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  • 平成21年9月

独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況について


3 随意契約の実施状況及び随意契約とした理由の妥当性

 対象契約のうち19年度及び20年度(12月まで)の随意契約の実施状況について、特に、企画随契と公募の実施状況を中心に分析するとともに、20年度(12月まで)の状況を前年度同期と比較して分析した結果を次の(1)から(3)に記述した。そして、随意契約とした適用理由の状況については、対象契約のうち20年度(12月まで)に締結されたものの状況について、前年度同期と比較して分析した結果を(4)に記述した。また、20年報告における個別の事態955件の見直し状況の検査結果については(5)に、さらに、各独立行政法人が随意契約見直し計画に基づいて随意契約の適正化を進めることとした契約の見直し状況の検査結果については(6)に、それぞれ記述した。

(1) 随意契約の実施状況とその変化

 各独立行政法人から提出された調書によると、随意契約全体の件数と支払金額は、図表36 のとおり、19年度は6.7万件、1兆2308億円、20年度(12月まで)は3.9万件、5565億円となっており、20年度(12月まで)分を前年度同期と比較すると、件数で28.9%、支払金額で11.2%減少している。
 この内訳をみると、企画・公募を経ない随契は、19年度は5.8万件、1兆0022億円、20年度(12月まで)は2.5万件、3933億円となっており、また、企画随契等は、19年度は0.7万件、1968億円、20年度(12月まで)は1.2万件、1480億円となっている。
 20年度(12月まで)分を前年度同期と比較すると、企画・公募を経ない随契は、件数で48.2%、支払金額で27.0%の大幅な減少となっている。一方、企画随契等は、件数で107.3%、支払金額で89.3%の大幅な増加となっている。

図表36 随意契約の実施状況(平成19年度(12月まで)、19年度、20年度(12月まで))
上段:件数、支払金額(単位:件、百万円)
下段:割合(単位:%、ポイント)
年度等 件数 支払金額
随意契約全体
(A)
  随意契約全体
(D)
 
うち企画随契等
(B)
うち企画・公募を経ない随契
(C)
うち企画随契等
(E)
うち企画・公募を経ない随契
(F)
(割合(B)/(A)) (割合(C)/(A)) (割合(E)/(D)) (割合(F)/(D))
平成19年度 67,103 7,576 58,139 1,230,893 196,874 1,002,291
  (11.2) (86.6)   (15.9) (81.4)
20年度(12月まで) (a) 39,863 12,929 25,266 556,561 148,079 393,349
  (32.4) (63.3)   (26.6) (70.6)
19年度(12月まで) (b) 56,072 6,236 48,845 626,950 78,208 538,948
  (11.1) (87.1)   (12.4) (85.9)
増減値 (a)-(b) △16,209 6,693 △23,579 △70,389 69,870 △145,598
  (21.3) (△23.8)   (14.2) (△15.3)
増減率 ((a)/(b)-1)
(△28.9) (107.3) (△48.2) (△11.2) (89.3) (△27.0)

ア 契約種類別の随意契約の状況とその変化

 対象契約のうち20年度(12月まで)の随意契約を契約種類別にみると、図表37 のとおり、「役務」が件数、支払金額共に最も多く、件数で75.9%、支払金額で67.2%を占めている。そして、前年度同期と比較すると、随意契約の競争契約への移行により、「用地取得・補償」を除く契約種類で件数が減少しており、特に「物品等の購入」は67.0%、「工事等」は42.5%減少している。
 また、随意契約に占める企画随契等の件数は、前年度同期と比較すると、「工事等」及び「用地取得・補償」を除く契約種類で大幅に増加していて、随意契約に占める企画随契等の件数割合も11.1%から32.4%に上昇している。

図表37 契約種類別の随意契約の状況及びその変化(平成20年度(12月まで))
〔1〕 随意契約全体 (単位:件、百万円、%、ポイント)
契約種類 件数 件数割合 支払金額 支払金額割合
  (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (A) (19年度(12月まで)) (開差)   (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで)) (開差)
(B) (A)-(B) (D) (C)-(D)
工事等 917 (△42.5) 2.3 (2.8) (△0.5) 36,827 (1.9) 6.6 (5.7) (0.9)
用地取得・補償 2,567 (69.4) 6.4 (2.7) (3.7) 50,786 (67.9) 9.1 (4.8) (4.3)
物品等の購入 2,080 (△67.0) 5.2 (11.2) (△6.0) 39,477 (△35.5) 7.0 (9.7) (△2.7)
物品等の製造 862 (△22.0) 2.1 (1.9) (0.2) 17,918 (10.3) 3.2 (2.5) (0.7)
物品等の賃借 3,165 (△19.9) 7.9 (7.0) (0.9) 37,012 (△17.9) 6.6 (7.1) (△0.5)
役務 30,272 (△27.2) 75.9 (74.1) (1.8) 374,538 (△14.4) 67.2 (69.8) (△2.6)
39,863 (△28.9) 100 (100) 556,561 (△11.2) 100 (100)

〔2〕 随意契約全体のうち企画随契等
(単位:件、百万円、%、ポイント)

契約種類 件数 随意契約に支払金額占める企画随契等の件数割合   支払金額 随意契約に占める企画随契等の支払金額割合   
  (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)) (開差)   (19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)) (開差)
(A) (B) (A)-(B) (C) (D) (C)-(D)
工事等 213 (△20.8) 23.2 (16.8) (6.4) 1,895 (△3.8) 5.1 (5.4) (△0.3)
用地取得・補償 3 (※) 0.1 (-) (0.1) 44 (※) 0.0 (-) (0.0)
物品等の購入 417 (768.7) 20.0 (0.7) (19.3) 1,182 (247.1) 2.9 (0.5) (2.4)
物品等の製造 290 (367.7) 33.6 (5.6) (28.0) 2,650 (△39.3) 14.7 (26.8) (△12.1)
物品等の賃借 229 (458.5) 7.2 (1.0) (6.2) 1,152 (153.0) 3.1 (1.0) (2.1)
役務 11,777 (102.4) 38.9 (13.9) (25.0) 141,154 (98.6) 37.6 (16.2) (21.4)
12,929 (107.3) 32.4 (11.1) (21.3) 148,079 (89.3) 26.6 (12.4) (14.2)

(注)
 ※については件数及び支払金額がないため、増減率は算出していない。

イ 契約相手方別の随意契約の状況とその変化

 対象契約のうち20年度(12月まで)の随意契約を契約相手方別にみると、図表38 のとおり、「民間企業」の占める割合が最も高く、件数、支払金額共に5割を超えている。また、「公益法人等」の占める割合は、件数で7.2%(うち関係法人3.1%)、支払金額で17.5%(同14.2%)となっている。そして、「民間企業」及び「公益法人等」について前年度同期と比較すると、件数、支払金額共に減少している。
 また、随意契約に占める企画随契等の割合は、前年度同期と比較して「民間企業」、「公益法人等」共に上昇しており、「民間企業」は、件数で27.2ポイント、支払金額で14.0ポイントの上昇、「公益法人等」は、件数で24.3ポイント(うち関係法人31.4ポイント)、支払金額で34.2ポイント(同39.2ポイント)の上昇となっている。

図表38 契約相手方別の随意契約の状況及びその変化(平成20年度(12月まで))
〔1〕 随意契約全体 (単位:件、百万円、%、ポイント)
契約相手方 件数 件数割合 支払金額 支払金額割合
  (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (A) (19年度(12月まで)) (開差)   (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで)) (開差)
(B) (A)-(B) (D) (C)-(D)
民間企業 23,195 (△39.4) 58.1 (68.3) (△10.2) 314,899 (△17.5) 56.5 (60.8) (△4.3)
公益法人等 2,876 (△26.9) 7.2 (7.0) (0.2) 97,751 (△16.2) 17.5 (18.6) (△1.1)
うち関係法人 1,254 (△24.6) 3.1 (2.9) (0.2) 79,052 (△17.8) 14.2 (15.3) (△1.1)
国・地方公共団体 2,608 (△2.5) 6.5 (4.7) (1.8) 28,155 (2.8) 5.0 (4.3) (0.7)
独立行政法人等 5,788 (△4.0) 14.5 (10.7) (3.8) 69,417 (11.9) 12.4 (9.8) (2.6)
その他 5,396 (5.8) 13.5 (9.0) (4.5) 46,336 (18.3) 8.3 (6.2) (2.1)
39,863 (△28.9) 100 (100) 556,561 (△11.2) 100 (100)

〔2〕 随意契約全体のうち企画随契等
(単位:件、百万円、%、ポイント)

