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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年10月

年金記録問題に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

(1) 検査の結果の概要

 年金記録問題についての各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、検査を実施した。

ア 年金記録問題発生の経緯、現状等

 年金記録問題が発生した経緯はどのようなものか。9年1月以降の基礎年金番号への統合及び統合後の事務処理等は、適正にかつ迅速に実施されているか。

イ 年金記録問題への対応に係る契約の内容、予定価格の算定、履行及びその確認等の状況 年金記録問題への対応に係る契約について、その内容、予定価格の算定、履行及びその確認等が会計法令等に基づき適切に実施されているか、また、経済的、効率的なものとなっているか。

ウ 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備の状況 年金記録問題の再発防止に向けた体制は適切に整備されているか。


 検査の結果の概要は、次のとおりである。

ア 年金記録問題発生の経緯、現状等

(ア) 年金記録問題発生の経緯(前掲 参照)

a 9年1月の基礎年金番号導入後において、基礎年金番号に統合されずに各制度ごとの手帳番号により管理されている年金記録は、約2億件あるとされていた。 18年6月までの間に、このうち約1億5000万件の年金記録が基礎年金番号に統合されたが、同月時点で残りの約5095万件が依然として基礎年金番号に統合されていない状況となっていた。

b 年金記録のオンライン化等の一連の過程において、使用頻度が低いと判断され、磁気テープ化又はオンライン化が行われずにマイクロフィルムの形で管理することとされた厚生年金保険喪失台帳記録及び船員保険喪失台帳記録が、計約1466万件存在することが判明した。

c 社会保険庁は、18年8月から実施された年金記録相談の特別強化体制の過程において、国民年金の保険料について、〔1〕 社会保険庁が保有する国民年金被保険者台帳のマイクロフィルム又は紙台帳や市区町村が保有する国民年金被保険者名簿等の紙台帳に納付記録が存在しているが、オンラインシステム上にその内容が正確に入力されていないものがあることや、〔2〕 オンラインシステム、マイクロフィルム及び紙台帳に納付記録は存在していないが、年金受給者又は被保険者等本人が保有していた領収書等に納付記録が存在するなどしているものがあることを把握した。
 また、年金受給者又は被保険者等が領収書等の直接的な納付記録を保有していないが保険料を納付したと主張する事態も見受けられたが、このような事態について、社会保険事務所等において年金記録の訂正・回復を行う仕組みが整備されていなかった。

d 総務大臣が厚生年金保険に関して20年2月までにあっせんを行った事案201件のうちには、被保険者の標準報酬月額の引下げ処理を適用事業所に該当しなくなったとする全喪届出処理が行われた日より後の日付でそ及して行っていたなど合理的な理由が認められないとされた年金記録のそ及訂正の事案が16件見受けられた。また、これらの事案とは別に、このような年金記録の不適正なそ及 訂正処理について、社会保険事務所等の職員の関与を疑わせるとされる事案も明らかになった。

(イ) 社会保険庁の取組の状況

a 年金記録の補正作業及び名寄せの実施状況(前掲 参照)

 基礎年金番号に統合されていない約5095万件の年金記録について、社会保険庁が基礎年金番号の年金記録との名寄せを実施するに当たり、氏名、生年月日又は性別が収録されてない年金記録が約524万件存在しており、正しい名寄せを行うことができないという問題点が確認された。そこで、社会保険庁は、当該年金記録について払出簿等を確認の上、氏名等の補正作業を実施した。
 しかし、払出簿等に記載が無かったり、オンラインシステム上に事業所情報が収録されていなかったり、生年月日が実在しない日付であったりなどしていたため、氏名等の補正作業が困難とされているものが21年2月現在で26,354件存在している状況である。
 上記約524万件の補正作業を実施した後、社会保険庁は、19年11月から20年3月までの間に、すべての年金受給者及び被保険者等のオンラインシステム上の記録との名寄せを実施した。その結果、特定の基礎年金番号に結び付く可能性のある未統合記録は、20年3月現在で約1172万件であった。

b ねんきん特別便等の実施状況(前掲 参照)

(a) 社会保険庁は、すべての年金受給者及び被保険者等約1億0873万人に対して年金記録を確認してもらうため、ねんきん特別便の発送を20年10月末までに終えている。

(i) 上記のうち、約5095万件の未統合の年金記録の中に本人の基礎年金番号に結び付くと思われる記録が存在しているのに、加入履歴のチェックポイントが示されていないなど、その様式等が必ずしも十分ではないものがあった。このことから、より積極的な対応や分かりやすい注意喚起を行うための印刷物を新たに折り込んで3月末までに1,080,917件を、計1億8989万余円で再発送していた。
 また、発送対象者の住所不明により返送されたものがあり、社会保険庁は住所の変更について各地方社会保険事務局等に再確認するなどした上で、21年3月末までに約79万件を、計1億8466万余円で再発送していた。
 このほか、ねんきん特別便の作成及び発送準備業務に係る委託契約において委託業者への指示等が適切でなかったなどのため、予定どおり発送対象者に到達せず再発送せざるを得なくなり、社会保険庁がその費用を負担して再発送した事態が約51万件、計3301万余円見受けられるなどしていた。

