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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

ア 基金の設置及び保有の状況

 国は、単年度では完結しない特定の目的を持つ事業の財源となる基金の設置造成に資するため、基金事業団体に直接又は間接に国庫補助金等を交付している。
 国庫補助金等を含む3,859基金(都道府県1,091基金、市区町村2,082基金、公益法人その他団体686基金)を対象として検査したところ、22年度末の基金保有額は3兆4397億余円となっていて、このうち国庫補助金等相当額は2兆8459億余円(都道府県2兆3257億余円、市区町村1046億余円、公益法人その他団体4155億余円)で全体の82%を占めている。

イ 国庫補助金等の配分方法

 各基金事業団体への国庫補助金等の配分額は、各基金事業団体に対して基金事業に関する要望調査を行い全国の計画額総額に対する各基金事業団体の計画額の割合によって案分したり、実質的な要望調査を行わずに予算額を基金事業の全国の対象者数等に対する各基金事業団体の対象者数等の割合で案分したりするなどの方法により、各府省において決定されている。

ウ 20・21補正基金の設置等の状況

 20・21補正基金は、緊急経済対策等の一環として、短期・集中的な事業の財源とする目的で設置造成されたもので、2,518基金に上っており、基金総数に占める割合は65%、基金保有総額に占める割合は58%となっている。

エ 使途別及び運営形態別の基金の状況

 基金を使途別にみると、補助・補填事業と広報等事業の異なる二つの事業を行うための財源として基金を使用する補助・補填及び広報等事業基金が1,900基金と最も多く、このうち、20・21補正基金は1,848基金となっている。運営形態別分類で最も多いのは、補助等を行うために基金を取り崩す取崩型の3,176基金であり、このうち、20・21補正基金は2,518基金となっている。
 基金を運営形態別にみると、20・21補正基金は、全て取崩型に分類されるが、これは、緊急経済対策等の一環として後年度に具体的事業箇所の割り付けを行うため当該年度において財源を手当てする基金を設置したという両年度の補正予算の成り立ちによるものである。
 回転型基金及び保有型基金は、事業実績が低調である。また、運用型基金は、近年の低金利の状況の下、基金保有額に比べ運用益は少なく、事業実績額は低位のまま推移している。

オ 20・21補正基金の執行状況

 20・21補正基金は、早期に事業を執行し、効果を発現させることを目的としているものであるが、23年度までに事業終了予定である11基金事業の執行率は、事業終了を1年後に控えた22年度末時点においても45%にすぎず、定められた事業期間内で22年度末の基金保有額1兆0000億余円全てを執行することは困難であり、基金事業終了後に多額の執行残が生ずると思料される。また、24年度以降に事業終了予定とされている基金事業の22年度末時点の執行率は、36%にとどまっており、22年度末の基金保有額は1兆0107億余円に上っていて、基金事業終了後に相当程度の執行残が生ずると思料される。

カ 基金の運用状況

 基金の運用は、定期預金等の預金での運用が80%、地方債及び国債の債券での運用が6%となっている。このほか、都道府県、市区町村等の一般会計等における一時的な資金不足を補うなどのために一定期間基金の現金を貸し出す繰替運用の割合が8%となっている。また、公益法人が保有する基金の中には、その一部を外国債等で運用しているものも見受けられる。

