ページトップ
  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第5 外務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

日本人学校等の教員等の給与に対する援助の実施に当たり、在外公館において、訓令の内容を日本人学校等の運営委員会等に確実に通知したり、関係書類を徴取して援助額の妥当性を確認したりすることなどにより、援助額が適正なものになるよう改善させたもの


(2) 日本人学校等の教員等の給与に対する援助の実施に当たり、在外公館において、訓令の内容を日本人学校等の運営委員会等に確実に通知したり、関係書類を徴取して援助額の妥当性を確認したりすることなどにより、援助額が適正なものになるよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)在外公館 (項)領事政策費
部局等
外務本省、49在外公館
日本人学校等の教員等の給与に対する援助の概要
日本人学校等が現地で採用した小学部及び中学部の教員等の一部に支払う年間の給与に対する援助
日本人学校等の教員等の給与に対する援助額
23億4136万余円
(平成21年度〜23年度)
過大に交付されていた援助額
5345万円
(平成21年度〜23年度)

1 日本人学校等に対する援助の概要等

(1) 日本人学校等に対する援助の概要

 外務省は、在留邦人がその子女のために設置し、管理・運営している日本人学校(注1) 及び補習授業校(注2) 以下、これらを合わせて「日本人学校等」という。)について、その経費は基本的には自助努力によって賄われるべきであるが、少なくとも義務教育段階の海外子女教育に対しては、保護者の負担を軽減すべきであるとの観点から、日本人学校等が現地で採用した教員又は講師(以下、これらを合わせて「教員等」という。)の一部に支払う年間の給与に対する援助を実施している。
 また、日本人学校等の運営は、現地の日本人会や進出企業の代表者等からなる学校運営委員会等(以下「運営委員会等」という。)によって行われている。

(注1)
 日本人学校  海外において、我が国の教育関係法令に準拠して、国内の小学校、中学校又は高等学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする全日制の教育施設
(注2)
 補習授業校  現地校、国際学校等に通学している日本人の子供に対し、国内の小学校、中学校の一部の教科について授業を行う教育施設。通常は、土曜日又は日曜日など、現地校等の授業が行われない日に授業を実施する。

(2) 援助額の算定方法等

 外務省は、援助額について、日本人学校等の小学部及び中学部を担当する教員等の給与を対象として、実際に支払われた毎月の給与の額(以下「給与月額」という。)に基づき算定することとしている。そして、平成21、22、23各年度の援助額の算定方法は、表のとおりとなっていた。

 表 年度別の援助額の算定方法

年度/区分
日本人学校
補習授業校
平成
21
給与月額に援助率40%を乗じた額
給与月額に援助率35%を乗じた額と別途送金通貨ごとに定めた額(米ドルの場合、月額252ドル)のいずれか高い方の額
ただし、給与月額が別途送金通貨ごとに定めた額より低い場合は、当該給与月額を援助額とする。
22
給与月額に援助率45%を乗じた額
23
給与月額に、援助率45%に在籍児童生徒数に応じて設定された率を加算して算出された率を乗じた額

 外務本省は、日本人学校等の教員等の給与に対する援助の実施に当たり、毎年度、在外公館を通じて運営委員会等から、給与月額の予定額(以下「給与予定月額」という。)、小学部及び中学部の担当で、勤務している教員等及び採用予定の教員等の氏名等が記載された現地採用教員等調査票を徴取している。そして、当該調査票の記載内容を基に、援助に係る予算額その他の事由を勘案して、教員等ごとの給与予定月額に対する援助の目安額(以下「援助目安月額」という。)、日本人学校等別の援助の年間目安額等を算定している。外務本省は、これらを記載した配賦額通知書を各日本人学校等を管轄する在外公館へ通知し、通知を受けた在外公館は、更に運営委員会等に通知している。

