ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成22年7月

国から補助金の交付を受けて各信用保証協会に造成された制度改革促進基金の規模が必要額を超えた過大なものとならないよう補助金の交付の在り方等について見直しを行うなどすることにより、同基金の効果的な活用が図られるよう経済産業大臣に対して意見を表示したもの


 国から補助金の交付を受けて各信用保証協会に造成された制度改革促進基金の規模が必要額を超えた過大なものとならないよう補助金の交付の在り方等について見直しを行うなどすることにより、同基金の効果的な活用が図られるよう経済産業大臣に対して意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)中小企業庁
(項)中小企業事業環境整備費
(平成19年度以前は、(項)中小企業対策費)
部局等 中小企業庁、8 経済産業局、内閣府沖縄総合事務局
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
52信用保証協会
補助事業 制度改革促進基金造成事業
補助事業の概要 国が実施する施策の円滑な導入及び促進を図るとともに中小企業が必要とする事業資金の融通を円滑にするため信用保証協会の経営基盤を強化することなどを目的として、同協会が部分保証の実行によって生ずる損失を処理する制度改革促進基金を造成するために必要な経費を補助するもの
信用保証協会における基金造成に対する国庫補助金交付額 195億3000万円 (平成17年度〜20年度)
平成20年度末における信用保証協会の基金残高 170億3753万余円 (52信用保証協会)
上記のうち必要額を超えて過大に保有されている額(試算額) 88億0502万円 (40信用保証協会)
基金に戻入れがなされていない回収金の額 2795万円 (29信用保証協会)

【意見を表示したものの全文】

制度改革促進基金造成事業により造成された制度改革促進基金の効果的な活用について

(平成22年7月28日付け 経済産業大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 事業の概要

(1) 信用補完制度の概要

 信用補完制度は、中小企業者が金融機関から受ける融資について、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づき設置された全国52の信用保証協会(以下「協会」という。)が同法に基づいてその債務を保証する信用保証と、当該信用保証に対して株式会社日本政策金融公庫(平成20年9月30日以前は中小企業金融公庫。以下「公庫」という。)が中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)に基づいて協会と締結した包括保証保険契約の契約金額の範囲内で保険を引き受ける信用保険とによって成り立っている。
 そして、信用保証付融資を受けた中小企業者が債務不履行に陥った場合、協会は当該中小企業者に代わって金融機関に債務を弁済(以下「代位弁済」という。)し、公庫は上記の契約に基づき、協会に対して保険価額(保証した借入金の額)に一定割合(主に70%又は80%)を乗じた額を保険金として支払うこととなっている。協会は、代位弁済により取得した求償権の行使により、事後に資金を回収した場合には、回収した資金(以下「回収金」という。)に係る保険金相当額等を公庫等に納付することとなっており、公庫等に納付した後の残額については、社団法人全国信用保証協会連合会が定める経理処理要領に基づき、協会の償却求償権回収金として計上することとなっている。

(2) 部分保証方式の導入の経緯

 従来、協会が行う保証は、すべて金融機関が行う融資額の全額を保証するものとなっていたが、12年度から、特定の種類の保証について金融機関が行う融資の一定割合(80%又は90%)を保証する部分保証方式による保証(以下「部分保証」という。)が順次導入されてきた。
 その後、信用補完制度は、信用保険において急速かつ構造的な赤字が発生したことなどから制度の持続性に懸念が生ずる事態に至り、制度の在り方について包括的な検討が行われるようになった。そして、17年6月に、中小企業政策審議会基本政策部会において信用補完制度の在り方に関する取りまとめがなされ、協会と金融機関とが適切な責任分担を図って、金融機関も貸し手として責任ある融資を行う必要がある旨の提言が示された。中小企業庁は、この提言の趣旨を踏まえ、19年10月から、金融機関は、その融資に対して協会から受ける保証の大部分について、部分保証方式(協会の保証割合は融資額の80%)と負担金方式(過去の代位弁済率等に基づき金融機関が協会に一定の負担金を支払う方式で金融機関の負担割合は20%)のいずれかの方式を選択しなければならないこととした。なお、上記の特定の種類の保証は、部分保証方式のみとなっている。
 上記の両方式のうち部分保証方式を選択しているものの割合は極めて低く、20年度における両方式による保証承諾額8兆2247億5849万余円のうち部分保証方式によるものは2996億9221万余円(3.6%)に過ぎない状況となっていた。これは負担金方式を選択した場合、代位弁済後の債権回収は協会が行うこととなるため、部分保証方式に比べて債権管理コストが少なくて済むなどの理由から、ほとんどの金融機関が負担金方式を選択していることによる。

(3) 制度改革促進基金の概要

 国は、17年度から、国が実施する施策の円滑な導入及び促進を図るとともに中小企業が必要とする事業資金の融通を円滑にするため協会の経営基盤を強化することなどを目的として、協会が部分保証の実行により生じた代位弁済の額から保険金等の額を控除した損失を優先的に処理するため制度改革促進基金(以下「促進基金」という。)を造成する事業(以下「基金造成補助事業」という。)を実施する場合には、「資金供給円滑化信用保証協会基金等補助金及び流動資産担保融資関連保証対策費補助金交付要綱」(平成20年7月30日経済産業大臣制定。平成20・07・18財中第1号)等(以下「交付要綱」という。)に基づき、協会に対して、この造成に必要な経費として資金供給円滑化信用保証協会基金補助金(18年度からは資金供給円滑化信用保証協会等補助金)及び動産等担保融資関連保証対策費補助金(20年度からは流動資産担保融資関連保証対策費補助金)(以下、これらを合わせて「補助金」という。)を交付している。そして、補助金は、17年度以降、8経済産業局(注) 及び内閣府沖縄総合事務局(以下「経済産業局等」という。)において21年度までに52協会に対して17年度42億円、18年度70億7000万円、19年度41億2000万円、20年度41億4000万円、21年度41億4000万円、計236億7000万円が交付されている。

(参考図)  信用補完制度における制度改革促進基金

(参考図)信用補完制度における制度改革促進基金

 各協会は、中小企業庁が定める制度改革促進基金事務取扱要領(平成18・02・06財中第1号。以下「取扱要領」という。)に基づき促進基金の管理を行うこととなっている。この取扱要領によると、協会は、17年4月1日以降の部分保証について代位弁済を行った場合には、当該代位弁済により取得した求償権の額から公庫等から補てんされた保険金等の額を控除した額について、当該年度末に求償権の償却を行った額を限度として、促進基金を取り崩すこととなっている。
 部分保証が導入された12年度から20年度までの間に協会が引き受けた部分保証に係る20年度末の保証債務残高は8726億9080万余円となっており、このうち取扱要領において促進基金の取崩しの対象とされている17年度以降の部分保証に係る保証債務残高は6088億0112万余円となっている。