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郵便物等実数査数機の調達に当たり、必要とされる機能を仕様書において適切に定めていなかったため、調達した査数機が目的に沿って使用できないもの


(874) 郵便物等実数査数機の調達に当たり、必要とされる機能を仕様書において適切に定めていなかったため、調達した査数機が目的に沿って使用できないもの

科目 営業原価
部局等 郵便事業株式会社本社
契約名 郵便物等実数査数機の調達
契約の概要 郵便物等実数査数機392台を調達したもの
契約の相手方 株式会社フロンテック
契約 平成19年11月 一般競争による契約
支払額
195,999,804円
(平成19年度)

不当と認める支払額
195,999,804円
(平成19年度)

1 郵便物等実数査数機の概要

 郵便事業株式会社(以下「事業会社」という。)は、平成19年11月に、一般競争により、株式会社フロンテックと郵便物等実数査数機(以下「査数機」という。)392台の一括調達契約を契約金額195,999,804円(1台当たり価格499,999円)で締結して調達し、20年3月の納入後に同額を支払っていた。そして、事業会社は、これらの査数機を、郵便窓口業務を委託した郵便局株式会社(以下「局会社」という。)に貸与する委託業務用物品として、日本郵政公社(以下「公社」という。)当時に500通以上の別後納郵便物の引受けが1日に3回以上あった郵便局392か所に1台ずつ配備した。
 査数機は、郵便局の窓口において、従来手作業で行っていた別後納郵便物の引受通数の確認の一部を、機器を用いて自動で計測することにより円滑かつ確実に行い、その記録を残すことで郵便料金の適正収納を図るとともに、社員の作業負担を軽減することを目的として、19年10月の民営化前に公社が調達を決定していたものである。
 公社は、調達する査数機の選定のための市場調査を行った結果、民間事業者において使用実績があった紙数を計測する機器のうち、封書等をベルトで搬送して1通ずつセンサーで読み取る方式の機種の一つ(以下「同型機」という。)に計測した通数を印字する機能を付加すれば郵便局の窓口で使用できるとしていた。そして、事業会社は、同型機の機能を基に、定形サイズの封書及びはがきを1通ずつ確実に搬送して枚数を数えること、厚みの異なる封書(0.8mm〜5mm)も確実に搬送することなどを査数機に必要な機能として仕様書に定めていた。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性、有効性等の観点から、査数機の仕様が実際の使用状況に即して定められているか、目的どおりに使用されているかなどに着眼して、事業会社が局会社に貸与した査数機392台を対象として会計実地検査を行った。
 検査に当たっては、事業会社本社、局会社本社及び52郵便局において、契約書、仕様書等の関係書類及び査数機の使用状況等を確認するとともに、局会社本社から上記の52郵便局を含めた前記の392郵便局における査数機の使用状況について調査した結果の書類の提出を求めて検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、査数機の仕様及び実際の動作の状況並びに局会社における査数機の使用状況は、それぞれ次のとおりとなっていた。

ア 査数機の仕様及び実際の動作の状況

 郵便局は、郵便窓口において別後納郵便物の引受けを行う際には、原則として差出人の立会いの上で通数を確認することとなっている。一方、差し出される郵便物は定形サイズであっても寸法や重量に幅があり、材質も紙のほかにプラスチックのものがあるなど多種多様である。このため、査数機には、上記の多種多様な郵便物の引受けに対応するとともに、窓口で差出人から異なる寸法等の郵便物が差し出されても、できるだけ差出人を待たせることがないように、速やかで確実な通数確認を行う機能が必要となる。
 事業会社が査数機の仕様書を作成する前に公社が行った前記の市場調査についてみると、同型機が民間事業者で使用実績があることは確認していたが、その具体的な使用状況までは確認していなかった。
 そこで、本院が、事業会社を介して、上記の民間事業者における同型機の具体的な使用状況を確認したところ、通常は、別の機械で封かん等を行って50枚ずつに区分けした寸法や材質が同一の封書やはがきについて、郵便物として差し出す前に再度数えるなどのために使用しており、郵便局の窓口で別後納郵便物を引き受ける際に行う通数確認とは使用内容が異なるものであった。
 しかし、事業会社は、前記のとおり、民間事業者における使用状況の確認を行っていない公社の市場調査の結果を基に、同型機が郵便局の窓口における別後納郵便物の通数確認に使用できると判断して、多種多様な郵便物の引受けにおいて通数確認を確実かつ速やかに行えることが査数機に必要な機能であることを仕様書に定めていなかった。
 その結果、実際の査数機は、独立した4か所のガイドの位置をねじで調整する方式のものとなっており、郵便物が斜めに搬送されたときに誤った計測が行われないよう、郵便物の寸法等が変わるたびに、ガイドの間隔をこれらのねじにより調整することが必要となっていた。また、郵便物の材質等によっては、安定した搬送を行うために、郵便物の上に適度な荷重をかけることが必要であるなどとなっており、これらの調整に相当程度の手間と時間とを必要とするものとなっていた(参考図1、2参照)。

(参考図1)

査数機の概念図

査数機の概念図

(参考図2)

査数機の搬送部分を上から見た概念図

査数機の搬送部分を上から見た概念図

イ 局会社における査数機の使用状況

(ア) 本院が実地に検査した52郵便局における査数機の使用状況

 52郵便局のうち48郵便局においては、ガイド等の調整を行う時間的な余裕がないためこれを行わないまま査数機を使用したところ、通数の正確な計測ができず、改めて社員が手作業により通数確認を行う必要が生じたことなどから、配備後の早い時点で使用することを断念していた。
 また、上記の48郵便局を除いた4郵便局のうち2郵便局においては、同様に正確な計測ができなかったため、査数機の搬送ベルトを粘着力の強いものに交換させるなどしていたが、多種多様な郵便物の引受けに対応するためには頻繁な調整が必要となり、このため郵便窓口での通数確認には使用していない状況となっており、実地検査時点においては、同一の寸法であるためガイドの調整が不要な書損はがきを新規のはがき等と交換する際の枚数確認に使用するなどしていた。また、残りの2郵便局においては、査数機の設置場所が確保できないなどとして、使用していなかった。

(イ) 局会社が実施した392郵便局における査数機の使用状況調査

 査数機が配備された郵便局の一部から、査数機が目的どおり使用できないという報告を受けたことなどから、局会社が20年11月に行った392郵便局すべてについての査数機の使用状況調査の結果は、ほとんどの査数機が使用されていないというものであった。その後、局会社は指示文書を発出して使用を促したが、22年5月に再度調査を行ったところ、書損はがきの枚数確認に使用している郵便局が数局見受けられるものの、本院が実地に検査した前記の48郵便局と同様に、査数機の調整に手間や時間を要すること、調整を適切に行わないと通数の正確な計測ができず、改めて手作業により通数を確認しなければならないことなどのため、査数機を調達した目的である別後納郵便物の引受通数の確認に使用している郵便局は全くないという状況になっていた。

 以上のとおり、本件査数機は、調達の目的である郵便局の郵便窓口における別後納郵便物の引受時の通数確認に用いることはできないものとなっており、本件査数機の一括調達契約に係る支払金額195,999,804円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業会社において、郵便局における窓口業務の実態を十分に考慮せず、査数機に必要とされる機能を仕様書において適切に定めないまま調達したことなどによると認められる。