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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府|
  • (警察庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

小型回転翼航空機の購入の際に併せて必要とされる部品について、故障発生頻度等の情報や使用実績を十分に把握した上で調達したり、使用していない部品を官給品として活用したりするなどして、経済的な調達及び有効活用が図られるよう改善させたもの


小型回転翼航空機の購入の際に併せて必要とされる部品について、故障発生頻度等の情報や使用実績を十分に把握した上で調達したり、使用していない部品を官給品として活用したりするなどして、経済的な調達及び有効活用が図られるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)警察庁 (項)警察活動基盤整備費
  (平成19年度以前は、(項)警察庁)
部局等 警察庁
契約の概要 小型回転翼航空機の購入の際に併せて必要とされる部品等の調達を行うもの
契約金額
6億9884万余円
(平成17年度〜21年度)

契約の相手方 兼松株式会社
契約 平成18年2月〜22年3月 一般競争契約
16都道県警察に配布された部品の金額
4億4678万円
(背景金額)(平成17年度〜21年度)

1 契約等の概要

(1) 小型回転翼航空機の部品等の概要

 警察庁は、都道府県警察において警ら活動、災害救助活動等を実施するため、小型回転翼航空機(以下「小型ヘリ」という。)を調達し、都道府県警察に配備している。そして、製造後1年間程度の期間に発生する故障やこれを未然に防止するための整備(以下「予防整備」という。)等に速やかに対応し、小型ヘリが迅速かつ安全に空からの警察活動ができる状態を確保するため、故障発生頻度が高かったり、調達期間に長期を要したりする部品及び工具(以下「部品等」という。)を調達して、小型ヘリの配備の際に、都道府県警察に1回に限り配布している。
 小型ヘリの部品等は、警察法施行令(昭和29年政令第151号)第2条第1項第6号に基づき、航空機の購入の際に併せて必要とされる部品等として国費により支弁されるもの(以下「国費部品」という。)のほか、都道府県の予算から支弁され、その一部を国が補助するものなどがある。
 国費部品は、警察庁が作成した国費部品の内容、調達の優先度等を示した調達基準に基づき、〔1〕 機体領収後1年間(400飛行時間相当)に実施する予防整備で交換が必要となる部品及び消耗品(以下「要交換部品」という。)、〔2〕 機体領収後1年間(400飛行時間相当)の運用において、故障発生頻度が高く見積もられ、故障等により小型ヘリが非可動となることを回避するために保有することが必要と見込まれる部品(以下「非可動回避用部品」という。)等に区分されている。
 警察庁は、平成17年度から21年度までの間に、18都道県警察(注1) に配備するために小型ヘリ19機を調達しており、いずれの年度においても、一般競争入札により兼松株式会社(以下「会社」という。)と契約を締結し、アグスタ社製A109型機を導入している。そして、これらの19機の機体に係る国費部品の調達についても、小型ヘリを調達した各年度とも、一般競争入札により会社と契約を締結しており、5年間の契約金額の合計は、要交換部品1554万余円、非可動回避用部品5億3438万余円、工具1億4892万余円、計6億9884万余円となっている。

(2) 国費部品の調達手続

 警察庁は、国費部品の調達に当たり、小型ヘリを調達した会社に調達基準を示して、国費部品として推奨する部品等のリスト(以下「リスト」という。)の作成を依頼し、警察庁がリストの内容を確認して、都道府県警察に送付している。
 そして、都道府県警察は、既に同型の小型ヘリが配備されている他の都道府県警察における故障等の情報を収集するなどして、警察庁から送付されたリストを参考にして選定した部品等を警察庁に報告し、警察庁は、都道府県警察の報告を取りまとめ、一般競争入札により国費部品を調達する業者(以下「部品調達業者」という。)を決定し、契約を締結して国費部品を調達している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性、有効性等の観点から、小型ヘリの部品等は適切に調達されているか、有効に利活用されているかなどに着眼して検査した。
 検査に当たっては、警察庁が17年度から21年度までの間に16都道県警察(注2) に配備した16機に係る国費部品計532品目5億9281万余円のうち、計468品目4億4678万余円(要交換部品28品目1465万余円、非可動回避用部品440品目4億3212万余円)を対象として、警察庁及び16都道県警察において契約関係書類や部品管理簿等により会計実地検査を行った。また、部品調達業者である会社に赴き、説明を聴取するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 非可動回避用部品の調達