契約相手方 件数 随意契約に支払金額占める企画随契等の件数割合   支払金額 随意契約に占める企画随契等の支払金額割合   
  (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)) (開差)   (19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)) (開差)
(A) (B) (A)-(B) (C) (D) (C)-(D)
民間企業 8,914 (106.8) 38.4 (11.2) (27.2) 81,081 (80.5) 25.7 (11.7) (14.0)
公益法人等 1,234 (67.8) 42.9 (18.6) (24.3) 43,830 (253.0) 44.8 (10.6) (34.2)
うち関係法人 572 (141.3) 45.6 (14.2) (31.4) 36,663 (433.8) 46.3 (7.1) (39.2)
国・地方公共団体 164 (22.3) 6.2 (5.0) (1.2) 3,635 (1.1) 12.9 (13.1) (△0.2)
独立行政法人等 1,142 (66.4) 19.7 (11.3) (8.4) 14,292 (△6.9) 20.5 (24.7) (△4.2)
その他 1,475 (296.5) 27.3 (7.2) (20.1) 5,239 (170.2) 11.3 (4.9) (6.4)
12,929 (107.2) 32.4 (11.1) (21.3) 148,079 (89.3) 26.6 (12.4) (14.2)

ウ 法人別の随意契約の状況

 対象契約のうち20年度(12月まで)の随意契約を法人別にみると、別表3のとおり、件数が最も多いのは、雇用・能力開発機構の4,336件(うち企画・公募を経ない随契843件)であり、次いで科学技術振興機構の3,964件(同3,801件)となっている。また、支払金額が最も多いのは都市再生機構の692億円(同638億円)であり、次いで鉄道建設・運輸施設整備支援機構の634億円(同618億円)となっている。

エ 随意契約における予定価格の作成状況

 予定価格は、契約を締結するに当たって、公正に契約金額を決定するための基準であるとともに、契約相手方が申し出た価格が市場価格等を反映した妥当な価格であるか否かを判断する基準でもあることから、随意契約においても、契約金額の経済性及び妥当性を検証するために、仕様等に基づいて、市場価格を反映した適正かつ合理的な見積価格を予定価格として作成する必要があると考えられる。
 しかし、前記の1(3)イ で記述したように、予定価格の作成の省略に関する取扱いを会計規程等で定めている法人も多く、予定価格調書その他の書面による予定価格の積算を行うことなく予定価格の作成を省略している契約が多数見受けられる。
 そこで、対象契約のうち随意契約について、予定価格の作成を省略しているものの割合をみると、図表39 のとおり、20年度(12月まで)は29.2%となっていて、前年度同期と比較すると、26.5ポイントと大きく低下している。

図表39 予定価格の作成を省略している随意契約の状況(平成19年度(12月まで)、19年度、20年度(12月まで))
  (単位:件、%、ポイント)
年度等 随意契約件数(A) (A)のうち予定価格の作成を省略している契約件数(B) (B)のうち法人の会計規程等に基づいて省略しているもの(C) (B)のうち法人の会計規程等では省略できるとされていないもの(D) その他((B)のうち(C)及び(D)以外のもの)(E)
  (割合)
(B)/(A)
  (割合)
(C)/(B)
  (割合)
(D)/(B)
  (割合)
(E)/(B)
平成19年度 67,103 34,834 (51.9) 24,800 (71.1) 10,010 (28.7) 24 (0.0)
20年度(12月まで)(a) 39,863 11,679 (29.2) 7,749 (66.3) 3,917 (33.5) 13 (0.1)
19年度(12月まで)(b) 56,072 31,270 (55.7) 22,155 (70.8) 9,091 (29.0) 24 (0.0)
増減値(a)-(b) △16,209 △19,591 (△26.5) △14,406 (△4.5) △5,174 (4.5) △11 (0.1)

 また、予定価格の作成を省略している契約のうち、各法人の会計規程等の定めに基づいて予定価格の作成を省略しているものの件数は、20年度(12月まで)では7,749件(66.3%)となっていて、前年度同期と比較して14,406件減少している。これは、20年1月以降、各法人において、予定価格の作成の省略に係る金額基準の見直しを進めていることが影響しているものと考えられる。
 一方、会計規程等では予定価格の作成を省略できることとされていないのに、これを省略している契約は、20年度(12月まで)においても3,917件見受けられるが、これらの中には、市場価格等に基づいた予定価格の作成が可能であると思料されるものや、予算額の上限を設けていることを理由として予定価格の作成を省略しているものなど、予定価格の作成を省略することに十分な合理性が認められないものも見受けられる(法人別内訳は別表8 参照)。
 これらについては、契約手続の適正化を図るためにも、予定価格の作成を省略することの是非について十分に検討して、業務運営上真にやむを得ない事由に該当するものに限って予定価格の作成を省略することとし、その場合には、会計規程等においてこれに係る基準をできる限り明確かつ具体的に定めて、これに従って適切に運用する必要があると認められる。
 上記に関して、会計規程等では予定価格の作成を省略できることとされていないのに、これを省略している事例を示すと、以下のとおりである。

<事例>

[随意契約の締結に当たり、予定価格の作成を省略しているもの]
〔20〕  高齢・障害者雇用支援機構は、平成20年度に、重度障害者雇用拡大総合推進事業業務委託について、公募を実施して、関係法人と随意契約(契約金額97,849千円)を行った。そして、同機構は、公募の実施に際して示している予算額の上限があることを理由に、予定価格を作成していなかった。
 しかし、高齢・障害者雇用支援機構会計規程等では、〔1〕 法令に基づいて取引価格又は料金が定められているなどのもの、〔2〕 予定価格が100万円を超えない随意契約で、契約事務の実情を勘案し省略しても支障がないものを除き、あらかじめ予定価格を作成することとされており、上記の業務に係る経費は謝金、旅費、庁費等で構成されていて、上記の〔1〕 又は〔2〕 のいずれにも該当しないことから、予定価格を適正に作成する必要があったと認められる。

(2) 企画競争の実施状況

ア 企画随契の実施状況とその変化

 対象契約のうち19年度及び20年度(12月まで)の企画随契の件数と支払金額は、図表40 のとおり、19年度は6,606件(随意契約に占める割合9.8%)、1725億円(同14.0%)、20年度(12月まで)は9,892件(同24.8%)、1236億円(同22.2%)となっており、これを前年度同期と比較すると、件数では77.3%、支払金額では92.2%増加している。

図表40 企画随契の実施状況(平成19年度(12月まで)、19年度、20年度(12月まで))
  (単位:件、百万円、%)
年度等 件数 支払金額
随意契約全体 随意契約全体
(A) うち企画随契
(B)
(割合(B)/(A)) (C) うち企画随契
(D)
(割合(D)/(C))
平成19年度 67,103 6,606 (9.8) 1,230,893 172,555 (14.0)
20年度(12月まで) (a) 39,863 9,892 (24.8) 556,561 123,668 (22.2)
19年度(12月まで) (b) 56,072 5,579 (9.9) 626,950 64,311 (10.2)
増減値 (a)-(b) △16,209 4,313 (14.9) △70,389 59,357 (12.0)
増減率 ((a)/(b)-1) (△28.9) (77.3) (△11.2) (92.2)

 対象契約のうち20年度(12月まで)の企画随契を契約種類別にみると、図表41 のとおり、件数、支払金額共に「役務」が最も多く、件数では9,611件(随意契約に占める割合31.7%)、支払金額では1222億円(同32.6%)となっている。そして、企画随契全体に占める割合でみると、「役務」は、件数で97.1%、支払金額で98.8%と、そのほとんどを占めている。

図表41 企画随契の契約種類別の状況及びその変化(平成20年度(12月まで))
  (単位:件、百万円、%、ポイント)
契約種類 件数 随意契約に占める企画随契の件数割合(A)   支払金額 随意契約に占める企画随契の支払金額割合(C)  
下段:
[計に占める件数割合]
(平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで))(B) (開差)
(A)-(B)
下段:
[計に占める金額割合]
(19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで))(D) (開差)
(C)-(D)
工事等 127
[1.2]
(△12.4) 13.8 (9.0) (4.8) 436
[0.3]
(△62.7) 1.1 (3.2) (△2.1)
用地取得・補償 0
[-]
(※) - (-) (-) -
[-]
(※) - (-) (-)
物品等の購入 24
[0.2]
(4.3) 1.1 (0.3) (0.8) 89
[0.0]
(△49.0) 0.2 (0.2) (0.0)
物品等の製造 77
[0.7]
(45.2) 8.9 (4.7) (4.2) 453
[0.3]
(△89.1) 2.5 (25.7) (△23.2)
物品等の賃借 53
[0.5]
(43.2) 1.6 (0.9) (0.7) 426
[0.3]
(△ 4.9) 1.1 (0.9) (0.2)
役務 9,611
[97.1]
(80.6) 31.7 (12.7) (19.0) 122,263
[98.8]
(109.5) 32.6 (13.3) (19.3)
9,892 (77.3) 24.8 (9.9) (14.9) 123,668 (92.2) 22.2 (10.2) (12.0)
(注)
 ※については件数及び支払金額がないため、増減率は算出していない。

 前記の1(2)イ(ア) で記述したように、企画競争は、20年4月1日現在で92法人が導入している。対象契約のうち20年度(12月まで)の企画随契を法人別にみると、別表7のとおり、件数が最も多いのは、雇用・能力開発機構の3,450件であり、次いで国際協力機構の1,559件となっている。また、支払金額が最も多いのは国際協力機構の442億円であり、次いで雇用・能力開発機構の221億円となっている。
 なお、雇用・能力開発機構の企画随契は、19年度27件、2億円から大幅に増加しているが、これは、職業訓練業務に係る委託契約について、20年度に企画競争を実施することとしたことによるものである。