キ 個別基金の状況

 個別基金の状況をみると、次のような事態が見受けられた。

(ア) 執行率が低くなった結果、22年度の基金事業終了後に、交付された国庫補助金の大半が国庫に返還されることとなったもの

(イ) 23年度が事業終了予定とされているものの、計画どおりに事業が実施されていないため、22年度末時点における執行率が全般的に低くなっているもの

(ウ) 22年度末時点における執行率が、一部の基金では90%以上となっている一方で、全体としては低くなっているもの

(エ) 受託者が実績報告書に虚偽の記載を行うなどしたため、委託費が補助の目的外に使用されていて、結果として基金が設置目的に反して取り崩されていたもの

(オ) 交付金交付時における実績見込みと基金の執行実績にかい離が生じているため、多額の余剰額が基金に滞留しているもの

(カ) 基金事業の終了年度まで、使用見込みのない国庫補助金等が基金に滞留することが見込まれるもの

 なお、上記(カ)の事態に該当する2基金事業については、会計検査院法第36条の規定により、それぞれ改善の処置を要求した。

ク 基金事業に係る基準の策定等の状況

 国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する国所管の公益法人等については、当該基金により実施している事業に関して基金基準が定められているが、地方自治の尊重という観点から基金事業団体を対象としていない。そこで、基金事業団体に係る基準の策定等の状況についてみたところ、国庫補助金等の交付要綱等又は基金条例等において終了時期が定められている基金の割合は、全体で82.5%と高くなっている。また、基金事業の目標達成度について評価等が行われていない基金の割合は89.0%と高くなっており、基金事業団体によって基金の保有割合について検証が行われた基金の割合は、全体で9.0%と低くなっている。そして、基金事業の期間中に使用見込みのない余剰額がある場合に、当該余剰額のうち国庫補助金等相当額を国に返還する旨の規定が定められている基金の割合は、1.6%と低率にとどまっている。

(2) 所見

 基金事業団体の基金は、多額の貴重な財政資金を投じて設置造成されている。我が国の財政は引き続き厳しい状況にあることから、各府省は、次の点に留意して、基金事業団体と十分連携し、基金事業が適切かつ有効に実施されるよう努める必要がある。

ア 国庫補助金等の配分方法について

 基金の設置造成のために国庫補助金等を交付するに当たっては、事前の検討が重要であり、準備期間中に行う要望調査等を十分に行う必要がある。単に全国一律の配分方法により国庫補助金等を配分することなく、また、事前の要望調査等を行ったものについても、各基金事業団体における当該事業の実施状況に見合った配分等を行う必要がある。このようにして、適切な基金規模となるように国庫補助金等を配分する必要がある。

イ 20・21補正基金の執行状況について

 20・21補正基金は、緊急経済対策等の一環として、基金を取り崩して執行することで、早期に事業効果を発現させることを目的としており、基金の取崩しが進まないと効果が限定的になってしまうおそれがあることから、事業期間内での執行に留意する必要がある。また、執行残が多額に生ずると見込まれる場合は、基金保有額が過大とならないよう基金規模の見直しを行う必要がある。このようにして、資金を有効に活用する必要がある。

ウ 使途別及び運営形態別の基金の状況について

 回転型及び保有型の基金は、事業実績が低調であることから、今後の各事業の需要を踏まえて基金の必要性、基金規模等について検討する必要がある。また、運用型基金は、近年の低金利の状況の下、基金保有額に比べ運用益は少なく、事業実績額は低位のまま推移しており、基金の必要性、基金規模等について更に検討する必要がある。このような検討を行い、資金の効率を高めるよう努める必要がある。

エ 基金の運用状況について

 基金の運用については、確実かつ効率的な運用に努める必要がある。そして、外国債等で運用しているものは、今後の基金事業の動向を注視しながら運用管理していくことが必要である。

オ 個別基金の状況について

(ア) 執行率の低い基金は、基金規模が過大とならないよう国庫補助金等の配分について十分に留意して適切な基金規模とする必要があり、また、基金事業の執行方法についても十分に検討し、資金の有効活用を図る必要がある。

(イ) 基金の取崩しについては、受託者から提出される実績報告書の内容を十分調査確認するなどして、基金の設置目的に沿って適切に行う必要がある。

(ウ) 基金事業の期間中に使用見込みのない余剰額が生ずると認められる場合に、当該余剰額のうち国庫補助金等相当額を速やかに国庫に返還させたり、多額の余剰額が滞留している基金は、余剰額の解消に向けた具体的な方法等を示したりするなどして、適切な基金規模となるよう努める必要がある。

カ 基金事業に係る基準の策定等の状況について

 基金事業団体において、基金基準を参考として、基金事業継続の要否の判断等に資する基準等を作成するなどして主体的に基金事業の見直しに努める必要がある。
 基金事業の目標達成度について評価等が行われていない基金については、目標達成度に関する基準等を作成するなどして、適切に基金事業が行われているかなどの評価等の実施に努める必要がある。また、基金の保有割合について検証が行われていない基金については、適切な基金規模となっているか検証に努める必要がある。
 また、国庫補助金等の交付元府省においても、国庫補助金等の交付要綱等において基金事業の見直しの基準等を明記したり、使用見込みのない余剰額がある場合に国庫補助金等相当額を国に返還する旨の規定を定めたりなどして、国庫補助金等によって設置造成された基金が適切な基金規模となるよう努める必要がある。

 会計検査院としては、基金事業団体の基金保有額は依然として多額であることから、基金事業の必要性、基金規模等に留意しつつ、今後も基金事業の実施状況等について引き続き注視していくこととする。