(ii) ねんきん特別便の回答者数は21年5月末現在で約7753万人にとどまっており、未回答者がいまだ約3119万人存在している状況である。また、名寄せ作業の結果、基礎年金番号に結び付く可能性のある記録があるとされた年金受給者においても約40万人の未回答者が存在している。そこで、社会保険庁は、上記年金受給者のほか、やはり基礎年金番号に結び付く可能性のある記録があるとされた年金受給者のうち「訂正無し」と回答した者で、基礎年金番号上の記録と名寄せにより該当した記録に期間の重複が無い者計約87万人について、各社会保険事務所等が中心になり、電話や戸別訪問によるフォローアップ照会を実施してきている。その結果、本人と連絡が取れない者又は回答拒否者が21年5月末現在で37,340人となっている。そして、その数は、フォローアップ照会の実施の進ちょくに伴い増加する傾向にあり、フォローアップ照会を実施したものの、未統合記録が本人のものであるか否かを確認するというフォローアップ照会の目的が十分達せられていない状況となっている。
 なお、社会保険庁は、電話や戸別訪問によっても本人と連絡が取れない者に対して、未統合記録の一部を記載して回答を求める文書を発送した。

(b) 社会保険庁は、昭和54年からそれまで一部を除き漢字氏名で収録されていた厚生年金保険の年金記録をカナ氏名で収録することとした。その際、資格喪失被保険者については本人への郵便や事業所を通じてのカナ氏名の確認ができないことから、漢字氏名を一般的な読み方により自動的にカナに変換する「漢字カナ変換辞書」を使用してカナ氏名を収録した。このため、一般的な読み方と異なる読み方の氏名については年金記録に正しい読み方と異なるカナ氏名が収録されており、カナ氏名同士では名寄せができない状況となっていた。そこで、同庁は、これに係る約154万件の年金記録を対象として、払出簿等を確認して漢字氏名を収録する補正作業を実施している。
 一方、漢字氏名等の記録の補正作業が完了していないものは平成20年5月現在で計3,330件あった。社会保険庁は、これらの中には、払出簿等を確認しても漢字氏名が判明せず、名寄せして基礎年金番号に統合することが困難なものがあるとしている。
 社会保険庁は、補正ができたものについて基礎年金番号の年金記録との名寄せを実施した結果、当該年金記録の持ち主である可能性のある者について、ねんきん特別便とは別に「年金記録の確認のお知らせ」(黄色の封筒)を発送している。

(c) 社会保険庁は、被保険者等の個人がインターネットにより、年金加入記録の照会を行えるサービスを18年3月から実施している。本システムの開発経費は1億4394万余円、その運用経費は19年度3363万余円、20年度1422万余円となっている。

c マイクロフィルムで管理されている約1466万件の年金記録とオンラインシステム上の記録との名寄せ(前掲 参照)

 社会保険庁は、マイクロフィルムで管理されている厚生年金保険喪失台帳記録及び船員保険喪失台帳記録の約1466万件のうち、オンラインシステムに収録されていない記録について磁気媒体化し、オンラインシステム上の記録との間で名寄せを行った。その結果、氏名等が一致した年金記録のうち約139万件についてオンラインシステムへの収録を行った。そして、このうち記録が結び付く可能性がある約68万人(これに係る記録の数約76万件)に対し確認の文書を発送し、21年5月末までに約58万人から回答があった。このうち、約35万人については本人の記録であると確認できたとしている。なお、同年2月までに約27万件の年金記録が基礎年金番号に統合されているとしている。

d オンラインシステム上の年金記録と厚生年金保険の被保険者名簿等の記録約8.5億件との突合せ(前掲 参照)

 厚生年金保険及び国民年金に係る年金記録について、社会保険庁が実施したサンプル調査の結果、被保険者名簿等の記録とオンラインシステム上の記録が一致しないものが、厚生年金保険の被保険者名簿等の記録19,979件の1.4%について、国民年金の特殊台帳の記録3,090件の0.1%について、それぞれ見受けられた。
 厚生労働省は、このサンプル調査の結果を踏まえて、これら紙台帳等の記録約8.5億件を電子画像化してコンピュータに入力し、検索機能を備えたシステムを整備した上で、オンラインシステム上の記録との計画的な突合せを22年度から行うこととしており、これに必要となる経費は1900億円から2300億円であると試算している。そして、社会保険庁は、突合せを行うため年金情報総合管理・照合システムを開発しているところであり、これに要する経費としては20、21両年度に予算額計66億円を計上している。

e 年金記録相談等の実施状況(前掲 参照)