イ 応募者数の状況とその変化

 企画随契についても、競争契約と同様、より多くの事業者が企画競争に参加して、優れた提案が得られるよう適切な競争が行われることが重要である。対象契約のうち20年度(12月まで)の企画随契について企画競争への応募者数の状況を、参加者を広く一般に募集している「一般募集」と参加者を限定している「限定募集」とに分けて件数割合でみると、図表42 のとおり、応募者が1者のみ(以下「1者応募」という。)の契約は28.2%(うち一般募集25.5%、限定募集40.4%)、応募者が5者以上の契約は42.6%(同46.4%、同25.0%)となっていて、1者応募となっているものの割合は限定募集が一般募集を上回っている。
 これを前年度同期と比較すると、1者応募は10.5ポイント(うち一般募集17.0ポイント)低下している一方で、応募者が5者以上の契約は11.4ポイント(同12.3ポイント)上昇している。
 このように、企画随契における1者応募は、前年度同期と比較して一定の改善はみられるものの、依然として高い割合となっている。

図表42 企画随契における応募者数の状況(平成19年度(12月まで)、20年度(12月まで))
上段:件数(単位:件)
下段:割合(単位:%、ポイント)
応募者数
契約方式
1者 複数  
2者 3者 4者 5者以上
平成20年度(12月まで)(a) 2,790
(28.2)
7,102
(71.7)
1,379
(13.9)
1,012
(10.2)
489
(4.9)
4,222
(42.6)
9,892
(100)
  一般募集 2,083
(25.5)
6,061
(74.4)
1,145
(14.0)
706
(8.6)
425
(5.2)
3,785
(46.4)
8,144
(100)
限定募集 707
(40.4)
1,041
(59.5)
234
(13.3)
306
(17.5)
64
(3.6)
437
(25.0)
1,748
(100)
19年度(12月まで)(b) 2,080
(38.7)
3,291
(61.2)
706
(13.1)
538
(10.0)
367
(6.8)
1,680
(31.2)
5,371
(100)
  一般募集 1,784
(42.5)
2,408
(57.4)
492
(11.7)
283
(6.7)
203
(4.8)
1,430
(34.1)
4,192
(100)
増減値(a)-(b) 710
(△10.5)
3,811
(10.5)
673
(0.8)
474
(0.2)
122
(△1.9)
2,542
(11.4)
4,521
  一般募集 299
(△17.0)
3,653
(17.0)
653
(2.3)
423
(1.9)
222
(0.4)
2,355
(12.3)
3,952
(注)
 応募者数が不明の企画随契を除いている。

ウ 審査に当たっての評価項目の設定状況とその変化

 企画競争の審査に当たっては、審査の公正性及び透明性を高めるだけでなく、審査結果の妥当性の向上にも資するため、あらかじめ具体的に定めた複数の評価項目により採点を行うことが重要である。
 対象契約のうち20年度(12月まで)の企画随契について、企画書等の審査を行う際の評価項目の設定状況をみると、図表43 のとおり、9,892件中9,230件(企画随契に対する割合93.3%)について評価項目が設定されており、このうち8割以上は5項目以上の評価項目を設定している。一方、評価項目を設定していないものも662件(同6.6%)見受けられる。
 これを前年度同期と比較すると、評価項目を設定していないものの割合は、2.2ポイント低下している。

図表43 評価項目の設定状況(平成19年度(12月まで)、19年度、20年度(12月まで))
  (単位:件、%、ポイント)
年度等 評価項目を設定していないもの 評価項目を設定しているもの 合計(A)
1項目 2項目 3項目 4項目 5項目以上 計(B)
平成19年度 件数 644 40 75 519 1,146 3,974 5,754 6,398
((A)に対する割合) (10.0) (0.6) (1.1) (8.1) (17.9) (62.1) (89.9) (100)
[(B)に対する割合] [0.6] [1.3] [9.0] [19.9] [69.0] [100]
20年度
(12月まで)
(a)
件数 662 0 27 361 1,437 7,405 9,230 9,892
((A)に対する割合) (6.6) (-) (0.2) (3.6) (14.5) (74.8) (93.3) (100)
[(B)に対する割合] [-] [0.2] [3.9] [15.5] [80.2] [100]
19年度
(12月まで)
(b)
件数 478 37 71 504 941 3,340 4,893 5,371
((A)に対する割合) (8.8) (0.6) (1.3) (9.3) (17.5) (62.1) (91.1) (100)
[(B)に対する割合] [0.7] [1.4] [10.3] [19.2] [68.2] [100]
増減値
(a)-(b)
件数 184 △37 △44 △143 496 4,065 4,337 4,521
((A)に対する割合) (△2.2) (△0.6) (△1.1) (△5.7) (△3.0) (12.7) (2.2)
[(B)に対する割合] [△0.7] [△1.2] [△6.4] [△3.7] [12.0]
(注)
 評価項目の設定状況が不明の企画随契を除いている

エ 企画競争の実施に係る手続の実施状況

 企画競争においては、より多くの応募者が参加することで、企画書等の提案内容について発注者側の選択肢が広がるとともに、提案内容を競うことでより優れた提案が行われる可能性も高まると考えられることから、一般競争入札と同様に、より多くの事業者の参入を促すよう、できる限り一般募集により実施するとともに、手続の公正性等を確保して、事業者が応募しやすい環境を整えることが重要である。
 一般募集により企画競争を実施する場合の周知の方法、募集期間又は企画競争の参加に必要な資格、条件等(以下「企画競争参加要件」という。)の設定等に係る手続については、おおむね一般競争契約の入札に係る手続に準じた運用がなされていることから、その実施に当たっては、〔1〕 事業者に等しく周知できるような方法により十分な期間を確保するなどして行うこと、〔2〕 企画競争参加要件は、契約の確実な履行を確保する上で必要最小限なものに限るなどして設定すること、〔3〕 企画競争に関する説明書、仕様書等(以下「企画競争説明書等」という。)は、特定の事業者に有利とならないよう中立的な内容とするとともに、企画書等の作成に必要な情報について漏れなく具体的かつ明確に示すことなどに留意する必要がある。
 また、企画書等の審査に当たっては、入札に係る手続と同様に契約相手方選定の際の公正性及び透明性を確保するために、〔1〕 あらかじめ具体的に定めた複数の評価項目により採点を行うこと、〔2〕 評価項目、評価方法及び審査結果を適切に開示すること、〔3〕 審査の際には、調達要求部門だけでなく契約担当部門も関与させることなどに留意する必要がある。
 その際、〔1〕 評価項目の設定に当たっては、評価者により評価内容にばらつきが出て採点に不公平が生じたり、特定の事業者に著しく有利となったりしないように、契約内容の特性に応じた必要性、重要性を十分に検討して、実質的な参入制限とならないように適切に設定すること、〔2〕 評価に当たっては、定量的に評価が可能な項目については定量的な評価基準を明確に設定し、定性的な評価基準とした場合は、提案内容が適切に評価に反映されるように具体的かつ客観的な判定基準を設定することなどが重要である。
 また、審査の際に、審査委員として外部の有識者等を参加させる場合があるが、これは審査の公正性、透明性の向上を図ったり、専門性の高い事項についてより的確に審査を行ったりする上で、有効な方法であると認められる。
 その一方で、審査委員に当該契約に係る利害関係者が含まれていると、審査の公正性が著しく阻害されるおそれがあることから、特に外部の有識者等を審査委員として参加させる場合には、この点に十分留意する必要がある。
 そこで、参加者の募集方法、企画競争参加要件及び企画競争説明書等の作成等の契約手続並びに企画書等の審査手続等の企画競争に係る手続の実施状況について検査したところ、競争性、公正性及び透明性の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が30件あった。これらを態様別に示すと以下のとおりである(態様別内訳は別表5 参照。法人別内訳は別表6 参照)。

