ページトップ
  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 物件

森林レクリエーション事業のため国有林野の使用を許可する場合の許可使用料の算定を誤ったため、許可使用料が低額となっていたもの


(300) 森林レクリエーション事業のため国有林野の使用を許可する場合の許可使用料の算定を誤ったため、許可使用料が低額となっていたもの

会計名及び科目 国有林野事業特別会計 (款)国有林野事業収入
  (項)財産貸付料等収入
部局等 関東森林管理局福島森林管理署
国有林野の使用許可の概要 国有林野をスキー場のコース・ゲレンデ敷等として使用を許可するもの
使用許可の相手方 富士急行株式会社(平成20年6月30日以前は富士急安達太良観光株式会社)
使用許可 平成15年7月、20年7月
許可使用料 37,460,100円 (平成18年度〜22年度)
低額となっていた許可使用料 6,704,400円 (平成18年度〜22年度)

1 国有林野の使用許可の概要

(1) 使用許可地の概要

 関東森林管理局福島森林管理署(以下「管理署」という。)は、富士急行株式会社(平成20年6月30日以前は富士急安達太良観光株式会社)に対して、国有財産法(昭和23年法律第73号)の規定に基づき、福島県二本松市永田字長坂国有林に所在する国有林野(面積348,926m2 。22年6月30日に一部を返地等する以前は356,375m2 )について、あだたら高原スキー場のコース・ゲレンデ敷等としての使用を許可している。そして、関東森林管理局は、18年7月から23年6月までの5年間に係る許可使用料計37,460,100円を徴している。

(2) 許可使用料の算定

 国有財産法の規定に基づく許可により国有林野を使用させる場合の許可使用料の算定については、「国有林野の貸付け等の取扱いについて」(昭和54年54林野管第96号林野庁長官通知。以下「取扱通知」という。)において定められている。
 取扱通知によると、公衆のレクリエーションのため営利等を目的として行う〔1〕 スキーリフト等の索道業、〔2〕 旅館業、〔3〕 販売業、〔4〕 飲食業の4業種を森林レクリエーション事業(以下「事業」という。)としており、事業に供するため国有林野を使用させる場合の許可使用料については、〔1〕 事業の売上高及び設備投資額(以下、これらを「売上高等」という。)に基づく収益方式と、〔2〕 使用を許可する国有林野の時価に基づく時価方式のそれぞれで算定して比較した上で、いずれか高い方の額とすることとされている。

ア 収益方式による許可使用料の算定について

 収益方式においては、事業者から提出された営業実績報告書に記載されている売上高等に取扱通知で定められた一定の率を乗ずるなどして事業区域全体の許可使用料を算定することとされている。
 ただし、前記4業種のうち索道業について、通年営業(年間稼働日数が240日以上)と季節営業(同240日未満)を併せて行っている場合には、索道業に係る売上高等を通年営業分と季節営業分とに区分して、それぞれに一定の率を乗ずるなどして区分ごとの許可使用料を算定した上で、これらの合計額を許可使用料とすることとされている。そして、売上高等を通年営業分と季節営業分とに区分できない場合には、〔1〕 通年営業に係る売上高等は、索道業に係る売上高等に次式により算定された配分率を乗じた額、〔2〕 季節営業に係る売上高等は、索道業に係る売上高等から〔1〕 により得られた額を差し引いた額とすることとされている。

配分率=通年営業の索道施設ごとの延長距離に当該索道施設の最大輸送能力を乗じて得たものの合計/事業区域内に設置されている索道施設ごとの延長距離に当該索道施設の最大輸送能力を乗じて得たものの合計数

イ 時価方式による許可使用料の算定について

 時価方式においては、使用を許可する敷地の時価に一定の率を乗ずるなどして事業区域全体の許可使用料を算定することとされている。ただし、敷地の用途がコース・ゲレンデ敷、建物敷等のように複数ある場合は、必要に応じて適宜区分して、それぞれに一定の率を乗ずるなどして区分ごとの許可使用料を算定した上で、これらの合計額を事業区域全体の許可使用料とすることになっている。

(3) 許可使用料の調整措置について

 (2)のア及びイで算定された許可使用料のうちいずれか高い方の額が、前年の許可使用料の1.2倍を超える場合又は0.8倍を下回る場合には、急激な変動を緩和するため、前年の許可使用料の1.2倍又は0.8倍の額を当該年度の許可使用料とする調整措置を行うこととされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、管理署において、合規性等の観点から、許可使用料の算定が適切に行われているかに着眼して、事業に係る国有林野の許可使用料について、使用料計算書、営業実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 通年営業及び季節営業に係る売上高等の区分について

 あだたら高原スキー場では、通年営業の索道業と季節営業の索道業が併せて行われており、管理署に提出された営業実績報告書には、それぞれに区分された売上高等と、索道業のうち通年営業と季節営業に共通していて区分できないスキー場の駐車場等の売上高等が記載されていた。このため、管理署は、収益方式による許可使用料の算定に当たり、この駐車場等の売上高等については、上記の営業実績報告書において区分された通年営業と季節営業の売上高の比率により、通年営業分と季節営業分に区分するなどしていた。
 しかし、前記のとおり、売上高等を通年営業分と季節営業分に区分できない場合には、前記の配分率を乗ずることなどにより区分すべきであった。

イ 調整措置の適用について

 管理署は、18年度から21年度までの間の時価方式による許可使用料の算定に当たり、使用を許可している敷地をコース・ゲレンデ敷、ゴンドラ・リフト敷及び建物敷の計三つに区分して、区分ごとの許可使用料を算定し、それぞれ調整措置を適用した上で、これらの合計額を時価方式による許可使用料とし、これと収益方式による許可使用料を比較していた。
 しかし、前記のとおり、調整措置は、事業区域全体について収益方式による許可使用料と時価方式による許可使用料を比較して、いずれか高い方の額に適用すべきであった。
 したがって、適正な算定方式により、前記の期間に係る許可使用料を修正計算すると、計44,164,500円となり、本件許可使用料計37,460,100円との差額計6,704,400円が低額となっていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、管理署において、取扱通知等における許可使用料の算定方法についての理解が十分でなかったこと、関東森林管理局において、許可使用料の算定についての指導が十分でなかったことなどによると認められる。