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  • 平成22年度|
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委託工事の実施に当たり、契約の履行の確認を適切に行っていないのに、委託工事が完了したとする検査調書を作成するなど、不適正な会計経理を行って委託工事費を支払っていたもの


(352) 委託工事の実施に当たり、契約の履行の確認を適切に行っていないのに、委託工事が完了したとする検査調書を作成するなど、不適正な会計経理を行って委託工事費を支払っていたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
   (項)道路交通安全対策事業費
   (項)地域連携道路事業費
   (項)道路交通円滑化事業費
部局等 関東地方整備局
委託工事名 成田新高速鉄道及び一般国道464号北千葉道路との一体的整備に係る工事
委託工事の概要 成田新高速鉄道と一体的に整備する一般国道464号北千葉道路新設工事を成田高速鉄道アクセス株式会社に委託して実施するもの
委託工事費 1,706,050,093円(平成21、22両年度)
受託者 成田高速鉄道アクセス株式会社
支払 平成21年7月、22年3月、22年8月、23年4月
不適正な会計経理により支払われた委託工事費 1,706,050,093円(平成21、22両年度)

1 委託工事に係る会計経理の概要

(1) 国の支払等の手続の概要

 国の会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等により、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、原則として、各会計年度における経費は当該年度の歳入をもって支弁しなければならないなどとされている。また、歳出の会計年度の所属については、工事費等で相手方の行為の完了があった後に交付するものはその支払をなすべき日の属する会計年度に属するものとされている。
 そして、国の会計機関が契約を締結した場合には、給付の完了の確認をするため必要な検査を行わなければならず、また、その検査を完了した場合には、原則として、所定の検査調書を作成し、当該検査調書に基づかなければ支払をすることができないなどとされている。

(2) 委託工事に係る契約の概要

 関東地方整備局(以下「整備局」という。)は、成田空港へのアクセス強化等を目的とし、成田新高速鉄道との一体的な整備を行っている一般国道464号北千葉道路新設工事の一環として、平成21、22両年度に、高架橋、トンネル等の築造を、それぞれ委託工事費730,221,963円及び975,828,130円で成田高速鉄道アクセス株式会社(以下「会社」という。)と委託契約(以下、21年度の委託工事に係る契約を「21年度契約」といい、22年度の委託工事に係る契約を「22年度契約」という。)を締結して実施している。
 上記の両契約は、「「公共事業における鉄道委託工事を行う場合の透明性の確保の徹底に関する申し合わせ」について」(平成21年1月国道政第41号国土交通省道路局路政課長等通知)等に基づいて締結されており、契約書において、会社は、工事完了後速やかに精算調書を整備局に提出し、委託工事費を精算するものとされている。そして、会社は、両契約の委託工事費の精算時に、会社が委託工事を実施するため他社に発注した工事の請負契約、工事の出来形等に関する資料(以下「精算関係資料」という。)を整備局に提出することとされ、整備局は、会社から提出された精算関係資料により上記の請負契約の内容等の確認を行い、両契約の委託工事費の精算を適切に行うなどとされている。
 また、支出負担行為担当官である関東地方整備局長は、千葉国道事務所長(以下「事務所長」という。)を支出負担行為担当官の補助者に任命して、契約に係る検査、検査調書の作成を行うなどさせている。
 そして、事務所長は、両契約について、会社から提出された精算調書等に基づいて、契約の履行の確認を行ったとして、それぞれ検査調書を作成して支出負担行為担当官に提出していた。これを受けて、支出負担行為担当官は当該検査調書等を審査し、この結果に基づき、整備局は、会社に対して両契約に係る委託工事費を支払っていた。

2 検査の結果

 本院は、合規性等の観点から、委託工事費の支払が会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、整備局及び千葉国道事務所において、21年度契約及び22年度契約を対象として、精算関係資料等の書類により会計実地検査を行った。
 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、21年度契約について、事務所長は、22年3月に、会社から精算調書等の提出を受けた後、この精算金額730,221,963円を確認するため会社へ精算関係資料の提出を依頼したものの提出されなかったことから、精算調書等に記載された金額に係る履行内容の確認ができなかったのに、委託工事が完了したとして検査調書を作成し、整備局は、この検査調書に基づくなどして委託工事費730,221,963円を支払っていた。
 その後、同年6月に会社から提出された精算関係資料によると、委託工事に実際に要した費用(以下「実績額」という。)は707,265,710円となっていて、精算調書に記載された金額を下回っており、上記委託工事費の支払額との間に22,956,253円の差額が生じていたのに、事務所長は、この事実を支出負担行為担当官に報告していなかった。そして、整備局は、23年1月にこの事実を把握したが、委託工事は22年度も継続して実施していたことから、上記の差額を会社から返還させる手続をとらなかった。
 また、22年度契約について、事務所長は、23年3月に、会社から実績額を998,784,383円とする精算関係資料の提出を受けたことから、実績額から上記の差額22,956,253円を減額した975,828,130円を委託工事費とする精算調書を会社に作成させた。そして、事務所長は、この精算調書に基づいて、22年度契約の履行を確認したとして検査調書を作成し、整備局は、これを受けて、上記の差額を22年度に実施した委託工事の費用の一部に充てていた。
 上記の事態は、整備局等において、委託工事の実施に当たり、契約の履行の確認を適切に行っていないのに、委託工事が完了したとする検査調書を作成して委託工事費を支払ったり、返還の手続をとるべき実績額との差額について翌年度の費用に充てたりするなど、不適正な会計経理を行って委託工事費計1,706,050,093円を支払っていたもので、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、整備局等において、委託工事費の支払に係る会計経理を行うに当たり、会計法令等を遵守することの認識が欠如していたことなどによると認められる。