(ア) 企画競争の実施について

 企画競争の実施について、企画競争参加要件の設定、企画競争説明書等の作成等に関して検討すべきであったと認められる事態が21件あった(態様別内訳は別表5 参照)。これらのうち主な態様を示すと以下のとおりである。

a 企画競争参加要件の設定に関して検討すべきであったもの

 企画競争参加者に求める業務実績の要件を必要以上に限定しているため、参加者の範囲が制限される可能性があると認められるものが見受けられた。
 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[業務実績の要件について施設を限定しているもの]
〔21〕  国際農林水産業研究センターは、平成20年度に、国際シンポジウム運営等業務について、企画競争を実施して参加者を募集したところ、1者応募となったため、応募した業者と契約(契約金額4,730千円)を行った。
 しかし、上記の企画競争に当たっては、特定の会議場における業務実績を有することを参加資格として求めているが、本件業務は事前の会場設営、当日の会場整理、事後の報告書作成等を内容とするものであり、業務を実施する上で、このように施設を限定する必要はないと考えられることから、より多くの者の参加が可能となるよう、この要件の緩和について検討すべきであったと認められる。

b 企画競争説明書等の作成に関して検討すべきであったもの

 企画競争説明書等において、業務内容が十分説明されていなかったり、業務量の見込みが示されていなかったりなどしていて、従来の契約相手方しか判断できない内容があることから、参加者の範囲が制限される可能性があると認められるものが見受けられた。
 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[具体的な業務内容等が明確に示されていないもの]
〔22〕  都市再生機構募集販売本部は、平成18年度から20年度(第1四半期)まで、包括的代行業務(業務の効率化のために、本来、同機構自らが行うべき業務を代行又は補完して行う業務)について、当該業務に係る豊富なノウハウを有するとともに、当該業務を包括して受託できる体制を有していることなどを理由に、機構業務の代行・補完を目的として設立された特定の関係法人と随意契約(契約金額:18年度747,394千円、19年度737,907千円、20年度(第1四半期)210,117千円)を行っていた。これについて、同本部は、機構自らが行うこととした業務を除き、業務を4分割し、20年度(第2四半期)に企画競争に移行することとして、参加者を募集したところ、いずれも従来の契約相手方だけの1者応募となり、同者と随意契約(4件計489,685千円)を行った。
 しかし、上記の募集に当たって示した仕様書をみると、具体的な業務の内容や契約相手方から徴する事務所等の使用料が明確に示されておらず、従来の契約相手方しか判断できない内容があることから、仕様書の記載内容を明確にすべきであったと認められる。

(イ) 企画書等の審査について

 企画書等の審査の方法及び審査体制に関して検討すべきであったと認められる事態が9件あった。これらについて主な態様を示すと以下のとおりである。

a 企画書等の審査方法に関して検討すべきであったもの

 企画書等の審査に当たって、評価の方法や評価項目に対する評価基準の設定について、公正性及び透明性が十分確保されていないと認められるものが見受けられた。
 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[評価方法について検討の余地があったもの]
〔23〕  農畜産業振興機構は、平成18年度に、外食産業における食肉消費構成実態調査業務について、調査の継続性を確保する必要があることなどを理由に、特定の公益法人と随意契約(契約金額6,400千円)を行っていた。これについて、同機構は、19年度において、上記の調査業務に関する事務処理能力等が最も優れた者を選定する企画競争を実施したところ、従来の契約相手方を含む2者から応募があり、審査の結果、従来の契約相手方を選定し、同法人と契約(契約金額6,220千円)を行った。
 しかし、本件契約について、企画提案書等の審査方法をみると、企画提案書等に係る評価項目及び評価基準を公開しているものの、各評価項目の評点や定性的な評価基準に係る具体的な判定基準を定めていないため、採点を行わずに、評価項目ごとに評価基準を充足しているかについて、審査委員3名の合議により評価するなどして契約相手方を選定していて、審査の公正性及び透明性の確保について検討の余地があったと認められる。

b 企画書等の審査体制に関して検討すべきであったもの

 審査委員に利害関係者が含まれていたため、審査の公正性が阻害される可能性があり、審査体制において公正性が確保されていないと認められるものが見受けられた。
 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[審査委員に利害関係者が含まれているもの]
〔24〕  日本原子力研究開発機構は、平成20年度に、先行基礎工学研究制度に係る共同研究業務について、企画競争を実施して、国立大学法人等と随意契約(契約金額2,300千円)を行った。
 同機構は、企画競争の実施に当たり、研究分野ごとに複数の提案を採択することとして一般募集を行い、これに応募した者について、同機構の職員及び外部の有識者で構成する審査委員会において審査を行い、評価の高かった者の順に本件の契約相手方を含む複数の者を選定して契約を行った。
 しかし、企画競争の審査を行っている外部の有識者の中には本件契約に係る共同研究業務の研究総括責任者が含まれており、審査の公正性が阻害される可能性があるため、当該有識者を本件の審査から除外すべきであったと認められる。

(3) 公募の実施状況

ア 公募を経た随意契約等の状況

 20年度(12月まで)の対象契約のうち公募を経た契約の状況をみると、図表44 のとおり、件数で3,147件(対象契約に占める割合4.5%)、支払金額で248億円(同3.0%)となっている。
 このうち、公募を経ることにより一般競争契約等のより競争性の高い契約方式に移行できた契約(不落・不調随契を除く。)は、件数で100件(公募を経た契約に占める割合3.1%)、支払金額で2億円(同1.1%)となっている。そして、公募を実施した結果、要件を満たす応募者が1者であったなどのため、一般競争入札や企画競争を実施することなく引き続き随意契約を締結した契約等は、件数で3,047件(同96.8%)、支払金額で245億円(同98.8%)となっていて、これを前年度同期と比較すると、対象契約が減少している中で、件数で2,388件(362.3%)、支払金額で106億円(76.7%)と大幅に増加している。
 そして、対象契約のうち20年度(12月まで)の公募を経た随意契約(企画随契を除く。以下同じ。)について、20年度(12月まで)の対象契約に占める割合をみると、図表44のとおり、件数で4.3%、支払金額で2.9%となっており、これを前年度同期と比較すると、件数割合で3.5ポイント、支払金額割合で1.3ポイント上昇している。

図表44 公募を経て締結された契約の状況(平成19年度(12月まで)、20年度(12月ま で))
〔1〕 件数 (単位:件、%、ポイント)
年度等 対象契約全体(A)
  うち公募を経たもの(B)
    うち一般競争契約等のより競争性の高い契約方式に移行できた契約(C)   うち引き続き随意契約(D)
(対象契約に占める割合)(B)/(A) (公募を経た契約に占める割合)(C)/(B)   対象契約全体に占める割合)(D)/(A) (公募を経た契約に占める割合)(D)/(B)
平成20年度(12月まで) (a) 69,653 3,147 (4.5) 100 (3.1) 3,047 (4.3) (96.8)
19年度(12月まで) (b) 75,363   659 (0.8)  
増減値  (a)-(b) △5,710 2,388 (3.5)
増減率  ((a)/(b)-1) (△7.5) (362.3)  

〔2〕支払金額
(単位:百万円、%、ポイント)

年度等 対象契約全体(A)
  うち公募を経たもの(B)
    うち一般競争契約等のより競争性の高い契約方式に移行できた契約(C)   うち引き続き随意契約(D)
(対象契約に占める割合)(B)/(A) (公募を経た契約に占める割合)(C)/(B)   対象契約全体に占める割合)(D)/(A) (公募を経た契約に占める割合)(D)/(B)
平成20年度(12月まで) (a) 818,823 24,843 (3.0) 281 (1.1) 24,562 (2.9) (98.8)
19年度(12月まで) (b) 834,320   13,897 (1.6)  
増減値  (a)-(b) △15,496 10,664 (1.3)
増減率  ((a)/(b)-1) (△1.8) (76.7)  

イ 公募の実施に係る手続の実施状況

 公募は、特殊な技術や設備等が不可欠な契約において、履行可能な者がいないか確認する手続であり、契約予定相手方のほかに応募者がいなければ随意契約を行うこととなるのであるから、手続の公正性及び透明性を確保して、新規の事業者が応募しやすい環境を整えるとともに、事業者の参入意欲を阻害しないようにすることが重要である。
 公募を実施する場合の周知の方法、募集期間又は公募の参加に必要な資格、条件等(以下「公募参加要件」という。)の設定等に係る手続については、おおむね一般競争契約の入札に係る手続に準じた運用がなされている。このため、その実施に当たっては、〔1〕 事業者に等しく周知できるような方法により、十分な期間を確保するなどして行うこと、〔2〕 公募参加要件は、契約の確実な履行を確保する上で必要最小限なものに限るなどして設定すること、〔3〕 公募の公示や公募に関する説明書、仕様書等(以下「公募説明書等」という。)は、特定の事業者に有利とならないように、契約予定相手方名等については、これを明示しなければ契約の確実な履行が困難であるような場合を除いて表示しないなど、中立的な内容とするとともに、業務に係る情報を熟知していない事業者であっても内容を容易に理解して履行の可否の判断ができるように、必要な情報について漏れなく具体的かつ明確に示すことなどに留意する必要がある。
 また、公募を行った結果、要件を満たす応募者が複数の場合は、契約の性質等に応じて競争入札又は企画競争が行われることとなるが、応募者が複数あった場合の契約相手方の選定方法については、公募の公示等においてできる限り具体的に明示して、手続の公正性及び透明性を確保することが重要である。
 そこで、参加者の募集方法、公募参加要件の設定及び公募説明書等の作成等の公募に係る手続の実施状況について検査したところ、競争性、公正性及び透明性の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が28件あった(態様別内訳は別表5 参照。法人別内訳は別表6 参照)。これらのうち主な態様を示すと以下のとおりである。

(ア) 公募説明書等の作成に関して検討すべきであったもの

 仕様書等の記載内容が明確でないため、従来の契約相手方しか判断できない内容があることから、参加者の範囲が制限される可能性があると認められる事態が1件あり、これを示すと、次のとおりである。

