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  • 平成22年度|
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  • 貸付金

バリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けに当たり、貸付条件に適合していない事実を把握するなどしていたのに、借入申込みを不承認とするなどの措置を講ずることなく貸し付けていたもの


(416)—(421) バリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けに当たり、貸付条件に適合していない事実を把握するなどしていたのに、借入申込みを不承認とするなどの措置を講ずることなく貸し付けていたもの

科目 (住宅資金貸付等勘定) 貸付金
部局等 独立行政法人住宅金融支援機構本店、近畿支店
貸付けの根拠 独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号)
貸付金の種類 バリアフリー賃貸住宅建設資金
貸付けの内容 高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する賃貸住宅等の建設に必要な資金の貸付け
貸付先 住宅を賃貸する事業を行う者
貸付先の件数 6件
貸付金額の合計 379,900,000円
不当貸付金額 379,900,000円

1 貸付金の概要

 独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号)等に基づき、高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する賃貸住宅等の建設に必要な資金(以下「バリアフリー賃貸住宅建設資金」という。)を、当該住宅を賃貸する事業を行う者に貸し付けている。
 バリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けについては、借受者が入居者の募集(以下「入居募集」という。)開始時までに貸付けの対象となる住宅(以下「貸付対象物件」という。)を高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)の規定による、高齢であることを理由に入居を拒否することのない高齢者円滑入居賃貸住宅として都道府県知事に申請して登録(以下「登録」という。)を受けることが貸付予約(注1) の際の条件(以下「貸付条件」という。)とされていた。なお、登録がなされると、当該住宅の情報が都道府県の窓口や高齢者居住支援センターとして国土交通大臣からの指定を受けている財団法人高齢者住宅財団のホームページ等で閲覧が可能となる。
 本院が平成21年次に上記貸付条件の履行状況等について検査したところ、貸付条件違反が常態化しているなどの事態や、貸付対象物件における高齢者の入居率が著しく低い状況となっていて、事業の効果が十分発現していない事態が見受けられた。そこで、機構に対して21年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示 した。
 機構は、上記についての本院の指摘を受けて、22年1月に支店等に対して通ちょうを発するなどして、同月以降の借入申込分から、貸付条件を次のように改めている。
〔1〕  借受者が入居募集を行う際は、一般の入居募集に先立って、60歳以上の高齢者を対象に入居者を募集する期間(以下「高齢者優先募集期間」という。)を3日間以上設定すること
〔2〕  入居募集の広告には、高齢者優先募集期間及び一般の入居募集期間を明示するとともに、高齢者であることを理由に入居を拒否することのない機構の貸付けを受けたものである旨を記載すること
〔3〕  貸付対象物件の賃貸計画承認申請書(以下「申請書」という。)を高齢者優先募集期間の初日の1週間前の日(以下「提出期限」という。)までに機構に提出すること。その際、登録を受けたことを証明する書類等を添付して機構の確認を受けること。そして、賃貸計画承認書の発行を受けるまでは入居募集を行わないこと
 そして、これらの貸付条件を遵守させることにより、提出期限までに登録がなされ、高齢者優先募集期間の開始前に、入居を希望する高齢者等への周知が図られる期間(以下「周知期間」という。)が1週間以上設けられることになり、高齢者の入居の機会の確保に資することになる。

 貸付予約  借入申込書の内容に基づいて、建設計画・賃貸計画・担保評価・収支計画・保証人等について総合的な審査を行い、貸付けの内容を決定すること。結果は融資予約通知書により借受者に通知される。

2 検査の結果

 本院は、合規性等の観点から、バリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けは、前記本院の指摘を受けて改正された貸付条件に従って適切に行われているかなどに着眼して、本店及び3支店(注2) において、借入申込書、申請書等の書類により会計実地検査を行った。
 検査したところ、本店及び近畿支店において、6件の貸付け(貸付金額計379,900,000円)について、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。

 本店及び3支店  本店及び東海、近畿、九州各支店。なお、本店は、首都圏、北関東両支店管内に所在する貸付対象物件に係るバリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けを行っている。

(1) 機構において、借受者が提出期限までに登録を受けていないことなどを把握していたのに貸し付けていたもの

2件 貸付金額計109,100,000円

 近畿支店は、借受者が提出期限後に申請書を提出しており、賃貸計画承認書の発行を受けることなく入居募集を行っていたこと、及び登録を受けたのが高齢者優先募集期間の開始日以後であり、周知期間を全く設けていなかったことを把握していたにもかかわらず、借入申込みを不承認とする措置を講ずることなく貸付けを行っていた。

(2) 周知期間が不足していることが明らかであったのに貸し付けていたもの

4件 貸付金額計270,800,000円

 本店は、借受者が提出期限後に申請書を提出しており、当該申請書の添付書類によれば周知期間が1週間未満であることが明らかであったにもかかわらず、周知期間を十分確保させるための措置を講ずるなどすることなく貸付けを行っていた。

 上記(1)及び(2)の事態は、前記の貸付条件に適合していないものであり、登録を受けて、その情報を入居募集の開始前に広く周知することなどにより高齢者の入居機会を確保し、もって、バリアフリー賃貸住宅建設資金の貸付けの目的を達成するという趣旨に反するものである。

 そして、これらの貸付対象物件にはいずれも入居開始日から23年7月末までの間、高齢者は一人も入居していなかった。
 したがって、本件貸付金額計379,900,000円は、機構において、貸付条件に適合していないことを把握し又は適合していないことが明らかであったにもかかわらず、借入申込みを不承認としたり、貸付条件に適合させるための措置を講じたりしないまま貸付けを行っていたもので、不当と認められる。
 前記(1)及び(2)の態様を部局等別・貸付先別に示すと次のとおりである。

  部局等 貸付先 貸付年月 貸付対象事業費 不当と認める対象事業費 不当と認める貸付金額 摘要
千円 千円 千円  

(1) 機構において、借受者が提出期限までに登録を受けていないことなどを把握していたのに貸し付けていたもの

(416) 近畿支店 賃貸住宅事業を行う個人 22.11 52,700 52,700 52,700 貸付対象外
(417) 23.2 56,400 56,400 56,400
(416)(417)の計   109,100 109,100 109,100  

(2) 周知期間が不足していることが明らかであったのに貸し付けていたもの

(418) 本店 賃貸住宅事業を行う個人 22.9 57,400 57,400 57,400 貸付対象外
(419) 22.9 45,600 45,600 45,600
(420) 22.10 48,400 48,400 48,400
(421) 23.2 119,400 119,400 119,400
(418)—(421)の計   270,800 270,800 270,800  
合計     379,900 379,900 379,900  

 このような事態が生じていたのは、機構の本店及び近畿支店において、高齢者の入居の機会を確保するという本件貸付制度及び貸付条件の意義を十分に理解しないで、前記の通ちょうに反して、貸付条件に適合していない申請を承認したことによると認められる。