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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

厚生労働省において、国民健康保険の財政調整交付金の交付額の算定を適切なものにするため、退職被保険者等のそ及適用に伴う一般被保険者数の調整を的確に行うよう改善させたもの


 厚生労働省において、国民健康保険の財政調整交付金の交付額の算定を適切なものにするため、退職被保険者等のそ及適用に伴う一般被保険者数の調整を的確に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等
厚生労働本省(交付決定庁)
28都府県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先
(保険者)
市427、特別区11、町396、村108、一部事務組合1、計943市区町村等(平成18年度)
市315、特別区9、町257、村79、一部事務組合1、計661市区町村等(平成19年度)
財政調整交付金の概要 市町村の国民健康保険に係る財政力の不均衡を調整するために交付するもの
上記に対する交付金交付額の合計 7132億6532万余円 (平成18、19両年度)
過大に算定される結果となっていた交付金の額 28億6294万円 (平成18、19両年度)

1 制度の概要

(1) 国民健康保険の財政調整交付金

 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付するもので、一定の基準により財政力を測定してその程度に応じて交付する普通調整交付金と、特別の事情を考慮して交付する各種の特別調整交付金があり、このうち普通調整交付金には医療費等に係るものと介護納付金に係るものがある。

(2) 財政調整交付金の交付額の算定

 財政調整交付金の交付額の算定方法は、「国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令」(昭和38年厚生省令第10号。以下「算定省令」という。)において定められている。このほか、財政調整交付金の交付申請及び事業実績報告(以下「実績報告」という。)の手続や実績報告に用いる様式等を示すものとして、厚生労働省は、毎年度、同省保険局長通知(以下「通知」という。)を発出するとともに、通知の添付資料として、実績報告の各様式に記載すべき諸計数の具体的な計算式等の説明書(以下「説明書」という。)を配布している。併せて、交付額の算定に当たっての具体的な留意点や当該年度の変更点を示すものとして同省保険局国民健康保険課事務連絡(以下「事務連絡」という。)を発出している。
 これらによって、財政調整交付金のうち、医療費等に係る普通調整交付金の交付額は、当該市町村において、次のとおり、一定の基準により算定される支出額(以下「調整対象需要額」という。)から一定の基準により算定される収入額(以下「調整対象収入額」という。)を控除した額に基づいて算定することとされている。

交付額
調整対象需要額
調整対象収入額

 このうち、調整対象需要額は、退職被保険者(被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に適用される資格を有する者)及びその被扶養者(以下、これらの者を「退職被保険者等」という。)を除いた一般被保険者に係る医療費等を算定の基礎とすることとされている。これは、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者の拠出金をもって充てられる療養給付費等交付金等で負担する制度があるためである。
 また、調整対象収入額は、次のとおり算定することとなっている。

制度の概要の図1

注(1)
 平均一般被保険者数  前年度の1月から当該年度の12月までの各月末時点における一般被保険者数の合計数を12で除して算定する。
注(2)
 1人当たり調整対象需要額  調整対象需要額を平均一般被保険者数で除して算定する。
注(3)
 算定基礎所得金額  保険料の賦課期日現在の一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額。ただし、同一世帯に属する被保険者の所得金額の合計額が、1人当たり調整対象需要額等を用いて別に計算される所得限度額を超えて高額である世帯がある場合には、当該世帯の所得金額のうち所得限度額を超える部分の額に一定の方法により計算した率を乗じて得た額を、一般被保険者の所得金額の合計額から控除して算定する。
注(4)
 応益保険料額  一般被保険者の受益度に応じて算定されるもので、基準応益割額に平均一般被保険者数を乗じて算定する。
注(5)
 応能保険料額  一般被保険者の負担能力に応じて算定されるもので、基準応能割率に算定基礎所得金額を乗じて算定する。
注(6)
 基準応益割額及び基準応能割率  いずれも1人当たり調整対象需要額に厚生労働省が各年度ごとに示す係数を乗ずるなどして計算する。

 上記の算定式にあるように、平均一般被保険者数は、普通調整交付金の重要な算定要素となっており、その増減は、交付額の算定結果に大きな影響を与えるものとなっている。
 また、平均一般被保険者数は、一部の特別調整交付金(結核・精神病特別交付金等)においても算定要素の一つとなっている。

(3) 退職被保険者等のそ及適用に伴う一般被保険者数の調整

 平均一般被保険者数を算定するに当たっては、各市町村が厚生労働省に対して毎月報告している統計資料(以下「月報」という。)に計上した各月末時点の一般被保険者数を用いることとされている。そして、説明書によると、退職被保険者等のうち、届出が遅れるなどしていた退職被保険者等の資格がさかのぼって確認されたことにより、そ及して資格の適用(以下「そ及適用」という。)を行った者(以下「そ及退職被保険者等」という。)がいる場合は、月報に計上した一般被保険者数からそ及退職被保険者等の数を控除して、一般被保険者数の調整を行うこととされている。