<事例>

[必要となる人員等が明確に示されていないもの]
〔25〕  北方領土問題対策協会は、平成18、19両年度に、ロシア語による会議通訳及び同行通訳等に係る業務について、過去に実績を有する者を派遣することが必要であることを理由に、特定の業者と随意契約(契約金額:18年度26,971千円、19年度25,893千円)を行っていた。これについて、同協会は、20年度にほかに履行可能な者がいないかの確認を行う公募を行うこととして、公募したところ、従来の契約相手方だけの1者応募となったため、同者と随意契約(契約金額25,108千円)を行った。
 しかし、上記の公募に当たって示した仕様書等をみると、当該業務が集中する特定期間において必要となる通訳の人数等が示されていないなど、従来の契約相手方しか判断できない内容があることから、仕様書等の記載内容を明確にすべきであったと認められる。

(イ) 公募の公示等に関して検討すべきであったのもの

 公募の公示等において契約予定相手方名を表示しているため、参加者の範囲が制限される可能性があると認められる事態が21件あった。
 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[契約予定相手方名を表示しているもの]
〔26〕  沖縄科学技術研究基盤整備機構は、平成19年度に、財務会計業務に係るコンサルタント業務について、同機構の財務会計に習熟していることを理由に、特定の業者と随意契約(契約金額3,885千円)を行っていた。これについて、同機構は、20年度にほかに履行可能な者がいないかの確認を行う公募を行うこととして、公募したところ、応募者がいなかったため、従来の契約相手方と随意契約(契約金額3,675千円)を行った。
 しかし、上記の公募に当たっては、その公示において契約予定相手方として従来の契約相手方名を記載しているが、これにより公募への参加が制限された可能性があるため、特定の業者名を契約予定相手方として表示せずに公示すべきであったと認められる。

〔27〕  自動車事故対策機構は、平成18、19両年度に、適性診断電算システム等の保守業務について、当該システムの開発を行った者でなければ保守を履行することはできないことなどを理由に、特定の業者と随意契約(契約金額:18年度49,189千円、19年度51,624千円)を行っていた。これについて、同機構は、20年度にほかに履行可能な者がいないかの確認を行う公募を行うこととして、公募したところ、応募者がいなかったため、従来の契約相手方と随意契約(契約金額44,596千円)を行った。
 しかし、上記の公募に当たっては、その公示において契約予定相手方として従来の契約相手方名を記載しているが、これにより公募への参加が制限された可能性があるため、特定の業者名を契約予定相手方として表示せずに公示すべきであったと認められる。

(ウ) 公募実施後の契約相手方の選定方法に関して検討すべきであったもの

 公募実施後の契約相手方の選定方法等が明確に示されていないなど、手続の公正性及び透明性が確保されていないと認められる事態が1件あり、これを示すと、次のとおりである。

<事例>

[契約相手方の選定方法が具体的に示されていないもの]
〔28〕  国際観光振興機構は、平成19年度に、海外訪日市場の振興支援事業に係る業務について、現地旅行業界とのネットワークを有し、被招請者を選定するための公平性を有する唯一の者であることを理由に、特定の公益法人と随意契約(契約金額11,400千円)を行っていた。これについて、同機構は、20年度に、ほかに履行可能な者がいないかの確認を行う公募を行うこととして、公募したところ、従来の契約相手方を含む2者の応募があったが、両者の参加意思確認書を審査の上、従来の契約相手方を選定して、同法人と随意契約(契約金額10,938千円)を行った。
 しかし、同機構は、公募の実施に際して、複数の応募があった場合の契約相手方の選定方法をあらかじめ具体的に示しておらず、応募者の参加意思確認書等を従来の契約相手方と総合的に比較、検討した上で契約相手方を決定するとしていた。そして、上記について、調達要求部門のみで比較・検討した結果、新規の応募者は応募要件を満たしているが、業務実績及び業務実施体制が従来の契約相手方に比べて見劣りすることから競争に付する必要はないとして、従来の契約相手方を選定しており、手続の公正性及び透明性が確保されていなかったと認められる。

(4) 随意契約とした適用理由の状況とその変化

 対象契約のうち20年度(12月まで)の随意契約について、各法人において随意契約によることができるとしている要件を国の基準等に準じて分類して、この分類により随意契約とした適用理由を整理すると、図表45 のとおり、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしているものが最も多く、件数、支払金額共に8割近くを占めている。これを前年度同期と比較すると、件数では1.8%減少しているが、件数割合では21.9ポイント上昇している。
 また、随意契約とした適用理由について、件数、支払金額共に前年度同期と比較して大きく減少しているのは、「法人独自の規定による少額随契」(件数、支払金額共に100%減(注10) )、「法人独自の理由による随意契約」(件数で51.9%、支払金額で20.4%減少)及び「競争に付することが法人に不利と認められる場合」(件数で40.2%、支払金額で15.3%減少)となっている。

 独立行政法人の随契限度額は、平成20年4月1日現在で、すべての法人が国と同額かこれを下回っているため、20年度(12月まで)において随意契約とした適用理由を「法人独自の規定による少額随契(国の基準を上回るもの)」に該当するためとしているものはない。


図表45 随意契約とした適用理由とその変化(平成20年度(12月まで))
  (単位:件、百万円、%、ポイント)
国の基準等に準じて分類した随意契約とした適用理由 件数 件数割合 支払金額 支払金額割合
  (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (A) (19年度(12月まで))
(B)
(開差)
(A)-(B)
  (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで))
(D)
(開差)
(C)-(D)
契約の性質又は目的が競争を許さない場合(会計法第29条の3第4項相当) 31,662 (△1.8) 79.4 (57.5) (21.9) 442,499 (△7.4) 79.5 (76.2) (3.3)
緊急の必要により競争に付することができない場合(会計法第29条の3第4項相当) 316 (12.0) 0.7 (0.5) (0.2) 2,540 (△28.9) 0.4 (0.5) (△0.1)
競争に付することが法人に不利と認められる場合(会計法第29条の3第4項相当) 1,097 (△40.2) 2.7 (3.2) (△0.5) 20,631 (△15.3) 3.7 (3.8) (△0.1)
法人の契約行為を秘密にする必要があるとき(予決令第99条第1号相当) 95 (△35.8) 0.2 (0.2) (0.0) 2,300 (16.9) 0.4 (0.3) (0.1)
運送又は保管をさせるとき(予決令第99条第8号相当) 52 (△54.3) 0.1 (0.2) (△0.1) 164 (△60.0) 0.0 (0.0) (0.0)
その他(予決令第99条第9号から第99条の3までに相当) 1,861 (47.2) 4.6 (2.2) (2.4) 17,058 (32.9) 3.0 (2.0) (1.0)
法人独自の規定による少額随契(国の基準を上回るもの) 0 (△100) (18.1) (△18.1) (△100) (2.5) (△2.5)
法人独自の理由による随意契約(法人独自の規定を含む。) 4,780 (△51.9) 11.9 (17.7) (△5.8) 71,367 (△20.4) 12.8 (14.3) (△1.5)
39,863 (△28.9) 100 (100) 556,561 (△11.2) 100 (100)

 次に、随意契約とした適用理由の大半を占める「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するとしている契約を契約種類別にみると、図表46 のとおりである。
 これによると、この理由によるものが、いずれの契約種類でも最も高い割合を占めている。
 そして、前年度同期と比較すると、「物品等の購入」の件数割合が27.8ポイントと最も大きく上昇している。これは、前年度同期では「法人独自の規定による少額随契(国の基準を上回るもの)」に該当するとしているものの割合が高かったが、随契限度額の見直しによりこれらが一般競争入札等に多数移行したため、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するとしているものの件数割合が相対的に上昇したことによるものと考えられる。

図表46 随意契約とした適用理由が「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」の契約種別の状況とその変化(平成20年度(12月まで))
〔1〕 件数 (単位:件、%、ポイント)
契約種類 随意契約全体 (A)のうち契約の性質又は目的が競争を許さない場合
(B)
  割合(B)/(A)
(A) (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度
(12月まで)に
対する増減率)
(C) (19年度(12月まで))
(D)
(開差)
(C)-(D)
工事等 917 (△42.5) 473 (△34.9) 51.5 (45.5) (6.0)
用地取得・補償 2,567 (69.4) 2,566 (69.4) 99.9 (99.9) (0.0)
物品等の購入 2,080 (△67.0) 1,313 (△41.2) 63.1 (35.3) (27.8)
物品等の製造 862 (△22.0) 549 (△29.7) 63.6 (70.7) (△7.1)
物品等の賃借 3,165 (△19.9) 2,575 (△2.2) 81.3 (66.5) (14.8)
役務 30,272 (△27.2) 24,186 (△0.7) 79.8 (58.6) (21.2)
39,863 (△28.9) 31,662 (△1.8) 79.4 (57.5) (21.9)

〔2〕支払金額
(単位:百万円、%、ポイント)

