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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(46) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等 厚生労働本省(支給庁)
88公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 233人
不当と認める失業等給付金 (1)   求職者給付
(2)   就職促進給付
失業等給付金の支給額の合計 (1) 150,935,250円 (平成20年度〜24年度)
(2) 13,463,933円 (平成22、23両年度)
164,399,183円  
不当と認める支給額 (1) 49,712,650円 (平成20年度〜23年度)
(2) 13,463,933円 (平成22、23両年度)
  63,176,583円  

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。

イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。

 受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。

ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上で、支給決定を行う。

イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上で、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の437公共職業安定所(平成24年3月末現在)のうち、20労働局管内の177公共職業安定所において会計実地検査を行い、主として21年度から23年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)から10,583人を選定して、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、18労働局の88公共職業安定所管内における20年度から23年度までの間の受給者233人については、再就職した後も引き続き失業等給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する失業等給付金の支給額164,399,183円のうち63,176,583円は、支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 87公共職業安定所管内の受給者229人に対する基本手当の支給額150,935,250円のうち49,712,650円は、支給の要件を満たしていなかった。

イ 就職促進給付

 33公共職業安定所管内の受給者40人に対する再就職手当の支給額13,463,933円の全額は、支給の要件を満たしていなかった。

 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったため、失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、前記の88公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不当と認める支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。
 これらを労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
      千円 千円
北海道
札幌
札幌東
小計
5
373
37
21
1
18,791
556
19,347
4,455
556
5,012
埼玉
大宮
小計
2
167
3
1,689

1,689
1,578

1,578
東京
上野
大森
小計

13
5
1,000
273
18
5
14,424
980
15,405
6,444
980
7,425
神奈川
相模原
小計
2
125
6
4,267

4,267
700

700
石川
金沢
七尾
小計

3
2
287
51
14
2
11,185
337
11,523
1,661
337
1,999
長野
長野
長野
小計

2
3
433
83
23
4
14,703
1,183
15,887
6,198
1,183
7,382
愛知
名古屋東
名古屋東
小計

6
5
480
217
17
7
10,990
2,776
13,766
3,397
2,776
6,173
大阪
大阪東
門真
小計
6
292
13
10
1
6,458
479
6,937
4,383
479
4,862
兵庫

西神
小計
5
279
33
10
2
5,009
648
5,657
2,075
648
2,723
和歌山
和歌山
和歌山
小計
5
361
80
9
1
4,509
263
4,773
1,245
263
1,509
広島
広島
小計
2
148
2
2,054

2,054
679

679
香川
高松
高松
小計

5
3

284
96
11
3
5,294
1,371
6,665
1,399
1,371
2,771
福岡
大牟田
福岡東
小計
5
276
44
8
1
4,939
105
5,044
1,839
105
1,944
佐賀
佐賀
佐賀
小計

33
224
142
8
4
2,416
937
3,354
1,396
937
2,334
長崎
長崎
島原
小計
6
364
16
16
1
10,888
749
11,638
1,459
749
2,208
熊本
熊本
熊本
小計

52
327
89
12
2
8,977
935
9,605
2,110
935
2,739
宮崎
宮崎
延岡
小計

52
341
63
26
2
15,956
935
16,892
4,082
935
5,018
沖縄
那覇
沖縄
小計

32
225
43
15
4
8,377
1,509
9,887
4,602
1,509
6,111
求職者給付計
87か所     5,986 229 150,935 49,712
就職促進給付計
33か所     1,280 40 13,463 13,463
合計
          164,399 63,176
注(1)  上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ88か所、233人である。

 失業等給付金の支給については、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項1件(「失業等給付金の支給に当たり、受給資格者から自己就職した旨の申告があった場合に、公共職業安定所が行う調査確認の具体的な方法を取扱要領等に明示したり、採用証明書に注意事項を明示してこれを事業主に対して周知徹底したりなどして、失業等給付金の支給の一層の適正化を図るよう改善させたもの」 参照)を掲記した。