参加資格要件に、公的機関との契約実績を求めている契約について、主な契約内容及び件数等をみると、図表2-13 のとおりとなっている。

図表2-13
 公的機関との契約実績を求めている主な契約内容及び件数等(平成19年度及び20年度(12月まで))

(単位:件、%)
区分 平成19年度 20年度(12月まで)
主な契約内容 件数 割合 主な契約内容 件数 割合
1 器具機械等の修繕、各種保守 69 (15.1) 器具機械等の修繕、各種保守 62 (14.5)
2 事務効率化等のためのシステム開発・運用 46 (10.0) 清掃 53 (12.4)
3 清掃 37 (8.1) 事務効率化等のためのシステム開発・運用 51 (11.9)
4 警備保安業務 35 (7.6) 警備保安業務 32 (7.5)
5 印刷製本 28 (6.1) 車両管理業務 24 (5.6)
  その他(上記以外) 243 (53.1) その他(上記以外) 205 (48.0)
458 (100) 427 (100)
(注)
 主な契約内容は、巻末別表1 の「予算目の区分表」に掲載されている経費区分(費途)ごとの適用内容を参考に分類して件数を集計している。

 19年度において、入札参加資格要件に公的機関との契約実績を求めている契約のうち件数が最も多かった契約内容は、器具機械等の修繕、各種保守の69件(15.1%)となっており、20年度(12月まで)も62件(14.5%)と同様となっている。また、19年度及び20年度(12月まで)ともに、上位5区分の契約内容で全体の約5割を占めており、主な契約内容もほぼ同様となっている。
 上記の入札参加資格要件の設定に関して、その内容を必要以上に限定していて応札者の範囲が制限される可能性があったと認められる事態が、巻末別表3 のとおり30事項見受けられた。その事例を示すと次のとおりである。

 なお、以下の事例中における契約金額の記載は、18、19両年度の契約は年間の支払金額とし、20年度(12月まで)の契約は単価契約によるものは12月までの支払金額、総価契約によるものは当初契約金額を記載している。

<事例1>

[入札参加資格要件を公的機関との契約実績に限定しているもの]

 東京航空局は、平成18年度から20年度に、新潟空港事務所の庁舎等の清掃業務について、民間企業と一般競争契約(契約金額:18年度3,969千円、19年度4,830千円、20年度(12月まで)3,837千円)を行っていて、応札者数は18年度2者、19年度1者、20年度2者となっていた。
 上記の入札に当たっては、公的機関(国、都道府県等)との清掃業務の契約実績を有することなどを入札参加資格要件としている。しかし、特に公的機関との契約実績に限定する必要はないと考えられることから、より多くの者が参加可能となるよう、この要件の緩和について検討すべきであったと認められる。

<事例2>

[業務従事者の要件を限定しているもの]

 近畿地方整備局豊岡河川国道事務所は、平成18年度に、同事務所が保有している行政文書の整理・分類等を行う業務について、社団法人近畿建設協会と随意契約(契約金額:10,185千円)を行っていた。これについて、同事務所は、19年度より一般競争契約に移行することとし、19、20両年度において入札を行ったところ、いずれも従来の契約相手方だけの1者応札となり、同者と契約(契約金額:19年度15,645千円、20年度(12月まで)7,560千円)を行った。
 上記の入札に当たっては、業務に従事させることとするすべての業務従事者が、14年度以降において、国の機関、地方公共団体、特殊法人、公益法人における「行政文書の整理業務」、「行政文書の分類業務」と同種又は類似の業務に関する実務経験を有する者であることなどを入札参加資格要件としていた。しかし、同業務の内容には、業務管理責任者の管理の下に行う、書類の運搬等の軽作業も含まれ、業務従事者全員が実務経験を有することとする必要はないと考えられることから、より多くの者が参加可能となるよう、この要件の緩和について検討すべきであったと認められる。

イ 契約内容等の明示

 一般競争契約の入札の実施に当たっては、関係業者に入札を周知するため、上記の入札参加資格要件のほか、競争入札に付する事項、競争執行の場所及び日時等を、官報、新聞紙、掲示その他の方法をもって公告することとされている(予決令第74条及び第75条)。
 そして、希望者に対しては、入札参加の判断の決定や入札金額の算定の資料として、更に詳細に当該契約の購入物、業務内容について説明した説明書、仕様書等を明示することとしている。また、企画競争を実施する場合にも、実施業務の詳細な説明、提案書提出者に求めるべき資格、提案書の作成様式及び記載上の留意事項に付する内容、提案書の特定をするための評価基準等について庁舎内に掲示したり説明書を配布したりして明示し、広く一般に提案を求めることとしている。この明示状況についてみると、仕様書等に十分業務内容が記載されていないなどの事態が、巻末別表3 のとおり18事項見受けられた。その事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