契約種類 随意契約全体 (A)のうち契約の性質又は目的が競争を許さない場合
(B)
  割合(B)/(A)
(A) (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで))
(D)
(開差)
(C)-(D)
工事等 36,827 (1.9) 28,194 (33.7) 76.5 (58.3) (18.2)
用地取得・補償 50,786 (67.9) 49,811 (65.8) 98.0 (99.3) (△1.3)
物品等の購入 39,477 (△35.5) 23,347 (△37.5) 59.1 (61.0) (△1.9)
物品等の製造 17,918 (10.3) 7,582 (△32.1) 42.3 (68.8) (△26.5)
物品等の賃借 37,012 (△17.9) 32,892 (△18.9) 88.8 (89.9) (△1.1)
役務 374,538 (△14.4) 300,670 (△11.0) 80.2 (77.1) (3.1)
556,561 (△11.2) 442,499 (△7.4) 79.5 (76.2) (3.3)

 また、これを契約相手方別にみると、図表47 のとおり、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するとしている契約は、「民間企業」では、件数で73.8%、支払金額で73.3%となっている。これに対して、「公益法人等」では、件数で82.7%(うち関係法人77.9%)、支払金額で84.2%(同83.0%)となっていて、「民間企業」と比べると、件数割合で8.9ポイント(同4.1ポイント)、支払金額割合で10.9ポイント(同9.7ポイント)高くなっている。
 これを前年度同期と比較すると、「民間企業」及び「公益法人等」については、いずれもこの理由によるものの割合が件数、支払金額共に上昇しているが、特に、「民間企業」では、件数割合で25.4ポイントと大幅に上昇している。

図表47 随意契約とした適用理由が「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」の契約相手方別の状況とその変化(平成20年度(12月まで))
〔1〕 件数 (単位:件、%、ポイント)
契約相手方 随意契約全体 (A)のうち契約の性質又は目的が競争を許さない場合
(B)
  割合(B)/(A)
(A) (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで))
(D)
(開差)
(C)-(D)
民間企業(a) 23,195 (△39.4) 17,119 (△7.8) 73.8 (48.4) (25.4)
公益法人等(b) 2,876 (△26.9) 2,379 (△6.3) 82.7 (64.5) (18.2)
  うち関係法人(c) 1,254 (△24.6) 978 (3.8) 77.9 (56.5) (21.4)
国・地方公共団体 2,608 (△2.5) 2,112 (△11.2) 80.9 (89.0) (△8.1)
独立行政法人等 5,788 (△4.0) 5,222 (△2.7) 90.2 (88.9) (1.3)
その他 5,396 (5.8) 4,830 (41.9) 89.5 (66.7) (22.8)
39,863 (△28.9) 31,662 (△1.8) 79.4 (57.5) (21.9)
民間企業(a)との開差 (b)-(a) △20,319 (12.5) △14,740 (1.5) (8.9) (16.1) (△7.2)
(c)-(a) △21,941 (14.8) △16,141 (11.6) (4.1) (8.1) (△4.0)

〔2〕支払金額
(単位:百万円、%、ポイント)

契約相手方 随意契約全体 (A)のうち契約の性質又は目的が競争を許さない場合
(B)
  割合(B)/(A)
(A) (平成19年度(12月まで)に対する増減率) (19年度(12月まで)に対する増減率) (C) (19年度(12月まで))
(D)
(開差)
(C)-(D)
民間企業(a) 314,899 (△17.5) 231,132 (△12.9) 73.3 (69.5) (3.8)
公益法人等(b) 97,751 (△16.2) 82,403 (△10.6) 84.2 (79.0) (5.2)
  うち関係法人(c) 79,052 (△17.8) 65,614 (△11.2) 83.0 (76.8) (6.2)
国・地方公共団体 28,155 (2.8) 22,178 (△13.7) 78.7 (93.9) (△15.2)
独立行政法人等 69,417 (11.9) 63,358 (5.7) 91.2 (96.5) (△5.3)
その他 46,336 (18.3) 43,426 (24.9) 93.7 (88.7) (5.0)
556,561 (△11.2) 442,499 (△7.4) 79.5 (76.2) (3.3)
民間企業(a)との開差 (b)-(a) △217,148 (1.3) △148,729 (2.3) (10.9) (9.5) (1.4)
(c)-(a) △235,847 (△0.3) △165,518 (1.7) (9.7) (7.3) (2.4)

(5) 随意契約見直し計画に基づいて適正化を進めることとされている契約の見直し状況

ア 点検対象随意契約の見直し状況

 前記のとおり、各独立行政法人は、18年度に締結した随意契約について、当該契約が随意契約によることが適切かどうかの点検・見直しを行い、19年12月に各法人ごとの随意契約見直し計画を策定して、公表している。
 そこで、随意契約見直し計画策定後の20年1月から12月までの間において締結された契約のうち、各法人が同計画において点検の対象とした18年度の随意契約(以下「点検対象随意契約」という。)の後継契約であるなど、点検対象随意契約と対応することが各法人から提出された調書により把握できた18,318件(不落・不調随契を除く。)について、各法人が講じた見直し措置の状況を、同計画において実施するとした契約方式別にみると、図表48 のとおりである。
 これによると、上記の18,318件について随意契約見直し計画でより競争性の高い契約方式に移行するとしたものは、「4」から「6」までの区分の計12,916件であり、このうち7,975件(61.7%)については、同計画で実施するとした契約方式又は当該契約方式より競争性の高い契約方式に移行している。そして、区分「6」の「より競争性の高い契約方式(競争入札)へ移行するとしている」ものでは、9,643件のうち6,108件(63.3%)は競争契約に移行しているものの、引き続き随意契約としているものも3,535件(うち企画・公募を経ない随契2,079件)見受けられる。また、区分「1」の「随意契約によらざるを得ない(企画競争又は公募を実施するとしているものを除く。)としている」ものでは、3,935件のうち3,706件(94.1%)は引き続き企画・公募を経ない随契としている一方で、より競争性の高い契約方式に移行しているものも229件(5.8%)ある。

図表48 点検対象随意契約の見直し状況
  (単位:件、%)
点検対象随意契約と対応する契約(A) 随意契約見直し計画において実施するとした契約方式 件数
(B)
[下段:
(B)/(A)]
見直しを経た後、締結した契約方式 より競争性の高い契約方式へ移行したもの(塗りつぶした区分の計)(L)
(下段:
(L)/(B))
競争契約計(C)
(下段:
(C)/(B))
  随意契約計(H)
(下段:
(H)/(B))
 
一般競争契約(D)
(下段:
(D)/(B))
一般総合(E)
(下段:
(E)/(B))
指名競争契約(F)
(下段:
(F)/(B))
指名総合(G)
(下段:
(G)/(B))
企画随契(I)
(下段:
(I)/(B))
公募を経た随意契約(J)
(下段:
(J)/(B))
企画・公募を経ない随契(K)
(下段:
(K)/(B))
18,318 1:随意契約によらざるを得ない(企画競争又は公募を実施するとしているものを除く。)としている 3,935 163 149 13 1 0 3,772 8 58 3,706 229
[21.4] (4.1) (3.7) (0.3) (0.0) (-) (95.8) (0.2) (1.4) (94.1) (5.8)
2:引き続き公募を実施するとしている 665 7 7 0 0 0 658 2 33 (注) 623 9
[3.6] (1.0) (1.0) (-) (-) (-) (98.9) (0.3) (4.9) (93.6) (1.3)
3:引き続き企画競争を実施するとしている 665 34 25 8 1 0 631 560 15 56 34
[3.6] (5.1) (3.7) (1.2) (0.1) (-) (94.8) (84.2) (2.2) (8.4) (5.1)
4:より競争性の高い契約方式(公募の実施)に移行するとしている 2,329 363 319 33 11 0 1,966 111 907 948 1,381
[12.7] (15.5) (13.6) (1.4) (0.4) (-) (84.4) (4.7) (38.9) (40.7) (59.2)
5:より競争性の高い契約方式(企画競争)に移行するとしている 944 79 66 13 0 0 865 407 15 443 486
[5.1] (8.3) (6.9) (1.3) (-) (-) (91.6) (43.1) (1.5) (46.9) (51.4)
6:より競争性の高い契約方式(競争入札)に移行するとしている 9,643 6,108 5,747 195 124 42 3,535 1,319 137 2,079 6,108
[52.6] (63.3) (59.5) (2.0) (1.2) (0.4) (36.6) (13.6) (1.4) (21.5) (63.3)
その他(契約方式を検討中などとしているもの) 137 32 31 1 0 0 105 0 0 105 32
[0.7] (23.3) (22.6) (0.7) (-) (-) (76.6) (-) (-) (76.6) (23.3)
18,318 6,786 6,344 263 137 42 11,532 2,407 1,165 7,960 8,279
[100] (37.0) (34.6) (1.4) (0.7) (0.2) (62.9) (13.1) (6.3) (43.4) (45.1)
  4、5、6の計 12,916 6,550 6,132 241 135 42 6,366 1,837 1,059 3,470 7,975
[70.5] (50.7) (47.4) (1.8) (1.0) (0.3) (49.2) (14.2) (8.1) (26.8) (61.7)
1、2、3及びその他の計 5,402 236 212 22 2 0 5,166 570 106 4,490 304
[29.4] (4.3) (3.9) (0.4) (0.0) (-) (95.6) (10.5) (1.9) (83.1) (5.6)
 これらの中には、公募を実施して随意契約を締結した際に、当該契約相手方と引き続き一定期間、随意契約を行うこととしているものが含まれている。