 社会保険庁における年金記録相談等業務には、〔1〕 社会保険事務所等が主体となって実施している年金記録相談等、〔2〕 社会保険庁が民間事業者に業務を委託して実施しているコールセンターでの年金記録電話相談等、〔3〕 市区町村、社会保険労務士等の協力を得て市区町村の窓口、郵便局、農業協同組合等において実施している年金記録相談等がある。
 このうち、〔1〕 の社会保険事務所等の相談窓口における年金記録の確認件数は、18年8月から20年6月までの累計で約1165万件となっていた。そして、相談窓口で年金記録が判明しなかったため照会申出書により調査の申出を受付したものなどは約112万件であった。この約112万件のうち、基礎年金番号の年金記録に収録されていなかった年金記録が判明するなどしたものは約28万件であった。
 また、〔2〕 の民間事業者に業務を委託して実施している年金記録電話相談等についてみると、その平均応答率は「ねんきんダイヤル」で38.8%、「ねんきんあんしんダイヤル」で93.1%、「ねんきん特別便専用ダイヤル」で68.5%となっている。そして、「ねんきんダイヤル」及び「ねんきん特別便専用ダイヤル」については、年金受給者又は被保険者等の年金記録電話相談等の需要に対して十分な対応ができていない期間が生じていると認められる。

f 標準報酬月額等の不適正なそ及訂正処理問題への取組状況(前掲 参照)

 社会保険庁は、標準報酬月額等の不適正なそ及訂正処理が行われた可能性があるとして約6万9千件の年金記録を抽出して、このうち年金受給者に係る約2万件について、20年10月から戸別訪問による聞き取り調査を開始し、21年3月末までにそれをおおむね終了した。その結果、同庁職員の関与を疑わせる旨の回答が1,335件あり、このうち211件は職員が特定できるなど具体性のある内容となっている。社会保険庁は、標準報酬月額の不適正なそ及訂正処理への職員の関与について調査を行っており、21年7月及び9月に追加調査等の結果が公表され、職員が関与した不適正なそ及訂正事案が20年9月に公表された調査結果に係る1件のほか、25件確認されたとしている。

(ウ) 年金記録の基礎年金番号への統合等の状況(前掲 参照)

a 年金記録の基礎年金番号への統合及び記録の訂正・回復状況

(a) 社会保険庁は、約5095万件の年金記録については、社会保険事務所等における年金記録相談の実施、ねんきん特別便の発送等により、18年6月から21年3月までの間に、約1010万件の記録について基礎年金番号へ統合を終えたとしている。
 約5095万件のうち、名寄せにより基礎年金番号の記録に結び付く可能性があるとしてねんきん特別便を発送したものは約1172万件である。このうち、統合できた記録は約398万件であり、依然として約774万件が統合できないまま残っている状況である。
 そして、約5095万件の年金記録のうちには、上記の統合を終えた約1010万件のほか、死亡が判明した者等の記録が約1616万件、解明作業が進展中の記録が約533万件あるが、その一方で、今後解明を進める年金記録は依然として約1162万件存在している。
 これらの年金記録について、社会保険庁は、未統合記録の持ち主であると思われる者に対して照会を行うなどの各種解明作業を行い、それでもなお本人の特定ができない年金記録については、最終的にはインターネット上での公示等により解明・統合を進めることを検討するとしている。
 また、これらの作業と平行して、22年4月から年金情報総合管理・照合システムによる紙台帳の記録とオンラインシステム上の記録との突合せを実施するとしている。

(b) 社会保険事務所等における年金記録相談において、被保険者等から年金記録照会の申出を受け、被保険者等に対して回答したものの中に、社会保険事務所等の調査により年金記録が判明したが、氏名変更等の届出欄の無い様式の申出書を使用するなどしていて被保険者等から氏名変更等に係る届出が別途提出されていなかったり、手帳番号の年金記録の基礎年金番号への統合には被保険者等の届出は必要ないのに、これを求めていたりなどしていた。社会保険事務所等においては、被保険者等から氏名変更等の届出が無い場合には、これを提出するよう勧奨したり、被保険者等からの届出が無くとも手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合するための処理を行ったりなどする必要があったのに、これらのことを行っていなかった。
 このため、年金記録の基礎年金番号への統合等の処理が適切に行われておらず、その結果、本来給付されるべきであった年金額が適正に支給されないなどしている事態が見受けられた。

b 再裁定等の実施状況(前掲 参照)

 年金受給者について未統合の年金記録のあることが新たに判明した場合は、社会保険事務所等が年金記録を基礎年金番号へ統合する処理を行った後に、社会保険業務センターにおいて再裁定を行う必要がある。
 社会保険事務所等から同センターへの再裁定進達件数の増加や時効特例法に基づく事務処理の増加等により、再裁定の申出から年金の支給決定までに要する期間は長期化している。そこで、社会保険庁は、再裁定処理の迅速化のために、職員の増員及び再裁定処理システムの改善を行っており、その結果、21年3月及び4月の処理件数が19.1万件まで増加する一方、未処理件数は同年1月の82.3万件をピークに減少に転じていて、同年4月には61.7万件となっている。社会保険庁は当分の間500人程度の人員配置及び再裁定処理システム機能の更なる強化を行うこととし、

c 年金受給者等に対する特例的救済施策とその実施状況(前掲 参照)