[入札の際の仕様書における業務内容の明示が十分でないもの]

 東北地方整備局(港湾空港関係)は、平成18年度から20年度に、港湾空港部内に構築してある情報システムやネットワークの稼働状況を監視したり、システムの障害発生時の対応等を行ったりする情報システム保守管理業務について、民間企業と一般競争契約(契約金額:18年度31,752千円、19年度33,337千円、20年度(12月まで)33,768千円)を行っていたが、応札者は、いずれの年度も同一の1者となっていた。
 上記の入札に当たっては、特に厳しい入札参加資格要件は課されていないものの、仕様書をみると、過去の障害発生時の対応実績が明示されておらず、従来の契約相手方しか業務量の把握ができない内容となっていた。したがって、従来の契約相手方以外の者でも業務量について容易に把握することができるよう、仕様書の記載内容に当該実績を明記することなどについて検討をすべきであったと認められる。

<事例4>

 [企画競争の審査における評価内容や審査方法の明示が十分でないもの]

 北海道運輸局は、平成19年度に、北海道における航空をとりまく物流の活性化に係る調査・検討をする業務について、業務の実施方法等や遂行能力が最も優れた者を選定する企画競争を実施したところ、2者から応募があり、このうち提出された提案書の審査点の高かった社団法人北海道総合研究調査会と随意契約(契約金額:1,785千円)を行った。
 上記の契約について企画競争の審査内容をみると、業務内容の理解度、具体性、独創性等の提案内容の審査とともに、業務実施の確実性の審査を実施することとし、その内容は会社等としての実績、配置予定技術者の実績として過去5年以内に同種又は類似の業務で実績を挙げていることなどとされていた。
 しかし、本件業務と同種又は類似の業務に該当する業務の内容や実績の有無等による採点の方法等、具体的な内容は明示されておらず、各審査員が10点満点の審査を行うこととされているにすぎないものとなっていた。業務実績に関する審査は、提案者に関する客観的な事実を審査するものであるから、実績として評価する業務内容を明確化して受注希望者に適切な情報を提供するとともに、客観的かつ合理的な審査内容となるよう審査方法を定めることが必要であったと認められる。

ウ 単価契約における契約単価の設定

 契約種類には、請負契約のように、総価により契約する総価契約と、時間単価、消耗品等の単価を設定して、この単価に実際の業務量、実際に納入した個数等を乗じて支払う単価契約とがある。単価契約における契約単価の設定において、落札価格の基礎となった単価よりも高い単価で契約している事態が見受けられた。これを示すと以下のとおりである。

<事例5>

[落札価格の基礎となった単価よりも高い単価で契約しているもの]

 中国地方整備局は、平成19年度に、11台の電子複写機に係る賃貸借、保守等の業務について、民間企業と一般競争契約による単価契約(契約金額:8,492千円)を行っている。また、20年度においても、これら11台の電子複写機を継続して使用するため、随意契約により19年度と同様の単価で同企業と契約(20年度12月までの使用実績額:12,557千円)を行っている。
 上記の入札において、保守及び消耗品等の料金については、各電子複写機の1か月間の複写予定枚数に複写1枚当たりの単価(以下「保守等単価」という。)を乗じて算定することとしていた。
 当該入札は同企業が1か月分の総額として663,475円で落札した。そして、同整備局は、落札した同企業から提出された見積書の賃貸借料、保守等単価等に基づき単価契約を行っていた。
 今回、この契約単価についてみたところ、同整備局が契約単価とした見積書の保守等単価は、落札価格の基礎となった単価よりも高い単価となっていた。これは、同企業が入札金額を算定する際に、保守及び消耗品等の料金を、根拠のない金額で算出してしまったためである。その結果、見積書の賃貸借料と保守等単価に1か月間の複写予定枚数を乗じた料金を合計すると1,106,785円となり、実際に落札した金額663,475円に比べ高い金額となっているのに、落札価格の基礎となった保守等単価よりも高い単価をもって契約単価としていたことは、適切とは認められない。
 なお、同整備局は、会計検査院の検査を踏まえ、過大となっていた支払金額8,535千円を21年3月に同企業から返還させている。