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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されていたもの


(18) 厚生労働科学研究費補助金が過大に交付されていたもの

6件 不当と認める国庫補助金 115,641,000円

 厚生労働科学研究費補助金は、厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関して、行政施策の科学的な推進を確保するため、技術水準の向上を図ることを目的とする研究事業又は推進事業を行う研究者又は法人に対して、厚生労働科学研究費補助金取扱規程(平成10年厚生省告示第130号)、厚生労働科学研究費補助金取扱細則(平成10年厚科第256号厚生科学課長決定)等(以下、これらを合わせて「取扱規程等」という。)に基づき、厚生労働大臣が認めた額と補助対象経費に係る実支出額とを比較して少ない方の額を国が補助するものである。
 この補助金の補助対象経費等は、取扱規程等によると、次のとおりとなっている。

ア 研究事業

 研究計画に基づき遂行される研究事業に関してすべての責任を負う研究者(以下「主任研究者」という。)が当該研究を他の研究者と共同で実施する場合は、〔1〕 主任研究者、〔2〕 主任研究者と研究項目を分担して研究を実施する分担研究者、〔3〕 主任研究者の研究計画の遂行に協力する研究協力者により研究組織を構成するものとされている。そして、補助金の交付を受けた主任研究者は、交付された補助金の一部を分担研究者に配分することができることとなっている。
 研究事業に係る補助対象経費は、研究で使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の直接研究に必要な経費、研究事業の一部を他の機関に委託して行うための経費(以下、これらを合わせて「直接研究費等」という。)等となっている。また、直接研究費等に係る事務は、主任研究者及び分担研究者の事務に係る負担を軽減するなどのため、原則として、主任研究者及び分担研究者の所属機関の長に委任されることとなっている。そして、委任を受けた所属機関の長は、直接研究費等に係る事務を適正に執行することとなっている。

イ 推進事業

  推進事業は、研究事業に関し、外国人研究者を招へいすることなどにより、当該研究事業を支援するための事業であり、推進事業に係る補助対象経費は、外国人研究者招へい事業に要する経費、外国への日本人研究者派遣事業に要する経費及びその他別に定める事業に要する経費となっている。そして、これらの経費は非常勤職員手当等の人件費、諸謝金、旅費、日々雇用する単純労働に服する者に対する賃金等となっており、常勤職員の人件費は補助の対象とはならないこととなっている。

  本院が、25研究機関に所属する研究者99名が実施している199研究事業及び3法人が実施している15推進事業について会計実地検査を行ったところ、2研究機関に所属する5研究者が実施している28研究事業において、研究者が架空の取引に係る購入代金を業者に預けて別途に経理するなどの不適正な経理処理を行っていたり、1法人が実施している5推進事業において、法人が補助対象経費に補助対象とは認められない経費を含めていたりしていたため、国庫補助金計115,641,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究事業については、〔1〕 研究者において、補助金の原資は税金等であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、〔2〕 研究者の所属機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、〔3〕 厚生労働省において、研究者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。また、推進事業については、〔1〕 法人において、実支出額の算定に当たり、取扱規程等の理解が十分でなかったこと、〔2〕 同省において、法人から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを所属機関別・研究者(注1) 別、法人別に示すと次のとおりである。

ア 研究事業

所属機関名 国庫補助金の交付先
(研究者)
年度 事業数 国庫補助金交付額 不当と認める国庫補助金額 摘要
千円 千円
(注2)
(577) 公立大学法人和歌山県立医科大学 E 16〜18 9 413,180 6,310 不適正な経理処理

 上記の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、研究者の所属機関に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理していた。

(578) 公立大学法人和歌山県立医科大学 F 16〜18 3 34,000 4,852 不適正な経理処理
(579) G 16〜18 3 145,790 1,344

(注1)
 研究者  公立大学法人和歌山県立医科大学については、本件以外にも不当事項(4か所参照 1  2  3  4 )を掲記しており、同一の研究(代表)者名を同一のアルファベット(A〜G、A〜T)で表示している。
(注2)
 公立大学法人和歌山県立医科大学  平成18年3月31日以前は和歌山県立医科大学

 上記2名の研究者は、随時、業者に研究用物品を納入させた上で、後日、納入された研究用物品とは異なる虚偽の内容の納品書、請求書等を提出させて、これらの研究用物品が納入されたこととして研究者の所属機関にその購入代金を支払わせていた。

(580) 愛知県がんセンター A 15〜19 8 338,747 6,499 不適正な経理処理
(581) B 15〜17 5 328,720 3,381

 同上記2名の研究者は、業者に架空の取引を指示して研究用物品を購入したとする虚偽の納品書、請求書等を作成させ、自らが管理する本件補助金から架空の取引に係る購入代金を支払って、これを業者に預けて別途に経理するなどしていた。

アの計 28 1,260,437 22,386

イ 推進事業

補助事業者
(事業主体)
国庫補助金の交付先 年度 事業数 国庫補助金交付額 不当と認める国庫補助金額 摘要
千円 千円
(582) 財団法人エイズ予防財団 同左 16〜20 5 2,167,082 93,255 補助の対象外

 上記の法人は、補助の対象とはならない常勤職員の給与等の一部を各年度の補助対象経費に含めるなどしていた。

ア、イの合計 33 3,427,519 115,641

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、通知等により研究者等に対する指導を徹底して、補助事業の適正な執行に万全を期する必要があると認められる。