 多数の年金記録が訂正・回復されたことに伴い多額の未支給の年金が消滅時効にかかったり、給与からの保険料控除に見合った給付が受けられなかったりするなどの年金受給者等の不利益となる事態が多数発生したことから、このような年金受給者等を特例的に救済するための時効特例法、厚年特例法等が制定されている。
 時効特例法に基づく支給決定件数及び金額は、21年4月までの累計では、それぞれ549,536件、2938億2281万余円となっている。時効特例法の対象者には、無年金であった者が新たに年金の受給権を得ることとなった結果、支給決定金額が多額となっている高齢者も見受けられ、適切な時期に適切な額の給付を受けることができなかったと認められる者が見受けられた。
 また、厚年特例法に基づく特例納付保険料の額は、21年5月現在で5億5625万余円となっていて、このうち2億5410万余円が既に納付されている。特例納付保険料の未納付分については、今後、特例法対象事業主等が納付に応じない場合等には、国が特例納付保険料に相当する額を負担する場合がある。

(エ) 決算検査報告掲記事項のうち年金記録の正確性に係るもの(前掲 参照)

 会計検査院は、年金記録の正確性に影響のあるものとして、〔1〕 平成12年度決算検査報告に「政府管掌健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪処理について、その適正化を図るよう改善の措置を要求したもの 」を、〔2〕 平成16年度決算検査報告に「健康保険、厚生年金保険の適用促進の実施状況について 」を、それぞれ掲記しており、この指摘の概要及び社会保険庁の執った処置の概要は、次のとおりである。
〔1〕  健康保険又は厚生年金保険が適用される事業所は、事業主の意思にかかわらず、健康保険又は厚生年金保険に加入し、その適用を受けなければならないのに、適用事業所が休業したなどとして全喪届を提出していながら、全喪処理後も引き続き事業を継続していたり、全喪処理後に短期間で事業を再開していたりしているのに、健康保険又は厚生年金保険の適用を受けていない事態が見受けられた。
 これに対して、社会保険庁は、適用事業所に該当しなくなった場合の届出に関する規定を新たに設け、届書の記載内容を明確に示すとともに適用事業所に該当しなくなったことを証する書類を添付させることとしたり、届書の記載内容の調査確認方法などを定めたりするなどした。
〔2〕  健康保険及び厚生年金保険の未適用事業所が数多くあるとの指摘がなされており、未適用事業所を少なくすることが、被保険者等となるべき者に対する医療保障や年金受給権の確保、事業主間の公平性の確保及び制度の信頼性の確保のために重要と考えられることなどから、両保険の適用促進の実施状況について検査した。
 検査したところ、社会保険事務所等の中には適用促進への取組が十分でないものがあったり、社会保険事務所等に対する社会保険庁の指導内容が必ずしも統一的に実施されていなかったりなどしている状況となっていた。
 これに対して、社会保険庁は、社会保険等の適用促進を外部に委託する市場化テストを実施し、その結果を踏まえ、19年度においては一般競争による民間委託を全社会保険事務所等に拡大したり、各地方社会保険事務局に対し各種業界団体等から情報収集等を行い、未適用事業所を的確に把握して適用促進を図るよう指導したりするなどしている。

イ 年金記録問題への対応に係る契約の内容、予定価格の算定、履行及びその確認等の状況(前掲 参照)

 社会保険庁が19年度に契約を締結した220契約(支出済額計91億8510万余円)及び20年度に契約を締結して20年10月31日までに支払を行った267契約(支出済額計135億0542万余円)について検査を実施した。

(ア) 契約方式の適用状況等

 社会保険庁が、19、20両年度に締結した上記の契約の契約方式別の状況は、一般競争契約及び随意契約となっており、指名競争契約はなかった。
 そして、19、20両年度における契約方式別の件数及び支出済額をみると、件数では、一般競争契約が155件、142件、随意契約が65件、125件となっていて、一般競争契約の件数が多くなっていた。
 支出済額では、随意契約が、19年度で57億0311万余円となっていて、前記の220契約の支出済額の62.0%を占めていた。一方、20年度で49億4773万余円となっていて、前記の267契約の支出済額の36.6%となっている。

(イ) 一般競争契約の入札実施状況

 19、20両年度における一般競争契約の入札者数をみると、1者入札が10件、28件、2者以上4者以下の入札が27件、23件、5者以上の入札が118件、91件となっていた。
 そして、業務等の内容別に入札者数をみると、19、20両年度ともに、ねんきん特別便に関する各業務、旧台帳等のデータ入力業務、労働者派遣において、入札者が5者以上の場合が多くなっていた。