 また、外務本省は、〔1〕 給与月額及び援助額の算定方法に関すること、〔2〕 小学部及び中学部の教員等が援助対象となること、〔3〕 在外公館は、援助を実施するに当たり、毎月末(又は毎四半期末)、運営委員会等に給与月額及び援助額を明記した請求書を提出させることなどについて、各年度ごとに、「海外子女教育(日本人学校現地採用教員謝金)」(訓令)等の訓令(以下、これらの訓令を総称して「教員謝金に関する訓令」という。)で定めるとともに、これを各日本人学校等を管轄する在外公館へ通知している。そして、通知を受けた在外公館は、運営委員会等から提出された請求書に基づき、運営委員会等に対して援助額の支払を行うこととしている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性等の観点から、運営委員会等からの請求、在外公館における請求内容の確認等は、教員謝金に関する訓令に基づき適切に行われているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、外務省が、21年度から23年度までの間に、133公館が管轄する290日本人学校等の教員等の給与に対して援助した総額23億4136万余円(邦貨換算は援助期間中の毎年度の出納官吏レート。以下同じ。)を対象として、外務本省及び13公館において、運営委員会等から提出された請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、日本人学校等を管轄する全ての在外公館から、各日本人学校等への援助の状況についての調書を徴するなどし、これを確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、49公館(注3) が管轄する89日本人学校等において、次のように、運営委員会等の請求内容が適切でなかったのに、各在外公館が十分確認しないまま請求どおり援助を実施していた事態が見受けられた。

ア 給与月額に基づいて援助額を算定せずに、援助目安月額を援助額としていたため、夏期休暇等で当該月の給与の支払がない場合でも、一律に援助を請求するなどしていた。

イ 援助の対象は、前記のとおり、小学部及び中学部を担当する教員等の給与であるのに、幼稚部、高等部等を担当する教員等の給与を対象として援助を請求していた。

 そこで、49公館が管轄する89日本人学校等(21年度41公館、72日本人学校等、22年度35公館、58日本人学校等、23年度16公館、26日本人学校等)に交付した援助額21年度計1億8412万余円、22年度計1億7218万余円、23年度計1億1233万余円について、適正な援助額を算定したところ、21年度計1億5843万余円、22年度計1億5377万余円、23年度計1億0297万余円となり、21年度計2568万余円、22年度計1840万余円、23年度計936万余円、合計5345万余円が過大に交付されていた。
 上記のように、運営委員会等が、援助目安月額を援助額としたり、幼稚部、高等部等を担 当する教員等の給与を対象としたりなどして援助を請求していたのに、在外公館が請求内容を十分に確認しないまま援助を実施したため、援助額が過大になっていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 49公館  在インド、在シンガポール、在フィリピン、在ベトナム、在パラオ、在アメリカ合衆国、在メキシコ、在英国、在オーストリア、在オランダ、在スイス、在スウェーデン、在ドイツ、在ポーランド、在ポルトガル、在イラン、在クウェート、在サウジアラビア、在シリア、在バーレーン、在ヨルダン、在エジプト各日本国大使館、在釜山、在広州、在上海、在瀋陽、在香港、在パース、在ブリスベン、在メルボルン、在オークランド、在シアトル、在シカゴ、在デトロイト、在ナッシュビル、在ニューヨーク、在ヒューストン、在ボストン、在マイアミ、在ロサンゼルス、在カルガリー、在トロント、在モントリオール、在ミラノ、在デュッセルドルフ、在ストラスブール、在マルセイユ、在サンクトペテルブルク、在ドバイ各日本国総領事館

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 外務本省において、在外公館に対して運営委員会等に教員謝金に関する訓令の内容を確実に通知するよう明確に指示していなかったこと及び運営委員会等が適正な援助額を算定できるよう教員謝金に関する訓令の内容について指導、助言等を適切に行うよう指示していなかったこと

イ 在外公館において、教員等に係る雇用契約書等の関係書類を運営委員会等から徴取するなどして援助額の妥当性を十分に確認していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、外務省は、運営委員会等から提出された請求書等について、在外公館における確認等を適切に行うことにより、日本人学校等の教員等の給与に対する援助額が適正なものとなるよう、24年9月に、次のような内容の「海外子女教育(日本人学校及び補習授業校を管轄するすべての在外公館に対する教員等政府援助謝金に関する是正措置)」(訓令)を発し、同年4月に遡及して適用することとする処置を講じた。

ア 在外公館に対して、給与月額に基づいて援助額を算定することなどの教員謝金に関する訓令の内容を運営委員会等へ確実に通知するとともに、運営委員会等が適正な援助額を算定できるよう、指導、助言等を行うよう指示した。

イ 在外公館に対して、援助の実施に当たり、教員等に係る雇用契約書等の関係書類を運営委員会等から徴取するなどして援助額の妥当性を確認するよう指示した。