イ 点検対象随意契約の見直し後における競争性等の状況

(ア) 見直し後における応札者数又は応募者数、落札率等

 前記のとおり、各法人においては随意契約見直し計画に基づき、契約方式の見直しを進めているが、見直し後の契約において、実質的に競争性が確保されていることなどが重要である。
 前記18,318件の中で、随意契約見直し計画でより競争性の高い契約方式へ移行するとしたもののうち、同計画で実施するとした契約方式又は当該契約方式より競争性の高い契約方式に移行したものが7,975件、同計画ではより競争性の高い契約方式に移行するとしなかったもののうち、実際にはより競争性の高い契約方式に移行したものが304件、計8,279件(45.1%)ある。
 そこで、上記の8,279件から公募を経た随意契約965件を除く7,314件のうち落札率が算定できる6,978件について、応札者数又は応募者数、平均落札率、移行後の契約相手方と従前の随意契約の契約相手方との異同の状況をみると、図表49 のとおりとなっている。

図表49 より競争性の高い契約方式に移行している契約における移行後の競争性等の状況
〔1〕 競争契約に移行したもの (単位:件、%、ポイント)
区分 競争契約に移行後の状況
全体
(A)
1者応札
(B)
((B)/(A))
複数応札
(C)
((C)/(A))
1者応札(B)のうち 複数応札(C)のうち (開差)
(B)-(C)
(開差)
(D)-(F)
契約相手方が同じもの(D)[(D)/(B)]契約相手方が異なるもの 契約相手方が異なるもの(E)[(E)/(B)] 契約相手方が同じもの(F)[(F)/(C)] 契約相手方が異なるもの(G)[(G)/(C)]
件数(a) 6,279 3,535 2,744 2,926 609 1,414 1,330    
  (56.2) (43.7) [82.7] [17.2] [51.5] [48.4] (12.5) (31.2)
平均落札率 91.6 95.5 86.6 95.8 93.9 88.9 84.3 (8.9) (6.9)
<参考>競争契約全体(平成20年度(12月まで))における件数(b) 29,790 12,650 17,140  
(42.4) (57.5)
(開差)(a)-(b)   (13.8) (△13.8)

〔2〕 企画随契に移行したもの
(単位:件、%、ポイント)

区分 企画随契に移行後の状況
全体
(A)
1者応札
(B)
((B)/(A))
複数応札
(C)
((C)/(A))
1者応札(B)のうち 複数応札(C)のうち (開差)
(B)-(C)
(開差)
(D)-(F)
契約相手方が同じもの(D)[(D)/(B)]契約相手方が異なるもの 契約相手方が異なるもの(E)[(E)/(B)] 契約相手方が同じもの(F)[(F)/(C)] 契約相手方が異なるもの(G)[(G)/(C)]
件数(a) 699 325 374 276 49 227 147
(46.4) (53.5) [84.9] [15.0] [60.6] [39.3] (△7.1) (24.3)
平均落札率 95.6 96.5 94.8 97.1 93.2 95.7 93.4 (1.7) (1.4)
<参考>競争契約全体(平成20年度(12月まで))における件数(b) 9,892 2,790 7,102
(28.2) (71.7)
(開差)(a)-(b) (18.2) (△18.2)
(注)
 落札率が算定できる契約等を抽出しているため、図表48とは件数が一致しない。

 これによると、競争契約に移行した6,279件の応札者数については、1者応札が56.2%の3,535件あり、20年度(12月まで)の競争契約に占める1者応札の割合42.4%と比較すると、13.8ポイント高くなっている。また、平均落札率は、複数応札が86.6%であるのに対して、1者応札は95.5%と8.9ポイント高くなっている。
 さらに、契約相手方の異同の状況をみると、1者応札となっている契約の82.7%の2,926件が、従前の随意契約と同一の契約相手方となっている。これに対して、複数応札の場合には従前の随意契約と同一の契約相手方となっているのは51.5%の1,414件で、1者応札の場合に比べて31.2ポイント低くなっている。
 このように、競争契約に移行したもののうち1者応札となっているものについては、契約相手方の固定化の割合が高く、十分に競争の効果が発揮されているとはいえない状況にある。なお、契約相手方が従前の随意契約と同一の契約相手方で あっても、複数応札の場合は、平均落札率が88.9%となっていて、1者応札の場合の95.8%と比べて6.9ポイント低くなっている。
 また、企画随契に移行した699件の応募者数については、1者応募の割合が46.4%の325件あり、競争契約に移行した場合と同様に高くなっているが、20年度(12月まで)の企画随契に占める1者応募の割合28.2%と比較すると、18.2ポイント高くなっている。また、平均落札率は、1者応募の方が応募者が複数であるもの(以下「複数応募」という。)より1.7ポイント高くなっているが、大きな開差はみられない。これは、企画随契では、競争契約の場合と異なり、価格面での競争の余地が小さいことが一つの要因になっていると考えられる。
 さらに、契約相手方の異同の状況をみると、契約相手方が同一であるものの割合は、1者応募が84.9%、複数応募が60.6%となっていて、1者応募の方が24.3ポイント高くなっているが、競争契約に移行したものほどの大幅な開差はみられない。

(イ) 競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態

 前記の2(2) で記述したとおり、対象契約に占める競争契約の割合は上昇しているものの、1者応札の割合も上昇している。また、上記(ア) のとおり、点検対象随意契約で競争契約に移行したものでも、1者応札の割合は56.2%を占めている。
 一方、一般競争入札の実施に当たっては、前記2(4) で記述したように、公告の方法、入札参加要件の設定、入札説明書等の作成等の契約手続を適切に行うことが、競争参加者の拡大につながると考えられる。また、このことについては、前記3の(2)ウ 及び(3)イ で記述したように、企画競争や公募においても同様であると考えられる。
 そこで、前記の18,318件の契約を対象として、各法人の会計実地検査の際に、応札者数又は応募者数や契約の内容となっている業務の性質等を勘案するなどして抽出した契約について、公告又は募集(以下、これらを「公告等」という。)の方法、入札参加要件、企画競争参加要件又は公募参加要件(以下、これらを「入札等参加要件」という。)の設定及び入札説明書等、企画競争説明書等又は公募説明書等(以下、これらを「入札等説明書」という。)の作成等の状況を検査した。また、企画随契については、企画書等の審査手続等についても併せて検査した。
 検査したところ、競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が81件あった。これを別表5の書式により態様別に示すと図表50 のとおりである。

図表50 点検対象随意契約に係る競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態の態様別分類
(単位:件)
態様別区分 一般競争契約の入札に係る手続に関するもの 企画競争に係る手続に関するもの 公募に係る手続に係るもの
ア 公告等の期間の設定に関して検討すべきであったもの 件数 11 9 - 20
  (ア) 公告等の期間が実質的には短縮されているもの 事例番号 〔2〕    
(イ) 見積期間の確保が十分でないもの 事例番号      
イ 入札等参加要件の設定に関して検討すべきであったもの 件数 25 - 2 27
  (ア) 競争参加資格等級を限定して指定しているもの 事例番号 〔4〕    
(イ) 事業者が保有する資格を限定して指定しているもの 事例番号 〔7〕    
(ウ) 業務実績の要件について地域や施設を限定しているもの 事例番号 〔9〕 〔12〕    
ウ 入札等説明書の作成に関して検討すべきであったもの 件数 14 1 - 15
  (ア) 契約の条件や仕様書の内容が制限的となっているもの 事例番号      
(イ) 仕様書等の記載内容が明確でないもの 事例番号 〔17〕 〔18〕 〔19〕 〔22〕  
エ 企画書等の審査について 件数 1 4 1 6
  (ア) 企画書等の審査方法に関して検討すべきであったもの 事例番号   〔23〕 〔28〕
(イ) 企画書等の審査体制に関して検討すべきであったもの 事例番号      
オ その他 件数 - - 13 13
  公募の公示等に関して検討すべきであったもの 事例番号     〔26〕 〔27〕
件数 51 14 16 81

(6) 20年報告に掲記した個別の事態の見直し状況等

ア 個別の事態の見直し状況

 20年報告に掲記した個別の事態955件について、20年度末現在で当局が講じた見直し状況を次のとおり区分して示すと、図表51 のとおりである(法人別内訳は別表9 参照)。

措置済み 20年次検査において移行すべきと認めた契約方式による契約を20年度末までに締結したもの(ただし、不落・不調随契は競争契約に含めている。)
措置未済 20年次検査において移行すべきと認めた契約方式と比較して、20年度末までに締結した契約が不十分な契約方式となっているもの
(内訳) 21年度に措置予定 20年次検査において移行が相当と認めた契約方式による契約を21年度に締結することを予定しているもの
  うち21年7月1日現在で措置済み 21年7月1日までに契約が締結されたもの
21年度予定なし 20年次検査において移行が相当と認めた契約方式による契約を21年度に締結する予定がないもの
当該年度限りなど 契約内容となる具体的な業務内容が契約年度限りのもの又は翌年度以降は当該業務は行わないことにしたものなど(翌年度に少額随契となったものを含む。)