(ウ) 随意契約の締結

 19年度に随意契約により締結された電話相談業務8契約、バックオフィス業務1契約及び運営サポート業務1契約、計10契約(支出済額計55億9430万余円)においては、いずれの契約においても業務の実施を先行させて、契約書の作成を業務の開始日より後に行っていた。
 これらは、会計法に規定されている契約書の作成を行わないまま委託業務が開始されたものであり、このような事態は会計法上適正を欠いているものと認められる。

(エ) 契約の履行及びその確認の実施状況

 社会保険庁においては、通常業務に係る従前の調達に加えて、19年度以降は年金記録問題に係る調達が相当数増加している。これらの契約については、単価契約であるものが相当数含まれていることから、その支払に当たっては、業務の実施に実際に要した員数等の確認を適切に行うことが極めて重要となっている。
 検査したところ、員数等の確認を含む給付の完了の確認の検査は、契約担当官等の補助者である本庁経理課等の職員が検査職員として行うこととされているのに、実際は、調達要求部署の担当職員を確認者として契約業務の履行の確認を行わせて、その確認をもって給付の完了を確認したものとして検査調書を作成していた。
 会計実地検査において上記のような事態が見受けられたので、社会保険庁は、21年6月15日以降、実際に直接給付の完了を確認する調達要求部署の担当職員を補助者として任命することとした。

(オ) 年金記録電話相談業務等に係る契約の履行の確認の状況

 19、20両年度における電話相談業務に係る契約については、業務に従事する管理者、オペレータ等の稼働状況、電話応答数等を日次及び月次で報告させることにより、各月に実施した業務の給付の完了の確認を行っていた。
 これらの業務に係る契約においては、業務実施時間数に関する具体的な根拠資料を提出することなどが仕様書等において明示されていなかった。このため、契約の履行確認の際に、支払請求の対象となる業務の実施状況の確認を行うことができず、適切とは認められない事態が見受けられた。
 特に、このうち、19年度における「ねんきんあんしんダイヤル」の電話相談業務に係る一部の契約については、業務実施時間数に休憩時間数が含まれていた。 しかし、当該休憩時間には業務を実施していないことから、これを支払請求の対象となる業務実施時間数から除外すべきであったと思料される。

ウ 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備の状況

(ア) 不適正な事務処理等の防止に係る取組(前掲 参照)

a 不適正な事務処理等の防止に係る通知の発出

 社会保険庁は、17年10月以降、不適正な事務処理等の防止に係る各種通知を発出している。これらは、業務改革プログラムの法令遵守又は内部統制の仕組みの構築と職員の意識改革の推進等に係る具体的な取組として、不適正な事務処理等の再発を防止して年金記録の正確性確保を図ることなどを目的としたものであるとしている。

b 不正行為の再発等

 社会保険庁は、18年3月に「不正事故防止のための点検事項並びに指定届書及び特定届書の指定について」を発しているが、その後も年金記録の正確性に影響を及ぼす保険料の横領の不正行為が発生している。

(イ) 内部監査の実施等による不適正な事務処理等の再発防止に係る取組(前掲 参照)

 社会保険庁が実施する内部監査には、業務監察、会計監査及び自治監査があり、18年10月以降、社会保険庁は、業務改革プログラム等における監査部門の機能強化を図っている。

a 内部監査の実施方針等について

 業務監察については、年金記録の正確性確保に関するものとして、18年度では事故防止に関する取組状況についての監察及び適正検査を実施すること、19年度では適正検査を拡充すること、20年度では適正検査により重点を置いた監察を行うことなどとなっている。
 会計監査については、会計経理の適正性を確保する観点として、18、19、20各年度において、内部牽制体制が実効性を確保できる取組みとなっているか実地に検証を行うことなどとなっている。

b 内部監査の実施状況について

 年金記録問題への対応に追われた19年度には、18年度及び20年度と比較して、地方社会保険監察官が単独で業務監察及び会計監査を実施した箇所数が大幅に少なくなっている状況となっている。
 業務監察においては、緊張感のある内部監査を行う目的及び不正事故防止の観点から、事前に受検側に通告をしない業務監察も実施しており、その実施対象は、近年、業務監察が実施されていない社会保険事務所等から選定するなどしている。
 会計監査においては、現金亡失等の事故防止の観点から、事前に受検側に通告をしない会計監査も実施しており、その実施対象は、業務監察と同様に選定している。

c 内部監査の実施結果について

 業務監察においては、実施結果を、〔1〕 是正指示事項、〔2〕 指摘事項、〔3〕 指導事項の三つに区分している。これらの事項は、業務監察の対象である地方社会保険事務局長等に対して、文書で通知されるとともに、是正又は改善のための措置及びその結果について、書面で改善報告書の提出を求められることとなっている。
 会計監査においては、会計監査の結果、是正等を要すると認めた事項(指摘事項)について、会計監査の対象である地方社会保険事務局長等に対して、文書で通知されるとともに、是正等のための措置及びその結果について、書面で改善報告書の提出を求められることとなっている。
 そして、業務監察及び会計監査において、改善内容が不十分な場合には更なる是正指示又は改善指導を行うとともに、次回の業務監察及び会計監査時に改善状況の確認を行っているとしている。
 18、19、20各年度における本庁及びブロック局が実施した業務監察及び会計監査の実施結果を指摘区分ごとの指摘件数についてみると、20年度の業務監察において適正検査により重点を置いた監察を行うこととしたことなどから指摘件数の総数が大幅に増加している状況となっている。

