ページトップ
  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 法務省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

保護室棟等新営工事に当たり、翌年度にわたる債務負担の承認以前に事実と異なる工期で契約を締結して実質的に翌年度にわたる債務負担を行うなど不適正な会計経理を行っていたもの


(23)—(26) 保護室棟等新営工事に当たり、翌年度にわたる債務負担の承認以前に事実と異なる工期で契約を締結して実質的に翌年度にわたる債務負担を行うなど不適正な会計経理を行っていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)法務本省 (項)法務省施設費
部局等 4刑事施設等
契約名 帯広刑務所静穏室棟等新営工事等4契約
契約の概要 刑務官等の制止に従わず、大声又は騒音を発する被収容者等を収容する保護室等を設置するもの
契約の相手方 4会社
契約 平成22年2月、3月一般競争契約
契約額
248,480,950円
(平成21年度)

適正を欠くと認められる契約額
248,480,950円
(平成21年度)

1 工事契約等の概要

(1) 保護室等の概要

 刑務所、拘置所等の刑事施設及び少年院は、被収容者が自身を傷つけるおそれがあったり、刑務官等の制止に従わず、大声又は騒音を発したりする場合等に当該被収容者を収容するため、施設内に保護室等を設置している。

(2) 保護室棟等新営工事契約の概要

 帯広、横浜両刑務所、紫明女子学院及び八街少年院(以下、これらを「4刑事施設等」という。)は、工期を平成22年3月末までとした保護室棟等新営工事契約4件(契約額計248,480,950円)を同年2月中旬又は3月上旬にそれぞれ締結した。そして、本件工事については、契約締結後に年度内に完了しない見込みとなったとして、予算繰越しのために、同年3月下旬に4刑事施設等の所在地を管轄する財務局長に「翌年度にわたる債務負担の承認要求書」(以下「承認要求書」という。)を提出し、当該財務局長からその承認を受けるなどして、工期を同年7月又は9月までとする変更契約を締結した。

(3) 予算繰越制度の概要

ア 歳出予算の繰越し(明許繰越)

 国の会計制度において、財政法(昭和22年法律第34号。以下「法」という。)が認める歳出予算の繰越しの制度には、法第14条の3の規定に基づく明許繰越と法第42条ただし書に基づく事故繰越とがある。このうち、明許繰越は、歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについて、あらかじめ繰越明許費として国会の議決を経て翌年度に繰り越して使用することを認めるものである。
 なお、本件工事の契約金額の支出科目である(項)法務省施設費のうち(目)施設整備費は繰越明許費とされている。

イ 翌年度にわたる債務負担

 繰越明許費については、さらに、法第43条の3の規定に基づき、予算執行上やむを得ない事情がある場合においては、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにし、財務大臣の承認を経て、その承認があった金額の範囲内において、翌年度にわたって支出すべき債務を負担すること(以下「翌債」という。)ができるとされている。
 そして、「繰越(翌債)事務手続について」(平成22年財務省主計局司計課長事務連絡)により、翌債の承認の要求に当たっては、契約締結等の支出負担行為時点(支出負担行為未済の場合は支出負担行為計画示達時点)で年度内完了を予定していたかどうか、財務大臣等の承認以前において翌年度にわたる債務負担を行っていないかどうかなどを検討することとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、契約事務及び予算繰越事務が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して、4刑事施設等において、保護室棟等新営工事4契約について、契約書、設計図書等を確認したり、担当者から説明を聴取したりなどして、会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、4刑事施設等は、本件4工事契約のそれぞれにおいて、契約書上は21年度内に工事が完了することとしていたが、いずれも、次のとおり、22年2月中旬又は3月上旬の契約締結前から21年度内に工事が完了しないことが明らかなものとなっていた。
ア 設計図書等において、仮設塀等の仮設構造物の設置期間を契約書上の工期を上回る3か月から6か月としていた。
イ 入札公告日の22年1月以降、入札関係書類を受領に来た業者に対して、実際の工期末は翌年度の22年7月、9月又は10月であり、本件工事全体に係る金額で入札を行うことを書面で説明するなどしていた。
 したがって、4刑事施設等は、翌債の承認以前の契約締結の時点で、契約の相手方である4会社に対して、実質的に翌年度にわたる債務負担を行っており、契約書に記載された契約額計248,480,950円は、実際は翌年度にわたる工期で実施する工事に係る額となっていた。
 このように契約を締結する時点で既に年度内に工事が完了しないことが明らかであった場合には、契約に先立って法第43条の3の規定に基づく翌債の承認を経た上で翌年度にわたる契約を締結するなどすべきである。しかし、4刑事施設等は、前記のとおり、契約締結後に年度内に工事が完了しない見込みとなったとして、承認要求書を提出し、翌債の承認を受けるなどして変更契約を締結していた。
 上記のとおり、翌債の承認以前に事実と異なる工期での契約締結により実質的に翌年度にわたる債務負担を行い、その後年度内に工事が完了しない見込みとなったとして翌債の承認を受けるなどしていた行為は、会計法令等の趣旨に照らして著しく適正を欠いており、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、4刑事施設等において、契約事務及び予算繰越事務に当たり、会計法令等を遵守することの認識に欠けていたことなどによると認められる。
 以上を刑事施設等別に示すと次のとおりである。

 
刑事施設等名
契約名
契約日
当初契約書上の工期末
業者に説明していた工期末又は工事期間
変更後工期末
翌債承認日
契約額
 
(23)
帯広刑務所
帯広刑務所静穏室棟等新営工事
22.3.8
22.3.31
22.10.6
22.9.29
22.3.31
48,090,000
(24)
横浜刑務所
横須賀刑務支所保護室棟等新営工事
22.2.15
22.3.26
約5か月間
22.9.17
22.3.25
74,549,050
(25)
紫明女子学院
紫明女子学院保護室棟等新営工事
22.3.9
22.3.31
22.9.15
22.9.15
22.3.31
51,292,500
(26)
八街少年院
八街少年院保護室棟等新営工事
22.2.17
22.3.26
22.7.15
22.7.15
22.3.25
74,549,400
(23)—(26)の計
248,480,950