図表51 個別の事態に係る見直し状況(平成20年度末現在)
  (単位:件)
区分 個別の事態 見直し状況(平成20年度末現在)
措置済み 措置未済 当該年度限りなど
競争契約に移行 企画随契に移行 公募を実施 21年度に措置予定 21年度予定なし
  うち21年7月1日現在で措置済み
件数 955 528 41 38 34 25 42 272 955
607 76

 上記955件の見直し状況(個別の事態の見直しの結果、複数の契約に分割したり、複数の契約を統合したりなどしているものがあるため、見直し後の件数は966件)をみると、「措置済み」が607件ある一方、「措置未済」も76件残っている。
 「措置未済」の76件は、移行手続に相当の期間を必要とするとして20年度も引き続き随意契約を行っているものなどであるが、これらの中には、20年報告では競争契約等へ移行したことから「措置済み」としたものについて、21年次の会計検査院の検査により、その後、再び随意契約を行っていることが判明したため、「措置未済」としたものも3件含まれている。
 上記について、引き続き随意契約を行っているものの事例を示すと、次のとおりである。なお、20年報告では「措置済み」としたものについて、「措置未済」としたものの事例は後掲の4(4)ア に記述している。

<事例>

[受益者に対する影響に配慮する必要があるとして引き続き随意契約を行っているもの]
〔29〕  雇用・能力開発機構は、平成18、19両年度に、情報ネットワーク運用管理業務について、当該情報ネットワークを構築した業者で、サーバー等の機器及びソフトウェアの互換性と設定内容等に精通していることなどを理由に、特定の業者と随意契約(契約金額:18年度64,961千円、19年度61,343千円)を行っていた。そして、20年度においても、同者以外の業者では、ネットワーク障害が発生した場合に受益者に多大な不利益を与えるおそれがあるとして、引き続き同者と随意契約(契約金額63,428千円)を行っている。
 なお、同機構は、業務への影響が限定される他のシステム運用管理業務については、20年度に先行して競争契約に移行しており、本業務についても、その履行状況を検証の上、業務の内容や作業レベルを正確に理解できる仕様書とするなどして、受益者に対するサービスが十分に維持できる環境を整えた上で、22年度から競争契約に移行するとしている。

イ 個別の事態の見直し後における競争性等の状況

(ア) 見直し後における応札者数又は応募者数、落札率等

 上記のとおり、20年報告に掲記した個別の事態については、その多くがより競争性の高い契約方式に移行しているが、前記の(5) で記述したように、見直し後の契約において、実質的に競争性が確保されていることなどが重要である。
 上記アの個別の事態のうち、20年度末までに契約方式の見直しにより競争契約に移行したものは528件、企画随契に移行したものは41件、計569件(見直し後の件数はそれぞれ513件、52件、計565件(不落・不調随契を除く。))となっている。そこで、このうち落札率が算定できる競争契約513件、企画随契48件計561件について、前記の(5)イ(ア) における点検対象随意契約の分析と同様に、応札者数又は応募者数、平均落札率、移行後の契約相手方と従前の契約相手方との異同の状況をみると、図表52 のとおりとなっている。

図表52 個別の事態の競争契約又は企画随契への移行後における平均落札率等の状況
〔1〕 競争契約への移行後における平均落札率等の状況 (単位:件、%、ポイント)
区分 競争契約移行前の状況 競争契約移行後の状況
全体(A) 1者応札(B) 複数応札(C) 1者応札(B)のうち (開差)
契約相手方が従前と同じもの(D) 契約相手方が従前と異なるもの(E) (B)-(C) (D)-(E)
  ((B)/(A)) ((C)/(A)) [(D)/(B)] [(E)/(B)]
件数 528 513 214 299 194 20    
      (41.7) (58.2) [90.6] [9.3] (△16.5) (81.3)
平均落札率 92.8 83.6 92.2 77.9 92.6 88.0 (14.3) (4.6)

〔2〕 企画随契への移行後における平均落札率等の状況(参考)
(単位:件、%、ポイント)

区分 企画随契移行前の状況 企画随契移行後の状況
全体(A) 1者応募(B) 複数応募(C) 1者応募(B)のうち (開差)
契約相手方が従前と同じもの(D) 契約相手方が従前と異なるもの(E) (B)-(C) (D)-(E)
  ((B)/(A)) ((C)/(A)) [(D)/(B)] [(E)/(B)]
件数 41 48 25 23 24 1
  (52.0) (47.9) [96.0] [4.0] (4.1) (92.0)
平均落札率 88.6 93.5 97.0 89.7 96.9 99.9 (7.3) (△3.0)

 上記のうち、競争契約に移行した513件の応札者数については、1者応札が41.7%の214件あり、点検対象随意契約の場合の56.2%より14.5ぽいんと低くなっている。また、平均落札率は、複数応札が77.9%であるのに対して、1者応札は92.2%と14.3ポイント高くなっていて、点検対象随意契約の場合の平均落札率の差8.9ポイントより開差が大きくなっている。
 また、契約相手方の異同の状況をみると、1者応札となっている契約の90.6%の194件が従前の随意契約と同一の契約相手方となっていて、その平均落札率は92.6%と、契約相手方が異なる場合の88.0%に比べて4.6ポイント高くなっている。
 このように、個別の事態のうち、契約方式の見直しにより競争契約に移行したものについても、1者応札となっているものについては、契約相手方の固定化の割合が高くなっていて、十分に競争の効果が発揮されているとはいえない状況にある。

(イ) 見直し後における入札等参加要件の設定

 上記(ア)のとおり、個別の事態のうち、契約方式の見直しにより競争契約に移行したものについても1者応札が4割強を占めている。一方、前記の2(4) で記述したとおり、一般競争入札の実施に当たっては、競争参加者の拡大を図るために、入札参加要件の設定は、契約の確実な履行のために必要最小限なものに限ることが重要である。
 そこで、個別の事態のうち、契約方式の見直しにより20年度末までに競争契約若しくは企画随契に移行し又は公募を実施した契約552件(不落・不調随契を除く。)について、入札参加要件、企画競争参加要件、公募参加要件として、参加者に求めていた契約実績又は業務実績等に係る要件(以下「契約実績等の要件」という。)の設定状況をみると、図表53 のとおり、全体の約4割に当たる224件が、契約実績等の要件を設定している。そして、契約実績等の要件を設定している場合においては、1者応札又は1者応募の割合が56.6%あり、契約実績等の要件を設定していない場合の34.4%に対して、22.2ポイント高くなっている。

図表53 契約実績等の要件の設定と応札者数又は応募者数の状況
  (単位:件、%)
区分 計(A) 〔1〕 契約実績等の要件を設定している(B) 〔2〕 契約実績等の要件を設定していない(E)
(割合(B)/(A)) 1者応札
(応募)(C)
複数応札
(応募)(D)
(割合(E)/(A)) 1者応札
(応募)(F)
複数応札
(応募)(G)
(割合(C)/(B)) (割合(D)/(B)) (割合(F)/(E)) (割合(G)/(E))
件数 552 224 127 97 328 113 215
割合 (100) (40.5) (56.6) (43.3) (59.4) (34.4) (65.5)

(ウ) 競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態

 個別の事態のうち、19年度又は20年度において競争契約又は企画随契に移行した契約582件について、その契約手続等の実施状況を検査した。
 検査したところ、競争性等の確保に関して検討の必要があったと認められる事態が18件あった。これを別表5の書式により態様別に示すと、図表54 のとおりである。

図表54 個別の事態に係る競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態の態様別分類
  (単位:件)
態様別区分 一般競争契約の入札に係る手続に関するもの 企画競争に係る手続に関するもの 公募に係る手続に係るもの
ア 公告等の期間の設定に関して検討すべきであったもの 件数 4 - - 4
  (ア) 公告等の期間が実質的には短縮されているもの 事例番号      
(イ) 見積期間の確保が十分でないもの 事例番号      
イ 入札等参加要件の設定に関して検討すべきであったもの 件数 5 - - 5
  (ア) 競争参加資格等級を限定して指定しているもの 事例番号 〔4〕    
(イ) 事業者が保有する資格を限定して指定しているもの 事例番号      
(ウ) 業務実績の要件について地域や施設を限定しているもの 事例番号 〔12〕    
ウ 入札等説明書の作成に関して検討すべきであったもの 件数 7 1 - 8
  (ア) 契約の条件や仕様書の内容が制限的となっているもの 事例番号      
(イ) 仕様書等の記載内容が明確でないもの 事例番号 〔17〕 〔18〕 〔22〕  
エ 企画書等の審査について 件数 - 1 - 1
  (ア) 企画書等の審査方法に関して検討すべきであったもの 事例番号      
(イ) 企画書等の審査体制に関して検討すべきであったもの 事例番号      
オ その他 件数 - - - -
  公募の公示等に関して検討すべきであったもの 事例番号      
件数 16 2 - 18