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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第23 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

財産管理業務に係る委託契約の予定価格の積算に当たり、業務の内容等を踏まえ、技術経費を計上しないこととするよう改善させたもの


財産管理業務に係る委託契約の予定価格の積算に当たり、業務の内容等を踏まえ、技術経費を計上しないこととするよう改善させたもの

科目 (建設勘定) (項)業務経費
          (項)受託経費
部局等 2支社、3建設局
契約名 財産管理業務委託契約
契約の概要 財産の整理及び管理に係る業務の一部を行わせるもの
契約の相手方 レールウェイサービス株式会社
契約 平成20年4月、21年4月 一般競争契約
予定価格の積算額 1億6699万余円(平成20、21両年度)
低減できた予定価格の積算額 1510万円(平成20、21両年度)

1 委託契約の概要

(1) 財産管理業務委託契約の概要

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)は、機構が建設した鉄道施設、事務所、宿舎等の財産の整理及び管理を行っている。
 機構鉄道建設本部の東京支社等2支社及び東北新幹線建設局等3建設局( )(以下、これらを合わせて「支社等」という。)は、鉄道施設の建設等により整理及び管理の対象となる財産が増加したことなどから、財産の整理及び管理に係る業務の一部(以下「財産管理業務」という。)を一般競争契約によりレールウェイサービス株式会社に委託して実施している。そして、平成20、21両年度に支社等が締結した財産管理業務に係る委託契約(以下「財産管理契約」という。)は6契約、契約額は計1億5698万余円となっている。

 東京支社等2支社及び東北新幹線建設局等3建設局  東京、大阪両支社及び東北新幹線、北陸新幹線、九州新幹線各建設局

 財産管理業務の内容は、財産管理契約の示方書によれば、財産整理に係る資料の収集、財産原簿等の記帳、財産の減価償却等に関することとなっている。

(2) 財産管理契約の予定価格の積算

 支社等は、財産管理契約の予定価格について、機構本社(以下「本社」という。)の指示に基づき、機構が取得する用地の調査・測量に立ち会ったり、用地の補償額を精査したりするなどの業務(以下「用地業務」という。)に適用される「用地取得等技術業務委託積算要領」(本社制定。以下「積算要領」という。)を準用するとともに、本社が関係部署に発した各種業務委託契約に関する通知に従って、次の式により積算している。

 
予定価格
の積算額
 
直接人件費
 
 
直接経費
 
 
諸経費
 
 
技術経費
 
 
消費税
相当額

 そして、支社等がこれにより積算した前記の6契約に係る予定価格の積算額は、計1億6699万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、財産管理契約の予定価格の積算は財産管理業務の内容等に基づいて適切に行われているか、特に、財産管理業務の内容等からみて技術経費を計上する必要があるかなどに着眼して、支社等において、20、21両年度に締結された前記の6契約を対象として、契約書、示方書、積算書等の書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、財産管理契約の予定価格の積算について次のような事態が見受けられた。
 積算要領によれば、用地業務における技術経費は直接人件費と諸経費の合計額に所定の率(10%)を乗じて算出することとされており、支社等は、前記の6契約に係る予定価格の積算に当たって、これを準用して技術経費を計1436万余円と算出して、予定価格に計上していた。
 技術経費とは、積算要領によれば、用地業務における平素の技術及び能力の高度化に要する費用であるとされており、また、本社が積算要領を制定する際に参考にしたとしている「土木関係積算標準・積算要領(標準・共通編)」(本社制定)等によれば、建設コンサルタント等における平素からの技術能力の高度化に要する経費等で、具体的には技術研究費及び専門技術料とするとされている。
 そして、積算要領の対象である用地業務の内容は、用地取得に係る計画書の作成、調査・測量の立会い、補償方法の検討、補償額の算定等の技術的な業務となっている。これらの業務には、測量、用地補償等に関する広範な知識と技術力が必要であるとされているため、用地業務に係る委託契約の示方書において、用地業務に従事する者は、補償業務管理士、一級若しくは二級建築士、土地家屋調査士、測量士等の技術能力に係る公的な資格を有する者又はこれらの者に準ずる実務経験者とするとされている。また、用地補償等については、関係規程が改定されることなども多く、受託業者においては、平素から技術及び能力の高度化を図るための調査・研究を行うなどする必要があるとされている。
 これに対して、財産管理業務の内容は、機構の会計システム内の財産原簿等へのデータの入力及び確認、同システム内で行われる減価償却額の計算結果等の確認、同システムを利用するなどした財産決算報告書の作成、パソコンを使用した土地・家屋整理台帳の作成、固定資産税等に係る課税台帳の縦覧、内容確認及び納税手続等となっている。これらの業務については、業務の対象となる財産の種目が多岐にわたり数量も多いことなどから、財産管理契約の示方書において、財産管理業務に従事する者は財産管理業務等について一定の実務経験を有する者とするとされているが、用地業務の場合のような技術能力に係る公的な資格を有していることは要件とされていない。また、実際に、財産管理業務は既に一定の実務経験等を有している者により行われていて、受託業者においても、更に技術及び能力の高度化を図るための調査・研究等はほとんど行われていない状況となっていた。
 したがって、財産管理契約の予定価格の積算に当たり、技術及び能力の高度化に要する費用である技術経費を計上している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた予定価格の積算額)

 上記のことから、財産管理契約の予定価格の積算に当たり、技術経費を計上しないこととするなどして前記の6契約に係る予定価格の積算額を修正計算すると計1億5184万余円となり、前記の予定価格の積算額計1億6699万余円を約1510万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、財産管理業務の内容等からみて、技術経費を計上する必要があるかどうかについての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、22年9月に、財産管理契約の予定価格の積算に当たっては技術経費を計上しないこととし、関係部署に対して通知を発してその周知徹底を図り、同年10月以降の契約から適用する処置を講じた。