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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

工事請負契約において、別途、詳細設計業務をコンサルタント業者に委託して既に完了させていたのに、予算上コンサルタント業者への委託費を確保できなかったとの理由で、当該工事の請負人が詳細設計業務を行うこととする虚偽の変更契約書を作成するなど不適正な会計経理を行って、請負人に詳細設計業務を含めた請負代金を支払っていたもの


(254) 工事請負契約において、別途、詳細設計業務をコンサルタント業者に委託して既に完了させていたのに、予算上コンサルタント業者への委託費を確保できなかったとの理由で、当該工事の請負人が詳細設計業務を行うこととする虚偽の変更契約書を作成するなど不適正な会計経理を行って、請負人に詳細設計業務を含めた請負代金を支払っていたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計(治水勘定) (項)河川整備事業費
部局等 九州地方整備局武雄河川事務所(契約庁)
九州地方整備局(支出庁)
契約名 (1) 松浦川久里地区堤防補強工事
(2) 松浦川双水地区堤防補強工事
契約の概要 一級河川松浦川の堤防の補強のために、平成22、23両年度に、当初契約で築堤護岸工事を行い、変更契約で詳細設計業務等を行うもの
契約の相手方 (1) 岡本建設株式会社
(2) 野中建設株式会社
契約 (1) 平成23年3月 一般競争契約
(2) 平成23年3月 一般競争契約
契約額 (1) 96,600,000円(平成22、23両年度)
(2) 83,580,000円(平成22、23両年度)
計 180,180,000円
不適正な会計経理により支払われた契約額 (1) 96,600,000円
(2) 83,580,000円
計 180,180,000円

1 工事請負契約に係る会計経理の概要

(1) 工事請負契約の概要

 九州地方整備局(以下「整備局」という。)管内の武雄河川事務所(以下「事務所」という。)は、河川整備事業の一環として、佐賀県唐津市久里地区及び双水地区において、平成22、23両年度に、一級河川松浦川の堤防を補強するために、2件の請負工事(以下「本件工事」という。)を実施している。
 事務所は、23年3月に請負人と締結した当初契約で築堤護岸工事を行い、24年1月に締結した変更契約等で本件工事に係る詳細設計業務(詳細設計業務に係る設計委託費計6,500,000円)等を含めて、契約額を久里地区96,600,000円及び双水地区83,580,000円、計180,180,000円に増額変更している。そして、事務所は、築堤護岸工事、詳細設計業務等に係るしゅん功検査を実施し、これらが適切に履行されたとする検査調書を作成して、整備局が請負代金を請負人にそれぞれ支払っている。

(2) 国の契約、支払等の会計経理の概要

 国の会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等により、国の会計機関が契約を締結した場合には、給付の完了を確認するために必要な検査を行わなければならず、また、検査を完了した場合には、原則として、所定の検査調書を作成し、検査調書に基づかなければ支払をすることができないことなどとされている。
 そして、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、歳出の会計年度の所属については、工事費等で相手方の行為の完了があった後に交付するものはその支払をなすべき日の属する会計年度に属するものとされている。
 なお、事務所及び整備局において、分任支出負担行為担当官は事務所長、官署支出官は整備局総務部長となっている。

2 検査の結果

 本院は、合規性等の観点から、本件工事の請負契約に係る会計経理が会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、事務所において、契約関係書類等により会計実地検査を行った。
 検査したところ、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、事務所は、本件工事の当初契約締結前の22年10月ごろに、別途、コンサルタント業者に詳細設計業務を口頭で委託して、コンサルタント業者は本件工事の変更契約締結前の23年2月及び同年7月に詳細設計業務を完了させていた。
 しかし、事務所は、22年度の予算ではコンサルタント業者への委託費を確保できなかったとの理由で、23年度の予算で当該委託費を支払うこととして、本件工事について、請負人が詳細設計業務を行うこととする虚偽の変更契約書を作成し、検査職員は本件工事では詳細設計業務が実施されていないのに実施されたとする検査調書を作成していた。そして、整備局は、この検査調書に基づくなどして、本件工事では実施されていない詳細設計業務に係る設計委託費を含む請負代金を支払っていた。なお、整備局を通じて確認したところ、詳細設計業務に係る設計委託費として請負人に支払われた支払相当額は、請負人とコンサルタント業者との契約に基づき、請負人からコンサルタント業者に支払われていた。
 したがって、事務所等において、別途、詳細設計業務をコンサルタント業者に委託して既に完了させていたのに、予算上コンサルタント業者への委託費を確保できなかったとの理由で、本件工事の請負人が詳細設計業務を行うこととする虚偽の変更契約書及び同業務を実施したとする検査調書を作成して請負代金を支払ったり、コンサルタント業者が22年度中に完了させていた詳細設計業務の委託費を23年度の予算で支払ったりなどする不適正な会計経理を行って本件工事に係る契約額計180,180,000円を支払っており、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事務所等において、工事請負契約に係る会計経理を行うに当たり、会計法令等を遵守することの認識が欠けていたことなどによると認められる。