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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

補給処に長期間にわたり保管されたままとなっている装備品について、補給の指示を行って部隊等に補給させるとともに、補給の指示が適時適切に行われているか確認するための体制を整備して、装備品を速やかに部隊等に補給して有効に使用させるよう改善させたもの


(3) 補給処に長期間にわたり保管されたままとなっている装備品について、補給の指示を行って部隊等に補給させるとともに、補給の指示が適時適切に行われているか確認するための体制を整備して、装備品を速やかに部隊等に補給して有効に使用させるよう改善させたもの

所管、会計名及び科目 防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
 
平成18、19両年度は、
  防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等購入費
 
平成17年度以前は、
  内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)武器車両等購入費
部局等 陸上幕僚監部
装備品の概要 陸上自衛隊の任務を遂行するために必要な火器、車両、通信電子器材、航空器材、需品器材、衛生器材等
長期間保管されたままとなっていた装備品の数及び物品管理簿上の価格
49個

9449万円

(平成22年度末)

1 装備品の補給の概要

 陸上自衛隊は、任務を遂行するために必要な火器、車両、通信電子器材、航空器材、需品器材、衛生器材等(以下、これらを「装備品」という。)を調達して、部隊等に補給している。装備品には、主要装備品その他陸上幕僚監部において特に所要量の算定等を必要とする品目、陸上自衛隊として規格の統一を必要とする品目等(以下、これらを「統制品」という。)などがある。陸上幕僚監部は、統制品の調達に当たり、陸上自衛隊補給管理規則(平成19年陸上自衛隊達第71—5号)の規定に基づき、毎年度、部隊等における要望、必要性等を考慮した調達基本計画を作成することとなっている。そして、陸上幕僚監部は、同計画に基づき補給統制本部に対して調達の指示等を行い、補給統制本部は、四半期ごとに統制品の調達計画及び部隊等への補給計画を作成することとなっている。
 そして、上記の調達計画に基づき、統制品の金額の区分等により補給統制本部又は陸上幕僚監部から調達要求を受けた装備施設本部が製造会社等と調達契約を締結し、調達した統制品の特性等を勘案して、補給処、部隊等に納品させることとしている。
 このうち補給処を経由して部隊等に補給される統制品(以下「経由統制品」という。)は、補給処で受領検査等を行った後、部隊等に補給することになっている。ただし、経由統制品には、受注生産のため調達要求から納品までに長期間を要するものがある。これらについては、納品時における部隊等の状況の変化に対応して、補給先の部隊等を変更するなどの必要があることから、補給統制本部が調達計画を作成した段階では補給先の部隊等が指定されておらず、陸上幕僚監部は、納品時の部隊等の状況を検討の上、補給統制本部に対して補給先の部隊等を指定すること(以下「補給の指示」という。)になっている。そして、補給統制本部は、陸上幕僚監部からの補給の指示に基づき補給計画を作成し補給処等へ通達するなどして、部隊等へ補給することになっている(図参照)。

図 陸上自衛隊における調達及び補給に係る手続

図陸上自衛隊における調達及び補給に係る手続

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、経由統制品が補給の指示により部隊等に速やかに補給され、有効に使用されているかなどに着眼して、陸上幕僚監部、補給統制本部及び5補給処(注1) において、経由統制品の部隊等への補給状況について、補給等の関係書類により確認するなどして会計実地検査を行った。

 5補給処  北海道、東北、関東、関西、九州各補給処

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 陸上幕僚監部は、平成17年3月から20年10月までの間に補給統制本部又は装備施設本部が調達契約を締結して、18年6月から21年2月までの間に4補給処(注2) に納品された経由統制品15品目、49個(物品管理簿上の価格計9449万余円)について、調達計画において補給先の部隊等が指定されていないにもかかわらず、補給統制本部に対して補給の指示を行っていなかった。
 このため、補給統制本部は、上記49個の経由統制品に係る補給計画を作成することができず、その結果、当該経由統制品は部隊等に補給されずに、4補給処の会計実地検査時点において約1年から4年までの長期間にわたり保管されたままとなっていた。そして、これらの経由統制品を補給すべきであった部隊等においては、任務の遂行に支障が生ずる状況となっていた。

 4補給処  北海道、東北、関東、九州各補給処

<事例>

 補給統制本部が平成17年3月に経由統制品として調達契約を締結し調達した携帯無線機4台(物品管理簿上の価格計7,158,800円)は、18年6月に関東補給処に納品された後、同補給処で受領検査等が行われていた。
 しかし、陸上幕僚監部は、上記の携帯無線機4台について、補給統制本部に対する補給の指示を22年5月の会計実地検査時点まで行っていなかった。このため、補給統制本部は、これらの携帯無線機に係る補給計画を作成することができず、その結果、携帯無線機4台は部隊等に補給されずに、関東補給処において約4年間にわたり保管されたままとなっていた。そして、上記の携帯無線機4台を補給すべきであった中央即応集団においては、数量が不足したまま既存の無線機のみで訓練せざるを得ない状況となっていた。

 上記のように、陸上幕僚監部から補給統制本部に対して経由統制品の補給の指示が速やかに行われず、4補給処において約1年から4年までの長期間にわたり保管されたままとなっていて、補給すべきであった部隊等の任務の遂行に支障が生じていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、補給統制本部に対して経由統制品の補給の指示を速やかに行って、経由統制品を部隊等において有効に使用させることの認識が十分でなかったこと、また、補給統制本部に対して補給の指示を適時適切に行っているか確認するための体制が整備されていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、前記49個の経由統制品について、補給統制本部に対して補給の指示を行い、23年1月までに、4補給処から部隊等に全て補給させるとともに、23年8月に関係部署に通知文書を発して、補給統制本部と連携を図るため、補給統制本部に対する補給の指示が適時適切に行われているか確認するための体制を整備するなどの処置を講じた。