d 内部監査の実施結果の周知について

 内部監査の実施結果については、業務監察及び会計監査の対象である地方社会保険事務局長等に対して、実施結果を文書で通知するなどしている。
 そして、業務監察の実施結果については、その概要を取りまとめたものを全職員が庁内LANで閲覧できるようになっている。一方、会計監査の実施結果については、その概要を取りまとめたものを会計担当職員に限定して庁内LANで閲覧できるようになっている。

(ウ) 社会保険庁の基本的姿勢や組織上の問題に対応するための組織改革等(前掲 参照)

 社会保険庁は、21年1月の業務改革プログラムの改定において、「内部統制の仕組みの構築と職員の意識改革の推進」について、民間企業等における内部統制の考え方を踏まえながら、社会保険庁における内部統制の強化に取り組むために、金融庁企業会計審議会による内部統制の基本的要素ごとに、これまでに実施した各種の取組を整理するなどしている。これらの社会保険庁の取組のうち、
〔1〕  18年10月の「社会保険業務処理マニュアルの運用開始」及び「監査部門の機能強化」は、独自の判断による事務処理に基因する不適正な事務処理の再発防止を図るため策定されたものであるとしている。
〔2〕  「リスクアセスメント調査の実施」は、業務運営上のリスクを網羅的に把握・分析・評価して、その発生や対応について管理する仕組みを構築するために、業務運営上のリスクを洗い出すものであるとしている。
〔3〕  「社会保険オンラインシステムの刷新」は、社会保険業務の業務・システム最適化計画に基づき、システムの刷新を進めるものであり、不適正処理の防止及び早期発見が可能となるチェック機能の整備を含むものとなっていて、適正な事務処理を確保するものであるとしている。

 また、社会保険庁は、年金記録の正確性を確保するために、「ねんきん定期便の発送」や「インターネットによる年金記録照会」により年金受給者、被保険者等本人が年金記録を確認する仕組みの整備を進めているとしている。

(エ) 社会保険庁の廃止及び日本年金機構の設立(前掲 参照)

a 日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画

 社会保険庁は22年1月に廃止されることが予定されており、厚生年金保険事業及び国民年金事業については、日本年金機構が厚生労働大臣の監督の下にその業務運営を担うことが予定されている。
 20年7月に閣議決定された基本計画によれば、
〔1〕  同機構の組織ガバナンスの確立に関する内部統制の仕組みの構築については、「リスクアセスメント調査、業務処理マニュアルの整備を進めることや、内部統制を推進する組織体制を整備するなど、内部統制の強化に早急に取り組む。」ことなどとされている。
〔2〕  監査体制等の整備については、「理事長に直結した内部監査部門を設け」、「会計監査人による会計監査のみならず、業務についても外部監査を活用する。」、「厚生労働省以外の第三者が機構を検査する仕組みについて、今後、法改正も含めた検討を行う。」ことなどとされている。
〔3〕  固定的な三層構造を一掃するための人材登用の仕組みについては、「本部で一括採用を行うとともに、地方の幹部人事も本部で行う。また、本部・地方組織間で全国異動を行い、管理業務と現場業務の経験を通じて幹部を養成することを基本的なキャリアパターンとして確立し、これを人事制度上のルールとする。」ことなどとされている。
〔4〕  年金記録問題への対応については、「現下のいわゆる年金記録問題への対応については、現在、その問題解決に向け、政府において鋭意取組を進めている。一方、基本計画で示した機構の必要人員数は、通常想定される業務をベースにしている。年金記録問題への対応として、一定期間、一定程度の人員・体制がなお必要となる場合も、まずは既定の人員の枠内で最大限の工夫を行うものとし、それでも対応が困難である場合でも、できる限り、外部委託や有期雇用の活用などにより対応するものとする。これに関係する具体的な人員については、年金記録問題の進捗状況を踏まえ、早期に検討を進める。また、いかなる場合でも、機構の他の業務に重大な支障が生じないよう、厚生労働省が責任を持って適切な対応策を講ずる。」こととされている。

b 日本年金機構における内部統制システムの構築等

 日本年金機構における内部統制システムの構築についてみると、社会保険庁は、「国民の意見を反映しつつサービスの質の向上を図るとともに、効率的かつ公正・透明な事業運営を行う。」ことなどの基本的視点に基づき、かつ会社法や金融商品取引法に基づく民間企業の取組を参考にして、基本方針を定めているとしている。
 この基本方針において、〔1〕 コンプライアンス確保、〔2〕 業務運営における適切なリスク管理、〔3〕 業務の有効性・効率性の確保、〔4〕 適切な外部委託管理、〔5〕 情報の適切な管理・活用、〔6〕 業務運営及び内部統制の実効的な監視及び改善、〔7〕 ITへの適切な対応の7事項が柱として位置付けられている。


