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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成22年決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

生活保護費に係る返還及び徴収の決定の適正化について


(4) 生活保護費に係る返還及び徴収の決定の適正化について

平成22年度決算検査報告参照

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置並びに要求した改善の処置

 生活保護費の返還決定等に当たり、都道府県、市町村又は特別区(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)において、収入申告がなされていないのに不正受給の意図がなかったとして生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第63条(急迫の場合等に資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させる規定)を適用して、返還対象額から控除等を行ったり、返還対象額等から控除すべきでない費用を控除したり、費用返還請求の対象となる資力の発生時点を誤るなどしたため返還金等の額を過小に決定したりしていて、返還金等の額の算定が適切に行われていないなどの事態が見受けられた。
 したがって、厚生労働省において、事業主体に対して返還金等の額の算定を誤っていたものなどについて速やかに適正な額による返還決定等を行わせるとともに、法第63条及び第78条(不実な申請等により保護を受けた者等から不正に受給した額を徴収する規定)に基づいて保護費の返還及び徴収を適切に行うことにより、負担金の精算が適正なものとなるよう、事業主体に対して、〔1〕 収入申告がなされていない事態について検討を十分に行った上で法第78条を厳格に適用するよう徹底を図ること、〔2〕 返還決定等及び自立更生費等の取扱いについて体系的に明示するとともに、返還決定の判断の適切性等を検討するための様式を示すなどすること、また原則として返還対象金額全額を返還させる取扱いを徹底すること、〔3〕 収入の申告義務について被保護世帯の状況に応じて的確に説明を行い、収入の有無にかかわらず定期的かつ確実に収入申告書の提出を求めることや、返還対象期間、金額等の算定を適切に行い、自立更生費等の控除の認定も適切に行うことについて技術的助言を行うこと、さらに、〔4〕 厚生労働省、都道府県等が事業主体に対して行う監査の際に返還決定等の状況の確認を徹底して、改めて指導を徹底することについて処置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して平成23年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

 本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、返還金等の額の算定を誤っていたものなどについて事業主体に対して適正な額による返還決定等を行わせるなどの是正の処置を講ずるとともに、24年7月に都道府県等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。

ア 事業主体に対して、法第63条及び第78条に基づく費用返還等の取扱いについての考え方を明確に示すとともに、法第78条を厳格に適用することを徹底した。

イ 事業主体に対して、返還決定等及び自立更生費等の取扱いについて体系的に明示して、返還決定等の判断の適切性等を検討するための様式を示した。また、遡及して受給した年金収入は全額返還対象となる取扱いを徹底して、控除する費用についても厳格に対応させることとした。

ウ 事業主体に対して技術的助言を行い、被保護者に収入申告の必要性等について十分に説明を行ったことや当該被保護者がその説明を理解したことを示す書面の様式を定めさせ、返還決定等における留意点を明確にして、自立更生に含まれない使途を示すなどして既存の認定の適正化を図った。

エ 厚生労働省、都道府県等が事業主体に対して行う監査において、生活保護費の費用返還及び徴収決定の取扱いを確認して、必要な指導を行うことについて周知徹底を図った。