ア 部品に関する情報の把握

 国費部品については、前記のとおり、国費部品の内容や調達の優先度等を示した調達基準に基づいて調達を行っていることや、毎年度同型機を調達していること、同型機については通常同じ箇所の故障等の際には同一の品目が使用されることなどから、年度ごとの調達品目に大きな相違は生じないものと考えられる。
 警察庁が16都道県警察に配布した非可動回避用部品440品目の各年度における調達品目数についてみると、17年度88品目、18年度133品目、19年度345品目、20年度109品目、21年度13品目となっており、年度により大きく相違していた。また、5か年度のうち毎年度調達していた部品が1品目にとどまっていたり、単年度のみ調達していた部品が270品目と多数を占めていたりしていた。
 このように年度ごとの調達品目が相違した場合は、故障発生頻度、調達期間、在庫状況等の部品に関する情報を小型ヘリを調達した会社から把握し、相違する品目を調達すべきか判断する必要がある。しかし、警察庁は、各年度に推奨された部品に関するこれらの情報を的確に把握していなかった。

イ 使用実績の把握

 部品の調達に当たっては、実際に小型ヘリを運用している都道府県警察に配布した部品の使用実績を把握して調達することが重要である。
 しかし、警察庁は、調達に当たり都道府県警察の非可動回避用部品の使用実績を定期的に報告させるなどして十分に把握していなかった。このため、17年度から19年度までの間に調達し、同期間に機体を配備した10都道県警察(注3) における非可動回避用部品延べ566品目の使用状況についてみると、調達した翌年度に部品を使用していたのは延べ121品目にとどまっており、また、部品を使用した翌年度に、使用された品目と同一の品目の部品を再度調達していたものは延べ19品目にとどまっていた。

(2) 使用していない国費部品の活用

 16都道県警察のうち13都県警察(注4) は、機体領収後400飛行時間を経過した年の年末までの間に予防整備等を整備業者に委託していた。そして、この委託において、整備業者は予防整備等のために395品目(6172万余円)の部品を調達していたが、このうち要交換部品23品目及び非可動回避用部品64品目、計87品目(378万余円)は、国費部品として保有していたものと同一であった。
 整備業者が調達した部品は、機体を製造したアグスタ社や小型ヘリを調達した会社から調達しているため、国費部品は、これらの部品と同等の品質が確保されており、予防整備等の委託に当たっては、国費部品を整備業者に官給品として提供し使用させることができると認められた。実際に、都道府県警察では、予防整備等を実施する整備業者に国費部品を官給している場合がある。
 しかし、警察庁は、都道府県警察の使用していない国費部品を官給品として活用することを十分に検討していなかった。(1)及び(2)のとおり、非可動回避用部品について故障発生頻度等の部品に関する情報や都道府県警察における使用実績を十分に把握した経済的な調達が図られていない事態や、使用していない国費部品の活用方法を十分に検討していないことにより、国費部品が有効に活用されていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、警察庁において、非可動回避用部品について故障発生頻度等の部品に関する情報や都道府県警察における使用実績を把握することや、使用していない国費部品の活用方法を検討することについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、警察庁は、23年7月に都道府県警察へ事務連絡を発するなどして、国費部品の経済的な調達及び有効活用が図られるよう、次のような処置を講じた。
ア 小型ヘリを調達した会社から故障発生頻度等の部品に関する情報の提示を受けたり、都道府県警察における部品の使用実績を把握したりするなどした上で、非可動回避用部品を調達することとした。
イ 都道府県警察における国費部品の使用状況を踏まえ、整備業者等に対して官給品の受入れを要請するなどして、国費部品の有効活用を図ることとした。

(注1)
18都道県警察  警視庁、北海道警察本部、宮城県、山形県、群馬県、埼玉県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、島根県、岡山県、山口県、愛媛県、大分県、沖縄県各警察本部
(注2)
16都道県警察  警視庁、北海道警察本部、山形県、群馬県、埼玉県、愛知県、三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、島根県、岡山県、山口県、愛媛県、大分県、沖縄県各警察本部
(注3)
10都道県警察  警視庁、北海道警察本部、山形県、群馬県、愛知県、三重県、滋賀県、兵庫県、島根県、岡山県各警察本部
(注4)
13都県警察  警視庁、山形県、群馬県、埼玉県、愛知県、三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、島根県、岡山県、愛媛県、大分県各警察本部