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  • 平成21年度|
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科学技術総合研究業務に係る委託費の経理が不当と認められるもの


(89) 科学技術総合研究業務に係る委託費の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)科学技術振興調整費
部局等 文部科学本省
契約名 科学技術総合研究委託
契約の概要 細胞移植による神経機能再建の科学的バックグラウンドの確立とそれに基づいた神経移植治療法の開発等を行うもの
契約の相手方 和歌山県(和歌山県立医科大学)
契約 平成14年4月ほか 随意契約
支払額 38,907,000円(平成14、15両年度)
不当と認める委託費の支払額 16,782,434円(平成14、15両年度)

1 科学技術総合研究委託費の概要

(1) 委託契約の概要

 文部科学省は、「科学技術振興調整費の活用に関する基本方針」(平成13年3月総合科学技術会議決定)に基づき、重要政策課題とされている分野・領域への戦略的・機動的な対応等を図ることを目的として、地方公共団体、国立大学法人等に科学技術総合研究を委託して実施している。
 そして、平成14年度に科学技術総合研究「パーキンソン病及びハンチントン病に対する脳細胞移植治療に関する研究」、15年度に同「パーキンソン病及びハンチントン病に対する脳細胞移植治療に関する研究及びRVV/Tet—onシステム下のFGF/EphA4Rの発現調節と神経幹細胞の生存・増殖・分化作用」それぞれの業務を和歌山県(委託業務の実施部局は和歌山県立医科大学(18年4月1日以降は公立大学法人和歌山県立医科大学。以下「県立医科大学」という。))に委託しており、委託費として、14年度に16,229,000円、15年度に22,678,000円を支払っている。

(2) 委託費の経理等

 文部科学省が作成している「科学技術振興調整費委託業務事務処理要領」(平成14年文部科学省研究振興局制定。以下「事務処理要領」という。)等によると、委託費は設備経費、試作経費及び運営費から構成され、このうち運営費には、研究に使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)を購入する経費である消耗品費やその他の経費等が含まれており、その他の経費の中には旅費や一般管理費等が含まれている。そして一般管理費は、設備経費や消耗品費等の経費の合計額に一定比率を乗じて算定されている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、委託費が事務処理要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、文部科学省及び受託者である和歌山県(県立医科大学)において、会計実地検査を行った。そして、納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、同省及び受託者に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、県立医科大学は、14年度に、同年度の委託業務を実施している研究者A(注) から、研究用物品を2,410,920円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。また、15年度に、同研究者と、同年度の委託業務を実施している研究者B(注) から、それぞれ10,429,838円、9,191,822円、計19,621,660円で研究用物品を購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、上記の研究用物品の実際の購入代金は、15年度の研究者Bに係る9,191,822円のうちの6,742,622円にすぎず、同年度の研究者Aに係る10,429,838円については、同研究者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ県立医科大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理していた。また14年度の研究者Aに係る2,410,920円の全額及び15年度の研究者Bに係る9,191,822円のうち6,742,622円との差額2,449,200円計4,860,120円については、両研究者が、随時、業者に研究用物品を納入させた上で、後日、納入された研究用物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより県立医科大学にその購入代金を支払わせていた。
 したがって、上記の不適正な経理処理により支払われた購入代金計15,289,958円は本件委託業務に要した経費とは認められず、これに係る一般管理費相当額14年度231,892円、15年度1,260,584円、計1,492,476円を含めた14年度2,642,812円、15年度14,139,622円、計16,782,434円が過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究者において、委託費の原資は税金等であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、委託費を管理する県立医科大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、文部科学省において、受託者に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。

 研究者A、研究者B  県立医科大学については、本件以外にも不当事項(4か所参照 1  2  3  4 )を掲記しており、同一の研究(代表)者名を同一のアルファベット(A〜G、a〜t)で表示している。