(2) 所見

 年金記録問題に対応するための各種取組については、今後も、社会保険庁(22年1月1日以降は同日に成立する予定の日本年金機構。以下同じ。)において適切に実施されることが必要である。
 したがって、社会保険庁は、今後の各種取組の実施に当たっては、次の点に留意することが肝要である。

ア 年金記録問題発生の経緯、現状等

(ア) 年金記録の補正作業及び名寄せの実施状況については、基礎年金番号に未統合の年金記録のうち、氏名等の補正作業が困難とされているものや、正しい読み方と異なるカナ氏名が収録されている年金記録で補正困難とされているものが依然として見受けられる。したがって、22年度以降に運用が開始される年金情報総合管理・照合システム等を有効に活用することにより、正しい氏名等に補正を行うなどして早急に解明する必要がある。

(イ) ねんきん特別便等の実施については、

a 年金記録問題の解決に当たり、ねんきん特別便の発送は被保険者等の本人に年金記録を確認してもらうための有効な手段の一つであるが、ねんきん特別便が被保険者等に到達しないとこの確認をしてもらうことができない。したがって、本人に年金記録を確認してもらうために必要となる様々なアプローチの方法を検討してこれを実施する必要がある。また、ねんきん特別便の未回答者に対しては、今後毎年発送することとなるねんきん定期便においてその回答を促すなどあらゆる機会を捉えて働きかけを行う必要がある。

b ねんきん特別便の作成及び発送のための費用は多額となっており、その作成及び発送について誤りがあれば再発送の費用を要することになる。会計検査院は「ねんきん特別便の作成及び発送準備業務に係る委託契約において、仕様書の記載、委託業者への指示等が適切でなかったため、再度、ねんきん特別便の作成及び発送が必要となり不経済となっているもの」として、平成19年度決算検査報告に掲記したところである。今後は、ねんきん定期便が毎年度相当数発送されることから、ねんきん定期便についても再発送の事態を避けるために、慎重にその作成及び発送を行う必要がある。

c フォローアップ照会において、本人と連絡が取れない者又は回答拒否者の数がフォローアップ照会の実施の進ちょくに伴い増加する傾向にあり、フォローアップ照会を実施したものの、未統合記録が本人のものであるか否かを確認するというフォローアップ照会の目的が十分達せられていない状況となっている。そのため、今後もこれらの者に対する照会を継続的に実施していく必要がある。

d インターネットによる年金加入記録の照会サービスは、年金受給者及び被保険者等が自己の年金記録をいつでも閲覧できるように構築したシステムであり、年金記録の正確性に資することができるものであると認められることから、このシステムを十分に活用するための方策を講ずる必要がある。

(ウ) マイクロフィルムで管理されている約1466万件の年金記録とオンラインシステム上の記録との名寄せ

 既に約35万人について本人の記録であると確認できたとしているが、名寄せにより氏名等が一致しなかった年金記録等残る記録については、統合作業を早期に終結させるための方策を検討する必要がある。

(エ) オンラインシステム上の年金記録と厚生年金保険の被保険者名簿等の記録約8.5億件との突合せ

 年金情報総合管理・照合システムにより行うこととしているが、システムの開発及び運用並びに作業人員の配置等に多額の経費が発生することが見込まれている。したがって、その突合せの作業内容が正確性を確保しつつ経済的かつ効率的なものとなるよう、システムの開発に慎重を期し、かつ、その運用後も定期的にその実施方法及び結果についての検証を行い、随時、人員配置、作業方法等の見直しを行っていく必要がある。

(オ) 年金記録電話相談業務等については、被保険者等の年金記録電話相談等の需要に対して十分な対応ができていない期間が生じていると認められる。したがって、その実施に当たっては、被保険者等の年金記録電話相談等に対する需要を的確に予測・分析するなどした上で、オペレータを増員するなどして需要に見合った対応席数を確保することにより、応答率の向上に一層努める必要がある。

(カ) 不適正なそ及訂正処理が行われたとされる者等の迅速な救済を図るために、対象者が役員(事業主を含む。)以外である場合など一定の基準に該当する事案等については、正確性を確保した上で被害者救済のための処理を引き続き迅速に行う必要がある。そして、今後同様の事態が生じないよう、事業主等に対する制度の趣旨についての啓発活動や、被保険者等が自分の年金記録を容易に確認できるための方策を執ることなど、再発防止に向けた処置を検討する必要がある。また、職員の関与等、事実関係の調査を引き続き行い、その調査結果を明らかにする必要がある。

(キ) 年金記録の基礎年金番号への統合については、

a 未統合記録5095万件については、ねんきん特別便の発送等により、18年6月から21年3月までの間に、約1010万件の記録について基礎年金番号への統合を終えるなどしているが、今後解明を進める年金記録が21年3月現在で依然として約1162万件存在している。そこで、社会保険庁は、未統合記録の持ち主であると思われる者に対して照会を行うなどの各種解明作業を行った上で、インターネット上での公示等により解明・統合を進めることを検討するとしている。これらのことを含めて、解明・統合作業を早期に終結させるのための方策を検討する必要がある。

b 社会保険事務所等における年金記録相談において判明した年金記録について、その基礎年金番号への統合等の処理が適切に行われていなかったため、本来給付されるべきであった年金額が適正に支給されないなどしている事態が見受けられた。
 これらについては、社会保険事務所等は、被保険者等から氏名変更等に係る届出が無い場合にはこれを提出するよう勧奨したり、被保険者等からの届出が無くとも手帳番号の年金記録を基礎年金番号に統合するための処理を行ったりなどしてこのような事態について是正を図る必要がある。特に、年金記録の統合により年金給付額が増加すると見込まれる年金受給者については、社会保険庁は、当該年金給付額が早期に支給されるよう、年金の再裁定等の処理の迅速化に更に努める必要がある。

(ク) 再裁定については、再裁定の申出から年金の支給までに要する期間が長期化していることから、社会保険庁は、引き続き未処理案件の処理促進に努めるとともに、再裁定案件の受付及び処理状況等を把握した上で、効果的な人員配置を行うなど一層の処理促進のための方策を検討する必要がある。

(ケ) 年金受給者等に対する特例的救済施策

 多額の未支給の年金が消滅時効にかかったり、給与からの保険料控除に見合った給付が受けられなかったりするなど年金受給者等の不利益となる事態が発生することを防止するために、事業主に対する制度の趣旨についての啓発活動や、被保険者等が自分の年金記録を容易に確認できるための方策を執る必要がある。
 厚年特例法に係る特例納付保険料については、特例法対象事業主等から納付が行われないなどの場合には、最終的に国が特例納付保険料に相当する額を負担することになるおそれがある。したがって、社会保険庁は適切に文書及び電話による納付勧奨を行っていく必要がある。


イ 年金記録問題への対応に係る契約の内容、予定価格の算定、履行及びその確認等の状況

(ア) 年金記録問題への対応については、各種の取組に要する経費として21年度予算においても当初予算額283億余円、補正予算額518億余円が措置されており、今後も多額の経費が投入されることが予想される。
 このため、年金記録問題への対応に係る委託業務等に関して、契約担当部署は、〔1〕 調達要求部署からの調達要求について、調達理由書、業務仕様書等により業務の必要性・妥当性を審査するなどして、調達の適正化を図り、〔2〕 予定価格を適正に算定し、〔3〕 競争性のある適正な契約手続により契約を締結し、〔4〕 業務の履行状況を適正に確認し、支払行為を適正に行うことはもとより、〔5〕 業務の効果を的確に判断することが必要である。
 さらには、これらについては、現在実施している外部の有識者等による事前又は事後の審査を更に厳正に実施することにより、年金記録問題への対応に係る予算の適切な執行に努める必要がある。

(イ) 電話相談業務について、契約の履行確認に当たり支払請求の対象とする業務実施時間数に関する具体的な根拠資料を提出することが仕様書等において明示されていないことなどから、業務の実施状況の確認が十分に行われていないと思料される事態等については、今後、同様な事態が生じないよう再発防止に努める必要がある。

ウ 年金記録問題の再発防止に向けた体制整備の状況

 社会保険庁は、21年1月に業務改革プログラムの項目を整理する改定を行い、年金記録問題への対応、国民サービスの向上、内部統制の仕組みの構築と職員の意識改革の推進等として再編したとしている。
 そして、内部統制の仕組みの構築等により、不正行為等の不適正な事務処理等の再発を防止したり、内部監査による不適正な事務処理等の早期発見及び是正に努めたりする必要がある。
 また、22年1月に成立する予定の日本年金機構における内部統制システムの構築についてみると、「国民の意見を反映しつつサービスの質の向上を図るとともに、効率的かつ公正・透明な事業運営を行う。」ことなどの基本的視点に基づき、かつ会社法や金融商品取引法に基づく民間企業の取組を参考にして、基本方針を定めているとしている。
 この基本方針において、柱として位置付けられた7事項における具体的な取組内容は、いずれも社会保険庁におけるこれまでの年金記録問題への対応で明らかになった課題等について、改善を図るものであるとしている。
 社会保険庁は、このような枠組みの中で、各種取組に対する評価を適切に実施して、解決すべき課題を遺漏なく洗い出すなどすることにより、年金記録問題の再発防止に努める必要がある。


 以上のとおり報告する。
 会計検査院としては、今後とも、年金記録に対する国民の信頼の回復を図るなどのために社会保険庁が実施している各種取組が適切に実施されているかについて、多角的な視点から引き続き厳正に検査していくこととする。